サイアミディン

ササミ負荷試験

以前、75gタンパク質負荷試験としてのサラダチキン負荷試験の結果を公開しました。

その時の結果がまるで糖質を摂った後のような血糖値とインスリン値の推移を呈したため、

その時用いたコンビニのサラダチキンの中にひょっとしたら糖質が混入していたかもしれないという可能性が否定できないということで、

タンパク質負荷試験の追試として、今度はササミ負荷試験なる実験を決行致しました。

今回実験に用いたササミの基本情報は以下の通りです。
ササミ327g
(一食あたりの目安)
エネルギー 343kcal 536~751kcal
タンパク質 75.21g (300.84kcal) 15~34g
脂質 2.62g (23.58kcal) 13~20g
炭水化物 0g (0kcal) 75~105g


自宅でボイルしたササミをタッパーに詰めて病院に持って来て実験を実行しました。

今回はバター負荷試験の時のように長期断食後という条件は設けず、普通に10時間絶食後に実施したデータです。

食前、30分後、60分後、120分後、180分後、240分後、300分後、360分後の計8回採血を行って血糖、インスリン、ケトン体、

それからサラダチキン負荷試験の時に測定し損ねたグルカゴンも併せて測定してみることにしました。

結果は以下の通りです。

実測血糖(mg/dL)  実測3ヒドロキシ酪酸値(μmol/L)
食前      88       556
30分後     91       367
60分後     106       210
120分後    96       111
180分後    96       80
240分後    92       232
300分後    85       536
360分後    82       597 
(血糖基準値:70~109mg/dL 3-ヒドロキシ酪酸基準値:85μmol/L以下 )

インスリン値(μU/mL)  グルカゴン値(pg/mL)
食前      5.3       165
30分後     9.4      185
60分後     37.2      265
120分後    21.3       259
180分後    10.4       213
240分後    7.9       173
300分後    5.7       163
360分後    4.5       160
(インスリン基準値:1.7~10.4μU/mL グルカゴン基準値:70~174pg/mL)


サラダチキン負荷試験と近い実験結果です。

75gタンパク質負荷によって私の血糖は1時間後をピークに18mg/dL上昇し、

インスリン値も基礎値の約7倍上昇しています。

これでコンビニのサラダチキンに糖質が混入していた可能性はかなり低くなりました。

どうやら私はタンパク質を食べてもインスリンが結構な量分泌されるという事を認めざるを得ないようです。

また私のようにケトン体を意識している人間でも、

油断をするとタンパク質摂取でもケトン体はかなり低い値まで低下してしまうということも分かりました。

今回興味深いのはグルカゴンの挙動です。

絶食までしてもなかなか上がらなかった私のグルカゴン値は、

タンパク質を摂取することでいとも簡単に上昇してしまっています。

単純に数値だけでは言い切れないのでしょうけれど、

このグルカゴンがもたらす血糖上昇作用と、インスリンがもたらす血糖降下作用を比べて、

前者もしくはそれを含めた血糖上昇システムが上回るが故に私の血糖値は上がってしまうのだと思います。

私の解釈が正しいかどうかは別として、

これがタンパク質を摂取して私の身に起こる事実です。

この結果を受けて、どう考えてどう行動するかが大事だと思っています。


たがしゅう
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非公開コメント

食品は単体の「タンパク質」ではないと思います

医師という専門家中の専門家の自分の身体を被検体にした実験について、素人が何やかやと言うのは失礼かと思いつつ老婆心から。
タンパク質といってもいろいろあるのではないかと。鶏肉もささみと胸肉では成分が違うとのこと、おそらく部位によって含まれている栄養素が異なり、純粋にタンパク質だけではないと思います。
豚肉や牛肉、卵、魚、豆腐などのタンパク質も、同じく「タンパク質」と名付けられているけれども、栄養素というか成分は異なると思います。
西洋薬のように単体の化学式で表記される単体の栄養素としての「タンパク質」ではなく、現実に私たちが食しているのはタンパク質が多く含まれているが他に色んな栄養素やおそらくは毒素も含んだ「食品」です。「ささみ」も化学式で表記できるタンパク質以外に何やかやと含んでいると思います。
たがしゅう先生が漢方薬について書かれておられましたように、西洋薬は単体物質の作用だが、漢方薬はいくつかの生薬が互いに影響し合って効果を発揮する、ことと同様に、ささみも胸肉も卵も魚も、単体の「タンパク質」だけではないと思います。また産地によっても栄養成分が微妙に異なると思います。

こんにちは〜

ある程度の個人差もあるのでしょうか (^-^?
また、
タンパク質の中でも乳製品は上がり方が大きいとか読んだことがありますけど
私は糖質少なめでタンパク質が多いギリシャヨーグルトを好んで食べますので
糖質を摂るのと変わらないくらい血糖値が上がっているかも知れないですね〜

Re: 食品は単体の「タンパク質」ではないと思います

おばあさんに近いおばさん さん

コメント頂き有難うございます。

御指摘のように、一口にタンパク質といっても一様ではありません。
毒素とおっしゃる他の栄養素に関してはよくわかりませんが、例えばタンパク質を構成するアミノ酸が糖原性アミノ酸か、ケト原性アミノ酸かでも血糖値上昇には多少の差は生じてくることでしょう。

しかしここで大事なことは、「タンパク質といってもいろいろあるから一概には言い切れない」ということではなく、
「普段日常的に食するタンパク質メインの食材で血糖値やインスリンが上昇し、そこにグルカゴンが関わる可能性がある」という一例を実証したことです。

これですべてが説明できるとは私も思っておりません。しかしこういう事が起こりうるというのが分かったことが大事なのです。

Re: こんにちは〜

みき さん

コメント頂き有難うございます。

個人差はあると思います。
またタンパク質を構成するアミノ酸の違いによっても多少の血糖変動差はあると思います。

75gOGTTとの比較

貴重な実験、有難うございます。タンパク質75gに対してインスリンMaxが37.2なのですが、75gOGTTの時のインスリンMaxと比較してどうですか?

Re: 75gOGTTとの比較

通りすがり さん

御質問頂き有難うございます。

> タンパク質75gに対してインスリンMaxが37.2なのですが、75gOGTTの時のインスリンMaxと比較してどうですか?

痛いところを突かれてしまいました。
そうですよね。インスリン37.2がどれほどのものかをより深く知るにはブドウ糖負荷試験との比較が必要ですね。
できればしたくない実験でしたが、確かに気になるので次回の実験テーマ候補とさせて頂きます。

感想

貴重な実験データの公開、ありがとうございました。

下記の点を確認できて勉強になりました。
・食事で一旦上昇したインスリン濃度は通常レベルに下がるまで4時間程度かかる。その間、βヒドロキシ酪酸濃度は減少を続け、再度上昇に転じる。
・糖質だけではなく、たんぱく質でも多量のインスリンが分泌される。
これは個人差ではない生理学的な事象かと思います。下記サイトでも「食物インスリン指数」という表現で言及されています。
http://saitokarami.com/%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%83%AA%E3%83%B3%E6%8C%87%E6%95%B0fii%E5%80%A4%E3%81%A8%E3%81%AF%EF%BC%9F/

私も今回の血糖値変動の原因はインスリン分泌とグルカゴン分泌のズレだと思います。分泌バランスには個人差があると思うので、人によっては、血糖値が下がったり、血糖値に変動がないこともありうるのではないでしょうか。

一つ疑問に思うことは、ブドウ糖負荷実験ではグルカゴンはどの程度分泌されるのかということです。インスリン分泌量に応じて今回の実験と同程度のグルカゴンが分泌されるのか、あるいは高血糖状態を感知してグルカゴン分泌量は抑制されるのか、興味があります。

よろしくお願いします。

Re: 感想

まっつん さん

コメント頂き有難うございます。

千里の道も一歩からで、こうしたデータを積み重ねていけば個人差ではない新しい事実も徐々に分かってくるものと思います。

ブドウ糖負荷試験時のグルカゴンの動向には私も興味があります。実験計画に入れさせて頂きます。

ありがとうございます

久しぶりに先生のブログを訪問しました。

先生のブログで、フェルガードをしり、父の介護に本当に為になりました。


久しぶりにお邪魔して、やっぱりたがしゅう先生は素敵!!と思いました。

これからも、面白い記事を書き綴ってください。
楽しみにしています。

浜六郎氏の本の興味深い記述

貴重な実験データを有難うございました。最近到着した医薬ビジランスセンターの浜六郎理事長の本をちょうど読んでいた所でした。
その中に、非常に興味深い記載がありますのでご紹介します。タンパク質は、血糖値を上げ、インスリンも分泌させるという内容です。

「薬のやめ方」事典
浜 六郎 (著)
出版社: 三五館 (2017/3/19)

p.49
糖質は大量のインスリンを必要とする
血糖値をもっとも高くする食物は、ブドウ糖そのものです。糖質成分が多い食品ほど、ブド ウ糖そのものを飲んだときの上がり方に近くなります。以下に、オーストラリアのブランド・ ミラーらのグループの研究のデータを紹介します。(文献8)

(文献8)Bao J. Brand-Miller JC et al. Am J Clin Nutr. 2011, 93 (5), 984-996
http://ajcn.nutrition.org/content/93/5/984.full

【注2】59gという半端な数字の根拠について。最近はエネルギーを表すのに、キロジュール(KJ)を使う ことがしばしばある。1000KJは、239キロカロリーに相当する。糖尿病食では80キロカロリーを1単 位で表すが、それを当てはめると、1000KJ(239キロカロリー)は約3単位(80キロカロリー×3)に相当し、ブドウ糖59g分のエネルギーとなる。ブドウ糖59gを健康な成人が食べた後、2時間までの血糖値と、 インスリン値の上昇曲線を描いて、その下の面積(AUC=Area of Under the Curve)を計算し、さまざまな 食品もそれぞれAUCを計算して、ブドウ糖59gを基準とした場合、どのくらいあるか(%)を計算する。 (注2終わり)

たとえば、糖質59g【注2】 当たりの血構値 の上昇は、ブドウ糖59g摂取時の平均76%です。
ほとんどが脂質でできているバターやアボカドは、ブドウ糖と同じエネルギー量だけ食べて も、血糖値は、ブドウ糖のわずか1~2%しか上がりません。
一方、タンパク質が豊富な食べ物は、糖質が含まれていなくても、タンパク質59g当たりの血糖値は、ブドウ糖59g摂取時の13%上昇します。
インスリンの必要量はどうか。糖質摂取時は、血糖値の上昇とともにインスリンが大量に必 要になります。ブドウ糖59gを摂取したときに健康な人の体内から出る(必要な)インスリン の量を100%とすると、糖質59g当たり70%、タンパク質は59g当たり34%です。
一方、脂質では、バターで2%、アボカドで4%にすぎません。血糖値は上昇しないし、インスリンもごくわずかしか必要としないのです。 タンパク質の場合、血糖値の上昇の程度は13%であったのに、インスリンはやや多めを必要としていました。これは、なぜでしょうか? それは、タンパク質が消化されてアミノ酸になり吸収されると、アミノ酸を筋肉に取り込んで古い筋肉を分解し、新しい筋肉を作るのですが、筋肉に合成する段階でインスリンを必要と するからです。脂肪も、新しい脂肪を作るためにはインスリンが必要ですが、その反応は非常にゆっくりとしているために、すぐにはインスリンを必要としません。

Re: ありがとうございます

YONE さん

コメント頂き有難うございます。

少しでもお役に立つことができて嬉しいです。
マイペースで続けて参りますので、どうか今後とも宜しくお願い申し上げます。

Re: 浜六郎氏の本の興味深い記述

広島人 さん

情報を頂き有難うございます。

奇遇ですね。まさに私も御紹介の本を読んでいる真っ最中のところでした。
引用文の前後で糖質制限について真っ当な評価がなされていますし、その前章での離脱性炎症の話も非常に示唆に富む内容で良書だと思います。後日記事にさせて頂こうと思っています。

しかしそれでさえ鵜呑みにせず、そのデータの妥当性を確かめるべく、ブドウ糖負荷試験は是非とも行ってみたいと思います。

タンパク質20g負荷試験だったら?

一般的な食事ではタンパク質は一度に20g程度が多いと思います。

この場合のタンパク質負荷試験をしたら、それぞれの変動がどの程度なのか?興味あります。

僕の予想は、20g程度ですとたいした変動か起きない。

ある一定量を超えると、このテストのように特徴的な変動が起こる。

Re: タンパク質20g負荷試験だったら?

Ichiro さん

 コメント頂き有難うございます。

 確かにそういう検証も大事でしょうね。
 人体という複雑系を相手にしているので、必ずしも直線的な相関関係になるとは限りませんから。
 今後の実験の候補として検討させて頂きます。

非常に合点のいく内容

初めまして、江部先生のブログ経由でやってきました。

私は身体作りの一環として2年前から糖質制限+筋トレしてる身で、今は筋トレ先進国であるアメリカの記事・文献を中心に学んでいます。

アメリカ圏でも糖質制限(≒ketogenic diet)で身体を作っているコンテストビルダーや、指導しているトレーナーは多々いらっしゃいますが、いずれも「蛋白質が多すぎるとケトーシスが止まる」という事は広く認識されている共通事項のようです。
https://www.bodybuilding.com/content/the-5-biggest-keto-mistakes.html

余剰蛋白質の56%がグルコースになるという旨も、江部先生のブログに貼られていたFII値のデータと似通っています。
https://www.ruled.me/ketosis-ketones-and-how-it-works/

周りで「糖質制限してるけど痩せない~」と嘆く人の食事内容を聞いてみるとだいたい蛋白質オンリーの食事なので、ササミ負荷試験によるインスリン値上昇&3ヒドロキシ酪酸値低下は、私としては非常に合点のいく内容でした。

Re: 非常に合点のいく内容

Kom さん

 コメント頂き有難うございます。

> 周りで「糖質制限してるけど痩せない~」と嘆く人の食事内容を聞いてみるとだいたい蛋白質オンリーの食事

 そうですね。私自身もタンパク質過剰摂取の側面は否めません。
 糖質制限で越えられない壁を打破するのは、タンパク質コントロールが鍵になるように思いますが、幾度か試みるもののタンパク質量を制限するのは、少なくとも自分にとっては糖質制限以上に難しく感じます。
 
 当座は筋トレでこの膠着状況が打破できないか検討している所です。また成果が出ればシェアさせて頂こうと思います。
プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
漢方好きの神経内科医です。
南鹿児島さくら病院に勤務しています(下段にリンクあり)。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。

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