サイアミディン

過剰な気遣いはよくない

医師と看護師の関係は所変われば様々なのでしょうけれど、

中には医師に対して若干気を遣い過ぎている看護師さんをみることがあります。

相手に気を遣うという行為は言い換えれば「思いやり」であり、それ自体は決して悪いことではありません。

むしろ多数の人で成り立つ社会の動きを円滑にするために、気遣いは必要不可欠な要素であるはずです。

ところが、その気遣いが過ぎるのが玉にきずというのを感じる場面もあります。

例えば、ある看護師さんとの次のようなやり取りについてです。
少食の重要性を理解している私は、食欲がいまいち進まない患者さんに対して

「少々食べられなくてもいいから、しばらく自然経過で様子をみましょう」という指示を時折出すことがあります。

そういう状況に対して看護師さんは「お忙しい所申し訳ございませんが・・・」と前置きした上で、

「〇〇さん、昼の食事が全然食べられなかったのですが、このまま様子を見ていいですか?」と私に尋ねたりします。

それに対して私は「どうしたらいいと思っているのですか?」と尋ねると、

「水分が取れないから点滴はどうかなって・・・」と心配そうに私に返答されます。

「少しくらい食べられなくても直ちに脱水になるわけではありません。もしそのような状況が続いたら、点滴を考えますので、今はそのまま様子をみて下さい」と私が答えると、

「・・・・・・・・・わかりました。」と少し沈黙をおいて、そう答えられました。

沈黙の理由はおそらく、看護師さんの中で3食きちんと食べないと脱水症状になる危険があるという考えがあり、

それに対して医師の私がそれに反するような指針を提示し、しかし医師の言うことだからやむなく言う通りにしなければならないと思った所にあるのではないかと思います。



この辺りの実際のニュアンスは文章で表現するのがとても難しいのですが、

このやり取りの中で、少なくとも私が感じた違和感は次の2点です。

①本当は「点滴をしてはどうか?」と医師に提案したいのに、医師のプライドを傷つけてはいけない、もしくは自分の意思を出してはいけないので、遠回しに状況報告を伝えて後は医師の判断に委ねる

②本当は「点滴をしてほしい」と思っているのに、それにそぐわない見解を示した医師に対して本当は納得がいってないが、医師の決断が絶対なのでそこは甘んじて指示に従う

特に②の思いが強いから、最後のやり取りで変な間が生まれたのではないかと私は推察します。その間はすごく気持ちが悪い間でした。

おそらく気を遣い過ぎるがゆえに自分の意見を押し殺し、医師の言うことに従うという事が習慣化してしまっているのだと思います。こうした看護師さんは私の経験上、結構たくさんいらっしゃいます。

本来であれば、なぜ「点滴がなくても大丈夫なのか?」という事について納得するまで医師と議論し合うべきです。場合によっては医師の方が間違っているという事だってあるわけですから。

実際、少食許容の方針だと、もしも私が不在時に当直医が対応するという場合に方針の混乱を招く可能性があるという点で私にも非がありました。

結局、改めて相談の結果、基本的には点滴なしで経過観察するが、もしも1日の摂食量が5割未満であった場合には1本点滴を施行するという指示を追加し軌道修正する事となりました。


このように心底納得した上で「点滴をしない」という指示受けをするのが、チーム医療を行う上では大切なことだと思います。

医師が傲慢すぎる場合でも議論は成立しませんが、看護師さんが医師に気を遣い過ぎても議論は成立しません。

人としての気遣いはよいとしても、議論においては同じ医療者として対等によりよい医療を提供するためにも常に意見を戦わせ続ける必要があると私は思います。

私の治療方針に納得してくれているのならよいですが、

本当は納得してなくて気を遣って従ってくれているのだというのなら、

そのような気遣いは必要ないと私は思います。

気遣いは多すぎても少なすぎてもダメ

人生は難しいですね。


たがしゅう
関連記事

コメントの投稿

非公開コメント

おはようございます

人と人とのコミュニケーションって難しいですね

相手に気を使い過ぎて大切なことを見失ってしまうこともあると思います

特に今回の事例では主役は患者なのに。

言いたいことをはっきり言えないのは日本人の特徴ですね

中国人みたいに厚かましくなりたくないけど、あれほどのパワーはっきり少しは欲しいものですね



Re: おはようございます

haru さん

 コメント頂き有難うございます。

 患者さんのためと言いながら自己都合になってしまっていること、
 かたや自己犠牲と言いながら、患者さんのためになっていないこと、

 自分が一歩引く事でと言いながら、自分の可能性を狭めてしまっていること、
 かたや自分の気持ちが大事と言いながら、他者に多大なる迷惑をかけてしまうこと、
  

 実は気持ちのすれ違いは結構頻繁に起こっているのではないかと思います。
 だからこそ時々客観的に自分の立ち居振る舞いを見直す視点が大事になるのだと思います。

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

Re: No title

tama さん

コメント頂き有難うございます。

御指摘の通りと思います。対等な議論以前にそれに足る信頼関係を構築できるよう精進したいと思います。

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

Re: 全部想像です。

エリス さん

 コメント頂き有難うございます。

 患者さん置き去りで、場外で何をやってるんだということですよね。
 まだまだ私も精進が足りません…。努力致します。

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
漢方好きの神経内科医です。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
これまでの訪問者数
FC2アフィリエイト
メールフォーム
フリーエリア
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR