サイアミディン

思い込みの怖さ

糖質制限の指導はなかなか思うようにいかないものです。

先日は60代の女性、頭がふらふらするという訴えで神経内科を受診された方がおられました。

非常に不安の強い方でした。ふらつき以外にも矢継ぎ早にいろいろな愁訴を訴えられます。

神経の診察では特に異常はなく、頭の写真、血液検査、心電図から何も異常がありません。

そして同時にあまりにも多くの病院へ同時に受診されている背景もありました。内科、整形外科、心療内科、耳鼻科、眼科、そして神経内科です。

しかも病院をコロコロと変える、いわゆるドクターショッピング傾向も見られる方でした。

この患者さん、注目すべきはここまでいろいろ病院を受診しても一向に症状が改善していない、という事です。
私はこういう人にこそ、まず糖質の害が関わっているのではないかと思うのです。

逆に言えば、原因を解決しない限り、いくら手を変え品を変え薬を使っても無駄だということを示しているように思えます。

私はこの方に4つの治療方針を提案しました。

①頭の写真には全く問題はないので安心すること(ストレスの除去)
②家庭で血圧を測る習慣をつけること(白衣高血圧の確認)
③肩こり体操、ストレッチの実施(緊張型頭痛の要素を取り除く)
④糖質制限の指導

言うまでもなく④を一番強調して話しました。そして医者の言われるがまま薬を飲んでいても決して病気はよくならないこと、なぜそうなっているのかを医者と一緒に考え、そして自分で行動を起こさなければ変わらないと伝えました。

「糖質の関与があるかどうかをきちんと見極めるために、少なくとも1ヶ月間は極力糖質を控えるべきだと思います。米、パン、めん類を食べない。できますか?」

→「できます。もともと米にそんなに執着はないです」

そうして最初の診察が終わり、1ヶ月後再び彼女が私の外来にやって来ました。

「どうでしたか?」

→「1週間はやめてみたんですけど、お腹がすいてしようがなかったので…。それに先生が控えるって言ったから少しは食べてもいいのかなって思って…」

いろいろと理由をつけて結局彼女は糖質制限を実行できず、症状は当然よくなっていませんでした。糖質との関与があるかどうかは謎のままです。

ここで彼女には二つの思い込みがあることに気がつかされます。

一つは「もともとそんなに糖質をとっていない」と思っていたこと、

もう一つは「ごはんを抜くとお腹がすいて仕方がない」と思っていることです。

第1の思い込みにより、彼女は糖質を減らすことをおそらく軽く考えていました。米を抜くことなどたいしたことじゃないと。

しかし実際にやってみると糖質制限初期の離脱症状が思いのほか強く、その事を第2の思い込みをで理解しようとしていたのではないでしょうか。

正しい対応は「お腹がいっぱいになるまでおかずをしっかり食べる」です。第2の思い込みがあるがゆえにそれができないのです。

この患者さんに限らず、第1、第2の思い込みをしている方は高齢の方にもたくさんおられます。

ごはんはちょんぼししか食べていません。」
「茶碗にほんの少しだけです」

私はこの患者さんにその事を時間をかけて諭し、もう一度糖質制限に取り組んでもらうことにしました。今度こそうまくいくことを祈るばかりです。

思い込みは本当に怖いです。

外来の短い時間でここをどう軌道修正をかけていくか、

私の中での課題の一つです。


たがしゅう
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非公開コメント

これは大変だ。

 私の同僚(78歳、男性)、
「お父さん」と呼んでいるのですが。
糖尿病の薬を飲みながら、炭水化物をたっぷり食べています。(弁当とカップラーメンが定番)

 当然、Hba1cは私より悪いのです。「なかなか下がらない」と嘆いてます。
「当たり前ですよ、薬をいくら飲んでも炭水化物をたくさん食べれば、決して下がりません。せめてカップラーメンだけは止めたら良いですよ。」と私。

 私の毎月の定期健診の数字を見せて「こんなに低いでしょ!」と言ってますが、お父さん、絶対にカップラーメンを止めません。

 そしてまた時々、「下がらない」と嘆いてます。時には私のアドバイスに「今更この歳で」とお決まりの言い訳をします。

 合併症の無い限り、いや合併症が出てもやらないかもしれませんね。

 

Re: これは大変だ。

ライフワーク光野 さん

 コメント頂き有難うございます.

 人には変われる人と変われない人がいます.

 後者の人は不思議なことに真実を知ったにも関わらず変われないのです.

> 時には私のアドバイスに「今更この歳で」とお決まりの言い訳をします。

 私もよくその言い訳はよく聞きますが.

 私に言わせれば人が変わるのに遅すぎることなんてありません.

よく「糖質制限をすると満腹感がない」という意見を聞きますが、私も「満腹になるまで肉でも魚でもたべたらいいだろ?」と思ってました。
例えば定食からご飯を抜くだけでは、ご飯を食べないカロリー制限ですね。

記録が大事

こんにちは。私は毎日、家計簿と食事摂取記録を書いています。おおざっぱですが習慣です。書くと全容がわかっていいですよ。
いつ何を買ったか食べたか、「なぜこんなしょうもないもの買ったか」「なぜこんなもの食べちゃったか」も、あとで見ると考察できます。

「収入は十分、節約しているのに毎月赤字」だとか「食べてないのに太ってきた」なんて、ありえません。そういう人は社交辞令で謙遜して言っているのでしょう。もし本気でそう思っているなら、一度記録してみたらいいのにと思います。

日本の食習慣

たがしゅう先生、こんにちは。
炭水化物というか米は日本の食習慣が大きく影響していると思います。日本には主食という概念があり主食は食べなければならないものであるという認識が大部分の人にはあるでしょう。

主食を抜くと食べたいよりもいつもなじんでいる主食を食べないで体に異変が起こらないかどうか不安になるのではないでしょうか。

またその患者さんの年齢だと肉は体に良くないという思い込みがあるかもしれません。そこでご飯を食べない、肉も食べない、お腹がへってしまうということになるかもしれません。

そこに周りの知り合いや他のドクター、栄養士、マスコミから

炭水化物を十分に摂取しないと体に異変が起こるリスクが出てくる

というような情報を目や耳にすると一層不安になりこれを解消するために何十年続いてた食生活に戻ってしまうという図式ですね。

糖質の摂りすぎはよくないことが起こるリスクがあるのでこれを摂らないようにすればそのリスクは減るというのが論理的な考え方だと思うのですが不安があったりすると人間はパニックになり論理的な考え方はできなくなってしまうようですね。

Re: タイトルなし

まるむし さん

 いつもコメントを頂き有難うございます.

> 例えば定食からご飯を抜くだけでは、ご飯を食べないカロリー制限ですね。

 その点は十分に注意するよう説明しているはずなのですが,患者さんの中での思い込みやいつの間にか理解のすりかえが起こってしまうのですね.なかなか難しいです.

Re: 記録が大事

エリス さん

 いつもコメントを頂き有難うございます.

 おっしゃるように記録は大事です.自分を客観的に見つめなおすことができます.

 うまくいかない原因を後で分析することもできますね.

Re: 日本の食習慣

クロワッサン さん

 いつもコメントを頂き有難うございます.

> 炭水化物というか米は日本の食習慣が大きく影響していると思います。日本には主食という概念があり主食は食べなければならないものであるという認識が大部分の人にはあるでしょう。
> 主食を抜くと食べたいよりもいつもなじんでいる主食を食べないで体に異変が起こらないかどうか不安になるのではないでしょうか。
> またその患者さんの年齢だと肉は体に良くないという思い込みがあるかもしれません。そこでご飯を食べない、肉も食べない、お腹がへってしまうということになるかもしれません。


 そうなのです.

 この問題の難しいところは思い込みが一つではないというところです.

 従来の二重,三重にはりめぐらされた常識によって主食を抜くということがあたかも非日常,常軌を逸脱した行為のようにとらえられてしまうのだと思います.

 従って「言われたからやる」のではダメで,自分で「心底納得してやる」でないと変われないのだと思います.

No title

たがしゅう先生、こんにちは。
長年、当たり前と思ってきた米中心の食事を変えることは難しいようですね。
私は、何も考えずに糖質制限をやってみたらどうなるかと思って取り組み始めたのですが、そんなちょっとした好奇心でさえ、拒絶する人が多いんですよね。

さて、スーパー糖質制限を始めて半年が経過しました。最初の4か月間は体重が減る一方で困っていたのですが、ここ2ヶ月は現状維持できてます。やや体重増加傾向になっているので、糖質制限前の体重に戻せるように食事を工夫していきます。

ちなみに現在の体重は52kgです。

先日、法事があり、兄と食事をする機会がありました。私が糖質制限をしていることを知った兄は、何か変な宗教に入ったのではないかと疑っています。

そんな兄は体重100kg程の肥満です。

私は、釜池先生、江部先生、夏井先生、白澤先生の著書を読んで糖質の害について勉強し、自分の体でいろいろと試しているだけです。


その日の兄の食事内容は

朝食:厚切りの食パンに卵焼きとサラダ。
昼食:握り寿司と天ぷらのセット。
夕食:おでん。ジャガイモや餅が入った巾着を中心に食べ、もちろん米も茶わん1杯食べていました。

糖質満載の食事内容ですが、一般的な感覚だと普通です。食事量が多いということはなく、むしろ、私の方がたくさん食べているくらいです。それなのに体重が100kgになるということは、食べてるものに問題があるはずなんですけどね。

本人は全く糖質の害を理解しようとしません。

ちなみに法事の時の昼食で私はロースとんかつ定食、鶏のから揚げ、揚げ出し豆腐、サラダを注文しました。久しぶりに食べた米は、味気なくて大して美味しいとは思いませんでしたね。

その後は眠気との戦いで、夜は寝付きにくく、夜中に目が覚めたりしました。

Re: No title

ミスターT さん

コメント頂き有難うございます。

糖質制限はとにかくやってみないことには効果はわかりませんし、

やったとしても理論を自分の頭で理解していないと続きません。

変われる心を持っている人達と一緒に変わっていきたいですね。

ありがた迷惑な人

たがしゅう先生、こんにちは。
レスポンスありがとうございます。

世の中にはありがた迷惑な人がいるもので、私がご飯を食べないようにしているというと新聞記事の切り抜きをもってきて

ここにそういう食事は良くないと書いてあるから米は食べたほうがいい

と説得するのですね。その人はドクターでもないし医学のバックグラウンドもありません。

他の人は自分友人は糖尿病になって30年以上経つけど入院するときはご飯たっぷり食べるし今でもインスリン注射を打っているからあなたもインスリン注射をやめないでご飯を食べて注射を打ち続けていたらいいのではないか・・・

が最近いわれたことですね。

まあ自分の体は自分がケアーしなければならないので聞いているフリだけにしています。

こういうありがた迷惑な人たちも思い込みを助長しているのではないかと思っています。

今までの食習慣を変えるということ

20代の頃、晩御飯の時にビールは絶対欠かせないものでしたが
結婚して夫が全く飲めないこともあり、
ビールをやめてご飯をしっかり食べるようにしたのですが全く満腹感が得られませんでした。
胃にビール分のスペースがあってそこがまだ空いてるような感じでしょうか。
それに慣れるまでにそこそこ時間がかかったように思います。

たぶん糖質制限を実行できている方にすれば米飯を抜いた分おかずを食べればいいと思うかもしれないですが、事はそんなに単純ではないと思います。

Re: ありがた迷惑な人

クロワッサン さん

 引き続きコメント頂き有難うございます.

 糖質制限実践者は現時点でマイノリティですから,社会生活の中ではなかなか苦労することはありますよね.ありがた迷惑な話,私にもあります.

 2013年11月11日(月)の本ブログ記事
 「疲れたときには甘いもの?」http://tagashuu.blog.fc2.com/blog-entry-84.html
 もご参照下さい.

Re: 今までの食習慣を変えるということ

きくりん さん

 コメント頂き有難うございます.

> ビールをやめてご飯をしっかり食べるようにしたのですが全く満腹感が得られませんでした。
> 胃にビール分のスペースがあってそこがまだ空いてるような感じでしょうか。
> それに慣れるまでにそこそこ時間がかかったように思います。


 それは依存症の特徴に理由があります.

 ニコチン依存にしても,覚せい剤依存にしても,炭水化物依存にしても,離脱する際には依存物質の強烈な欲求が襲ってきますが,それぞれの依存物質でなければ欲求が満たされないのです.

 ニコチン,覚せい剤には代替物質がないため,より依存症からの離脱が困難ですが,

 炭水化物の場合は,ほかのおいしい食べ物(肉,卵,チーズなど)がありますので,それらに比べて離脱は楽です.時間が経てば炭水化物への欲求は着実に弱まっていきます.

 そこを理解していないと「ほらやっぱり炭水化物を食べないと満腹感もないし,力も出ないじゃないか」と言って,また悪循環へ逆戻りすることになってしまうのではないかと思います.

たがしゅう先生、はじめまして

私は食事後の眠気が酷く眠らずにいられない体質です。
健康のためにと3食食べようものなら一日12時間以上眠る自信があります。
無理に起きて居ても思考が鈍り、常に頭がボーッとしてしまう状態です。
そのせいで今までにいくつもの仕事を辞めざるを得ませんでした。

眠らない対策として今は朝~夕方まで牛乳だけ、夜のみ食事を摂る、というスタイルに変えてから、ようやく人並みの生活が出来るようになりました。
人から見ると不健康な生活と思いますが、体調が非常に良く仕事も捗ります。

このような経験から最近になって「健康のための糖質制限食」を知りました。
もしかして私の食後の眠気は糖質が原因なのでは・・・?と思うのです。
牛乳の飲み過ぎもどうかと思うので、少しずつ糖質制限食に切り替えてみようかなと思います。

このブログは他に面白い事が色々掛かれているので更新を楽しみにしています。

Re: たがしゅう先生、はじめまして

すず さん

 はじめまして。コメントを頂き有難うございます。

 また貴重な体験を教えて頂き有難うございます。

 糖質制限を指導しているとわかりますが、糖質の害の現れ方は人それぞれ本当にさまざまです。すずさんの場合は食後の眠気が顕著に出てしまう体質なのでしょうね。

> このブログは他に面白い事が色々掛かれているので更新を楽しみにしています。

 そう言って頂くとモチベーションが上がります。有難うございます。

 今後もマイペースで続けていきたいと思います。
プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
漢方好きの神経内科医です。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

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