サイアミディン

中医学と薬の効き方

久しぶりに風邪を引き、のどのいがらっぽさから始まった症状が、

漢方を用いても治まらず、咽頭痛、咳へと進展し、周りの人に心配されてしまう状態にまでこじれてしまったので、

糖質制限関連で知り合うことができて漢方にもお詳しい先生である鹿児島県鈴木内科クリニックの鈴木功先生に私の風邪を診てもらうことにしました。

正確に言うと鈴木先生は漢方よりも歴史の古い本場の中医学に精通しておられる先生です。

漢方は中国のものと誤解されている方もいるかもしれませんが、実は漢方とは中国の伝統医学が日本に伝わりその後国内で独自の発展を遂げてきた診療体系です。

鎖国の時代にオランダ医学(蘭方)が入ってきたタイミングで、それと区別するために漢の国の医学で「漢方」と名付けられました。

実は中医学と漢方とは似て非なるものです。
漢方は古来から用いられてきた「葛根湯」「小柴胡湯」「補中益気湯」など100種類以上存在する受け継がれてきた定番処方を、

問診、表情や舌などの望診、脈、腹部の触診など独特の診療方法で最も適切な処方を選び、患者さんの症状を快方へ向かわせる方法ですが、

中医学は「弁証論治」と言って、その患者さんの状態をとにかく細かく問診して、

問診の答えを論理的に分析して、その患者さんの状態を評価し、その結果に応じて漢方薬を構成する生薬の一つひとつを自分で選び、

多くは10数種類の生薬をそれぞれ何gずつかまでを自分で考えて決め、患者さんに対するオーダーメイドの生薬の集合体を袋にまとめてそれを煎じ薬として処方し治療する方法です。

このように文章で説明するとわかりにくいかもしれませんが、

鈴木先生は漢方と中医学の違いを次のようにわかりやすく例えて説明して下さいました。

「洋服に例えれば漢方薬はデパートで売られている既製品のようなもので、中医学は自分でオーダーメイドの服を作るようなもの。

寒い時にとりあえず既製品を着て、袖が余ったりするかもしれないけど一応寒さはしのぐことができる。しかしその人にとって最適な服かと問われたらそういうわけではない。中医学は袖も機能性もその人に合わせているようなもの」だそうです。

妥協を許さない鈴木先生、最初は漢方を勉強していましたが、それだとどこまで言ってもちゃんと治せないという事を悟られて、

それで中医学を本格的に学ぶ道を進まれたのだそうです。

ただ鈴木先生に言わせれば、中医学であっても結局病気は治せないのだそうで、

最終的にはシンプルに食事を中心とした生活習慣を改善しなければよくならないというお考えに行き着いておられます。

なるほどと私は大変参考になりました。

そんな鈴木先生の中医学処方を体験するまたとないチャンスだと思ったので、

私は鈴木先生に御無理を言って私を患者として診て頂くことにしたわけです。


鈴木先生が私に出して下さったのは、風邪における定番処方で12種類の生薬から構成されるものに加減を加えたものです。

一袋にまとめて入ったその薬を煎じて飲むように指導を受けました。

皆さん、煎じ薬って飲んだことありますか?実は私は漢方医でありながら自分で飲むのは今回が初めてでした。

私がもらった処方の場合、まず800~1000mlの水を鍋に入れて、その生薬のまとまった袋を水の中に入れて火をかけます。

吹きこぼれに注意しつつ蓋をずらしめに乗せて、沸騰したらとろ火に弱め30分程煮込みます。

それが終わったら袋を取り出して鍋に残った出汁のような茶色い液体を飲用容器に移し、2~3時間毎に適宜飲んでいくというものです。

味は苦いのですが、痛かったのどの奥に染み込んでいくような体感がありました。

夕方にもらって飲み始め、夜まではちょこちょこ飲んでいて特に変化はなかったのですが、

翌朝大きな咳とともに緑色の痰が絡んでいたのを数回ティッシュで取り出した後、気づけばのどの痛みが軽くなっているようでした。

それまでは痰の出ないいわゆる「空咳(からぜき)」だったので、どうやら咽頭部の炎症が終息し、気管支内での炎症が誘導されたような印象を受けました。

それと同時に正しく漢方薬(生薬)を用いればこんな風に治るのかという事を改めて実感しました。

つまり一般的な総合漢方薬のように治癒反応をブロックするのではなく、治癒反応を促進させるような治り方です。

今回の経験を経て、俄然、中医学への興味が深まってきました。

鈴木先生は中医学だって病気は治せないと言いますが、

一時的だとしてもより患者さんの症状をより的確に和らげることができるというのであれば学ぶ価値は大いにあります。

まだまだ新しく勉強しないといけないことは多いものだと、世界の広さをしみじみと痛感しています。


たがしゅう
関連記事

コメントの投稿

非公開コメント

オートクチュールの素晴らしさ

おはようございます。

快方に向かわれて本当に良かったです!

市販の漢方薬は既製品、その通りと思いました。ですが、その昔、アレルギーが酷かった時、オーダーメイドの漢方薬を調合してもらい、専用の土鍋まで使って煎じ薬を飲みましたが、殆ど改善しないばかりか、酷い下痢になったりと、散々だった思い出があります。先生のブログを読み、確かな腕を持つオートクチュールお医者様に診ていただく必要性があると思いました。

患者が自分自身なら、自分で逐一症状の変化も診られる訳で、不養生もたまにはアリです!

今後、益々鹿児島が熱くなりますね。期待しております。

Re: オートクチュールの素晴らしさ

マロン さん

 コメント頂き有難うございます。

 オートクチュール医になるにはそれなりの腕が必要なので、頑張って勉強しなければならないと思っています。
 そういう意味で中医学と糖質制限に精通した先生に出会えたことは幸運なことです。

 まずは風邪をしっかりと治して、次のステージに進んでいきたいと思います。

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

Re: 質問です

> <咽頭部の炎症が収束し、気管支内の炎症が誘導されたような感じ>とありましたが、どういうことなのでしょうか?炎症がより奥に行ったのに、改善された??ということですか?素人なのでなぜそれが改善なのか、いまひとつわかりません。少し解説をお願いします。

 御質問頂き有難うございます。

 俗に言う「風邪をこじらせる」とは鼻、鼻腔、咽頭辺りの「上気道」に起こった炎症が、
 何らかの原因でうまく終息させきることができずに、気管支、肺といった「下気道」の方まで炎症が波及してしまった状況を指します。
 東洋医学ではこれを「病邪が表から裏に入った」と表現します。

 今回の私の風邪は咽頭痛と咳が症状の主体だったので、まさに病邪が表から裏に入りつつある状況で、上気道と下気道の双方に炎症が起こっている状況と言えます。
 おそらく上気道の炎症はもう少しで治まりそうで、下気道の炎症はまだアクティブな状況だったのではないかと思います。
 そのような状況で煎じ薬を飲むことによって炎症の効率性を高めれば、上気道は炎症の終息、下気道は炎症の速やかな誘導ということにつながっている可能性があります。

 ですから煎じ薬のせいで炎症が奥に入ったのではなく、もともと手前と奥の両方にあった炎症のスピードを効率化したということです。
 

奥が深いのですね

こんにちは

快復に向かわれた様で良かったですね!
でもまずびっくりしたのは、煎じ薬を
「漢方医でありながら自分で飲むのは今回が初めて」との事・・

それにしても奥が深そうな中医学、その素晴らしさを実感された事は
怪我の功名?と言ってもいいでしょうか^^?

でもそれ程までの医学が、ほとんど知られていのは残念な気がします

Re: 奥が深いのですね

みい さん

 コメント頂き有難うございます。

> でもまずびっくりしたのは、煎じ薬を
> 「漢方医でありながら自分で飲むのは今回が初めて」との事・・


 勿論、各漢方薬メーカーが出している袋に入ったエキス漢方薬は飲んではいるわけですが、
 煎じ薬は難しくて正直なかなか手が出せずにいる分野でした。
 でも私と同じように感じている漢方医の先生は結構いるのではないかと推測します。

 今回自分が煎じ薬を経験してみて、難しかろうとも学ぶべき価値がある事を実感した次第です。

No title

症状が楽になられたとのこと、良かったですね!

私はMS以外にITPも併発していました。
断薬して様々な療法で体調を整えていたのですが、血小板数値がなかなか回復せず約二十年。
ダメモトで評判の良い漢方薬局に行き診断(問診、脈診、舌診)を受け、私専用の漢方生薬を処方していただきました。
3ヶ月の服用で、3万〜5万の血小板が15万までに回復。
様子をみながら少しずつ薬を減らしていきました。現在は薬を飲まなくても血小板数値は正常範囲内です。
漢方の先生は「あなたは化学薬品を飲んでいなかったから効果が早く現れた」と言ってました。

漢方薬も中医学を元に、『証』を正しく診断し、微妙な匙加減で処方してくださる先生と出会えると、驚くような効果がありますね。



Re: No title

黒猫ババ さん

コメント頂き有難うございます。

> 3ヶ月の服用で、3万〜5万の血小板が15万までに回復。
> 様子をみながら少しずつ薬を減らしていきました。現在は薬を飲まなくても血小板数値は正常範囲内です。


血小板数を見るのは西洋医学的解析なのに、
それに対処できるのが西洋医学的アプローチではなく、東洋医学的アプローチだという点が興味深いです。
また断薬だけではそこまで持っていけなかったという点にも注目です。
低下しきった自己治癒力を呼び覚ますには、マイナスの発想だけではなく、また歯車が回り始めるように一時的に適切なプラスを加えなければならないこともある、というメッセージを教えて頂いているように思います。
プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
漢方好きの神経内科医です。
南鹿児島さくら病院に勤務しています(下段にリンクあり)。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
これまでの訪問者数
FC2アフィリエイト
メールフォーム
フリーエリア
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR