サイアミディン

糖質制限は糖新生を亢進させない

糖質制限を長く続けていると糖新生が亢進し続けるのでよくないという批判も聞きます。

糖新生というのは非常時のバックアップシステムなので、それを常時運転させることは代謝を歪め身体に負担をかけ続けているという主張です。

これに対する私の見解は「糖新生持続状態は必ずしも糖新生亢進状態とは限らない」です。

糖新生亢進状態というのは、私流に言えば糖新生機能のオーバーヒート(過剰適応)となりますが、

それが起こるのはどんな時かという事を考えれば見えてくるものがあります。

例えば、長く糖尿病を患っている人の中に、きっちり糖質制限をしていても糖新生が亢進しているために、空腹時血糖値が200-300mg/dLを呈する方がたまにおられます。
あるいは有名な暁現象はインスリンの作用不足を背景に夜間糖新生を駆動させる成長ホルモンの働きが抑えきれないために早朝高血糖をきたす病態です。これも一種の糖新生亢進状態です。

この場合は糖質制限に加えて、糖新生抑制作用のあるメトホルミンという薬を夕と眠前に内服するというやり方があります。

このように糖新生による血糖調整がオーバーヒートしてもはや自力では元に戻せなくなっている状況が「糖新生亢進」状態だと言えると思います。

では糖質制限を続けていたら、そのような糖質制限状態になるのかと言えばならないと私は思います。

なぜならば糖尿病の罹病期間が長い人、すなわち糖質頻回過剰摂取の歴が長い人が糖新生亢進状態になっているからです。

一方で糖質制限実践中に認められる糖新生の持続は平常運転状態だと思います。

そもそも糖新生は低インスリン状態では亢進し、高インスリン状態で抑制されるという特徴がありますが、

その丁度真ん中の状態が恒常性維持(ホメオスターシス)においてちょうど真ん中の安定した状態だと言えると思います。

哺乳類の血糖値の平均は100mg/dLですから、血糖値がその前後にうまく調整されている状況であれば、

糖質制限実践の有無にかかわらず、その時の糖新生は亢進ではなく、ちょうどいい感じに駆動されている状況と言えるのではないでしょうか。

一歩譲って、糖新生が亢進しているおかげで100mg/dLになっている可能性もあると言われれば、その可能性もゼロではありませんが、

糖質頻回過剰摂取を繰り返した罹病期間の長い糖尿病患者さんが糖新生亢進状態になってきた理由として、

何度も何度も糖質摂取に伴うインスリン分泌を繰り返しているうちに、

インスリン抵抗性が生じて血糖を取り込めなくなる過剰適応パターンか、インスリン分泌刺激し過ぎてβ細胞死によりインスリンが枯渇する消耗疲弊パターンを呈することで、

実質的なインスリン作用不足のために糖新生が亢進しているのだとすれば、

必要最小限のインスリン分泌しか刺激せず、インスリン過量によるインスリン抵抗性を起こしにくい糖質制限が、

糖新生亢進状態を作っているとは私には到底思えません。

糖質制限中のタンパク質摂取でもインスリンは刺激するではないかという反論もあるかもしれませんが、

少なくとも糖質摂取よりタンパク質摂取の方がインスリン分泌刺激能は低いわけですから、

その意味でも糖質摂取状態より糖質制限状態の方が利があるという事になります。

同じ糖新生持続状態を平常運転と捉えるのか、過剰亢進と捉えるのかで大違いです。

目に見えない問題であるが故にその人の解釈次第となってしまう側面はあるかもしれません。

しかし私は、こういう見えないところも含めてヒトの体を把握しようという時に「体調」というバロメータは大変参考になると思っています。

つまり体調がよいのであれば、その糖新生持続状態はきっと平常運転なのだろう、ということです。

もっと言えば、普段から糖新生を駆動させ慣れていれば、急に糖新生需要が高まるような時に対応しやすいですが、

平素は糖質頻回過剰摂取で糖新生を不使用の状態で日中を過ごし、夜就寝以降の食べられない時間は一転して糖新生使用状態へと代謝の急ハンドルを切るような生活、

そういう事を繰り返しているうちに肝臓に負担がかかったり、代謝の急ハンドルを切るせいで一時的な糖新生亢進状態が惹起されるようになり、

そうこうしていたら膵臓の方が疲弊してインスリン分泌が低下したり、肥満によるインスリン抵抗性が高まってきたりして、いよいよ糖新生が持続亢進させられてしまう事態へと変わっていってしまうのかもしれません。

これは糖質摂取状態から断食をするのは危険だけれど、糖質制限状態から断食するのは代謝変更の幅が少ないために安全だという考え方に通じるものがあります。

ともあれ、見えないものを考える時には、「体調」が良い目安になってくれると私は思います。


たがしゅう
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非公開コメント

いつも先生のブログ楽しみに読んでいます。

最近糖質制限について、一部の医師からの批判的なメッセージを耳にするようになりました。真逆の意見に戸惑う方も多いと思います。

私も耐糖能異常から糖質制限を始めて5年になりますが、たまの糖質摂取で血糖値スパイクを起こします。ですが、糖質を食べなければ問題ないので気にしておりません。また、空腹時血糖値も大体100前後で、ひょっとして糖新生亢進?と思っていましたが、全く心配ないんだと、安心しました。万が一ですが、この空腹時血糖値が上がって来た時の対処法はございますか?

勿論、いまのところ体調も良いし、欠食しても元気だし、これからも安心して糖質制限していきますが!

Re: タイトルなし

オリオリ さん

コメント頂き有難うございます。

> 万が一ですが、この空腹時血糖値が上がって来た時の対処法はございますか?

その場合は糖質制限が緩んでいるか、ストレスマネジメントができていないか、大きく二つの要因挙げられます。
運動不足で筋量が落ちてインスリン非依存的な血糖処理ができなくなるパターンはこの場合、広い意味での後者に含みます。

いずれにしても生活習慣を見直すきっかけにするとよいと思います。
プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
漢方好きの神経内科医です。
南鹿児島さくら病院にいます。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

南鹿児島さくら病院では職員を随時募集中です。
詳しくはホームページhttp://www.nissyoukai.or.jp/
を御覧になって下さい。
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※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。

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