サイアミディン

やせ体質人の75g果糖負荷試験

果糖負荷試験のデータが1名では心もとないとのことで、

いつも協力してもらっているやせ型体質の私の友人の御厚意に甘えて、

彼にも75g果糖負荷試験を受けて頂くことができました。

私の実験日の翌日に実施したので、果糖による2日後中性脂肪著増事件が発覚する前であったため、

残念ながら今回はあくまでも6時間までの結果という事に留まります。

どなたか果糖負荷試験を行う場合は、最低でも48時間までの中性脂肪の変化を追いかけることをおすすめします。
さて条件は私の時と同じですが、諸事情で開始が10時からとなりました。

10時前に採血して10時に75gに測った果糖を水に溶かして一気飲みしてもらいました。

その後は、30分後、60分後、120分後、180分後、240分後、300分後、360分後にそれぞれ採血し、食前と併せて計8回採血を行いました。

それぞれのタイミングで、血糖、インスリン、C-ペプチド、ケトン体、グルカゴン、中性脂肪、コルチゾールの7項目を測定しました。

実験中の感想を彼に尋ねてみますと、まず10時15分にのどがよく乾くようになり、よくトイレ(小便)に行くようになったとのことです。

また10時30分にはお腹がキュルキュル鳴るようになり、顔がほてり出しました。頭痛はありませんでしたが、気分が悪かったそうです。

12時10分頃よりお腹の痛みが出てきて、下痢はないものの、ガス(おなら)がよく出るようになってきたとのことです。

13時、だいぶ体調は戻ってきたものの、まだ多少ほてる感じが残り、お腹が張ってガスが出るという出来事はしばらく続いたそうです。この時点で口渇はまずまず治まっていました。

そのような感覚を覚えながら16時に実験終了となりました。結果は次の通りです。

実測血糖(mg/dL)  実測3ヒドロキシ酪酸値(μmol/L)
食前      86       82.0
30分後     96      79.3
60分後     95       28.9
120分後    85       31.7
180分後    85       28.0
240分後    82       47.9
300分後    85       211.0
360分後    84       174.0 
(血糖基準値:70~109mg/dL 3-ヒドロキシ酪酸基準値:85μmol/L以下 )

インスリン値(μU/mL)  C-ペプチド値(ng/mL)
食前      8.5       1.71
30分後     32.0      3.23
60分後     18.3      2.95
120分後    15.0       2.34
180分後    10.2       3.01
240分後    3.4       1.15
300分後    6.5       1.41
360分後    2.4       1.01
(インスリン基準値:1.7~10.4μU/mL C-ペプチド基準値:負荷前0.61~2.09ng/mL)

グルカゴン値(pg/mL)  コルチゾール(μg/dL)
食前      158      6.7 
30分後     140      8.4 
60分後     136       9.4
120分後    155       13.8
180分後    149       8.8
240分後    159       4.5
300分後    139       3.0
360分後    150       2.5
(グルカゴン基準値:70~174pg/mL コルチゾール基準値:3.7~19.4μg/dL)

中性脂肪値(mg/dL)
食前    82
30分後    87
60分後    82
120分後    85
180分後    92
240分後    114
300分後    129
360分後    138
(中性脂肪基準値:30~149mg/dL)


興味深いことに、肥満体質の私のブドウ糖負荷と果糖負荷の違いとは大分変わった様相を呈しています。

まず、彼の75gブドウ糖負荷試験の時には認められていた機能性低血糖症の現象は、

症状的には似たようなトラブルがありましたが、少なくとも血糖値という形では現れませんでした。

また私の時はブドウ糖でも、果糖でも似たような血糖上昇幅を示しましたが、

彼の場合は75gブドウ糖負荷の時はベースとピークの差で66mg/dL(=155-89)あったのが、

75g果糖負荷だとわずか10mg/dL(=96-86)しかありません。この辺り、「果糖は血糖値を上げない糖」というセオリーは彼において当てはまっているようです。

インスリン分泌は少し刺激され、グルカゴンは少し低下していますが、いずれもブドウ糖負荷の時ほどの変化ではありません。

それから肥満体質の私の時はインスリン分泌のピークが60分前後に位置し、ブドウ糖負荷時のピークの30分前後よりも遅れる傾向が見られましたが、

やせ体質の彼の場合は、ブドウ糖負荷でも果糖負荷でもインスリン分泌のピークは30分前後にあるという違いもあります。

さらにインスリンの分泌され具合が弱いためか、ケトン体抑制効果もブドウ糖負荷の時に比べて緩い印象です。

コルチゾールに関してはなぜか早い段階で一旦上昇を示しますが、その後すぐに下がりそのまま下がりすぎるという推移を示しています。

ちょうどお腹の痛みやほてり、ガスと闘っている時にコルチゾール分泌が刺激され、症状の改善とともにコルチゾールが低下するという推移を示しているように見えます。

果糖がストレスを和らげる効果があるのかどうかと言われたら解釈は難しいように思います。

ストレスを和らげていると言えばそうかもしれませんが、

果糖摂取によって新たなストレスを作っているという見方もできなくもありません。

まるでタバコを吸ってストレスが和らいでいると言いながら、タバコ依存で新たなストレスを生じているのと同じような構造になっているようにも思えます。


以上の数値だけを見れば、彼にとってはブドウ糖より果糖はデータを乱さないという事は言えるのかもしれませんが、

それはあくまでも6時間以内の話です。惜しむらくは彼の2日後の中性脂肪の値を確認できなかったことですが、今後の課題だと思います。

ただ少なくとも、私も彼も、自覚症状的には果糖は決して安全な糖ではなかったと言えると思います。

下痢やトイレの回数が増えたことがその事を物語っています。血糖値などではわからない未検出の項目の異常は、

私達が把握できていないだけで、もしかしたらひっそりと存在していたのかもしれません。

皆様は今回の結果、どうお感じになられますでしょうか。


たがしゅう
関連記事

コメントの投稿

非公開コメント

おはようございます。
たがしゅう先生の今日の更新を見てうーんと考えてしまいました。
先日ありのままでと肥満の悩みに対して前向きな姿勢をたがしゅう先生が示されたばかりで恐縮なんですが一素人の疑問コメントして読んでくださればと思います。
やはり今回の実験は素人考えながら脂肪が原因かなと思います。肥満で大量の果糖を摂ると体にとても影響を及ぼすように思います。




Re: タイトルなし

Carmen さん

 コメント頂き有難うございます。

> やはり今回の実験は素人考えながら脂肪が原因かなと思います。

 それは私の中性脂肪が2日後に著増した点についての話でしょうか?
 それとも本記事のやせ体質人の中性脂肪上昇の点についての話でしょうか?

 前者であれば脂肪もたっぷり含まれる卵を10個食べた私の中性脂肪が下がった点は説明がつきませんし、
 後者であれば摂取したのは確実に果糖75gのみであり、実は脂肪を摂取していたということなどは断じてありません。

負荷後のおなかの状態変化

興味深い記事を読むことができ感謝いたします。ありがとうございました。

たがしゅう先生とボランティアの方の果糖負荷試験時のおなかの調子の変化ですが、先日読んだ論文の概要に書かれていたような変化が現れるのかと勉強になりました。

たがしゅう先生は水様便、ボランティアの方は放屁増加された現象は、摂取した多量の果糖が小腸上皮では処理できずに大腸にいたり、腸内細菌が異常発酵してdysbiosisの状態になったのだろうと考えています。

それぞれの変化が異なったのは、負荷する前の腸内細菌叢の構成がそれぞれ異なったためだろうと想像しています。たとえばお酒を飲んで、おなかを壊しやすい人と、そうでない人と似たような違いだと考えています。

卵10個負荷試験のコメントにあったシミズ先生のエピソードも、自覚症状が出るまでのタイムラグを考えると、いつもより多めに食べたフルーツの果糖が小腸上皮で処理しきれず、やがて大腸に到達して異常発酵したと考えると合点がいきそうに思えます。



【参照文献&webサイト】

“果糖の代謝すらわかっていなかった(2月6日号Cell Metabolism掲載論文).” AASJ. 2018-02-18. http://aasj.jp/news/watch/8072

Jang et al, “The small intestine converts dietary fructose into glucose and organic acid.” Cell Metabolism. 27(2): 351-361, 2018. https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1550413117307295?via%3Dihub


No title

いつも興味深い記事をありがとうございます。

先生、先生のご友人の方、
身体を張った人体実験お疲れ様です。

「やせ体質人の75g果糖負荷試験」については、
血糖を上げず、中性脂肪上昇。
教科書通りという感じですね。

「果糖」で思い出しました。中野瑞樹氏です。
フルーツを食べ続けて8年経過、すこぶる健康だそうです。
型破りな食生活の中で、
中野氏はアミノ酸を作り出す腸内細菌を、
得る(偶然?!必然?!)ようになったらしいのです。
「食べない人達」も含めて、
腸内細菌の影響は想像以上だと思います。

パンダ、コアラも彼らに合った腸内細菌と、
偶然(?!)共生できたからこそ、彼らの今があります。

先生と、ご友人の方の結果の違いも、
実は、腸内細菌が大きく影響しているのではと、
思えてきます。

食生活が腸内細菌を変えるかもしれないし、
腸内細菌が脳内ホルモンのような物を作り、
ヒトの食生活をコントロールしているのかもしれないです。
人体は、宿主(ヒト)と細菌の共用物だと思えてきます。

Re: 負荷後のおなかの状態変化

ねずみ さん

 コメント及び情報を頂き有難うございます。

 果糖の代謝は思いのほかわかっていない事は多かったのですね。
 しかし非常に参考になる情報です。

 御提示のサイトには「果糖はすぐに肝臓に行って代謝されるというこれまでの通説は間違いだった」とのコメントがありますが、実際には小腸で処理できない程の果糖が押し寄せた時に腸肝循環を通じて果糖が肝臓へ行くと、言ってみれば果糖が肝臓へ到達するのは非常事態だったということなのでしょうね。

 そして大腸内の腸内細菌が異常発酵したからこそ、水様下痢や放屁につながったという話も非常に説得力があります。おかげさまで果糖というものが身体に入った時の大きな流れが見えてきたように思います。どうも有難うございます。

Re: No title

Etsuko さん

 コメント頂き有難うございます。

> 「果糖」で思い出しました。中野瑞樹氏です。
> フルーツを食べ続けて8年経過、すこぶる健康だそうです。


 フルータリアンの中野先生ですね。ブログの情報を読んだことがあります。
 最初はナッツなどの種実類も可としていたのを段階的に本当に果物だけの状態に変えていかれたようですね。

 上記ねずみさんから頂いた情報を踏まえますと、もしも腸内細菌が果糖利用菌で発酵で短鎖脂肪酸などを産生することができればフルーツだけ食べても代謝を維持する事は理論上可能と言えるかもしれません。
 しかし青汁一杯に適応した森美智代さんと同様、そうなるのはかなりの離れ業のように私には思えます。

 2015年2月12日(木)の本ブログ記事
 「腸内細菌を入れ替えるのは至難の業」
 http://tagashuu.blog.fc2.com/blog-entry-573.html
 も御参照下さい。

No title

たがしゅう先生

果糖の代謝について、ねずみさんの論文と同じものを考察されているサイトがあります。
『2月18日:果糖の代謝すらわかっていなかった(2月6日号Cell Metabolism掲載論文)』
http://aasj.jp/news/watch/8072

「これまで考えられていたように果糖は腸管で吸収後すぐに肝臓に送られ代謝されるではなく、一定の量であればほぼ全てが小腸で、小腸特異的な方法で代謝される」とのことです。
これはマウスでの実験結果になりますが、たがしゅう先生とご友人の人体実験を拝見しましても、これに合致するように思えますね。

水様下痢は浸透圧性のものと思いますが、糖質制限で脂質・タンパク質に適した腸内細菌叢である場合は、大量の糖質を処理しきれないのも頷けますし、ご友人の場合は緩い糖質制限とのことで何とか処理可能だったのでしょうか。

因みに私も若いころですが、食後に腹痛・下痢となることが多々ありましたが、その際はほぼ間違いなく食後に甘いデザートを食べていましたので、砂糖や果物の果糖によるものだったのでしょう。
吸収されずに排出された(ラッキー)と思ったりしていましたが、そうではなかったようです。。。


たがしゅう先生の結果で、2日後でも異常な中性脂肪値だったことをどう考えればよいのか悩んでいます。
摂取した果糖水溶液の多くは小腸では吸収されずに大腸へ到達しているものとは思いますが、吸収されてしまった果糖は(血中に放出されることは殆どないとのことですと)全て肝臓に一旦貯蔵されたということなのでしょうか(2日後にまで影響するほどの量って!?)。
となるとこれがNASHの主原因なのかも!?


最近少し気が緩み気味で、夜に甘いものを少々つまむ癖がついてしまっています。
朝の目覚めがあまり良くないので、もしかしたら肝臓に果糖がキープされているのかも知れませんね。。。

Re: No title

福助 さん

 コメント及び情報を頂き有難うございます。

> 吸収されずに排出された(ラッキー)と思ったりしていましたが、そうではなかったようです。。。

 そうなのです。
 ねずみさんの考察を踏まえれば、実験中の下痢や放屁は小腸でさんざん果糖が吸収され尽くされた末に、まだ余る果糖が大腸に到達して腸内細菌に働きかけて異常発酵をきたした結果の現象だという事になるので、下痢したからラッキーではないのですね。

 果糖が中性脂肪に合成される経路は生化学的に明らかにされているようですが、その反応速度が書かれているわけではありません。本当に2日間かけて中性脂肪が合成され続けているのか、今一度どこかで再現性を確認してみないといけないと思っています。
プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
漢方好きの神経内科医です。
南鹿児島さくら病院にいます。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

南鹿児島さくら病院では職員を随時募集中です。
詳しくはホームページhttp://www.nissyoukai.or.jp/
を御覧になって下さい。
見学申し込みもお気軽にどうぞ。

※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
これまでの訪問者数
FC2アフィリエイト
メールフォーム
フリーエリア
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR