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サイアミディン

自分では気づかない問題点を指摘する

患者が健康管理を主体的に行い、その過程で生じる不調や不安を医療者がサポートする関係性が出来上がったとして、

そのサポートする医療関係者は患者さんにどのようなサービスを提供するべきでしょうか。

最も自分の健康問題について考えやすい立場にいる患者さん自身が主体的に考えて下した判断は基本的には最も尊重されるべきだと思います。

ただ問題はその主観的な判断が客観的に見てバランスを欠いている時です。

例えば、先日の「降圧剤を飲むべき」と主体的に判断しているようなケースで考えてみます。

アンバランスな情報から下された主体的判断に対して、バランスを整えるように情報提供し具体的な提案を提示するのが主体的医療に関わる医療者がなすべきことではないかと思います。
言い換えれば、患者さん自身が気付いていない自身の問題点を、違う角度から見て指摘するという仕事の仕方です。


仮に主体的医療を応援するクリニックを「主体的クリニック」として考えてみましょう。

主体的クリニックは自分の健康管理のため主体的に動く患者さんの決断を応援するクリニックであると公示します。

受診に際しては「自分には今こういう問題点があって、これに対して次のようにしてもらいたいと思っている」という主体的判断を記入してもらいます。

ここまでであれば通常の病院やクリニックと同じ問診に見えますが、

主体的クリニックでは、その問題点や対処行動についての自分なりの理由もできる限り記入してもらいます。

例えば、先ほどの患者さんの例で言えば、

「今自分には血圧が高いという問題があり、それに対して血圧を下げる薬を出してほしいと思っている」という具合です。

ところがそこへさらに「なぜ血圧が高いと思いますか?」「なぜ血圧を下げる薬を出してほしいのですか?」と質問を重ねます。

その結果、「生活習慣が悪いから」「血圧が高いと血管が破れて死んでしまうから」という返答があったとします。

その場合生活習慣が悪いと思う理由などもさらに深く掘り下げつつ、

主体的クリニックの医師はひとしきり情報収集を終えた後に、患者自身が気付いていない問題点を指摘します。

「血圧が高くなること自体は人体の中で必要な働きです。しかし血圧が上がらなくて済むような時にも上がってしまうようにシステムが誤作動を起こしていることが本質的な問題です」

「あなたは漠然と生活習慣が悪いことが血圧が上がる原因だと思っているようですが、誤作動が起こる原因としては大きく二つの問題があります」

「一つは食事によってインスリンという身体に栄養を取り込むホルモンが出過ぎていることです。栄養蓄積の流れがスムーズなうちはいいですが、流れに交通渋滞が生じた場合は血管内に水分や塩分が滞り血管がパンパンになっていきます。」

「適度にインスリンが出ている状況では交通渋滞は起こりませんが、食事の種類によってはしょっちゅうインスリンが出続けることにつながることがあります」

「一番インスリン分泌が多く刺激されるのが糖質、二番目がタンパク質です。従って食事の観点から血圧上昇システムの暴走をふせぐためにはインスリン分泌が自然となる食べ方を心がける必要があります・」

「二つ目の問題はストレスです。ヒトは生きているだけでストレスを感じますが、通常はストレスを感じても身体がうまく適応するように対抗するシステムが働いてくれています。」

「しかしこのストレスが処理しきれないくらい大きくなった時、ストレス処理システムの暴走が起こります。その結果の一つとして血圧が下がり切らないという現象が起こります。」

「ストレスというのは身体と心と両方がありますが、いずれにしてもあなたの生き方に由来するものなので、あなた自身がストレスのマネジメントを身に着ける必要があります。」

「お話を伺う限りでは、あなたの生活の中で特に大きなストレス源としては○○、△△などが考えられます」

「その上であなたの、血圧を下げる薬を出してほしいという希望ですが、本当にそれでよろしいでしょうか。」

「私はあなたの問題点は血圧上昇システムを暴走させる食生活とストレスマネジメント不良にあると考えます。」

「解決策としては、糖質制限、ストレスマネジメント、そして不安であればこちらのより安全な薬(漢方薬など)を一時的に使用しつつ、システムエラーのない身体に戻していく方針を提案します」

「以上のお話を聞いた上で、それでもやはり血圧を下げる薬だけがほしいという場合は御意見を尊重して処方し続けたいと思います。しかし気持ちが変わった場合はいつでもおっしゃって下さい。私はあなたの決断をサポートします。」

このようなやり取りで、情報のバランスを整えることによって

問題の本質を浮き彫りにしていき、患者自身の望ましい主体的判断が行いやすくなる環境を整えていくというのが主体的クリニックの基本的スタンスです。

実際はこうは簡単にはいかないと思いますが、

皆様からの忌憚のない御意見も頂きつつ、

理想を具現化するために着実に思考を積み重ねていきたいと思います。


たがしゅう
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主体性を取り戻す。

たがしゅう先生。
こんにちは。
最近の、小保方さんの記事からずっと主体的なケアを、自分の障害で考えてみました。

私は、複雑性PTSD・うつ・多重嗜癖ですが、

複雑性PTSDの症状に対して、
20数年前頃に、十分な診察をしないままま、「眠れない」「怖い」などの訴えに対してどんどん精神科薬を出して、あっというまに処方薬依存症は作られました。
PTSD自体が、多岐にわたる症状で混乱しているし、日本の精神科医がPTSDに対しての悪化させない(邪魔をしない)サポートの仕方を全くわからずにいた頃だと思います。

PTSDには、薬物は補助的にしか効かなかったし、言ってしまえば、薬物などなんの足しにもならなかったです(当時のわたしには)。使い方が間違っていたのだとも思います。


PTSDは、回復を阻害される障害だと思います。だけど、時間がかかっても、回復はできる。
患者が、主体性を失った状態を客観的に知れない状態にあることを医師に知っていて欲しかったです。

主体的になっていくことが、
回復の証だとも思います。

だからこそ、今何が脳の中で起こってるのかを、客観的に知らせて欲しかったです。
医師には、目先の症状にがんじがらめになり、薬を出しまくり、障害をぐちゃぐちゃにするのではなく、長い回復の過程の、わたし(患者)の今いる場所はどこなのか、どうなりたいのか、どうなりたくて今何をするのかを、一緒に確認してくれる存在であってほしいです。

たがしゅう先生の仰る、主体的な医療は、初めは厳しいあり方のように感じました。でも本当は違うとすぐにわかりました。

患者として、医師として、
「わたし」に備わっている生きる力にきちんと気づいていく、信頼していく、とても人を尊重した関わりなのだと思います。

Re: 主体性を取り戻す。

ちゃら。さん

コメント頂き有難うございます。

誤解を恐れずに言えば、現時点で患者の主体性を重んじる医師はおそらくほとんどいないのではないかと私は感じています。
言い換えれば、ほとんどの医師が自分の正しいと思う型に患者を矯正しようとするスタイルではないか、ということです。
そしてほとんどの患者も身を委ねて身近な医師、あるいは少し調べて自分が良いと思う医師へ自分を矯正してもらうことを望んでいます。

そうした構造が圧倒的に普及するのはその方が楽であるからです。
それが当たり前となってしまった状況から主体性を取り戻すのははっきり言って至難の業です。それでも私はそこに未来はあると思っています。

先富論

いつも本質的な問題提起と考察楽しく拝読させて頂いております。

一気に全ての人が意識改革されて主体的になるなんていうことは恐らくないと思うので、鄧小平さんの先富論ではないですが、気付いた人から先にメリットを享受してゆけば良いのだと思います。さんざん説明しても最後には「良く分からないので先生にお任せします。」という人が今はまだ大半でしょうけど、そういう時は「任されました」という事で、先生の思う、その方にベストと思われる医療を行えば良いと思います。未知のものに自ら飛び込んでいける主体的な人や未知のものを選ぶしか選択肢が残されていない人はそう多くはないと思いますので、現在はまだ未知のモノと認識されている割合の高い糖質制限に関しては、重度糖尿病患者に良く行われている「教育入院」というシステムと同じく「2~3週間のスーパー糖質制限での入院」を基本に据えて展開すると安心して継続し易いようにも思います。特にネット環境の苦手な人が自力で糖質制限食を構成してゆくのは難しいのではないかと予測しますので、そういう人にとってもそういう仕組みがあれば有難いのではないでしょうか。断食寺に大金払って絶食しに行く人達もいる訳ですから「医師の管理でおこなう糖質制限体験(血液検査付き)」なんていうイベントを病院で開催できれば、裾野はもっと広がるようにも思います。主体性の大切さに気付く人は気付きますし、今後増えて行くと思います。未来はたがしゅう先生の理想通りになりますよ。応援しております。

Re: 先富論

m.kurimoto さん

 コメント頂き有難うございます。

> 気付いた人から先にメリットを享受してゆけば良いのだと思います。

 そうですね。応援頂き感謝申し上げます。

 おかげ様で現時点においてもすでに当院で「約2週間でのスーパー糖質制限食での教育入院プログラム」を提供できる体制となりました。しかしそれは基本的には自ら主体的にそれを希望する人に提供する方針としております。
 少しずつでも世の中が変わっていくきっかけを作っていければと思います。
プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
漢方好きの神経内科医です。
南鹿児島さくら病院にいます。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

南鹿児島さくら病院では職員を随時募集中です。
詳しくはホームページhttp://www.nissyoukai.or.jp/
を御覧になって下さい。
見学申し込みもお気軽にどうぞ。

※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。

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