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患者が主体的になりにくい理由

引き続き「主体的医療」で検索した情報を見ていますと、

どこからの出典なのかが調べきれませんでしたが、2009年時点での日本病院会の副会長で、上都賀総合病院名誉院長の大井利夫先生が、

『「患者の権利」に関する体系について(医療機関・医療従事者の立場から)』と題して発表された時の資料を見つけることができました。

この中に「主体的医療」を考える上で大事なポイントがいくつか書かれていましたので、

本日はそれを紹介しつつ、さらに「主体的医療」への考察を深めていきたいと思います。
大井先生はまず患者の立場は弱いということを明示されます。

医療行為の場に登場せざるを得なくなった患者にとって、医療行為を受けることは「非日常」の「好ましくないこと」であって、

しかも医療従事者に比べて弱い立場に立たされる、というのです。

すなわち、患者は構造上すでに「主体的医療」を行いにくい立場に置かれているというのが大井先生の御意見です。

さらに「患者が医療の主体的立場に立ちにくい理由」として次の4点を挙げておられます。

①専門的知識の質と量に差がある。(情報の非対称性)
②医療提供者としての医師への信頼が求められる。
③救いを懇願し、能動-受動モデルになりやすい。
④皆保険制度による自己負担意識の低下がみられる。


これら4点があることで、患者が主体的医療を行いにくい状況にあると言えるのだと思いますが、

それは裏を返せば、この4点の問題を意識して解決策を講じることによって主体的医療が行いやすくなるともいえるのではないかと思います。

一つ一つ検証していきましょう。


まず「情報の非対称性」については、以前も取り上げましたが、

これは極端に言えば詐欺の温床にもつながりうる大事なポイントです。

しかしこの点は、インターネットの普及により医師-患者間での情報量の差は大分小さくなってきたのではないかと思いますが、

それでも患者の受動性が高ければ患者、その情報量の差は埋まらないままとなってしまいます。

ここから学ぶことは、「患者は医師に依存せず自分の病気を考えるための情報を自発的に入手すべし」ということではないでしょうか。

次に「医療提供としての医師への信頼」についてですが、

確かに患者は良い医療を提供してもらうために無条件で医師を信頼しなければならない状況に立たされてしまっていると思います。

医師を信頼せずに疑いのまなざしばかり向けていれば、気を悪くした医師に本来提供されるべき医療を施されなくなってしまうと困るのは患者自身でしょうから。

しかし、それはあくまでも「医師が病気を治す」という前提に立てば、の話です。

「患者が病気を治す」という主体的医療の視点に立てば、自分が信頼できない医師は正直に信頼しない意思表示をしても、

別の信頼できる医師を探すという行動をとればいいだけの話となるので、特に困ることはありません。

ここでの教訓は、「医者に病気を治してもらうのではなく、自分が病気を治すという視点に立つべし」ということだと思います。

3つ目の「能動-受動モデルになりやすい」というのも、

2つ目の信頼の話と似ていますが、「医師に助けを求めるよう懇願する」という視点に立つから「能動-受動モデル」へ陥ってしまうのではないでしょうか。

受け身ではなく自らが能動的になることにより、

患者も医師も病気を治すために同じ方向を向いた「能動-能動モデル」を作りだすことができるのではないでしょうか。

ここは「主体的医療」の根幹部分、「能動的であるべし」という姿勢を学ぶことができます。

最後に4つめの「国民皆保険制度から来る自己負担意識の低下」ですが、

これは鋭いところで、国民皆保険制度のおかげでほとんどの国民が比較的安価に一般的医療の恩恵を受けることができるようになった正の側面はありますが、

逆に自分の健康に対して真剣に考える意識を弱めた側面は確かにあるような気がします。

国が認めた医療だから安心という感覚も、受動的な姿勢で医療を身を委ねやすくなる環境作りに一役買っているのではないでしょうか。

ところがもしも国が認めた医療が根本的に間違っていた場合、その安心は突如として不安に変わりはしないでしょうか。

また、もしも保険が効かず、医療にかかるお金をすべて自己負担しなければならない世の中になったとしたら、

どの医療にどれだけのお金を使うべきか、もう少し真剣になって考えることができるのではないでしょうか。

最後に学ぶ教訓は「必ずしも保険診療にこだわらず、自分にとって必要な医療を選ぶべし」です。

「主体的医療」を実現するためのヒントがそこにあるように思います。


たがしゅう
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プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
漢方好きの神経内科医です。
南鹿児島さくら病院にいます。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

南鹿児島さくら病院では職員を随時募集中です。
詳しくはホームページhttp://www.nissyoukai.or.jp/
を御覧になって下さい。
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※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。

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