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サイアミディン

運動が嫌いなら運動しなくてよい

よく食事で改善しない身体のトラブルは運動が足りないからだというアドバイスを耳にします。

過度な運動は酸化ストレス源にもなるので、一概に運動をすることがよいとは言えないという反論もあると思いますが、一旦その反論は置いておいて、

ここではいわゆる適量の運動、具体的には軽く汗ばむ程度のウォーキングやスクワットといった類の運動、について冒頭のアドバイスはどうかということについて考えてみたいと思います。

運動は基本的にエネルギー需要を高めますので、なるほど確かに運動をすれば、滞った代謝をスムーズに駆動することにつながりそうですし、

なかなかやせないという人は脂質をエネルギー基質として利用する代謝が高まり、結果的にやせる方向へ促されることも理論的に正しいでしょう。

しかし問題は運動を心地よいと思っているかどうかです。
ここから先はあくまでも食事とストレスマネジメントがうまくいっていて、代謝がスムーズに流れていることが前提の話ですが、

身体の筋肉活動はその人の生活の中での身体活動に最適化するように適応していくはずです。

デスクワークばかりして長時間同じ姿勢をとり続ける人の筋肉活動は小さくなりがちですし、

そういう人がたまにストレッチなどをすると、筋肉を取り巻く関節や周囲組織の可動性が少なくなっており、いわゆる「身体がかたくなった状態」に気づくのは必然です。

でもそれは「長時間のデスクワーク」という身体活動に身体が適応した結果起こっている現象です。これを「運動不足」と捉えるのは私達の恣意です。

こういう人が突然ダッシュしたら息が切れます。これを人は運動不足と認識しますが、

長時間デスクワークを円滑に行うのに必要な筋力、関節可動域、持久性などを保つように身体が適応してきた結果のこの現象であり、

長時間デスクワーク生活に見合わない身体活動を行えば、急には身体が適応できないのはある意味当然の話なのではないでしょうか。

ここには長年糖質摂取をし続けた身体に、クッションなしでいきなり糖質制限をして体調を崩すというのと共通構造があるように私は思います。


さて、長時間デスクワーク生活に適応した身体に、適量の運動習慣を加えれば、

確かに身体も柔らかくなり、ちょっとのダッシュで息切れすることもなくなるでしょう。

それは「長時間デスクワーク+適量運動」という身体活動に身体が適応しているからです。

ただ、その生活はその人にとって自然な生活なのかどうかという所が大きな問題です。

もしこの人が運動の魅力に魅せられて、誰に言われるでもなく一生この習慣を続けたいと思っているなら、

この人は身体が柔らかい、ちょっとダッシュしても息切れしないという身体能力の恩恵を死ぬまで享受することができるでしょう。

かたやもし誰かに運動を勧められて、自分でもやりたいと言うよりはやらなければならないという義務感から適量運動を始めたとすれば、

それでも運動を続けているうちは「長時間デスクワーク+適量運動」生活になるので、身体が適応し先程と同じメリットを享受することができます。

しかし、目標を達成したと言って運動習慣を弱めれば、また身体はかたくなりダッシュで息切れしやすくなります。なぜならば「長時間デスクワーク+少ない運動」に身体が適応していくからです。

それどころか義務感から運動を行っている場合は、その行為がストレスにさえなることがあります。

ストレスは糖代謝を駆動し、慢性ストレスは代謝の停滞の要因となります。

つまり運動による代謝改善効果を、ストレスによる代謝増悪効果が上回ることが起こりうるということです。

これと全く同じ構造が糖質制限に置き換えても起こり得ます。

自分から是非やりたいと思って行う糖質制限と、やらなければならないから行う糖質制限は、

物理的には同じことをしていたとしても、中身は全く質の異なるものだと言っても過言ではないかもしれません。


そもそも身体がかたくなっているのも、ダッシュで息が切れるのも、

あなたの生活、あなたの生き方に併せて身体が適応してくれた結果なのですから、

身体にしてみれば恨まれる筋合いはありません。むしろ環境適応して効率性を高めてくれたことに感謝されてもよいくらいではないでしょうか。

だからとってつけたような運動習慣を私は望みません。

運動による恩恵を受ける時は生き方そのものが変わった時だと思います。

逆に言えば、今の生活スタイルが変わらないのなら、運動習慣をつけたところでやめたら元通りになるだけです。

特別な運動をしなくても代謝増悪要因がなければ生活に必要な筋肉は維持されるはずだと思います。

それでもどうしても運動にこだわるという人には、

心から楽しんでできているかどうかを自分の胸に問いかけてもらいたいと思います。

楽しんでいれば、ことさら運動を意識しなくとも結果的に運動はできているはずです。

糖質制限もこれと同じ境地になれれば、最も恩恵を受けられるのではないかと私は思います。


たがしゅう
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非公開コメント

ちょっと的外れなコメントですが…

糖質制限にしても
ストレスマネジメントにしても
運動にしても
達成感は取り組む上で大事なことだと思います。

糖質制限で痩せなくとも、体調が良くなった上での実感。そして達成感。
血液検査などの数値の変化での実感。

ストレスマネジメントもそうです。

運動は…

勿論、取り組みたくない方からしたら、それ事態がストレスになりかねません。

だからと云って、運動に心地よさを見出だしている方だけが取り組めば良いとまでは、私は行き着きません。


例えば、私の息子は生れつき低緊張です。
他にも関節が弱かったり、扁平足であったりして、幼い時から毎日のように転んでいました。
咄嗟に手で庇えないことが多く顔から怪我したり。
捻挫は月に二度程が当たり前で、治っては、新たに捻るという日常でした。

整形外科や整骨院等に定期的に通い、
筋力を少しずつつけていき
週に三度程転んでいた我が子が、週に一度位になり。
今は月に一度転ぶかどうかになりました。

我が子が改善していく上で、運動や筋トレ等は心地よさを感じるものではなく、
どちらかと云えば、苦しさやきつさが多い気がします。

けれど、扁平足が改善しストレッチ等で柔軟になり
筋力が少しずつ付いたことにより怪我が激減し
出来ることが増えた達成感によって、それが楽しさや喜びに繋がりました。

外因性の怪我等によりリハビリの為に運動する方も
その取り組みは、心地よいわけでは、ないと思います。

けれど機能が少しでも回復すれば、それらになることが出来る気がします。

過程が例え苦であってもです。

ですから、達成感は様々な取り組みに重要なのではないかと思います。


先生が今回つたえたい趣旨と少しずれたコメントですみません。

Re: ちょっと的外れなコメントですが…

kazukou1508 さん

 コメント頂き有難うございます。

 なるほど。確かに先天要因や外傷リハビリの場合は、私の論理は当てはまりませんね。
 論理のどこに誤りがあったのか、改めて考え直してみたいと思います。

No title

ある程度の筋力と、重力に抵抗していけるような、骨密度。
とっさの時に、体を支えられる関節の柔軟さがなければ、
ちょっとの転倒や、つまずきで、
大腿骨骨折などを起こして、
それこそ、寝たきりの老人が増えていきそうです。

それを防ぐ為に、サルコペニア、フレイルなどという、
カタカナ言葉が出回っていますが、
そういう部分から、少しでも健康寿命の延長を目指していきたいと思うのではないでしょうか。

ですので、座ってばかりでは、だめなんだと思います。

質問があります。

ふと浮かんだ疑問があります。

便宜的に「糖質制限・ストレスマネジメント・ストレスを感じない適度な運動」を「3原則」と名称つけさせていただきます。



現代日本における病の増加が「3原則」の認識不足が要因であるとすれば、アフリカの山奥に暮らす狩猟民族はむしろ「3原則」に則った生活であるように思えます。

原始時代の生活です。

つまり、紛争の絶えない地域や飢餓に苦しむ地域は別として、テレビなどで映し出されるコミュニティーをしっかりと形成し、秩序の保たれた民族などはむしろ健康で長生きなんでしょうか?

とりとめのない質問で恐縮です。

Re: No title

たかはし 先生

 コメント頂き有難うございます。

 糖質頻回過剰摂取やストレス過多が加わる状況では、フレイル、サルコペニアが年齢以上に進行するリスクが高まると思うので
、そのリスクを相殺するために人為的な運動を加えるアプローチは一つだと思います。ただこの場合過剰運動の酸化ストレスリスクとの兼ね合いも考えなければならないので難しいアプローチになります。

 一方で糖質制限、ストレスマネジメントができている状況では特別な運動をしなくても、自分の生活に見合った運動が維持されるのではないかというのが私の考えです。

 それで言えば本当に座ってばかりだと、確かにとっさの動作に耐えうる筋力がなくなってしまうと思いますが、座ってばかりの生活の中でも無意識なものも含めてとっさの踏ん張りを要する生活動作が行われていれば、その筋力が失われることはないのではないかと思っています。

 ただこの辺りもう少し突き詰めて考えていく必要がありそうです。

Re: 質問があります。

だいきち さん

 御質問頂き有難うございます。

> 紛争の絶えない地域や飢餓に苦しむ地域は別として、テレビなどで映し出されるコミュニティーをしっかりと形成し、秩序の保たれた民族などはむしろ健康で長生きなんでしょうか?

 アフリカの奥地など調査の手が入っていないところに関しては未知数ですが、
 一つ参考になるのはこちらの本です。

 『日本の長寿村・短命村―緑黄野菜・海藻・大豆の食習慣が決める 単行本 – 1991/4』

 この時代は現代よりも運動量が多く、集落などのコミュニティ形成も成立しています。
 そういう集団で結果的に糖質が少ない人が長寿村を形成しているというデータですから、ストレスマネジメントの状態まではさすがにわかりませんが、ある程度だいきちさんの類推を支持するのではないかと思います。

最近ジョギングを始めました。
たしかに苦痛ですね。
過去の経験から楽になるのは3ヶ月くらいかかります。汗を流すのは気持ちいいですね。お酒も美味しい。糖質もたべれます。

Re: タイトルなし

hiosi noha さん

 コメント頂き有難うございます。

 ジョギング始めて最初はきつくとも次第に心地よくなって習慣化し、それが自然と生活の一部になっているような人にとっては、そのジョギングという運動は有意義だと思います。

糖質制限者に人為的運動追加は無用

糖質制限をきちんとしていれば、人為的な運動の追加なんて無用だと思います。

根拠は以下によります。

「サルコペニア肥満と言うけれど」
 http://tagashuu.blog.fc2.com/blog-entry-123.html

5年以上前の記事ですが、全く『色褪せてない』と思いました。

もちろん内容を鵜呑みにしたわけではなく、昔の記事なのでもしかしたら変な事が書かれていないかな?と思いながら疑い深く読んだのですが、私が見た限りにおいてはそんなことは有りませんでした。

Re: 糖質制限者に人為的運動追加は無用

名無し さん

 コメント頂き有難うございます。
 御評価頂き恐縮です。

> 「サルコペニア肥満と言うけれど」
>  http://tagashuu.blog.fc2.com/blog-entry-123.html


 私のブロガーとしての初期の頃の文章ですね。
 私自身忘れておりましたが、切り口は違えど同じ視点を持ち続けている事に安堵を覚えるとともに、やはり本質はその辺りにあるという気持ちを新たにした次第です。
プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
漢方好きの神経内科医です。
南鹿児島さくら病院にいます。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

南鹿児島さくら病院では職員を随時募集中です。
詳しくはホームページhttp://www.nissyoukai.or.jp/
を御覧になって下さい。
見学申し込みもお気軽にどうぞ。

※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。

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