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サイアミディン

保留力

本屋でいろいろな本を眺めていると、

「適当力」とか、「多動力」など、「◯◯力」というタイトルの本を時々見かけることがあります。

それで言えば、私は「保留力(ほりゅうりょく)」というものが大事なのではないかと思っています。

つまり「わからないことをわからないままで一旦保留にしておける能力」のことです。

なぜこの能力が大事なのかと言いますと、

この能力が足りないと理由がわからないことに対して不安を生じてしまうからです。
はっきり言って医学にまつわっては、まだ科学で解明できていない事はたくさんあります。

ましてや糖質制限についてで言えば、いかに先駆者の先生方の御尽力があるとはいえ、

はっきりと理由が分からない現象はいろいろと観察されていると思います。

また科学自体の限界もあります。私達が生きている間に全てのことが解明されることは到底期待できないでしょう。

ところが分からないことに不安を感じる人は結論を急ぎます。

そして自分の疑問に答える誰かの意見を耳にした時に、

不安を解消するためにその意見に飛びついて、正しいか正しくないかの検証を行うことを怠ったまま、

結論が下された安心感に浸る傾向があるのではないかと思います。

ところが絶対的に正しい意見というのはそうそう無いものなので、

安心感に浸ったのもつかの間、しばらくすればまた新たな疑問を生じて、それに対する不安にさいなまれます。

そのような不安のスパイラルに巻き込まれないようにするためには「保留力」が重要となってきます。

そして保留の決断を下せるのは自分のみ、つまり主体的行動が必要になってきます。


もう少し具体的に述べてみます。

例えば糖質制限をやってみて、何らかの体調不良が出た人がいるとします。

その人はなぜ糖質制限で体調不良が出たのか理解できません。そのわからない事に対して不安を覚えます。

そんな中、「その体調不良はLow T3症候群が原因です」という人に出会ったとします。

実際はストレスを感じた結果、代謝の需要が高まり、甲状腺機能の亢進が起こり、

それによるシステムのオーバーヒートを避けるために身体がわざわざfree T4という標準的な働きをする甲状腺ホルモンから、

より活性の高いfree T3という甲状腺ホルモンへの変換を抑えている結果、T3がLow(低値)となる適応反応であったとしても、

とにかく自分の体調不良の謎に応えてくれる意見として、相手がもっともな事を言っているような雰囲気を出していれば尚更、

自らの不安を解消できるので、たいした吟味をすることなくそれを信用してしまいやすいのではないかと思います。

そうした意見が妥当なのか否か、自分の頭で検証できるくらい知識や思考が深まっていればベターなのですが、

必ずしも皆が皆、それと戦えるだけの思考力があるとは限りません。

そんな時に大事になってくるのが「保留力」です。

自分が糖質制限で体調が悪くなった理由は分からない。

しかし糖質制限を始めてから体調が悪くなったのだから一旦糖質制限制限をやめておこう(もしくは緩めておこう)。

Low T3症候群とか、体質のせいだとか、色々な理由が言われているけれど、

それはよく分からないので一旦この疑問は保留にしておこう。

保留にしておいて、もしまた知識が深まれば改めて考え直してみよう。

そのようなスタンスで体調が悪くなる行為を避けて、その疑問に結論を出すのは保留にして後からゆっくり考えていけば、

不安のスパイラルから抜けやすいのではないかと思います。


同様に、「理由は分からないけど何故か効く治療」についても私は保留力を発揮します。

例えば鍼やホメオパシーといった治療です。

いずれも何故効くのかが科学的に完全には解明されていない治療ではないかと思いますが、

科学では理由が説明できないから信用できないとすぐに結論づけるのではなく、

まずは効くという事実、それによって恩恵を受けているという事実を大事にします。

その上で、何故効くのかという謎については一旦保留にしておきます。

そうすれば、いずれその謎が解ける日が来るかもしれません。

この場合は不安解消のためというよりも、

自らの秩序を保つために結論を急ぐのかもしれませんが、

ここで保留力を発揮しなければ、可能性を狭めることにつながってしまいます。

つまり保留力とは、自分の人生を健やかに過ごし、

より充実したものへと発展させていく秘訣のようなものだと私は思います。


たがしゅう
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保留力の重要性、大変深く同意します。保留中のストレス対策が弱い自分としては、夏井先生や田頭先生はじめ、少数派の方が長く目指す方向を維持されることに尊敬しております。夏井、江部先生の音楽好きやユーモアもポイントでしょうか。田頭先生のサザン拝聴して楽しかったです。同調圧力の強い今の日本で、保留力の維持方法、とても大事だと再確認しました。

No title

いつも興味深い記事をありがとうございます。

地球、人類も含めた地球上全ての物は、
宇宙で作られた物質(原子)で構成されます。
視野を広げ、宇宙全体で物事を見ると、
人類が誇る「最先端科学」って、
宇宙全体の、約5%の中での話なんですね。

<参考画像>
https://www.google.com/search?q=%E3%83%80%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%83%9E%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%80%80%E3%83%80%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%82%A8%E3%83%8D%E3%83%AB%E3%82%AE%E3%83%BC%E3%80%80%E5%89%B2%E5%90%88&rls=com.microsoft:ja:IE-SearchBox&rlz=1I7ADFA_ja&source=lnms&tbm=isch&sa=X&ved=0ahUKEwjN0p7_-MfbAhVQv5QKHaJKD0EQ_AUICigB&biw=894&bih=499

人類は目に見えて(観測)いないことだらけです。
ダーク(約95%)な部分が分かって初めて、
超常現象、代替医学の効果の原因や、
多くの謎が分かってくるのでしょうね。

>また科学自体の限界もあります。私達が生きている間に全てのことが解明されることは到底期待できないでしょう。

だからこそ「保留力」なのですね。
とても納得できます。

Re: タイトルなし

T さん

コメント頂き有難うございます。

人生に楽しさはスパイスとして必要ですね。
それが笑いであっても、音楽であってもいいと思いますが、苦あれば楽ありの精神を維持するために適切な楽しみを形成する力はあって損はしないと思います。

Re: No title

Etsuko さん

コメント頂き有難うございます。

保留力は自分の精神を安定させる力であり、新たな情報を適切に取り入れる力だと思います。

No title

「保留力」を自らのものとするにはどうすればよいのか?...そう言えば、たがしゅう先生がそのヒントになる記事を以前に書かれていたなと思い検索したら見つかりました。

「複雑な事は知らなくてもいい」
 http://tagashuu.blog.fc2.com/blog-entry-557.html

この記事の肝腎は、

 >>聞いた事もない○○症候群であろうと、病理の組織が読めなかったとしても、
 >>結局は不要な酸化ストレスを減らすようにすれば、
 >>少なくとも害を与える事にはつながりません。

だと思います。
これは大いにヒントになると思います。

手軽な情報取得手段としてのインターネットには様々な情報が玉石混合で散在し、ともすれば惑わされ不安にかられそうになりますが、自分の頭で考え考え考え抜き検証して会得した基盤が有れば、情報を的確に取捨選択することが出来、それが結果的に「保留力」を自らのものとすることになるのではと思います。

ただし、言うまでもありませんが、会得した基盤を常に検証し続けることが必須になりますが...生きるって難しいですね(^_^;)

Re: No title

名無し さん

コメント頂き有難うございます。

そうですね。保留力の高さの背景にはブレない思考の樹の存在があると思います。
そこがしっかりしていれば、様々な情報の取捨選択に応用が効きます。

しかし一方で、御指摘のように、自分の思考の樹が正しいとは限らない可能性も忘れてはいけません。だからこそ必要な保留力だと私は思います。
プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
漢方好きの神経内科医です。
南鹿児島さくら病院にいます。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

南鹿児島さくら病院では職員を随時募集中です。
詳しくはホームページhttp://www.nissyoukai.or.jp/
を御覧になって下さい。
見学申し込みもお気軽にどうぞ。

※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。

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