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サイアミディン

患者が医師に気を遣わない医療

ブログ読者のりんごさんから次のようなコメントを頂きました。りんごさん、有難うございます。

(以下、コメントより引用)

ドクター話が登場するドクターGプラス
https://www.youtube.com/watch?v=-O70A1igZ3Y
(45:45あたりからご覧ください)

患者と医者のいい関係のためには患者さんも少し協力して下さいーーーというメッセージのように思いました。 
愛(あい)しめせ: 医者の話を、相づちをうって聞いて、いいところは褒める、診断は言わない、メモをとる、生活史を語る 
で患者・医者関係はよくなるそうです。
少し納得です。

(引用、ここまで)

以前からNHKで時々放送されていた「総合診療医ドクターG」という番組の新作ですね。

浅草キッドさんが司会でゲストタレント2名のオブザーバーが見守る中、

毎回、名医「ドクターG」と呼ばれる総合診療医の先生を招き、その先生が過去に経験された診断困難症例をドラマ仕立てで紹介し、

そのドラマを見て疑似診察を行うべく全国各地の有名病院から3名の研修医が参加し、その診断名を当てるプロセスに挑む過程を楽しむという番組です。

番組では若干のエンターテインメント性も盛り込まれていますが、

内容は医師の私から見ても本格的で、実際の診断プロセスさながらの高度な議論がドクターGと研修医の間で交わされますので、

医師が観て普通に勉強になる内容の番組です。

この番組、前々から私は非医療関係者の人は果たして楽しめているのだろうかと疑問でしたが、

これだけシリーズが続いていることを考えますと、一般の人にも受け入れられているという証拠なのだろうと思います。

おそらく楽しむポイントは医者がみるところと違うのでしょうけれどね。


さて、りんごさんに御紹介頂いた回でのドクターGは、福井大学医学部付属病院教授の林寛之先生です。

林先生は救急の世界でものすごく有名な先生で、特に研修医の中では絶大な人気のある先生です。

というのも、CareNeTVという医療動画オンデマンド配信サービスで、「Dr.林の笑劇的救急問答」というロングセラーの人気番組に出演されており、

非常にわかりやすくユーモアと愛にあふれる指導方法が人気を集め、全国から林先生の指導を受けたい研修医が殺到している様子が見て取れるからです。

そんな林先生が示された患者へのアドバイス、「上手な医師へのかかり方」、それがDr.林の「あいしめせ」です。

それぞれの頭文字をとって、患者が医者に対して行うべきポイントを挙げています。

あ・・・あいづちをうつ
    (適切なあいづちはコミュニケーションを円滑にする)
い・・・いいところを褒める
   (褒められると医者もその気になる)
し・・・診断を言わない
   (患者から診断を言われると、医者のプライドが傷つけられ関係が悪化する)
め・・・メモをとる
   (記録の意味以外にも真剣な姿勢を見せれば医者はいいかげんなことは言えなくなる)
せ・・・生活史を語る
   (医師の知らない患者の細かい背景がわかれば診断のヒントとなる)

さすが林先生、分かりやすくポイントをまとめておられますし、

「あいしめせ」という言葉自体にも「(医者へ)愛を示しなさい」という意味まで込められていてよくできた言葉です。

確かに現代医療の中でこの5つのポイントを踏まえて病院にかかれば、きっと正しい診断につながりやすいのであろうと思います。

しかし、3つめの「診断を言わない」に関しては正直私は同意できないところです。

というよりも現代医療における医師のプライドが高いからこそ、そのようなアドバイスが成立してしまっているのではないかとさえ思います。

つまり、診断を言うという行為はいわば患者が自分の頭で考えた主体的な行動の現れです。

勿論、それはテレビで見たからそう思ったとか、人から聞いたからそう思ったとか、そう考えた根拠は浅かったりする可能性も十分にありますが、

それでも診断を考えるという行為は、自分の健康を考える上でごく当然の行動であり、

はたまたその患者が今の自分の状態をどのように捉え、どのような判断を下しているのかという思考のクセを知るヒントになる行動です。

間違っているのであれば、それはそれで普通にどこが間違っていてどこが合っているのかを指摘して軌道修正すればいいだけのことです。

「診断を言ったら先生のプライドを傷つけてしまうかもしれない、だからそんなことは言わないでおこう」

そんな風に患者が思わないと良好な患者医師関係が保てなくなるほどに、現代医療は主体的医療がそぐわない状況にあるということの裏返しだと私は考えます。

以前、主体性の程度によって医療の在り方を4つのグループに分類する方法を紹介しましたが、

「診断を言わない」ことが患者の利益となるのは、それがB~Dグループの医師主導の医療であることを示していると思います。

私が推奨する主体的医療では、患者の考えを積極的に語ってもらう患者主導の医療です。

その場においては、自分が考える診断を是非とも言ってもらいたいと思います。

そこから私ならその妥当性を医者の立場から検証し、

患者の正しいアクションへとつながるようにサポートする医療を提供したいです。


たがしゅう
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非公開コメント

患者から診断を言われると、、

ご回答ありがとうございます。ただ、僕の場合は診断を言われたり、この薬を下さい、この検査して下さい、みたいな言い方をされるとムカッとしてしまうことがあります(いつもではありませんが)。プライドが傷つくという訳ではないんですが、言い方をもう少し変えてくれたらいいのにな~と思うことはあります。たとえば、〇〇という病気のことが心配なんだけど、○○という検査があると聞いたんだけど必要でしょうか、〇〇という薬は必要ありませんか、などなどです。林ドクターは「医者のプライドを傷つけないで欲しい」という言い方をされていましたが、そうではなくて「医者は患者さんからのお話をきいて診断を考えるのが仕事だと思っている。その気持ちを配慮してお話しいただきたい。そうすれば、お互い主体性のある医療ができるのではないか」ということだったんだと思います。

改訂版:

それぞれの頭文字をとって患者が医者に対して行うべきポイントを挙げています。

あ・・・あいづちをうつ
い・・・いいところを褒める
し・・・診断をいきなり言わない。○○が心配なんですがとか言って欲しい。
   (患者から診断を言われると、医者が傷つくことがある)
め・・・メモをとる
せ・・・生活史を語る
   (医師の知らない患者の細かい背景がわかれば診断のヒントとなる)

双方向で良好な関係こそが主体的な診療につながると思います。

No title

ドクターGは私(非医療関係者です)も見ていました。臨床経験の量や質の差が有るだろうから当然の事なのかも知れませんが、研修医の余りの頼り無さに、下手に大きな病院に行ったら、こんな医師が相手になるのかな?と大いに不安になったものです。

また、ドクターG役の医師も総合診療医と名乗っておきながら、自分の目で見えた範囲の症状を治療しただけで、めでたしめでたしとしており、これではタコツボ専門医と変わらないではないか?と思ったものです。

いやしくも総合診療医を名乗るのなら、対症療法に終始するのではなく、一歩でも根治療法を目指すべきなのではないかか?と思いました。

ある回で大動脈解離の患者がエンディングの快気祝いか何か?で親類家族と共にカツ丼やカボチャの煮付け等の糖質制限NG食品をばくばく食べているのを見て、あぁこりゃまた再発するんだろうなと呆れ果てました。

総合診療医を名乗るのなら、せめて食事指導くらいはして、再発リスクを最小限にするべきではないのかな?と思いました。

で、結局は番組タイトルで「総合診療医ドクターG」などと大いに啖呵を切っておきながら、中身は単なる「専門医腕自慢大会」ではないのか?としか私には感じられなくなり嫌気がさしシリーズ途中で観るのを止めてしまった記憶が有ります。

今にして何か得られるものが有ったのだろうかと思い返してみましたが、何も有りませんでした。

まぁ、所詮はバラエティー番組ですからね。

(などなどつらつら書いておきながらこんなことを言うのもなんですが、番組に関する記憶がはっきり言って曖昧なのに、一方的に全否定するするような態度は我ながらあまり良いものではないなぁと思いました(^_^;))

Re: 患者から診断を言われると、、

りんご さん

 コメント頂き有難うございます。

> 「医者は患者さんからのお話をきいて診断を考えるのが仕事だと思っている。その気持ちを配慮してお話しいただきたい。そうすれば、お互い主体性のある医療ができるのではないか」ということ
> し・・・診断をいきなり言わない。○○が心配なんですがとか言って欲しい。
>    (患者から診断を言われると、医者が傷つくことがある)


 良いご提案ですね。
 確かに相手の気持ちを慮った行動をとれば、診断を言うにしてもそのような言い方になるはずです。
 
 互いの主体性が存分に発揮されるよう良好な人間関係の下で診療が展開される、そんな主体的医療を目指したいです。

Re: No title

名無し さん

 コメント頂き有難うございます。

> ある回で大動脈解離の患者がエンディングの快気祝いか何か?で親類家族と共にカツ丼やカボチャの煮付け等の糖質制限NG食品をばくばく食べているのを見て、あぁこりゃまた再発するんだろうなと呆れ果てました。

 御指摘の点は非常に重要なポイントです。

 総合診療医は俗に診断のプロフェッショナルと言われます。
 しかし本当に「総合的」に診療するというのなら、診断をつけて対症療法を行って終わり、ではなく根治療法にまでつなげてこその真の「総合診療医」だと私は考えます。

 その点、ほとんど対症療法しか行えない西洋医学のベースだけで医療を展開してしまえば、総合診療医はどこまで行っても対症療しかできず、片手落ちとなってしまうと私は思います。

No title

いつも興味深い記事をありがとうございます。

お医者様も同じ「人間」なんだなと思いました。
「あ・い・し・め・せ」の、「あ・い・し」は
微笑ましくも感じました。

医者と患者という枠を越えて、同じ人間どうし、
良い関係が築けたら、それは素敵な事だと思います。

Re: No title

Etsuko さん

コメント頂き有難うございます。

> 医者と患者という枠を越えて、同じ人間どうし、
> 良い関係が築けたら、それは素敵な事だと思います。


実にその通りだと思います。
「主体的医療」とか難しげな言葉を使いますが、シンプルにはEtsuko さんのおっしゃることが芯をついていると思います。
プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
漢方好きの神経内科医です。
南鹿児島さくら病院にいます。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

南鹿児島さくら病院では職員を随時募集中です。
詳しくはホームページhttp://www.nissyoukai.or.jp/
を御覧になって下さい。
見学申し込みもお気軽にどうぞ。

※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。

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