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サイアミディン

遠慮はいいのか、悪いのか

医師が患者へ満足のいく医療を提供するためには、

「患者がどう考え、何をどうしてほしいと思っているのか」という価値観を知る作業は必要不可欠です。

その作業を抜きにして医師が良いと考える治療を一方的に与える治療では、患者に合うも合わないも運次第ということになりかねません。

だから患者は自分がどう考えていて、何をどうしてほしいと思っているのかを、相手である医師へ意思表示する必要があるわけですが、

現代医療のほとんどがそうであるように、「難しいことはお医者様にお任せ」というような主体性の少ない姿勢で向き合われてしまえば、

たとえどれだけ技術が進んでも、満足のいく医療を受けられる日はやってこないだろうと私は思います。
この時に自分で考えようとする意思を放棄する主体性のなさと同じくらい障壁となっているのが、

「遠慮」という概念ではないかと私は思っています。

日本人には特にこの遠慮が美徳とされ、文化として根付いている側面があるような気がします。

ここでいう遠慮とは、「人に対して、言葉や行動を慎み控えること」のことです。

つまり、「患者である自分が医師である先生に自己主張するなんて恐れおおい」とか、

「忙しい先生の時間を奪ってまで自分のことを語るなんて申し訳ない。聞かれたことだけ答えればいい」などと考え自分の主張を控える行動につながる元となる考え方です。

より端的に言えば、「遠慮は主体性を狭める」と言ってもよいかもしれません。


では遠慮そのものが悪なのかと問われたらおそらく首を縦に振る人はいないのではないでしょうか。

例えば今、本当の意味で遠慮のない人がいたと仮想します。

その人は何事に対しても自分が思うがままにズケズケとものを言います。空気など全く読みません。

ここまではいいかもしれませんが、自分が欲することは何でも行動に移します。

おなかがすいたら誰かを気遣うことなくどこでだって食べるし、商売をしている人のことなど考えずに万引きだってします。

かわいい人がいればお構いなしに突然抱き着くかもしれませんし、仕事だって遠慮なく休みます。

お金がなくなれば誰かから遠慮なく奪うし、腹が立てば正直に怒って喧嘩をする、そんな人を想像するだけで恐ろしくなります。

つまり遠慮があることによって、多数の人で構成されている社会の秩序を保つことに一役買っているということができるのではないかと思います。

そう考えると遠慮の良い側面と悪い側面とが見えてきます。

遠慮とは相手を気遣うことであると同時に自分を守ることでもあります。

遠慮を強め過ぎれば、相手を気遣いすぎるがあまり、保守的で未知の相手からは何も得られない関係性となります。これを「ノン・アサーティブコミュニケーション」といいます。

逆に遠慮を弱め過ぎれば、先ほどのように社会的に秩序のかけらもない傍若無人で攻撃的な人間となり、一方的な人間関係が構築されることとなります。これを「アグレッシブコミュニケーション」といいます。

要はそのどちらでもない、あるいは両方の良いところを取った人間関係が円滑なコミュニケーションを作るということです。

いつの世も人間関係は悩みの元ですが、一方で人生の楽しみも人間関係の中でしか生まれないとアルフレッド・アドラーはいいます

主体性は出す、さりとて遠慮をし過ぎない、そうすることで互いが相手のニーズに答えやすくなる良好なコミュニケーションをとることができるようになるのではないかと思います。

これが「アサーティブコミュニケーション」と呼ばれる手法の本質なのではないでしょうか。

実はこのアサーティブコミュニケーションはずいぶん前に注目していた技術なのですが、ここに来て大きく知識が結合してきたように思います。

主体的医療を展開するためにはアサーティブコミュニケーションができる人間関係を構築することです。

そしてそのための一つの技術として、「遠慮を上手にコントロールすること」が挙げられます。

時には慣れ親しんだ文化から離れてみることも大事なことではないかと私は思います。


たがしゅう

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プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
漢方好きの神経内科医です。
南鹿児島さくら病院にいます。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

南鹿児島さくら病院では職員を随時募集中です。
詳しくはホームページhttp://www.nissyoukai.or.jp/
を御覧になって下さい。
見学申し込みもお気軽にどうぞ。

※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。

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