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サイアミディン

ケトン食の種類

糖質制限と通ずる理論を持つケトン食ですが,

一口にケトン食といってもさまざまな種類があります.

今回はケトン食にどのような種類があるか,その概要をお示しします.

本日の記事は以下の書籍と以下の論文を参考に書かせて頂きます.



Dhamija R, et al. Ketogenic diet. Can J Neurol Sci. 2013 Mar;40(2):158-67.
広義のケトン食というのは以下の4種類を指します.

①古典的ケトン食(炭水化物:脂質:蛋白質=4%:90%:6% (※狭義のケトン食)

②MCTケトン食(炭水化物:LCT(長鎖脂肪酸):MCT(中鎖脂肪酸):蛋白質=20%:10%:60%:10%)

③修正アトキンス食(炭水化物:脂質:蛋白質=10%:65%:25%)

④低グリセミック指数食(炭水化物:脂質:蛋白質=10%:60%:30%)




まず①ですが,1921年にWilderらが難治性てんかんの治療に用いた原法であり,4つの中でもっとも糖質摂取量の制限が厳格となります.

ケトン比という「脂肪:非脂肪(蛋白質+炭水化物)」の値を,3:1~4:1に保つことを目標とします.

原法ではカロリーを必要カロリーの75%程度に抑え,水分摂取も通常の80~90%に抑えるとケトン体が出やすいとされていたそうですが,現在ではカロリー制限と水分制限はケトン体の産生においてそこまで重要視されていないそうです.

ただし,①の場合摂取カロリーがダイレクトにそのまま体重の増減につながることが多いので,体重コントロールが難しい場合はカロリーを調整することもあるそうです.

厳密に食品の糖質量,脂質量,蛋白量を計算して行わなければならないので最も煩雑な方法と言えます.

①の副作用としては,便秘,腎結石,骨粗鬆症,吐き気,嘔吐,元気がなくなるなどの症状や,高コレステロール血症(LDLコレステロールが上昇する),高尿酸血症,代謝性アシドーシスなどの検査所見が報告されています.

さらに食べられる食品の幅にかなり制限がかかるのでビタミンや微量元素の欠乏を伴うことがあります.そのため,①では定期的な血液検査でのモニタリングやサプリメントの摂取が推奨されています.

①は効果は最も高いものの,継続するのが困難であるため,ある程度の効果が得られたら後述する③の修正アトキンス食へ移行していくケースが多いようです.



次に②ですが,脂質の中でよりケトン体を産生しやすいとされるMCT(中鎖脂肪酸,中鎖中性脂肪)を利用した方法です.

中鎖脂肪酸はミトコンドリアにカルニチン(脂質代謝に関与するアミノ酸から生合成されるビタミン様物質)を介さずに入ることができるので,より効率的にケトン産生ができると考えられています.

①よりも糖質の制限が甘くても,①と同等の効果が得られる方法ということで1971年にHuttenlocherによって提唱されましたが,

MCTを増やし過ぎると下痢や嘔吐などの副作用が目立つという欠点もみられます.

またMCTの扱いに習熟した知識を要するため,国内でもなかなか②を指導できる施設がないという欠点もあります.



続いて③ですが,もともとは1970年代にAtkins博士が考案した低炭水化物食によるダイエット(減量)法をケトン食へ応用できるよう修正したものです(※炭水化物=糖質+食物繊維)

継続性を重視しており,いわゆる「緩和ケトン食」として位置づけされています.
もともとのアトキンス減量法では炭水化物の摂取量を1日100g以下にするものでしたが,この③では炭水化物の摂取量を1日10~30gに抑えます.

もう一つの特徴は制限するのは炭水化物のみであり,脂質とタンパク質は全く制限しないことです.簡単であるがゆえに海外では入院を要さず,外来通院で治療が行われています.

現在私が推奨しているケトン食は,この方法です.

副作用としては,①と同じ副作用が起こりえますが,治療中断に至るような重篤な副作用は少ないとされています.


最後に④ですが,1981年にJenkinsらによって提唱されたグリセミック指数という概念を応用した方法です.

グリセミック指数(GI:glycemic index)とは,簡単に言えば「ある食品の血糖値の上がりやすさ」を示した指標です.

同じ炭水化物量でもGIが高ければ急峻に血糖値が上昇し,GIが低ければ緩やかに血糖値が低下するというわけです.

一般的にはケトン体の産生量は少ないですが,血糖の変動幅を少なくすることができるメリットがあり,カナダ,オーストラリアを中心に糖尿病の食事療法として研究が勧められてきました.

日本でも最近注目されている「食べる順番療法」はこの④に近い考え方と思われます.先に食物繊維の多い野菜を食べ,高糖質の炭水化物を後から食べることによって血糖値の吸収を遅らせる,いわゆる「低GI化」をしているわけです.

私が推奨する③が受け入れられない人には一つの選択肢になってこようかと思います.①~③に比べて,より「普通食」らしくなるので患者さんや家族の方へ与える心理的ストレスも少なくて済みます.また副作用もほとんどありません.

ただ裏を返せば効果も乏しいです.それにてんかんの治療としてはどうしても弱くなりますし,各食品のGI値を覚えなければならないデメリットもあります(※炭水化物量や糖質量と違って,食品には表示されていません).


以上の特徴を踏まえた上で,個々の患者さんの事情に応じて臨機応変に食事指導のパターンを微調整しています.


たがしゅう
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keton食について

 新年おめでとうございます。今日まで正月休みの方が多いかもしれませんが、欧米ではクリスマス休暇が終わり、新しい研究論文が次々とnetで公表されています

http://www.hindawi.com/crim/neurological.medicine/2013/809151/
 43歳の治療抵抗性てんかん患者に、通常食にMCTを加えただけで改善した症例です。量を増やすと下痢・鼓腸の副作用が起きています

http://www.seizure-journal.com/article/S1059-1311(13)00339-7/abstract
 23例のケトン食患者、20例の通常食患者を調査してみた。ケトン群では、AIx やβ-index の増加がみられた

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3875914/
 ketogenic Mediterranean diet with phytoextracts (KEMEPHY), 地中海食の有効性を示す文献

  ◇

 今年もはりきって文献調査を続けてまいります

臨床経験の積み重ねが大切ですね

>以上の特徴を踏まえた上で,個々の患者さんの事情に応じて臨機応変に食事指導のパターンを微調整しています.

 糖質オフの素晴らしさを広めるにあたり、各個人の臨床データー(とりわけ糖質制限がうまく行かない人)の解析が必要ですね・・・

Re: keton食について

精神科医師A 先生

いつもお世話になります。

早速の情報を頂き有難うございます。今年も宜しくお願い申し上げます。

Re: 臨床経験の積み重ねが大切ですね

わんわん さん

 コメント頂き有難うございます.

>  糖質オフの素晴らしさを広めるにあたり、各個人の臨床データー(とりわけ糖質制限がうまく行かない人)の解析が必要ですね・・・

 そうですね.地道に臨床経験を積み重ねていきたいと思います.

中鎖脂肪酸ケトン食

私は福田一典先生のサイトを参考に②MCTケトン食(炭水化物:LCT(軽鎖脂肪酸):MCT(中鎖脂肪酸):蛋白質=20%:10%:60%:10%)に近いものにチャレンジしていますが、やはりなかなか難しいですね。
http://www.f-gtc.or.jp/ketogenic-diet.html
ケトスティックスでは2+くらいは出ているのですが、断食の時のような安定感がないようにも思います。食べた状態でケトン体を維持するにはもう少し試行錯誤が必要だと感じています。先生が紹介されたケトン食の基礎から実践までは一度書店で目を通しましたが、なかなかよくまとまっていて良い本だと思いました。ただ値段が高いのがネックですね(笑)先生のブログではケトン食について分かりやすく整理して下さるので大変興味深いです。今後も楽しみにしております。

ケトン食の解説書

ケトン食の本 ―奇跡の食事療法―

http://www.daiichi-shuppan.co.jp/book/book362.html

患者の保護者向けの解説書で、求めやすい価格です

Re: 中鎖脂肪酸ケトン食

carpediem さん

 コメントを頂き有難うございます.

 ①や②のケトン食を実践するにはかなりの修練が必要ですね.

> 先生が紹介されたケトン食の基礎から実践までは一度書店で目を通しましたが、なかなかよくまとまっていて良い本だと思いました。ただ値段が高いのがネックですね(笑)

 医学書は需要が少ない(医療関係者+αしか興味を持たない)ので,一般的に価格が高いんですよね.

Re: ケトン食の解説書

精神科医師A 先生

 いつも情報を頂き有難うございます.

> ケトン食の本 ―奇跡の食事療法―

 こちらの本は私も所有していますが,献立やQ&Aなど実践的な内容が書かれていますね.理論面については本記事で紹介した本の方が詳しいと思います.

ケトンについて

 最近、日本ローカーボ食研究会のHPで加藤潔先生が、3回連続で解説していますので、お知らせします

http://low-carbo-diet.com/blog/ketonn/

Re: ケトンについて

精神科医師 先生

 情報を頂き有難うございます.また確認してみます.

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No title

ケトジェニックダイエット、こちらではADHDにも有効ではないかという専門家がいます。ところで、LCTは、Long chain triglycerides長鎖脂肪酸だと思いますが。

Re: No title

北米登録栄養士 さん

 コメント頂き有難うございます。

> ケトジェニックダイエット、こちらではADHDにも有効ではないかという専門家がいます。

 メカニズムはまだ個人的に未検証ですが、実際的には糖質制限でADHDが改善したという報告は私もチラホラ聞きます。

 以前自閉症については記事にした事がありますが、ADHDについて私も折をみて掘り下げてみたいと思います。

 2013年10月21日(月)の本ブログ記事
 「自閉症と糖質制限」
 http://tagashuu.blog.fc2.com/blog-entry-62.html
 も御参照下さい。

> ところで、LCTは、Long chain triglycerides長鎖脂肪酸だと思いますが。

 御指摘有難うございます。修正させて頂きます。
プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
漢方好きの神経内科医です。
南鹿児島さくら病院にいます。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

南鹿児島さくら病院では職員を随時募集中です。
詳しくはホームページhttp://www.nissyoukai.or.jp/
を御覧になって下さい。
見学申し込みもお気軽にどうぞ。

※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。

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