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サイアミディン

インスリン抵抗性熟考

次のテーマに移る前に、インスリン抵抗性についてさらに掘り下げて考えてみます。

「糖質摂取後の血糖値の上昇=インスリン抵抗性」ではない、という私の見解を述べましたが、

一方でインスリン抵抗性が原因で糖質摂取後に著しい血糖上昇をきたすという「こともある」でしょう。

そんなインスリン抵抗性というものは、はたしてどのようにして作られるものなのでしょうか。

インスリン抵抗性とは、文字通り「インスリンが効きにくくなる」という事を意味します。

インスリンが効きにくくなることによって、ブドウ糖が適切に細胞内に取り込まれなくなった結果、血管内にブドウ糖があふれ、血糖値が上昇すると、こういう理屈だと思います。そんな事がなぜ起こるのでしょうか。
それを考えるために「インスリン抵抗性」で検索すれば、様々な文献をフリーで閲覧することができます。

ところが、そうした文献に書かれている内容は非常に複雑で難解です。書かれている事が難し過ぎて、私でも「素人だからわからない」と言って諦めてしまいそうです。

ですからこういう時は発想を変えて、想像力を働かせてインスリン抵抗性について自由に考えてみるとよいと思います。


インスリンが効きにくくなるという状況は大きく二つが考えられます。

一つはインスリンが作用する相手となる細胞に何らかの故障が生じている場合です。

先日の講演会で、「遊離脂肪酸がインスリン抵抗性を高める」というメカニズムが詳しく紹介されていました。

遊離脂肪酸が細胞内に入ることで中性脂肪が蓄積し、その合成過程でできるアシル-CoAがインスリン受容体基質(IRS)のセリン部位をリン酸化することで、

チロシンリン酸化やPI3-キナーゼの活性化などが阻害され、ブドウ糖トランスポーター4(GLUT4)の細胞膜への発現が低下し、細胞内に糖が取り込めなくなる、すなわちインスリン抵抗性を生じるという説明です。

これが細胞で何らかの故障が生じている一例という事になります。

この遊離脂肪酸がインスリン抵抗性を高めるという一連の話、決して間違っているわけではありません。

ただしこの遊離脂肪酸が「細胞内に取り込まれている状況」の時に、インスリン抵抗性を生じるということを勘違いしてはなりません。

例えば、私の糖質制限実践中の遊離脂肪酸は正常で、断食中の遊離脂肪酸は高値になったことを以前お示ししましたが、

それだと遊離脂肪酸がたくさんある断食中には私のインスリン抵抗性は高まっていくのかと言われたら、違います。

なぜならば断食中の代謝は、脂質代謝が亢進し中性脂肪が分解され遊離脂肪酸となって「細胞外へ出ていく方向」へ向かっているからです。

「遊離脂肪酸が高い=インスリン抵抗性」だと誤認していると、解釈を誤ってしまいます。

もっと言えば、「細胞内に取り込まれる状況」を作るのはインスリンが働いている時です。

インスリンが働いている状況の時に、遊離脂肪酸が高いと細胞内に脂質が過剰に蓄積して細胞が故障してインスリンが効きにくくなる、と理解すればわかりやすいのではないでしょうか。

他にも何らかの原因で細胞内に微小炎症が起こり続けているようなこともインスリンを正しく作用させない故障の一因となりますが、

いずれにしてもインスリンが働いている状況の時に種々の細胞の故障が生み出されると考えれば、

高インスリン血症が酸化ストレスリスクを高めたり、がんのリスクを上げるといった話とも知識がつながってくると思います。


もう一つのインスリン抵抗性が起こる理由ですが、

細胞は別に故障していないけど、とにかくインスリンの量が多すぎて細胞の持っているキャパシティで処理できない場合、この時にもインスリン抵抗性が起こりえるはずです。

例えば、1つの細胞が10のインスリンを処理するキャパシティがあると仮定します。

この場合、インスリンが10未満のレベルで分泌されている分には細胞はスムーズに仕事をこなすことができますが、

もしもインスリンが15も20も分泌される事態を生じた時には、細胞自体は故障も何もしていないけれど、

10以上の仕事をそもそも細胞がこなすことができないため、結果的にインスリンが分泌された分の仕事を達成できなかったことになり、はたからみればインスリン抵抗性を示したような状況となります。

本来10しか働けない細胞に対して、15も20も要求してしまうと細胞に故障を生じてくる可能性が高まります。

さて、ここで気付きましたでしょうか。インスリン抵抗性を作る2つの要因。

「インスリン過剰分泌の状況」と「細胞が故障する事態」というのは表裏一体だということです。

言い換えれば、インスリン過剰分泌が先か、細胞が故障する事態が先かは非常にわかりにくいことだとも言えます。

この話はインスリン分泌が少ない状況の時には脂質代謝が亢進しケトン体が産生され、そのケトン体に抗炎症作用や神経保護作用、ミトコンドリア機能調節作用があるという話ともつながってきます。

そう考えると、最初から細胞が故障していた場合は別として、

インスリン抵抗性を起こさせないようにするためには、インスリンの過剰分泌を避ける方向にもっていけばよいという事になると思います。

インスリンの過剰分泌が抑えられれば、脂質代謝も回り、ケトン体が使えるようになり細胞機能も修復されていくわけですから、

仮にどちらが原因だったとしてもインスリン抵抗性の改善に寄与するはずです。

そしてインスリンの過剰分泌が抑えられる食事療法が何かと言えば、糖質制限であったり間欠的断食であったりするわけです。

そうすると糖質制限実践後に久しぶりの糖質摂取で血糖値が急上昇するという現象の見方も変わってきます。


やせ型非筋肉質の方が久しぶりの糖質を摂取しますと血糖値が上昇します。

そうすると、それまで相当休んでいた膵臓はここぞとばかりにインスリンを大量に分泌します。

ところがそれまでの時間を非常にストレスを感じ続けていた場合、ストレスが炎症を起こし、ストレスが必要以上に血糖上昇を高めている状況が続いています。

そのため、膵臓は休んでいても、ケトン体は産生されていてもストレスに伴う糖代謝持続駆動状態のために不完全にしか機能しておらず、

結果的にインスリンの受け手となる細胞の機能が故障したままで大量のインスリンを受け入れる事態となるため、

例えばインスリンが10の働きを要求したとしても、細胞は5くらいしか処理することができない、ということが起こりえます。

そのため、急激な血糖上昇をきたしてしまっているのではないでしょうか。

この機能の故障には広い意味では筋肉量の少なさも入っていますし、ストレス性の血糖上昇もあいまってもたらされている側面もあります。

この状況、インスリン抵抗性と言えばインスリン抵抗性と言えると思いますが、

こう考えるとインスリン抵抗性の発現にもストレスが深く関わっている事をうかがい知ることができます。

やせ型非筋肉質の人達がもはや自力でのストレスマネジメント能力が不可逆的に消耗疲弊しており、

糖質の再摂取でしかそのストレスをマネジメントできないほど重度の糖質依存に陥ってしまっている場合は、

それはもう高インスリン血症をきたさない程度で糖質と上手に付き合っていくというのも一つの手なのかもしれませんが、

この現象をもってして糖質制限をすべきでないという結論に持っていかれるのは筋違いではないかと私は思います。

糖質制限は低インスリン化と脂質代謝優位に代謝をシフトすることによって、

本来二重の意味でインスリン抵抗性の改善に寄与している食事療法であるからです。

ついでに言えば鉛やマンガンといった有機金属などの毒が細胞を故障させる要因としてインスリン抵抗性を形成する場合も稀にあると思いますが、

それでさえ、有害物質を細胞内へ取り込めるように代謝をシフトさせているのはインスリンです。

だからインスリンの分泌刺激を確実に減らす糖質制限が、

インスリン抵抗性の根本原因ということにはなりえないと私は思います。


たがしゅう
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糖質制限リハビリ

糖質リハビリという言葉があるようですが、先日、過度の糖質制限を行ったせいか、体調を崩しました。
ここで、『糖質リハビリを始めようか』という立場と、「もう少しソフトに糖質制限しようか」という立場の、およそ二択があると思います。
後者を糖質制限リハビリと呼んでも良いのですが、何のことはない、それは単なる糖質制限だよ。と思う今日この頃です^_^

Re: 糖質制限リハビリ

濱本 輝文 さん

 コメント頂き有難うございます。

 同じ現象に対してその人に見方次第で様々な解釈ができます。

 いわゆる中途半端な糖質制限状態は、見る人が見れば糖質リハビリなのでしょうし、また別の人が見れば糖質制限+ストレスマネジメントとして適宜糖質を利用しているとも解釈できます。どの視点で見るかは自分次第です。
プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
漢方好きの神経内科医です。
南鹿児島さくら病院にいます。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

南鹿児島さくら病院では職員を随時募集中です。
詳しくはホームページhttp://www.nissyoukai.or.jp/
を御覧になって下さい。
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※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。

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