サイアミディン

無理のあるマネジメント

去る2014年1月11日(土)-12日(日)に、

日本病態栄養学会という栄養士さんを中心とした学会に初めて参加して参りました。

糖尿病だけでなく栄養にまつわる様々な講演を集中的に聞くことができて大変面白かったです。

初日は糖尿病の食事療法についてのパネルディスカッションがありました。

糖尿病学会の先生も参加されており、やはり糖質制限のことも話題になっておりました。

相も変わらず学会の先生は糖質制限に否定的な見解でしたが、

その中である看護師さんが「血糖パターンマネジメント」というテーマでお話がありました。
血糖パターンマネジメントというのは「インスリンの調整だけではなく、食事・運動・ストレス疾病の指標を検討するという、すべての糖尿病治療を含む血糖コントロール管理の包括的な方法」のことだそうです。

糖尿病看護認定看護師になるために習得すべき技術のようですね。

さらに「SMBG(自己血糖測定)のデータをもとに患者と医療者がともに血糖をコントロールする上での分析を行い、治療プログラムの変更に役立てること」とも定義されています。

簡単に言うと「血糖がおかしくなっている原因を血糖値をみながら患者さんと一緒に考えよう」という感じでしょうか。

演者の看護師さんは次のように述べていました。

『血糖値は一瞬の値でしかない。
その時の血糖値はその前の何を反映しているのか
(食事の量や内容、インスリン量、運動量、注射部位)
また、その後血糖値がどのように変動するかを推定しなくては全く意味のない数字になる。』

『HbA1cが同じでもグルコーススパイクの大きい人と小さい人とでは、前者の方が危険。』


それはまさにその通りです。

血糖値、HbA1cだけで病状を判断するのがよくないのもそのためです。そこはよくわかっておられると思います。

そして「血糖パターンマネジメント」を具体的に説明するのに、次のような症例を提示されました。

『60歳代の男性、昔心筋梗塞をされてカテーテル治療を受けた過去がある方です。

長年の糖尿病があって、超速効型インスリンを1日3回食後に、持効型インスリンを寝る前に1回打っておられます。

今回、食後高血糖を是正したいということで相談がありました。SMBGを見てみると食後に血糖値が非常に高い時があります。

「どうして血糖値が上がっていると思いますか?」と患者さんに聞くと、主食がパンのときは血糖値はそんなにあがらないけど御飯のときは200を超えてしまうとのことでした。

そこでどうすれば血糖値が下がるかを患者さんと一緒に考えてみました。

超速効型の量を増やす?でも一律に上げるとパンの時に低血糖になってしまうかもしれない。

インスリンをごはんの時だけインスリンの単位数を増やしてみる?でもそれじゃ肥満になってしまうかもしれない。

二人でいろいろと相談して、この方の場合は最終的に主治医の先生と相談して、DPP4阻害剤を追加してみようかという結論になりました。』


これを聞いて私は「前提となる考え方は正しいのに、薬を中心に考えているせいでマネジメントが誤った方向に行っている」と思いました。

なぜ「ごはんを食べた後は血糖値が高いけど、パンを食べた後はそんなに高くない」のでしょうか。

どんなパンを食べていたかにもよりますが、一般的には米の糖質量よりパンの糖質量の方が少ない傾向があります。

従って、ごはんを食べた時に血糖値がより高かったのは、純粋に糖質量の多かったからです。それ以外の理由はないと思います。

その事を指摘せずして正しいマネージメントができるはずもありません。

本来であれば「摂取する糖質の量を減らす」というマネジメントをするべきですが、

そう動けないのは、「ごはん、パンを食べるのは日本人として当たり前」という固定観念があるからだと思います。

だから「ごはんとパンの量を減らそう、その代わりおかずを増やそう」という指導をすることができず、

「ごはんとパンはそのままで、どの薬を使って無理なく血糖値を下げるべきか」という無理のあるマネジメントへつながってしまうのです。

これでは折角良いことを言っていても、机上の空論です。

とてもはがゆい思いがいたします。



たがしゅう
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血糖マネジメント

たがしゅう先生おはようございます!

本来、血糖マネジメントが出来て、初めて、糖尿病指導が出来たということにはなりませんか?
看護師向けの雑誌では、時々血糖マネジメントは、テーマで取り上げられます。
サーガディアンリズム、ストレス、食事量及び内容、女性の場合は、生理のリズム。食後の血糖も1時間値が高い人、2時間あたりの方。

これを可能にするのは、全ての糖尿病の方に、血糖測定が保証されることが前提だと思います。
医師が主導権を取るのでは、本当に患者様自身が自分の人生の主人公にはなれないと思います。

多少マネジメントは、出来ますので、糖質オフネットワーク東京でも取り上げて行きたいテーマの一つだと、私個人は思っております。

Re: 血糖マネジメント

Chie さん

コメント頂き有難うございます。

> これを可能にするのは、全ての糖尿病の方に、血糖測定が保証されることが前提だと思います。
> 医師が主導権を取るのでは、本当に患者様自身が自分の人生の主人公にはなれないと思います。


そう思います。

これからの医療は本当の意味で患者主導型の医療になっていくべきだと思います。血糖測定の全面解禁はそのために必要なステップですね。

猫界のほうが……

実はうちの飼い猫が1型糖尿病で、長いことインスリン注射をしており、ケトアシドーシスも低血糖発作も経験しています。特に低血糖の発作はひどいもので、目をあけたまま真横に倒れ、けいれん、脱糞、意識障害を起こしました。自宅にいたので、シリンジにドロドロの砂糖水を入れて口の中に無理やり押し込み、必死で復活させました。でも、しばらくはそのときの光景が頭から離れず、低血糖がトラウマになっていました(今ではもっと冷静に対処できすが)。
なので自分が2型だとわかったときは、薬を使いたくないという思いがどうしてもあり、迷わず糖質制限を選びました。
幸か不幸か、私は猫のおかげで糖尿に対する予備知識があり、薬の怖さも知っており、さらにネットも使える環境だったので、医師に相談する前に糖質制限を知ることができましたが、多くの人は、受診した医療機関が知識の入口になるわけですが、現状は……。
糖質制限によって低血糖のリスクを回避できるケースが、いったいどれだけあるのでしょうか。

ちなみに猫の糖尿病処方食でよく使われているものは、低炭水化物・高タンパクです。製造元が米国だからだと思いますが、少なくとも糖尿病食については、日本の人間界より猫界のほうが理にかなってますね(苦笑)

Re: 猫界のほうが……

月夜野うさぎ さん

 コメント頂き有難うございます。

> 猫の糖尿病処方食でよく使われているものは、低炭水化物・高タンパクです。製造元が米国だからだと思いますが、少なくとも糖尿病食については、日本の人間界より猫界のほうが理にかなってますね(苦笑)

 そうなのですか。猫の糖尿病事情は初めて知りました。教えて頂いて有難うございます。

 確かにヒトの糖尿病治療は、猫の糖尿病治療に比べて遅れをとっているようですね。
プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
漢方好きの神経内科医です。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

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