サイアミディン

真のジェネラリストになるために

私の目標は「町の頼れるお医者さん」です.

一人の医師が患者さんの問題点の全てを抱え込むことはスーパーマンでもない限りは難しいことだと思います.

一方,自分には優れた才能も,卓越した技術もありませんが,

そんな自分でも自分が出会う目の前の患者さんにはできる限り最善をつくしたいという想いがあります.

こういうジレンマがある中で,私は「総合診療」という医療のスタイルに興味を持っています.

「病気を診ずして,病人を診よ」という言葉がありますが,総合診療を専門にする医師は患者さんの症状をこまかく聴取して,そこから病気の本質をつきとめるという能力に長けています.いわば「診断をつけるプロ」です.

そんな総合診療医の事を「ジェネラリスト」と呼び,一方,特定の病気に詳しい専門医の事を「スペシャリスト」と呼びます.

両者はしばしば対比され議論されたりしますが,私は医師であれば皆ジェネラリストの素養を身につけておくべきだと考えています.
今の世の中は「専門医療」に偏向し過ぎているようです.

例えば,ある人が頭痛で困り病院を受診しようと思った時,「頭痛の専門医に診てもらおう」と考える人が多いのではないでしょうか.

それで多くの場合は問題ないのですが,なかには頭痛専門医に診てもらっていても治らない難治性頭痛があります.

そういう場合にジェネラルな目線があると打開策を見出すことができる場合があります.

例えば,以前「糖質離脱頭痛」の可能性について言及しましたが,この場合は糖質制限することが頭痛の唯一の解決策です.

頭痛を起こす原因が糖質の依存性であり,依存性のある物質を除去しない限り,依存症からは離脱できないからです.

糖質離脱頭痛という病態はまだ頭痛の世界で認知されていないので,糖質制限を勧める頭痛専門医はおそらくまだいないのではないかと思います.

要するに,専門医に任せていても解決しない病気がありうるという事です.

また専門医というのは専門的になればなるほど,ジェネラルな目線がなくなっていくという傾向があります.

一般的には「肺の専門家であれば,肺以外の事も当然知っていて,特に肺の事に詳しいのだろう」と思われるかもしれませんが,

自分は肺の専門家だから心臓のことはわからない」という専門家はごまんといます.

そしてたとえ肺の病気であっても,仮に肺癌だったとしても,肺の専門家がいかにすぐれた知識を持っていようと,

糖質制限の事を知らない肺の専門家はより質の高い医療を提供することはできないということになります.ブドウ糖を主たるエネルギー源とする癌にとっても糖質の摂取はよくないからです.

それに,仮に肺の専門外科医の高い技術で癌が完全切除できたとしても,そのまま糖質過剰摂取を続けていたら,糖質制限をしている場合より再発リスクは高いと思います.

逆に私の得意とする脳の領域に関しては,他の専門家から敬遠される傾向が強いようです.

例えば,ある患者さんが一瞬意識を失うような症状で救急車を呼び,救急隊が受け入れ可能な病院を探すときに,脳以外の専門医が「脳の事はわからないから他の病院を当たって」と断られ,数件たらい回しにあってウチへ運ばれるというケースは結構あります.勿論,その逆もまたありうることです.

こうなると専門医ってどうなんだろうって考えてしまいますが,専門医自体が悪いものというわけではありません.

本来であれば「専門医というのは最低限総合診療をする事ができて,その上で専門医を取得するべき」だと思うのですが,問題は今の専門医のほとんどがそうではないという事です.

総合診療の考え方は,最近ようやく注目を浴びつつあるものの,正直まだ世の中にそんなに浸透していません.病院に行こうと思って「よし総合診療医に診てもらおう」という人はほとんどいないのではないでしょうか.

現時点で総合診療医に最も近い立場の医師は開業医です.しかしその頼みの開業医もいつもの薬を出すだけの医師が多くなってしまっている印象を私は持っています.

私は,糖質制限の考え方を知ることはジェネラリストにとって必須であるように感じています.糖質の摂取があまりにもさまざまな病態に悪影響を及ぼしうるからです.

糖質制限を臨床に取り入れるということは患者さんの食生活の聴取に時間をかけるということを意味します.

3分診療,5分診療と揶揄される昨今の医療状況の中で,最新の検査は行ったとしても,患者さんの食生活を詳しく聞き取って,原因を明らかにしようとする専門医は少ないのではないかと私は感じています.

もっと総合診療の考え方が広まることを望みますし,

そしてその中核に糖質制限の理論を知ってもらう必要があります.


たがしゅう
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No title

>現時点で総合診療医に最も近い立場の医師は開業医です.しかしその頼みの開業医もいつもの薬を出すだけの医師が多くなってしまっている印象を私は持っています.

● 私も痛感しています。患者の訴えに対して、安易に薬を出しすぎです。過剰投与で、どの薬がどう効果があるのか、薬の組み合わせでよくないものはチェック出来ているのか?
また、私はたまたま風邪の時に「突発性難聴」になり、かかっていた40歳台の内科医師に「耳鳴りが泊まらないんですけど・・」と相談したら、「風邪のせいでしょう」と言われ、3日後に耳鼻科に言ったら、「1時間でも早く治療を開始した方が良かったんだよ」と言われた経験があります。
 今でも、小さく耳鳴りが24時間します。

『総合診療医』の考え、大賛成です。

>3分診療,5分診療と揶揄される昨今の医療状況の中で,最新の検査は行ったとしても,患者さんの食生活を詳しく聞き取って,原因を明らかにしようとする専門医は少ないのではないかと私は感じています.

● 精神科医でさえ、再診以後は、ほとんど5分診療です。
「どう、変わりない。じゃ同じ薬だしますね・・」
 あるいは、モニターやパソコンをずっと見ている医師も多いです。
 血液検査の数字だけ見て、患者の話をろくに聞きません。

>私は,糖質制限の考え方を知ることはジェネラリストにとって必須であるように感じています.糖質の摂取があまりにもさまざまな病態に悪影響を及ぼしうるからです.

● たがしゅうさん
「糖質についてよく分かっている総合診療医」が、あたり前のように街に居る。
  そういう時代が、近い将来、来るといいですね。今世紀のうちに・・・
 そして、戦争や内戦・テロもない世界になり、「生きること」が大切にされる 時代になってほしいです・・・

★ すずさん もう少し良く考えてコメントしましょうね。愛嬌もユーモアも必要ですが、コメントが唐突です・・・

Re: No title

わんわん さん

 コメント頂き有難うございます.

 総合診療の考え方も着実に世の中に広まりつつあるので,糖質制限と合わせて広めていきたいですね.

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総合診療も名前倒れでは

こんにちは、スタチンです

何度か書いてますけど、私は4ヶ月前にいきなり体調不良になりました。
それまで喘息だけ、遺伝的に持病として持ってましたけど、それは気候の変わり目とか、運動をした後時とか、特殊な状況でのみ発症するので、気管支拡張剤のみで長年一時的対応してきました。ところがある日、少し効きが悪かったので、やはり、一時しのぎなく、もっと長期的な治療に変えようと、地元の大きな私病院を訪ね、総合診療科目の医者に診断されました。
そこで、ステロイド剤とベータ遮断薬の合剤の喘息の薬を処方され、吸入を始めると、その時期、なぜか、高血圧が体になっていたみたいで、ステロイドの副作用があきらかに原因とする不眠が始まりました。いはば医原病のスタートでした。

当初は医療的な知識も関心もなく、約10日間、不眠と高血圧に悩まされ続け、連続不眠からどうにも我慢の限界で、同じ病院を訪ね、同じく総合診療の科目を掲げる別の医師に状況を訴えると、同時に血液検査をした結果、高血圧、腎機能の低下、コレステロールの異常などなど、非常に悪いデータが続出したので、高血圧の薬、コレステロール対策としてスタチン系の薬、そして睡眠導入剤を処方されました。
そして治療開始から約4ヶ月。

この間に2回目の糖質制限食の開始と10キロ減量、毎日欠かさず1時間のウォーキングをやり続けていると、1ヶ月後の血液検査の数字はほぼ基準内に入り、でも、この総合診療医はそのまま、同量の同じ薬を4ヶ月ダラダラ処方するだけでした。

しかし私は同時期、だがしゅう先生の各記事も含めて、医療関係の書物も読み漁り、すくなくても統制現職については理論的根拠も含めて自分の食事の正しさも理解しましたし、他には不眠、腎機能関連、コレステロール、高血圧、糖尿病まで相当な範囲の医療的知識をつけてきました。もちろんその中で、高血圧に関する日本の基準値と諸外国の基準値の矛盾、LDLやHDLの国内での基準と外国での基準や極端な相違や国内での論争、安易に不眠者に対し処方される眠剤などの処方と依存性、同時に自分が実験台となり、それぞれ薬から離脱するのに苦しみながら、この4ヶ月を過ごしてきました。

その結果、最初に総合診療医は見事に現在の学会のLDLの基準を信奉している医師なので、約2カ月は彼の指導に基づきLDLをスタチン系を飲むことで数値を下げてほめられましたけど、2ヶ月を過ぎてコレステロール値を下げることの危険性を強く感じて、まず自己判断でこの薬を断薬しました。

次に最も断薬で頭を悩まされたのが睡眠導入剤でした。何度か失敗しつつ、3ヶ月目でやっと断薬に成功。身体に対する薬はまだこれからも病気次第では受け入れる度量はありますけど、この手の薬は直接脳に依存性を植えつける薬なので、もうよほどのことがない限り、飲まないと頭にしみこませてます。
今は自然の睡眠に戻って約1ヶ月、幸福感を味わってます。

高血圧の薬は初期の半分程度にしてまだ飲んでますけど、これはまだ時期的に寒いので、春の到来とともに最終的に断薬のつもりです。

長々と自分の既往歴を書きましたけど、じつはこの2回目にかかわった総合診療医からも別の薬も安易に処方され、それでも危うく副作用が発生し、即止めた経験があります。

要するに、たがしゅう先生の書かれた総合診療医でさえ、現実はこの程度ということです。
初めの総合診療医にはこちらにも高血圧状態だったという瑕疵はありますけど、明らかに医原病での病気を作られましたし、別の総合診療医には必要もない薬まで含めて、処方され、危うく病気を長期に長引かされる羽目になりかけました。

糖制限食とウォーキング、そして私のしつこいくらいの医療に関する独学の勉強とインターネット発達によるたがしゅう先生をはじめ良心的な先生や医療関係者の記事、あるいは医原病などに苦しんできた患者の生々しい記録が見れなければ、今も私は同じ症状で解決方法もなく、苦しんでいたでしょう。

しかし断薬をするたび、人間として健康的な生活を取り戻し、今はすくなくても前以上に健康的な体になりました。
と、同時に間違った医療に対する怒りも湧いています。
先日も話題になったテレビで森田豊という医療ジャーナリストを気取る医師がいますけど、こういう輩はまさに社会の害毒でしかありません。
良心的な振る舞いと白衣の裏で、やっていることはまさに犯罪的な行為にも近い。
テレビなどはその程度のタレント医師しか、需要としてはいらないのかもしれないけど、せめて私のようにまともな医療を求めるものにはもっとまともな医師が日本の医師会を支配してほしいと願うだけです。1

スタチンさん 同感です

本当に、患者は苦労して真の医療に出会うものです。
 であえるかどうか、運で、左右されたくありませんね・・
 ハンドルネーム、「脱スタチン」さんにされたらいかがですか?

食生活

私も 総合診療医先生が どんどん増えることを望んでいます。
そして 若い人達や子供達にも糖質制限食が あたりまえの時代が
来る事を 願っています。
いつもながら たがしゅう先生の御努力には 頭が下がります。
感謝の気持ちでいっぱいです。

赤ひげ先生!

たがしゅう先生こんばんは!

 最近は在宅医療がブームのようで、在宅医療専門の仲介業者がいるほどで、私共の高齢者施設も仲介業者紹介の総合診療科を標榜する診療所さんにお世話になっておりますが、ろくに、問診もせず、定型?処方を機械的に継続し愁訴が増えれば薬を増やし、どんどん薬が増えていき、薬で満腹になるような有り様です。そして、緊急時等、いざという時には役に立たず、結局こちらが搬送先を捜し救急車呼んで対応する事も少なくありません。入院された場合においても、退院してこられた時には、認知症が進行し、大きな褥瘡をつくっておられる事も少なくありません。そのような状態に辟易としております。
真の意味での総合診療医、開業医、赤ひげ先生が増えてほしいものです。

Re: 組織の中で

nonnon さん

 コメント頂き有難うございます.

 変われる人と変われない人がいると思います.

 私は特別な事はできませんが,できれば前者でありたいです.

 そのためにも私は私のいる場所で私のできる事をやり続けたいと思っています.

Re: 総合診療も名前倒れでは

スタチン さん

 貴重な御経験を教えて頂き有難うございます.

 実は本当に実力のある総合診療医というのは全国的にもほんの一握りなんです.

 私はある総合診療で有名な病院で研修医として数か月過ごさせて頂いた事がありますが,そこで働いていた先生達は皆ものすごく勉強家で,豊富な知識を持っているすごい人達ばかりでした.

 総合診療医と普通の一般内科医を区別できない人が医師の中でさえたくさんいますが,総合診療のノウハウを身につけるためには,内科をしながら片手間で勉強するのでは到底無理です.総合診療がきちんと学べる環境でそれなりの時間を過ごさないとはっきり言って無理だと思います.

 そういう意味で,まだまだ総合診療が世の中に広まっているとは言えないと思います.

Re: 食生活

京のsinonome さん

 嬉しい言葉を頂き有難うございます.

 疲れた時はペースを落とすかもしれませんが,温かい目で見守って頂けると嬉しいです.

Re: 赤ひげ先生!

haru さん

 コメント頂き有難うございます.

> 真の意味での総合診療医、開業医、赤ひげ先生が増えてほしいものです。

 本当そうですね.私も早く一人前の赤ひげ先生になれるよう頑張ります.

総合診療

今回は総合診療についてですね。私は糖質を断ってから大好きだったテレビをあまり見なくなりました。糖質とテレビって何かしら関係があるように思えてなりません。ポテチを食べてコーラを飲みながらテレビを見る、こんなことは今では考えられませんが、以前は普通でした。そして、口直しにアイスを流し込むということまでやっていました。まさに負のスパイラルですね。(悪循環の極み!!)
 さて、あまりテレビを見なくなった私ですが、たまに見る番組があります。今回のテーマである総合診療を題材にした番組、NHKで放送されている『総合診療医ドクターG』という番組です。私も毎回チェックしているわけではないのですが、なかなか面白そうな番組でしたよ。http://www4.nhk.or.jp/doctorg/

Re: 総合診療

carpediem さん

 コメント頂き有難うございます.

>  今回のテーマである総合診療を題材にした番組、NHKで放送されている『総合診療医ドクターG』という番組です。

 私もよく見ていました.

 総合診療医の思考プロセスがわかりやすく表現されていてよかったと思います.

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プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
漢方好きの神経内科医です。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

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