サイアミディン

想いは伝わるか

私は大学病院の神経内科医師ですが、

時々大学から派遣されて別の一般病院で診療のサポートをしに行くことがあります。

一昔前までは医局絶対主義の下、卒業した医師は出身大学のどこかしらの医局に所属するというのが一般的でしたが、

新臨床研修制度が始まり、大学以外にも様々な病院を卒業後の研修先として選べるようになりました。

そうなってからは一部の大学を除いて、医局に残る医師は大分少なくなり、どこの医局も慢性的な人手不足に悩んでいるというのが多くの現状だと思います。

従って派遣先の病院へ大学から出せる医師の人数も自ずと限られてしまいます。

私の場合は大学病院以外に3〜4箇所程の病院で診療を行っています。

本日はそのうちの一つの病院で実際にあった話を紹介します。
その病院へは私以外にも4名の医師が派遣されており、週に1回の神経内科外来を回しています。

しかし順番はランダムなので、私の側からみると1-2ヶ月に1回不定期にその病院へ行くという感じになります。

その外来で患者さんをみた時に、その日に結論が出せる場合は何も問題ないのですが、

中には精査や継続診療が必要な場合もあります。むしろその方が多いくらいです。

患者さん側からすればこの外来は「次に診られる時はどの医者に診られるかわからない」ということになります。

しかも次の予定は長くとも一ヶ月後までしかわかっていないため、二ヶ月後に予約をとろうものならどの医者に当たるかは完全に運任せです。タイミングが悪ければまだ一ヶ月先の予定すら立っていない事もあります。

だから私は継続診療が必要な患者さんへはこう言います。

「次回の診察はまだ医師の予定が立っていないので、私でない医師が対応する場合があります。でも私でない医師の場合でも今日の話はきちんと申し送っておきますので、心配なさらないで下さいね。」

ところが、この外来でよく患者さんから次のように言われる事があります。

「でもできれば先生に診てほしい。こんなに丁寧に説明される事はないですから。」

最初はたまたま気のいい患者さんが御厚意でそう言って下さっただけかなと思っていましたが、

そう言われる回数が増えてくるにつれ、それが単なる偶然とは思えなくなってきました。

というのは、私はこうした出先の病院でも積極的に糖質制限の選択肢を提示し続けています。

糖質制限の説明は従来の栄養学を見直す事も含めて説明しなければならないので、基本的には手間と時間がかかります。

従っておそらく私の外来は一般的な医師の外来に比べて待ち時間がやや長いと思います。

にも関わらずそのように言って頂けるのです。というよりもそう説明しているからこそなのかもしれません。

逆に言えば、それまでその患者さんが出会った医師の説明が、私の説明と比べてどうであったかという事に話はつながってきます。

世の中には食事療法が軽視されている風潮があると思います。

自分の説明を自画自賛するつもりはありませんが、おそらく私が普通にしているほどの時間をかけて食事療法の意義と具体的方法について説明している医師はそうは多くないのではないかと推測します。

話を戻し、私の外来再診を希望された患者さんには「お手数ですが受診の1ヶ月前にお電話を頂き、私の外来日がいつになるかを確認して予約をとるようにして下さい。」と説明するようにしています。

私もできれば治療が軌道に乗るまで患者さんを見守りたいので、そのように患者さんに希望して頂けることは嬉しい限りです。

ただ欲を言えば、また診てもらうではなく、「もう診てもらわなくても大丈夫」と思ってもらえるよう自立するお手伝いするのが本来の医師の務めだと思います。

医者にかかれば基本的にずっと通院するようになるというのが当たり前となってしまっている今の世の中で、

糖質制限を通じてそうした新しい未来も見えてくるように感じます。


たがしゅう
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だれが治療方法を選ぶのか?

お早うございます、たがしゅう先生。

先生もお気づきかもしれませんが、今日まで朝日新聞の生活欄で「てんかん」治療について6回連載で記事の掲載がありました。

症状、薬、手術のことは記載されていましたが、ケトン食については「ケ」の字も出てはきませんでしたね。

私には「食事療法の軽視」の典型ではないか、と思えました。先生はどうおもわれますか?

Re: だれが治療方法を選ぶのか?

saty さん

コメント頂き有難うございます。

> 症状、薬、手術のことは記載されていましたが、ケトン食については「ケ」の字も出てはきませんでしたね。

ケトン食は医師の間では『小児の特殊なてんかんに対する特殊な食事療法』と思われている節がありますが、

そんな事は決してなく、近年その効果が大きく見直され成人にも適応は拡大されてきています。多くの医師はその事を知らないのだと思います。

2014年2月13日(木)の本ブログ記事
「修正アトキンス食の10年」
http://tagashuu.blog.fc2.com/blog-entry-181.html
も御参照下さい。

良い話ですね

>欲を言えば、また診てもらうではなく、「もう診てもらわなくても大丈夫」と思ってもらえるよう自立するお手伝いするのが本来の医師の務めだと思います。
 医者にかかれば基本的にずっと通院するようになるというのが当たり前となってしまっている今の世の中で、糖質制限を通じてそうした新しい未来も見えてくるように感じます。

「糖質制限すれば、医者要らず」という言葉が当たり前になる社会になるといいですね。

 今日の記事からは、だがしゅうさんの「自信」と「自負」「誇り」を感じます。

 糖質オフ・東京の仲間からは、「たがしゅうさんがあまり無理をして体を壊さなければいいけれど・・」
 という声も出ていますが、今、力が出せる「その時」が、訪れつつあるのでしょうか。
 
 「頑張りすぎずに、頑張ってください」

東京のメンバーも、春になったらまた、たがしゅうさんに会いたいと言っています。
 屋形船でも乗って、また「糖質オフ」の話を皆んなでしましょう!

 東京は、今日も冷たい風が吹いています

ノロウイルス・インフルエンザはやっています

                 

良いお医者さん

良いお医者さん

たがしゅう先生、おはようございます。
書き込みへのお返事、ありがとうございました。

その患者さんの気持ち解る気がします。
先生が、患者と真剣に向き合っている結果ではないでしょうか。
丁寧に説明して下さることは、同じく丁寧に話を聞いて下さるから。

たくさん論文を書くこと、手術が神業的に上手いこと。
それも大事な要素だけど。(先生が下手とかではなく。。)
診察を素早く済ませること。経営面では重要でしょう。

でも、やっぱり、
こちらの話に耳を傾けて下さる姿勢も大事だと思います。
私はそういう医師を選びたいです。

Re: 良い話ですね

わんわん さん

コメント頂き有難うございます。

>「頑張りすぎずに、頑張ってください」

御心配も頂いて有難うございます。

そう見えても適当に息抜きながらやっているのでどうかご心配なく。しんどい時は遠慮せずに休みますので。

Re: 良いお医者さん

ラックマン さん

コメント頂き有難うございます。

> その患者さんの気持ち解る気がします。
> 先生が、患者と真剣に向き合っている結果ではないでしょうか。


そのように言って頂き大変有難いです。

よく「今日は100人も患者を診た」などと誇らしげに言う医師がいますが、

私は、効率的に診療を行う事は大事だとは認識しながらも、そこに「何か違う」といった違和感を感じていました。

いろいろなやり方があるとは思いますが、私は「話を聞く」というのを重視するスタンスで今後も行きたいと思っています。

食事療法の知識

私が卒業したのは ○○年前のことですから現在の医学教育についてはわかりませんが、おそらく現在でも食事や栄養に関して教わる機会はほとんどないのではないか?と思います。診療でも食品の単位交換やカロリー計算に基づいて指示だけを出し、栄養士さんに任せきりなので「食事療法が病気の改善に役立つ」ことを実感した経験もないと思います。

医師だって 患者さんのためになることをしたい、良くなって欲しい、真剣に向き合いたいと思っているのですが、
「どんなに時間をかけて説明しても効果がないから 効果のある薬を出して良くした方がよい」という気分になってしまうのではないでしょうか?

よく 心療内科で「話を聞かず薬ばかり出す」ことが問題になりますが 心療内科医に話を聞くと「どんなに長く話を聞いてもそれで患者さんがよくなったことがない。結局薬を出すのが一番症状改善に役だった」と感じている方がかなり多いです。

食事療法の知識を得る機会がないのですね
たがしゅう先生はじめ諸先生方の啓蒙活動によって、知識を得る機会、良くなるという感動を得る機会を少しでも増やすことも大切だと思います

Truelife さん

同感です。

そして、病気は、社会的な原因で作り出されているのではないでしょうか。

今日も、事件がありました。

「殺すつもりだった」歩道に車突っ込み12人けが、運転の男逮捕 名古屋駅前
2014.2.23

 23日午後2時15分ごろ、名古屋市中村区名駅1丁目のJR名古屋駅近くにある県道交差点で、乗用車が、買い物客などでにぎわっていた歩道に突っ込み、通行人を次々とはねた。中村署によると、24歳の男性が腰の骨を折る重傷、10~40代の男女11人が軽傷を負った。
 中村署は殺人未遂容疑で、車を運転していた名古屋市在住の30代の男を現行犯逮捕した。男は「車で人をはねて殺すつもりだった。わざと突っ込んだ」と供述しており、詳しい動機を調べる。

 社会の歪み。連帯感が希薄で,貧困な食生活が、社会を殺伐としたものにしているのではないでしょうか?

Re: 食事療法の知識

TrueLife 先生

 コメント頂き有難うございます.

> おそらく現在でも食事や栄養に関して教わる機会はほとんどないのではないか?と思います。
> 食事療法の知識を得る機会がないのですね


 御指摘の通りです.

 何を隠そう私自身も糖質制限の事を知るまでは,食事指導は栄養士さんに任せっきりでした.

 食事療法で改善するという成功体験を経て,栄養の勉強に真剣に取り組めるようになりました.その成功体験を多くの人に伝えていく事が必要だと感じています.

TrueLife先生

>医師だって 患者さんのためになることをしたい、良くなって欲しい、真剣に向き合いたいと思っているのですが、
「どんなに時間をかけて説明しても効果がないから 効果のある薬を出して良くした方がよい」という気分になってしまうのではないでしょうか?
よく 心療内科で「話を聞かず薬ばかり出す」ことが問題になりますが 心療内科医に話を聞くと「どんなに長く話を聞いてもそれで患者さんがよくなったことがない。結局薬を出すのが一番症状改善に役だった」と感じている方がかなり多いです。

● 北九州 森園先生のブログから

薬処方より先にすることがあるのでは?

大事なのは薬より先に生活指導ですが、先生のお話を伺うと、うつ病とかの治療において、認知のゆがみとかの治療をせずに すぐにSSRIなどの薬をだしてもいいのでしょうか?」 

 私も 大変 同意できる意見です。

糖尿病治療で一番大事なのは生活週間の改善なのに、薬やインスリンばかりに頼っている医師が多すぎると思います。

で、その精神科の先生の答えが
「認知行動療法とかも大事ですが、忙しいので中々できません。糖尿病専門医の先生方はもっと忙しいでしょうから、認知療法とかせずに薬をだしたらいいと思いますよ。よく薬は効きます。」

内科のドクターの手間を取らせないようにという気遣いからなんでしょうけど、

 私は内科医が、うつ病っぽい患者さんにSSRI気軽に処方するのは、どうも最近は疑問に思っています。
 ましてや、何の精神的サポートもせずに。

糖尿病治療は 薬より生活習慣改善指導が大事なように、うつ病も、認知行動療法等のサポートの方が薬物治療より先だと私は考えています。

最近は、糖尿病専門医も、ただ薬を選ぶだけになっていて、基本を忘れているような気がします。

**************************************************

● 同感です。  長谷川

No title

大学病院にもたがしゅう先生のような方がいるのですね。
おっしゃる通りだと思います。
このブログは、今、「フェルガード」で検索すると1ページ目にありますので、それで知りましたが、
他のページも見てみてそう思いました。

認知症を学ぶようになってから、いろいろ食事のことなども勉強しましたが、私も糖質制限派です!
様々な病気は食に大きく関係していると思います!
「あなたは、あなたの食べたもの以外からは何ひとつつくられません。これは学問的にも真実です」
ロジャー・ウィリアムス   です!

Re: No title

はる さん

 コメント頂き有難うございます.

 いろいろな人に読んで頂けるのは有難い限りです.

> 様々な病気は食に大きく関係していると思います!
> 「あなたは、あなたの食べたもの以外からは何ひとつつくられません。これは学問的にも真実です」
> ロジャー・ウィリアムス   です!


 同感です.食事が健康を守る上で最も重要な事だと思います.
プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
漢方好きの神経内科医です。
南鹿児島さくら病院に勤務しています(下段にリンクあり)。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

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