サイアミディン

アブラを摂ってもアブラが取れる

糖質制限に対してよく聞かれる批判の中に,

「糖質を制限すると,脂を摂りすぎてコレステロールが増えて動脈硬化が進む」というものがあります.

しかし糖質制限をしている人ならわかりますが,

実際には脂をしっかり摂っているにも関わらず,中性脂肪は速やかに減少し,コレステロールのバランスがよくなります.

それではどうしてそのようになるのでしょうか.

今日はその疑問について考えてみます.
そもそも摂った脂はそのままコレステロールや中性脂肪になるわけではありません.

食べた脂肪は胃や膵臓の消化酵素で分解され,グリセロールと脂肪酸になって,小腸で吸収されます.

ここから先の代謝は複雑ではありますが,端的に言うとそのグリセロールと脂肪酸を利用して肝臓で中性脂肪を再合成するという仕組みを人体は取っています.

それならば脂を摂りすぎたら結局中性脂肪になるではないかと思うかもしれませんが違います.

実は肝臓は中性脂肪やコレステロールの合成量を自己調整しているのです.

例えば食事中の脂質は全体の2割であれば,体の中で合成する脂質は8割ですが,

食事中の脂質が3~4割に増えてしまった場合でも,肝臓は合成量を6~7割に抑えるように調節してくれるのです.

だから糖質制限をしていれば,多少脂質を摂りすぎてしまっても中性脂肪が増えることがありません.


しかし糖質を取ってしまった場合は,そうした自動調整は関係なくインスリンの働きで脂肪酸合成の方へ一気に代謝が向かいます.

従って日常的に糖質を摂取していればあっという間に脂肪肝になりますし,皮下脂肪がたまれば肥満になります.

その強制力のある糖質を控えてさえいれば,脂肪をしっかり摂っていてもちょうどいい脂肪の量になるのです.



例えば,私は糖質制限実践前には非常にフケが多い体質でした.

また鼻の周りや耳の後ろにフケのようなカスがいつも噴出して,それを掻いて摂るとそこの皮膚が真っ赤になるといういわゆる脂漏性皮膚炎の状態を繰り返していました.

フケにしても,脂漏性皮膚炎にしても,いわば皮膚から脂が噴出している状態です.

ところが,それを糖質を制限して脂質をしっかり食べることで速やかに両者が改善しているのです.

この事実から考えてみても,脂を体にためこむ最大の要因は糖質であるということがわかります.



ただ糖質制限をしていれば絶対に脂肪が上がらないかと言われると,さすがにそうではないと思います.

というのも,私の患者さんで厳格なケトン食を実践しているにも関わらず,中性脂肪が少し高くなっている人がいます.

脂質だけであっても冒頭に紹介した理由で中性脂肪は再合成することができるので,

さすがに脂質を摂りすぎた場合は中性脂肪が高くなるということはあり得ると思います.

ただ,それにしても糖質を摂る事に比べたらその程度は明らかに軽いです.

それにそのケトン食をしている人の場合は高度の動脈硬化もありますが,その人の動脈硬化はケトン食実践後から徐々に改善してきています.



『糖質制限なんかするとコレステロールが上がって動脈硬化が進んで早死にするよ』

そんな言葉がウソであることは,糖質制限を理解している人ならみんな容易にわかります.

わからないのは皆糖質制限をした事がない人ばかりです.


たがしゅう
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一般的なデータかどうか

「たがしゅう先生の患者で厳格なケトン食を実践しているにも関わらず、中性脂肪が少し高くなっている」者です。

少し補足させていただきますと、中性脂肪が急に高くなった原因として一番有力なのは、『1日の食事のトータルの内容は変えずに、1日2食から1日1食に変えたため』だと推測しております。

それまでのケトン食での半年間の中性脂肪の検査値は、ごく正常な値でした。
中性脂肪の高い値がその後もずっと続き、摂取カロリーは約2000~2200kcalと変わらないのに、体重が半年で約2kg増えてしまいました。

今後ケトン値は維持したまま摂取カロリーを減らし、様子を見たいと思っております。

私は以前より動脈硬化の他、高コレステロール血症など異常があり、一般的な人の参考データとはなりえないかもしれません。

中性脂肪値上がりました。

速やかに下がると聞いていたので、気になっていました。記事にしてくださってありがとうございます。安心して卵やチーズを食べられます(笑)
それにしても、素朴な疑問なのですが、ケトン食の方も含め、なぜ中性脂肪値が上がる場合があるのでしょうね。
ふと思ったのですが、糖質だけでなく、タンパク質も足りていないと上がるなんてこと、ありえるでしょうか。
私も(ケトン食ではないですが)1日60g未満の糖質量で、タンパク質もちょっと不足気味なのを感じています。
(↑栄養学もなにもわかってないので…アホらしい質問だったらすみません)

Re: 一般的なデータかどうか

saiko さん

コメント頂き有難うございます。

私が把握している限りで、糖質制限をして中性脂肪が下がる方がかなり多数派を占めています。しかし理論的には糖質制限下でも脂肪の量が多いと中性脂肪の上昇が起こりうるというわけですね。

> 少し補足させていただきますと、中性脂肪が急に高くなった原因として一番有力なのは、『1日の食事のトータルの内容は変えずに、1日2食から1日1食に変えたため』だと推測しております。

saikoさんの場合は、ケトン食と少食療法を組み合わせているような食事療法だという特殊性はありますね。

古典的ケトン食の場合、摂取カロリーが摂取脂質量とほぼイコールになると思います。約2000kcalを一回の食事で摂るとなれば、かなりの脂質量になっているのではないでしょうか。

あるいは絶食療法目線でみれば、食べていない時間が長くなればなるほど、次の摂食時に中性脂肪合成能が高まっているという可能性もあるかもしれませんね。


Re: 中性脂肪値上がりました。

月夜野うさぎ さん

コメント頂き有難うございます。

蛋白質と中性脂肪の相関については間接的な関与はあるのかもしれませんが、よくわかりません。

基本的には糖質と脂質の量と代謝の兼ね合いで決まってくるのではないかと考えています。

お返事ありがとうございました。

書店で偶然に『間違っていた糖尿病治療』という本を見つけて読んでいるのですが、そのなかに「中性脂肪が高くても死亡率は増えない」という項目があります。
基準値高めのほうが長生きする傾向にあるという記述ですが、一方で300越えが続いて体重増加も続いている場合はインスリン抵抗性に要注意ともあります。
(Chapter6-8)
http://goo.gl/LEPUHJ

ひとつの検査項目の数字だけでなく、全体の数字を見てトータルに判断することが大事なのですね。

No title

自分も頭部にできる脂漏性皮膚炎に悩まされてました。でも顔や指先、ふくらはぎは脂が切れた状態でかさかさになるんですよね。

中性脂肪もコレステロールも少し高くなりましたが、体の調子が明らかに良くなっている事を考えるとどちらも病気の原因でないのでしょうね。

最近はまっているのがジョンソンビルのソーセージ。肉のうまみをまるごと味わえる逸品です。糖質制限、ケトン食にしても何の問題もない優れものですが、オリーブオイルをかけるとまた最高です。

Re: お返事ありがとうございました。

月夜野うさぎ さん

 コメント頂き有難うございます.

> ひとつの検査項目の数字だけでなく、全体の数字を見てトータルに判断することが大事なのですね。

 そうですね.

 もっと言えば,体調がよければ数字自体気にしなくてもよいかもしれません.

 数字を見ることで不安に感じるくらいなら,数字を見ずに健やかに過ごす方がストレスが少なくてよいという考え方もあると思います.

 そして医療のない時代,人類はそうやって生きてきたのではないかと想像する次第です.

Re: No title

SLEEP さん

 コメント頂き有難うございます.

> 中性脂肪もコレステロールも少し高くなりましたが、体の調子が明らかに良くなっている事を考えるとどちらも病気の原因でないのでしょうね。

 そう思います.原因と結果をはき違えないようにしたいですね.

No title

>もっと言えば,体調がよければ数字自体気にしなくてもよいかもしれません.
>数字を見ることで不安に感じるくらいなら,

たがしゅう先生、お気遣いありがとうございます!
先生の記事でしっかり書いてくださったので、中性脂肪値の不安は払しょくされました。

ただ、いままで自分の身体に無頓着だった私が、糖尿になって糖質制限を知ってから、身体のことや検査結果の読み方などをもっと知りたくなってきました。
好奇心を刺激されています。
なのでこれからは、不安にならない程度に(笑)数字も気にしていこうと思っています。

私は糖質制限で、一年365日、揚げた肉を食べない日は無いぐらい油まみれな食生活ですがw、中性脂肪は165から95に下がり、肝機能の数値もかなり下がりました。人体って不思議だなと思います。

Re: タイトルなし

ひで さん

 コメント頂き有難うございます。

 実際にやって、理論に納得して初めてその良さを享受できるのが糖質制限だと思います。
プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
漢方好きの神経内科医です。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

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