サイアミディン

理屈ではない拒否の仕方

ある50代女性の頭痛患者さんがいました。

幸いこの方は薬で症状の改善ができている方でしたが、

頭痛改善の一助としてもらうべく糖質制限の情報提供を行いました。

この方の頭痛は片頭痛であり、片頭痛にはケトン食が有効であることがわかってきています。

いつものように糖質を制限する事の理論的なメリットを時間をかけて説明するとともに、

この方へは次の本もお貸しして、糖質制限に取り組んでもらうようお勧めしました。



3ヶ月後、再びその患者さんが外来にやってきました。
診察室へ入ってくるなりその患者さんは、

「できてません!(貸した)本は(持って来るのを)忘れました!」

とおっしゃいました。

何が難しかったのかを尋ねてみたところ、

「自分で作らないからです。レシピを見てもわかりません!」

と言います。

でも自分で作らなくてもスーパーの惣菜コーナーで似たようなものを買ってくればよいのでは、と問うと、

「人が作ったものはちょっと…」

と言われます。

自分が作るのも嫌で、人が作っているものも嫌、あなたは今日まで何を食べてきたのですか、と問いかけたところ、

「簡単なものであれば作りますよ」

と答えられました。


みなさんはこのやり取りをみて何を感じられますでしょうか。

私は、この患者さんは結局今の食生活を変えたくないのだと思います。

変えたくないからいろいろな理由をつけて拒否されるのではないでしょうか。

理屈ではなく、単純に変えたくないから変えたくないのです。

いたずらに相手の提案を拒否し続けるものだから、話に一貫性がなく矛盾を生じます。相手がウソをついている時には往々にしてこういう事が起こります。

仮に彼女が言っている事が正しいとしても、彼女は簡単な調理と既製品しか食べないという事になります。

それは一体どんな食事でしょうか。おそらく糖質過剰であろう事は想像に難くありません。

それに貸した本に無関心すぎる事も気になるところです。あの本は決してレシピだけが載っている本ではありません。糖質制限の理論面だって書いています。要するにパラパラとしか読んでいないのだと想像します。

もしも、興味を持って読んでいれば、持ってくるのを忘れるという事はまずありませんし、場合によっては同じ本を購入される方もいらっしゃいます。

それに、たとえ納得がいかなかったとしても、少なくともその納得がいかない部分への反論をしてしかるべきです。

しかし、そのような事を問い詰めたところで、患者さんに負の感情を与えてしまうだけなので、

「わかりました。いつまででもお貸ししておきますので、また思い立ったらやってみてください。いつでもやり直す事はできますから。」

と返しました。

そしてもう一つ、

「薬で症状が治まっている事はよい事ですが、本当に治ったと言えるのは完全に薬なしで頭痛がなくなった時です。それを成し遂げるためには食事を見直す事がとても重要なことなんです。」

と付け加えたところ、患者さんはこう答えました。

「でも先生、薬があると安心するんですよね。」


なかなか根深いです。

糖質の中毒性と薬の依存性が、

理屈ではない執着心、理屈ではない拒否感を、

生み出しているように思えます。


たがしゅう
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No title

「でも先生、薬があると安心するんですよね。」
というセリフからは薬物依存を連想してしまいますね。
私だったら、薬物依存かもしれません、とつい答えてしまうかも・・・

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Re: No title

あんたーにゃ さん

コメント頂き有難うございます。

同感です。糖質中毒、薬物依存の二重の苦しみです。

一見うまくいっているように見える人でもそのような状態にあるというのが現代医療の大きな問題点の一つだと思います。

Re: No title

高岡の清 さん

情報を頂き有難うございます。

私も私ができる事を継続していきます。

No title

たがしゅう先生、初めまして。
深刻な問題だと思うんですけど、どこのコントだよ?!とばかりに思わず吹き出しました。
私の周りにも糖尿病でうつ病という方々がおりますけれど何年何十年と通院しているのに症状が変わらないという事実に全く疑問を感じないようです。
治すことに真剣にならないけど真面目に通院だけはするんだよなぁ…不思議です。

Re: No title

ヤシロ さん

コメント頂き有難うございます。

薬絶対主義がはびこっている事が大きく影響していますね。本当に根深いです。

No title

境界線型の娘が必死で行っている糖質制限が糖尿病歴数十年の父からすると只の偏食にしか見えないらしく、テレビや雑誌で知ったアンチ糖質制限の大御所の高説を頭から鵜呑みにしています。

糖質云々以前に急激に食生活の内容を変える事自体が身体に非常に悪いと思い込んでいるようでいくら説明しても理解できないようです。

その食生活と治療法を続けて糖尿病が治らなかったのに糖質と薬を取らないと病状が悪化する、私に関しては栄養失調でいつか倒れると思っているようです。

普段、原発や災害、異常気象について「テレビや雑誌の言う事は嘘ばかり」とか「御用学者の言う事なんか信じられるか」なんて言ってるくせに糖質制限だけは権威や御用学者の言う事を盲信してます。

自分の生活のスタイルを否定されるのが嫌なのかもしれません。
無自覚な悪習なら意識的な人体実験の方がよほどマシです。

大御所が何と言おうと私は糖分を大量に摂取するといきなり意識が飛ぶような眠気に襲われたし尻もちを付くような目まいにも悩まされていたから、食後毎回血糖値を測定して自分の数値の変動を観察し続けた結果、機能性低血糖症であることに気付いて糖質制限を始めました。それを伝えると父は素人が計測した数字なんかあてになるかと喧嘩腰。

私から言わせれば糖尿病のくせに測定器も買わずにただ薬を飲むだけの父(飲んでるくせにその薬の副作用を恐れている)方が全く理解できません。
「高血圧も塩分の取り過ぎが原因なのはわずかだ」と言ったら「実際に塩分を摂取したら血圧が上がる」と言ったので「どれくらいの量でどれくらい上がるのか?上がった血圧はどのくらいの時間あがったままなんだ?ちゃんと自分の体の変化を追ったことあるのか?」と聞いたら黙ってましたが。

医者でも誰でもなくまず自分が自分の身体のことを把握してほしいと切実に願います。そうすればおのずと必要な事が見えてくると思います。

父に対しては「勝手に呆けろ」とすら思いますが、医療資源を無駄にするのは嫌(生活習慣で治せるなら病院に行く必要なんてない)だし、人間にとって五感と知能を死ぬ直前までフル活用出来るのが最高の死に方だと思うので喧嘩しつつ頑張ります。

Re: No title

ヤシロ さん

 コメント頂き有難うございます.

> 普段、原発や災害、異常気象について「テレビや雑誌の言う事は嘘ばかり」とか「御用学者の言う事なんか信じられるか」なんて言ってるくせに糖質制限だけは権威や御用学者の言う事を盲信してます。
> 自分の生活のスタイルを否定されるのが嫌なのかもしれません。


 そうですね.

 大事な事は変わる勇気を持てるかどうかです.否定することは簡単にできます.

 結局,変われない人というのは,変わる事によって起こる変化を受け入れることよりも,多少不便であっても変わらない事で維持できる今までのやり方でよい,とそういう選択をしてしまっている人だと思います.
プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
漢方好きの神経内科医です。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

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