サイアミディン

つながっていく知識

先日,アセトン血性嘔吐症の本質について考えました.

復習すると,アセトン血性嘔吐症を起こしやすくする要因としては

・糖新生能が低いこと
・筋肉の量が少ないこと
・代謝の切り替えがうまくいっていないこと


が挙げられると思います.この条件を最も満たすのが2~8歳頃のやせ型で華奢なこども,だということです.

さらにそうした条件に血糖上昇イベントが加わって,低血糖になりかけている状態が「アセトン血性嘔吐症」,そして実際に低血糖になってしまった状態が「ケトン性低血糖症」,だというのが私の考えです.

ところでこの「アセトン血性嘔吐症」と「ケトン性低血糖症」ですが,「機能性低血糖症」に病態が非常に似ているように思います.
「機能性低血糖症」とは,1924年米国の内科医Seale Harrisによって指摘された「血糖値の低下に伴ない、精神的・身体的症状を来たす疾患」のことです.

もう少し具体的に言えば,糖質を摂取し血糖値が上昇した際にインスリン分泌が過剰に出すぎる体質の人がいて,糖質摂取から4~5時間後に実際に低血糖をきたしてしまう状態のことを指します.

機能性低血糖症の症状は,非常に多岐に渡ります.

例えば,頭痛、関節痛、目の奥の痛み,手足の震え、寒気、目の霞み、異常な眠気、頭痛,集中力の低下、手足の震え、寒気、ふらつき、イライラ、不安感、恐怖感、自殺観念、不眠、蕁麻疹などです.

精神症状も多くみられるため,統合失調症,うつ病,パニック障害などの精神疾患と誤診されることもあります.


さてインスリン分泌が過剰のせいで機能性低血糖になるといいますが,

これは低血糖にならないように働くシステムである糖新生能が低下していても,同じく機能性低血糖症を起こしやすくなると思います.

要するに,血糖を下げるインスリンの量と身体に備わる血糖上昇システム(糖新生,血糖上昇ホルモンなど)のアンバランスによって低血糖症が引き起こされるわけです.

また,どんな人が機能性低血糖症になりやすいかと言えば,一般的にはやせ型の人が多いです.

やせの人は

・糖新生能が低いこと
・筋肉の量が少ないこと


を満たしている可能性があります.これは先ほどの「アセトン血性嘔吐症」を起こしやすくする条件でもあるわけです.

ただし,もしもこの時,糖新生能が高ければ,「いくら食べても太らないやせ体質の人」となる可能性があります.

一方で機能性低血糖症を起こす人が全員やせかと言われればそうではないと思います.

ではやせていないけど筋肉の量が少ないというのはどんな場合でしょうか.

その一つはサルコぺニア肥満です.

機能性低血糖症の人が必ずしもやせていないのは,こうした病態が混在しているからかもしれません.



低血糖症を起こしやすい体質についてはそれ以外にも,以下の本に次のように書かれています.



A.胃下垂症,胃酸過多症
B.貧血体質
C.先天的糖尿病体質,先天的すい臓の機能生涯
D.アレルギー体質
E.自律神経失調症
F.甲状腺機能障害
G.その他(ビタミンB依存体質,高脂血症・高尿酸血症を持っている人)


ただ私に言わせると,これらは全て糖質過剰(低脂質,低蛋白)によって起こっているように思えます.

例えば「自律神経失調症があるから機能性低血糖症を起こす」,ではなく「糖質過剰があるから自律神経失調症を起こす」なのではないかと思います.他の体質についても同様の事が言えそうです.



さらに糖質制限をしはじめて時々一時的に体調を崩す人がいると思いますが,

この理由もアセトン血性嘔吐症を起こしやすくする要因の一つである以下の条件とつながります.

・代謝の切り替えがうまくいっていないこと

それまで糖質過剰で糖質代謝ばかり使っている人が,急にスーパー糖質制限すると代謝がうまく切り替わらないということは十分考えられると思います.

この時の体調不良に機能性低血糖症が一部関わっている可能性と,その反面うまくケトン体が利用できていないという可能性もあると思います.



となると機能性低血糖症,アセトン血性嘔吐症,ケトン性低血糖症を予防していくための根本治療方針は,

・糖新生能を高める(材料である脂質・蛋白質をしっかり確保)
・筋肉量を増やす
・代謝がうまく切り替わるように徐々に慣らしていく


という方法が考えられます.

そうすると今度は,

「どうすれば筋肉量を効果的に増やす事ができるのか」

という次の疑問が生じます.


このように今まで学んだ知識が次々と有機的につながっていくのも

糖質制限を学んでいて面白いと感じるところです.



たがしゅう
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No title

小学校の中学年、だいたい10歳くらいまでご飯やパンを食べるのがとても苦手でした。
最悪なのが給食で「残してはいけない」からひたすら甘いだけで風味のないジャムとパサパサの食パンを2枚無理矢理飲み込んでいました。
午後一の授業が体育の時は身体を動かすのがとても辛かったけど、吐いたり倒れたりするわけではないから見学することなく受けてました。
早生まれだから成長が遅くて体力がないんだ、痩せていて筋肉がつかないのもそのせいだと思っていました。
その数十年後、ラーメン→寿司の食べ放題で蹲りたくなる位の頭痛に襲われ何となく炭水化物とは相性が良くないとは思いましたが、糖質制限を行うには更に数十年かかりました。

子供の好き嫌いを我儘と捉えてしまいがちだけれど、本当は体質に合っていないから食べたくない食べられないという場合もあるのかもしれません。

たがしゅう先生の「糖質制限を行っている人達とも馴れ合わない」って考え方はまっとうだと思います。
少数派だからという理由で濃厚な関係を欲すれば自立や自由を失くしてしまいます。
肝心なのは理の通った主張が世に認められることです。

私も甘いものを勧められて断る機会が殆どですが、それで険悪になる関係ならその程度だと割り切っています。実際、どうしても顔を合わせる相手なら根気よく説明しているうちに何となく諦めてくれます。
諦めない人は見返りを期待している人か、あるいは自分の親切を押し付けたい人(おそらく好意に応えて貰えないことを非常に恐れている=自己評価が低い)ばかりです。

Re: No title

ヤシロ さん

 コメント頂き有難うございます.

> 子供の好き嫌いを我儘と捉えてしまいがちだけれど、本当は体質に合っていないから食べたくない食べられないという場合もあるのかもしれません。

 同感です.

 こどもは野菜が嫌いとよく言いますが,

 もしかしたら本来食べるべきではないという事を正直に表現しているのかもしれません.

> たがしゅう先生の「糖質制限を行っている人達とも馴れ合わない」って考え方はまっとうだと思います。

 この点に関する私のスタンスをもう少し正確に記しておきます.

 私は糖質制限をしている人達とよく交流しますし,これから糖質制限をしたいと言う人がいれば大いに応援します.

 ですが,結局糖質と向き合い方を決めるのは個人個人の問題です.「グループでこうしているから私もそうしよう」というのではなく,意見を参考にしつつも,あくまで決めるのは自分自身であるべきだと思っています.

切り替わるまでは私も……

こんにちは。
糖質制限を始めた直後、頭痛、めまい、耳鳴り&耳閉塞感がありました(どんだけ糖質取ってたんだ……(-_-;))。
これは数日から数週間でおさまりましたが、空腹感や眠気はしらばらく続きました。糖質制限前はラクラク行っていたダンスエクササイズもすぐにヘタるような状態でしたので、オイルやお肉を無理してたくさん食べるようにしていました。
スーパー糖質制限だから血糖値が上がっていることは考えられないし、きっとこれは糖新生への切り替えがまだ終わってないんだなと勝手に解釈していましたが、こちらの記事で、ああやっぱりそうだったんだ~と、ナットク。
糖質制限も4か月が過ぎたころから、上記のような症状はほとんど消失しました。エクササイズも完全復活できましたし、食べる量も減ってきています。
ちなみに、身体からケトン臭を感じなくなったあたりから安定してきたように思います。
今回も勉強になりました。ありがとうございました(^o^)

Re: 切り替わるまでは私も……

月夜野うさぎ さん

 コメント頂き有難うございます.

 糖質制限導入後に不調を感じたにも関わらず,実践し続けられたのは月夜野うさぎさんが「変われる脳」を持っていた証拠ですね.体調も改善し,素晴らしいと思います.

 個人差はありますが,糖質制限導入後に体調不良になられる方は確かにおられます.そういう場合は徐々に糖質を減らしていくという方法もやり方の一つですね.

とにかくやってみてほしい。

たがしゅう先生、返信ありがとうございました。

>糖質制限導入後に不調を感じたにも関わらず,実践し続けられたのは月夜野うさぎさんが「変われる脳」を持っていた証拠ですね.体調も改善し,素晴らしいと思います.

「血糖値を下げなきゃ!」という切羽詰まった思いがありました。
それに性格上、中途半端に糖質を取ったらすぐに挫折しそうで^^;
ただ、不調が起こるとたしかに不安になります。その不安を解消するためにネットで原因を調べはじめ、糖質制限への批判を目にすると、ますます不安になります。
医学的(科学的?)な基礎知識がないせいか、「糖質制限は危険!」なんて書かれていると、ついつい引きずられてしまうのです。
それでも、今までとはまったく違う食事内容になったのだから、多少の不快は当然だと言い聞かせていました。
幸いなことに、いまはたくさんの方が糖質制限の実践記録をブログに公開してくださっているのが励みになり、推進派のお医者さんのブログで勉強しているうちに、不安もじょじょに軽減してきました。
そうこうしているうちに、身体がなんとか慣れてくれました。

何かしら病を抱えている方で、糖質制限が適用できる状態であれば、とにかくやってみてほしいなと思います。
不快な症状が出るかもしれませんが、それも慣れるまでの辛抱です。
耐えられなければ、たがしゅう先生のおっしゃるように、段階的に糖質を減らしてゆっくり慣らす手もあります。
そうやって不調を乗り越えたあとには、全身が生き返るのを実感できます。
その爽快感は、なかなかのものです(*^_^*)

Re: とにかくやってみてほしい。

月夜野うさぎ さん

 コメント頂き有難うございます.

> そうやって不調を乗り越えたあとには、全身が生き返るのを実感できます。
> その爽快感は、なかなかのものです(*^_^*)


 実際にやってみた人だけが辿りつける境地ですね.体調の改善,本当によかったです.
プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
漢方好きの神経内科医です。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

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