サイアミディン

だからと言って糖質を勧めない

糖質制限の適応範囲はかなり広いです。

糖尿病やメタボリック症候群の治療というだけではなく、

ヒトを健康に保つための共通原理ととらえる方が適切であると私は思います。

そんな中、糖質制限をやってはいけないという病態もあります。それには以下のものが挙げられています。

・血糖値を強制的に下げる内服薬(SU剤など)やインスリンを使用している人
・高度腎機能障害(GFRが60ml/分未満)
・活動性膵炎
・肝硬変
・長鎖脂肪酸代謝異常症

今日はこれらの糖質制限をやってはいけないと言われる病態について考えます。
これらの病態を俯瞰で見た時に、

最後の長鎖脂肪酸異常症以外はすべて、糖質を摂り続ける生活を送ってきた事による「負の遺産」であるように思えます。

例えばインスリンや内服薬を使わないと血糖値が維持できない状態になるのは、

血糖値を上げ、追加インスリンを分泌させる糖質を摂り続け、膵臓を疲弊させた結果起こってきた事態です。

また高度の腎機能障害に関しても、とかく蛋白質の過剰摂取が悪者に取り上げられがちですが、

日本腎臓病学会のCKD診療ガイド2012によれば、「GFRが60ml/分以上あれば、顕性タンパク尿の段階でも、糖尿病性腎症2期、3A期までは、蛋白質制限必要なし」です。

また糖質制限をする事で腎機能が改善していく実例を目の当たりにして、蛋白の過剰摂取が腎機能障害の原因というのでは説明がつきません。

腎機能障害の真の原因は糖質の頻回過剰摂取に伴うグルコーススパイクにあるのではないかと思います。

次に活動性膵炎に関しては以前も考察しましたが、

糖質そのものも糖反射や胃内への長時間食物残渣の残留を通じて膵液を分泌させ外分泌系に過剰な負担を与えますし、

糖質によって追加インスリンを分泌させることで内分泌系にも負担をかけます。

膵炎にまで発展してしまうのはそうした負担をかけ続けた結果である可能性があります。特に膵炎の原因の中で特発性とされる部分にはそうした病態が関わっている可能性が高いと私は考えます。

さらには肝硬変に関してですが、

B型肝炎、C型肝炎などのウイルス性肝炎はともかく、最近は脂肪肝に由来する肝機能障害、NASH(Non-alcoholic steatohepatitis:非アルコール性脂肪性肝炎)やNAFLD(Non-alcoholic fatty liver disease非アルコール性脂肪性肝疾患)という病態が注目されています。

糖質を摂取しインスリンが分泌され、余剰な血糖が脂肪に変換される事で肝臓に脂肪が蓄積し、脂肪肝となります。

脂肪肝によってNASHやNAFLDが引き起こされ、可逆性の肝障害が不可逆的になっていく事で肝硬変へと進展してしまうわけです。そしてひいてはそれが肝癌へとつながるという一連の流れがある事がわかっています。

以上4つの病態は、言わば糖質を摂り続けた結果起こってきた病態であるわけなので、

糖質制限をやってはいけないというカテゴリーに含まれていますが、

だからと言って糖質を摂った方がいい、という話にはならないと私は思います。

これらの病態で糖質制限を行うには糖質制限+αの工夫が必要だということです。

例えば、高度腎障害に関しては、さすがに蛋白質が腎臓で処理しきれなくなる事を踏まえ、

「糖質制限+蛋白質制限」の工夫を行う事が必要です。これは古典的ケトン食に近い発想となります。

また肝硬変の場合は糖新生が低下している事が糖質制限をやってはいけない理由ですが、引き続き糖新生の材料である脂質と蛋白質を確保しながらも低血糖にならないように糖質の量を少しだけ増やしていくような「やや弱い糖質制限」へ移行していく工夫が必要だと思います。

活動性膵炎に関しても、活動期は絶食補液で十分に炎症が治まるのを見極めてから、それから糖質制限を再開します。

これらは糖質制限に理解のある医師の指導の下で実践する方が望ましいと私は思います。

そうした糖質制限を普通にできない状態にならないためにも、

普段から「糖質」と正しい付き合い方をしておく事が大事だと私は思います。


唯一の例外は長鎖脂肪酸代謝異常症ですが、

日本では年間10-50人の患者が発生するとされる稀な病気であり、私にこの病気の診療経験はまだありませんが、

もし私なら、この病気でさえできるだけ糖質に頼らずに栄養が維持できる方法を模索したいと思います(例:中鎖脂肪酸を最大限活用する、など)。

いずれにしても「糖質」の本質を見失わないようにしたいです。



たがしゅう
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No title

jこういう記事を読むと、内臓を損なわない内に糖質制限を始めて良かったなと思います。
糖質制限なら比較的容易ですが、たんぱく質制限やら脂質制限があると、もう本当に食べる物が無くなってしまいますよね。
何でも食べれる健康な内に糖質制限を始める事が大切なんですね。

ちなみに最近3食糖質制限に突入したばかりなのですが、早くも大きな変化がありました。
これまでは顔と脚がむくみやすく、毎日のように寝起きの顔が違いましたし、夕方になるとむくみで脚全体が痛いなんて普通の事でした。
ところが3食糖質制限に変えてからは顔も脚もピタリと全くむくんでいません。
こんなに早く変化が!?とビックリです。

また少食ですが先生のブログを読んで卵やチーズ、ナッツを活用していますので、今のところ特に痩せてもいないようです。
また確かに3食糖質制限の方が気持ちも体も楽です。
夜中になっても疲労感がなく、なんだか不思議な感じです。

たかが一週間程度でこんなに変化を感じるとは、本当にビックリです。

Re: No title

ゆるママ さん

 コメント頂き有難うございます.

 3食糖質制限に変えての体調改善,よかったですね.

 慣れてしまえばそれが当たり前の生活になるので,快適に過ごせます.糖質はまさに嗜好品の扱いですね
プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
漢方好きの神経内科医です。
南鹿児島さくら病院に勤務しています(下段にリンクあり)。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。

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