サイアミディン

目標をどこに見据えるか

とある漢方の勉強会で、便秘の話がありました。

「大建中湯」という漢方薬の有用性を紹介する講演でしたが、

その講演の冒頭で講師の先生は次のような事をおっしゃいました。

『たかが便秘とあなどるなかれ、便秘は患者のQOLを確実に低下させています。

腫瘍などの器質異常がなくて起こる便秘の事を機能性便秘症と言います。

機能性の病気の症状をゼロにする事は難しいです。

その代わり患者の満足度を高める事が医師としての使命ではないでしょうか』


ごもっともな考えですが、これには私は少し異論があります。
講師の先生はいろいろな患者さんを診てきてそういう考えに達したのでしょうが、

私は医師としての使命はあくまで治る事を目標に見据えるべきだと思うのです。

すなわち、最初から「機能性疾患の症状をゼロにすることはできない」と決め付けてはいけないということです。


まず糖質制限をすることでの排便の変化は,私の知る限り,かなりバリエーションがあります。

下痢をする人もいれば、便秘になる人もいますし、はたまた快便になる人もいます。

基本的に体調が快方に向かうはずの糖質制限で、排便に冠してこれだけの多様性があるのは、腸内細菌が介在している為だと思います。

つまり、同じ糖質制限をしていても、人によって腸内細菌が異なるために、反応が変わってくるということです。

しかし糖質制限を長く続けて食事のパターンが安定してくると,それなりに便の状態が落ち着いてくる事が多いです.


一方で,便秘には世の中に根深く広まっている「野菜ヘルシー」の考えにも深く関連があります.

一般的に野菜には食物繊維が多く含まれています.その他,海藻,きのこ類にも食物繊維が多いです.

ヒトは食物繊維を消化する酵素を持っていないため,吸収されずに便の体積を増加させる事になります.

先日紹介した渡辺信幸先生の日本人だからこそ「ご飯」を食べるなの中では次のように書かれています(p131).

『ダイエットや便秘対策としてこんにゃくや白滝などを大量に食べる人が見受けられます.

腸閉塞になるケースも少なくありませんので,なるべく控えるようにして下さい.

食物繊維は便秘の解決にはならず,逆に悪化させるだけなのです』



このように渡辺先生は野菜のとり過ぎに警鐘を鳴らし,

野菜の摂取は,ビタミンC摂取のために少量(特に葉野菜を推奨)をプラスするべき,とのお考えです.

私も「野菜はそんなに一生懸命とらなくていい」という考えですが,

日々診療に当たっていると,「野菜を一生懸命とらないといけない」「野菜があんまりとれていないから私は今不健康だ」と考えている人は極めて多いです.

この「野菜ヘルシー」主義も,便秘を難治にしている一つの大きな要因だと考えられます.

という事は野菜の摂り方を少し変えるだけで便秘の改善につながる可能性もあるという事です.



冒頭の先生のお考えは,

全ての知りうる限りの治療を試してもうまくいかないからこそ行き着いた考えなのでしょうけれど,

糖質制限の考えや,野菜との付き合い方を見直す事で,

今まで見えなかった打開策が見えてくる事もあると思います.

諦めず考え続ける事が大事ですね.


たがしゅう
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No title

たがしゅうさん

紙パルプ産業に従事するものとして食物繊維の取り過ぎは危険だと思います。便秘の原因の多くは食物繊維の取りすぎでしょう。繊維というのは水分に溶けてるうちはいいのですが、一箇所にとどまって乾燥すると結構厄介なのです。

そもそもたいていの植物はそもそも人間に有害ですよね、我々が食べる野菜だって品種改良の結果無毒化されているとはいえ大量に食べれば毒性があるかもしれません。無農薬野菜は自分で身を守るため毒素を作る先祖がえりをするそうです。

Re: No title

SLEEP さん

 コメント頂き有難うございます.

> そもそもたいていの植物はそもそも人間に有害ですよね

 そう思いますね.

 夏井先生の『炭水化物が人類を滅ぼす』を読んで,その辺りはクリアに理解できるようになりましたね.

 もともと動物を食べる用の腸管を持つヒトが,植物を食べる必然性はないのですよね.

No title

やっぱり本来腸が健康だと野菜の食物繊維はいらないのでしょうね。
私の場合は野菜を全く食べないと逆に2週間でも平気で便がでないので、食物繊維の力を借りないと便が出せないという酷い状態です。
10日くらいまではお腹のハリも痛みも全くないですが、2週間になると流石にのた打ち回る激痛が来て、救急車を呼ばれそうになった事があります。

よくお腹の手術後の腸閉塞を防ぐため?に野菜を食べてはいけない(だったでしょうか?)、なんて話を人に聞いた事がありますが、それだと私の場合は逆に腸閉塞になるのでは・・・?と、心配に思った事があります。
腸が健康な方がとても羨ましいです。

No title

「私のような状態は、やっぱり医学的に特殊ですか?」とお聞きしたかったのですが、書き忘れてしまいました・・・

Re: No title

ゆるママ さん

 御質問頂き有難うございます.

> 私の場合は野菜を全く食べないと逆に2週間でも平気で便がでないので、食物繊維の力を借りないと便が出せないという酷い状態です。
> 10日くらいまではお腹のハリも痛みも全くないですが、2週間になると流石にのた打ち回る激痛が来て、救急車を呼ばれそうになった事があります。
> 私のような状態は、やっぱり医学的に特殊ですか?


 食物繊維を摂って大丈夫かどうかは,その人の腸内細菌の組成によるところが大きいと思います.

 詳しい機序は不明ですが,糖質制限をする事によって,腸内細菌に影響が加わって便秘になるという事はありえる事です.

 江部先生のブログによると糖質制限初期に便秘になる人は全体の2~3割程度いらっしゃいますが,その後落ち着いてくる人が多いようです.

 ドクター江部の糖尿病徒然日記
 2013年11月12日(火)のブログ記事
 「糖質制限食実践中に生じることがある好ましくない症状・変化(6) ~便秘について~」
 http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-2748.html

 ゆるママさんの「野菜を摂らないと2週間便秘で腹痛」という現象が糖質制限前の事なら,野菜以外の食物繊維(炭水化物中の食物繊維,例:小麦など)も含めたトータルの量がどうであったかにも注意する必要があります.

 一方,糖質制限後にもそうなるのだとしたら,少し不思議ですね.またいろいろ考えてみたいと思います.
プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
漢方好きの神経内科医です。
南鹿児島さくら病院に勤務しています(下段にリンクあり)。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。

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