サイアミディン

ドーパミンが足りなくて痛い

糖質制限推進派の医師としては,

糖質制限によって起こりうるトラブルについて熟知しておく必要があります.

これについては糖質制限のパイオニアの江部先生のブログで詳しく紹介されていますが,

そんな中,ブログ読者の京子さんより示唆に富むコメントを頂きました.

糖質制限をはじめてから腰痛が始まったので、

「なぜ?」と思いましたが、仕事のストレスがすごくかかっていたので、ドーパミンの枯渇にあてはまります。

動作が遅くなり、言葉も出にくくなりました。

今はドーパミンを出すよう趣味や遊びも大切にしています。


どうやら糖質制限を始めた時に痛みが出てくるケースがあるようです.

今日はこの点について考えてみたいと思います.
先の記事でドーパミンには鎮痛作用があるという話をしました.

一方でストレスはドーパミンの放出刺激になるので,ストレスがかかり続けるとドーパミン神経を酷使し続けることになります.
おそらく京子さんも日々のストレスでドーパミンが放出され続けていたはずです.もしかしたら糖質制限前から多少痛みも出て来ていたかもしれません.

でも糖質を摂取している限りは付け焼刃的なドーパミン放出は起こるので,それでもドーパミンの鎮痛作用で痛みは我慢できていたのでしょう.

さて,そのような状況においていきなり糖質制限をやった場合,はたして何が起こるでしょうか.

それは一時的なドーパミン枯渇状態です.

それまでが糖質という付け焼刃に頼り切っていたために,しばらくは自力でドーパミンを作り出すことがなかなかできなくなっていたのではないでしょうか.

だから鎮痛作用が不十分となり痛みを生じていたのだと思います.

しかも京子さんの場合は「動作も遅くなり,言葉も出にくくなった」ということですから,

パーキンソン病に近い状態までドーパミンが枯渇していた可能性が示唆されます.


では自力でドーパミンを安定して供給するためにはどうすればいいかと申しますと,

ドーパミンの材料はチロシンというアミノ酸です.またドーパミンを生成する反応を触媒する酵素はタンパク質です.

つまり,しっかりドーパミンを作るためには十分にタンパク質を確保する必要があるのです.これがまず必要条件です.

一方で,糖質制限というのは,言ってみれば体質を切り替える行為です.

「ブドウ糖―グリコーゲンシステム」という付け焼刃的システムから,

「ケトン体―脂肪酸システム」という底力のあるエネルギーシステムに切り替える行為です.

だから,たとえタンパク質を十分に摂取していても,

それまで高糖質食の生活にかなり依存している人が,急に3食主食抜きレベルの糖質制限を行うと,

急激な体質の変化に身体がついていけず,下痢や冷え,倦怠感などの症状を一時的にきたす事があります.

よって体質が十分に切り替わっている事が十分条件です.

この「タンパク質をしっかり確保する」「ケトン体質に十分切り替わる」というのがドーパミンを安定供給するための必要十分条件になるのではないかと私は考えています.

ただし,全員が全員,導入期に体調不良になるわけではありません.

私の個人的な印象では,そうなるのはやせた方に多い印象です.

ちなみに,私は太りやすい体質の方ですが,私自身はいきなり3食主食抜きで開始しましたが,

糖質制限導入期に大きなトラブルはありませんでした

強いて言えば最初少し冷えを感じました.それはもしかしたら,まだ体質が完全には切り替わっておらず,タンパク質がうまく利用できていなかったのかもしれません.

ただ私の場合はそれほど積極的にエネルギーを確保しようとしなくても空腹感がコントロールできて全然ばてませんし,

糖質量をそれほど厳格に制限していなくても(時々糖質を多めにとってしまう日もあります…),それでもそんなに糖質摂取に伴う体調不良にもなりません.

要するによほどの事がない限り体調不良にならないという意味で,まさに生存に有利な体質だと思います.

ただ,その代わりに肥満しやすいから見た目があまり格好よくないというのはたまに傷です.

その点,やせ体質の人はより注意が必要です.

そういう人は脂肪が蓄えにくいために,私のような肥満体質の人間に比べて,脂肪を切り崩してケトンを産生するのが不得意なのだと思います.

やせ体質の人がしっかりケトン産生を行うためには,やはり十分な脂質の確保が必要になってくる,というわけです.

これは先ほどの話と似ていると思いませんか.



こうした人達が導入期に体調不良を感じることなく糖質制限へうまく移行するためには,

「徐々に慣らしていく」のが一番ではないかと私は思います.

一方で「徐々に慣らしていく」事には難しさもあるのですが,

それは,その問題点を理解さえしていれば,私はアリだと思います.

そして今回の考察で得た教訓はもう一つあります.

糖質制限導入期に特に注意を払うべき人は,やせ体質の人だけではなく,

常にストレスを感じているような人,非常に真面目な人,パーキンソン病の人,など

即ち,ドーパミン枯渇状態が示唆されるような人に対しては,徐々に慣らすために半「糖質制限食」から始めることも

一つの方法かもしれないと思いました.


たがしゅう
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No title

記事にしていただきありがとうございます。
わたしは元々 BMI21くらいでした。
今は18です。
たんぱく質をしっかりとる・・・というのは、
食べているつもりでも、足りてないかもしれません。
バターやラードなど、脂肪も食べてケトン体質を
目指しています。
糖質制限が広まると、女性がもっとやせようとして
安易に取り組む人が増えて、体調不良の人も出て
「危険なダイエット」とされる懸念がありますね。

Re: No title

京子 さん

 コメント頂き有難うございます.

> 糖質制限が広まると、女性がもっとやせようとして
> 安易に取り組む人が増えて、体調不良の人も出て
> 「危険なダイエット」とされる懸念がありますね。


 確かにそうですね.

 糖質制限をただのダイエットと理解しない方がよいです.私は「健康な状態」に近づけるための最も効率的な方法だと考えています.何しろ体にとって不要なものを取り除くわけですので.

 しかし減らすという事ばかり意識しすぎて,必要なものを摂らない(脂質,タンパク質)という事があってはいけません.やせ型の人は特にその辺誤解のないように取り組んでもらった方がよいと思っています.

 2014年1月21日(火)の本ブログ記事
 「ただのダイエットではない」
 http://tagashuu.blog.fc2.com/blog-entry-158.html
 も御参照頂ければ幸甚です.

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プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
漢方好きの神経内科医です。
南鹿児島さくら病院に勤務しています(下段にリンクあり)。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。

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