サイアミディン

ドーパミンと便秘

糖質頻回過剰摂取を「ドーパミン神経を刺激し続けること」という目線でみると,

また新たに見えてくる事がいろいろとあります.

今回は「糖質制限をすると便秘になる」というケースについて,

ドーパミンの観点から考えてみたいと思います.

ドーパミンが放出されてその刺激を受ける細胞にある受け手の事を「受容体」と言いますが,

ドーパミンの受容体には現在ドーパミンD1受容体~D5受容体の5つがある事が知られています.

その中で,ドーパミンD2受容体が臨床的には特に重要です.

このドーパミンD2受容体は脳や腸管に存在する事がわかっています.
ヒト自らのドーパミンがこれら複数ある受容体をどれだけどのように刺激するかについては,複雑でよくわかっていない事も多いのですが,

殊このドーパミンD2受容体に関しては,これを刺激する事で嘔気・嘔吐や便秘の原因になるという事がわかっています.

例えば,パーキンソン病で用いるドーパミンD2受容体を刺激する薬の量が多いとそのような副作用が出る事が知られています.

D2受容体は脳の嘔吐中枢という部位にあるため,これを刺激する事でまず嘔吐が誘発されますし,

腸管のD2受容体を刺激すれば,消化管の蠕動運動が抑制されます.これによって胃内容物が停滞すれば吐き気を催しますし,腸が動きにくくなります.

すなわち,ドーパミンが出てD2受容体が刺激されれば便秘になる,ということになります.

ということは,糖質摂取によってもドーパミン分泌が刺激されるわけなので,

ドーパミンだけで考えると、糖質制限をすれば便秘が解消する方向へ行きそうです。

しかし実際には糖質制限をして便秘になるという方が一部おられますというのも事実です.

その理由の一つは、人それぞれ異なる腸内細菌を有している事だと考えていますが、

ドーパミンという観点で見ると、もう一つの考えが頭に浮かびます。



そもそもドーパミン放出の刺激になることは何も糖質だけではありません.それはもう非常に多岐に渡ります.

例えば,糖質でなくてもおいしいものを食べた時でもドーパミンは出ますし,

おいしいもの食べることを想像するだけでもドーパミンは出ます.

他にもゲームやスポーツなど楽しい事をしている時,あるいは溝に落ちないよう注意して歩く時,

煎じつめれば朝顔を洗う時でさえ,自分で何かをしようと思って何らかの行動を引き起こす時にはドーパミンが働きます.

従って,糖質摂取を止めたところで,それはドーパミンの刺激となる大きな誘因の一つを取り除いただけなので,

その他のあらゆるドーパミン刺激の総量がどうであるかによって変わってくるという事になると思います.

従って,糖質制限で便秘になる人は,生活の中でドーパミン刺激となるような他の刺激が多くなったりしていないかどうかが気になるところです.



なお,ドーパミンが少なくなるパーキンソン病では便秘がしばしば問題になります.

便秘をきたすはずのドーパミンが少ないのに,どうして便秘になるのかと思われるかもしれませんが,

パーキンソン病の便秘の原因は別にあります.

その理由の一つはパーキンソン病には自律神経障害を伴う事が多いという事です.自律神経がうまく働かないと便秘や立ちくらみをきたします.

他にもパーキンソン病の症状,動作緩慢で運動がしにくくなって腸への刺激が少なくなるという事も関係していると言われています.

そしてパーキンソン病の症状を改善するためにドーパミンを出させる薬を使いますが,

これがまた便秘を悪化させるという事でパーキンソン病の便秘は病気の進行に併せて徐々に難治になっていく傾向があります.


今日はドーパミンという観点で腸への影響について考えましたが,

腸の働きは複雑でなかなか理解が一筋縄にはいきません.

引き続きいろいろな観点から考えていきたいと思います.


たがしゅう
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No title

便秘にドーパミンが関わっているなんて全く知りませんでした。
糖質制限前は甘い物が大好きでした・・・

幸い糖質制限後はおからパウダーを使った料理をよく作るので食物繊維の力で便は押し出されています。
ですが人間の体は本来食物繊維が無くても排便できるのですよね。
食物繊維は便秘の元にもなるとの事で(これも実は知りませんでした)、そういえばおからパウダーを摂り過ぎた翌日は排便時に力を入れるとお腹の奥が痛むので、もしかして負担が掛かっているのかもしれません。
摂り過ぎには十分に気をつけようと思います。

しかし糖質制限を始めてからは食事が本当に美味しく楽しくなりました。
糖質制限用なら大好きな甘い物も沢山食べられるので、きっとドーパミンが沢山出ていると思います。
そういう意味では便秘は治らないように思います(汗)
でも一年くらい糖質制限を続けたら、一度便秘が改善されているかどうかを試してみたいと思います。

Re: No title

ゆるママ さん

 コメント頂き有難うございます.

 様々な物質や腸内環境が腸の動きに関わっている中で,ドーパミンもその中の一物質という事ですね.実際はそれで全てが説明できる程単純ではないようです.
プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
漢方好きの神経内科医です。
南鹿児島さくら病院に勤務しています(下段にリンクあり)。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

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