サイアミディン

歪んでしまった栄養学

世の中には誤った常識がはびこっています.

健康食品と言うと皆さんはどのようなイメージを思い浮かべますか?

おそらく「低脂肪」「低カロリー」という言葉が頭の中を踊るのではないでしょうか?

しかし糖質制限の考え方を知った上でこの常識を見直してみると,それが誤っていることが見えてきます.

たとえば「お寿司はヘルシー」というイメージも低カロリーから来ているものだと思われますが,糖質という観点からみると,お米と酢飯に含まれる砂糖とのダブルパンチで,相当な高糖質食品なのです.

また世の中にあるいわゆる「健康食品」はカロリーが抑えてあってもそのほとんどが炭水化物由来の栄養であるものです.

試しに「健康食品 ランキング」で検索してみると,上位のものはほぼ炭水化物メインで脂肪はほぼゼロに近い組成でできているということがわかります.


ここで一人私が出会った患者さんを紹介します.

60代前半の女性ですが,軽い脳梗塞を起こしたことで私の外来へ通院されることになりました.

60歳前半での脳梗塞の発症というのは比較的若い方なのですが,その方はかなりの健康食品マニアでした.某社の健康食品をかたっぱしから試され,普段の食事もおそろかになりながら健康食品ばかりを食べておられるハマりようでした.

その健康食品をすべてチェックさせてもらうと,やはり低カロリーベースでほとんどが脂肪ゼロ,なおかつ糖質割合の高いものばかりでした.

まず脂肪は人体を構成する基本栄養素です.ゼロにしてよいはずがありません.

また低カロリーであれば健康かというとそう単純なものでもありません.カロリー収支理論はそれ自体を見直さなければならない時期にもきていると考えています(これについてはまたいずれ記事にしたいと思います).

一方糖質は三大栄養素の中で唯一血糖値を上げ,血糖値の波(グルコース・スパイク)を生じ,そのことが酸化ストレスを通じて血管を固く細くしていきます(動脈硬化).こうなるとその健康食品のせいで脳梗塞になってしまったのではないか,とさえ思えてきます.

これでは『不健康食品』です.

そこで私はその患者さんに糖質の有害性を説き,直ちにそれらの健康食品をやめるよう助言するのですが,その方はなかなか納得されず,完全にやめることができません.

つまり現在の誤った栄養学の常識が,誤った健康食品を生み出し,患者さんに誤った固定観念を与え,実際に健康被害を出してしまっていると思うのです.何かが歪んでいます.


そして,我々医師は高血圧,糖尿病など生活習慣病の治療に対して「食事療法が基本である」ともっともな事を言っていますが,

実は医師になる過程の中で,栄養学を体系的に学ぶ機会はほとんどありません.生化学などで糖質,脂質,蛋白質の性質・代謝などは学びますが,それらの知識がどうつながって臨床に応用されるかということは一切学ぶことはなく,

一足飛びで摂取カロリーをコントロールすべきだという話になり,これまでずっと従来のカロリー制限指導が行われてきているという構造になっているのです.

しかもほとんどの医師は実際の栄養指導を自身で行わず,栄養士さんに任せてしまっている部分があります.

「食事療法が基本である」と言っておきながら,それを指導できるほどの十分な知識を医師は持ち合わせていないというのが現状なのです.

それではいかん,ということで私はいっそのこと栄養学を勉強し直して栄養士の資格をとってしまおうかと思いましたが,なんとそこにも大きな壁があることに気が付きました.

栄養士の資格をとるための受験資格をみてみると,栄養士養成施設(栄養士専門学校など)を出ているということが必須要件という仕組みになっているのです.よそ者(?)は受験することすらできません.

このように医学と栄養学は,互いに密接な関係があるにも関わらず,両者の間には大きな溝があります.この溝を埋めるためにも,従来の栄養学の抜本的見直し作業が必須であると考えています.

でも医師は食事療法以外にも多彩な知識を持っているからそれでいいではないかと言われるかもしれません.食事が無理でも薬で治せるならそれでもいいではないか,と.

確かに糖尿病一つとっても薬物療法は非常に進化しました.しかし進化したにも関わらず糖尿病の患者数は減るどころか増える一方です.それは食事という基本的な部分の検証がこれまでないがしろにされてきた結果だと私は考えます.食事を見直さなければ,糖尿病もがんも認知症も絶対に治すことはできません.食事療法というのはそれほど大きな意義を持っています.

私は栄養に対する介入は,一般の医者がやっている治療(薬,手術,放射線など)よりもよっぽど意義深いものだと考えています.

それなのに従来の栄養学を疑えず,ただその誤った常識にしばられて従来の指導や商売を行っている栄養士や健康食品業者は自分たちの行っている事がどういう意味を持つのか,本当にそれがその人の健康にどういう影響を及ぼしているのか,よくよく考えてもらいたいのです.

だから私は,たとえ自分が栄養士の資格がとれないにしても,きちんとした栄養に対する介入ができるように,栄養学の勉強は常に続けていきたいと思っています.


たがしゅう
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正気の沙汰か?

 「糖質オフネットワーク東京」5月の例会で、たがしゅう先生のお話を聞かせていただいた者です。

 本日、ヤフートップページに、↓の記事がありました。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130921-00000008-asahi-soci

 新潟県南魚沼市議会が全会一致で「朝食のご飯はコシヒカリを食べよう」という条例を可決したそうです。

 「コシヒカリのブランド力をもっと高めよう」とか、「消費量を更にアップしたい」という思いはわかりますが、他人の朝食内容を、それも条例を作ってまで規定しようとすることには疑問を感じざるを得ません(これこそホントの食事『介入』ですかね!)。全く「小さな親切大きなお世話」です。全会一致で可決という点も気持ち悪いですね。先生はどのようにお感じになりますか?

 先生のこれからのご活躍を期待しております(またお話をお聞かせ下さい)。

Re: 正気の沙汰か?

satyさん

 興味深いニュースを教えて頂き有難うございます.

 私の感想と合わせて記事にさせて頂きます.

医師が、体系的に栄養学を学ばないんですね

 何かというと、「食育」が話題になる時代に、
医師も栄養士も、栄養学を体系的に学んでいないということに、正直びっくりいたします
 今後も、丁寧で分かりやすい解説をお願いいたします。
 現代人は、ビタミンC・カルシウム・鉄分が不足しているといわれますが、どうなのでしょう?
 栄養についての解説シリーズ、楽しみです。

Re: 医師が、体系的に栄養学を学ばないんですね

わんわんさん

 いつも御見守り頂き有難うございます.
 皆様のおかげで,ブログを楽しんで書けるようになってきました(^-^).

 おっしゃる通りで,「食育」だとか「栄養サポートチーム」だとか栄養の重要性が盛んに叫ばれているにも関わらず,根本的な部分で医学と栄養学はすり合わせられていないのです.

 糖質制限はこの溝を埋める突破口になる重要な考え方だと思います.

>現代人は、ビタミンC・カルシウム・鉄分が不足しているといわれますが、どうなのでしょう?
>栄養についての解説シリーズ、楽しみです。


 私の現時点の考えでは,

 糖質制限ベースに,食欲の出る時に食べたい分だけバランスよく食べる,という形でやっていればそうした栄養素が不足することはまずないと考えています.

 が,もう少ししっかり勉強して答えるべきですね.栄養についての解説シリーズまた考えてみたい思います.

 今後とも宜しくお願い申し上げます.
プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
漢方好きの神経内科医です。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

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