サイアミディン

長く続けたその先に

糖質制限を指導しても糖質がやめられない人がいます.

「おいしいものが食べられないなんて辛い」「友人に危険と言われた」「どんどんやせていってしまう」などあの手この手の理由で糖質制限を続ける事を拒否されるのです.

そういう方に対して,「それはタバコが止められない喫煙者と同じ構図だ」とよく言います.

私は糖質制限の説明に対して難色を示される方に対しては,「1週間だけでもいいから期間限定でやってみましょう」と提案するのですが,

それでも上記な拒否反応を示されてしまうのです.

これは依存症の構図そのものだと思います.

依存症としてよく研究されているものの一つに「ニコチン依存症」があります.

すなわちタバコの依存性の問題ですが,一つ面白い論文がありました.

「1年禁煙できるかどうかが長期禁煙の鍵」

Garcia-Rodriguez O, et al. Probability and predictors of relapse to smoking: results of the National Epidemiologic Survey on Alcohol and Related Conditions (NESARC). Drug Alcohol Depend. 2013 Oct 1;132(3):479-85. PMID: 23570817

多くの喫煙者が禁煙を希望しており,
約半数は過去1年以内に禁煙にチャレンジしているが,なかなか成功できないでいる.
臨床例で禁煙状況を追跡した研究によると,禁煙継続率のグラフは双曲線に近く,
禁煙直後には再喫煙率が高く,禁煙期間が長くなるほど再喫煙率が減っていく.

臨床例では再喫煙に関連する因子として,若年者,不健康,社会経済的弱者,肥満,未婚,ニコチン依存度が高い,不安やうつなどの精神症状があること,などが指摘されている.

一方,一般大衆を対象とした研究は20年以上前の後ろ向き研究NHANESのみであり,
2009年の前向き研究であるITC-4やATTEMPでは再喫煙率は示されていない.
今回,一般大衆の再喫煙の経過と関連因子について,大規模な追跡調査のデーターを用いて解析した.

データーは米国飲酒関連障害疫学調査の1期・2期のものを用いた.
1期の調査は2001-2002年に,2期の調査は2004-2005年に,コンピューター上の面談で行われた.

1期調査は18歳以上の一般人に対して行われ,81%,43,093人から回答を得た.
2期調査は約3年後に行われ,回答率は86.7%,34,653人であった.

過去に連日喫煙の既往があり,1期に禁煙していた5,831人のうち2期にも回答した人のデーターを解析し,
1期と2期の間で100本以上喫煙した場合を再喫煙とした.

回答者の75%が46歳以上で白人が82.2%,BMI 25以上の肥満者が69.2%,都市部在住が78.1%,
高卒以上が84.4%,年収$3.5万未満が64.3%,既婚が73.9%,無職が44.8%,健康な者が80.9%,であった.
約30%の者は前年に精神疾患を経験していた.

初回喫煙年齢は平均16.1歳,連日喫煙開始は18.6歳,1日平均喫煙本数は20.2本,
連日喫煙年数は16.8年,禁煙開始年齢38.8歳,禁煙継続年数は平均17.3年,
過去の禁煙経験者80%,離脱症状経験者65.2%,であった.

1期調査の時点で禁煙期間がまだ12か月を越えていなかった者については,
1期調査の時点で禁煙の続いていた長さと,2期調査での再喫煙率との関係を見ると,
1期での禁煙持続期間 2期での再喫煙率
1か月 約60%
2か月 約66%
3か月 約68%
4か月 約63%
6か月 約58%
12か月 約48%
と,4か月以降ゆるやかに低下した(原著のグラフから採寸).

1期調査の時点で禁煙が1年以上続いていた者については,
1期調査の時点で禁煙の続いていた長さと,2期調査での再喫煙率との関係を見ると,
1期での禁煙持続期間 2期での再喫煙率
1年 約47%
2年 約36%
3年 約33%
4年 約30%
5年 約26%
10年 約19%
15年 約15%
20年 約12%
30年 約10%
35年 約9%
と,徐々に再喫煙率の減少はゆるやかになった(原著のグラフから採寸).

背景因子ごとに単変量回帰分析を行い再喫煙の頻度を比較すると,再喫煙が多かったのは,
男性よりは女性,30歳未満,肥満でない人,ヒスパニック系やアジア人,大卒以上,
年収$2万未満,未婚,健康な人,精神疾患などであったが,
多変量回帰分析で共変量の影響を補正すると,禁煙時の年齢が低いこと,
禁煙期間が短いこと
,の2点のみが再喫煙のリスク因子として残った.

禁煙継続には12か月以上の継続が重要である


この論文において,仮に喫煙を「糖質摂取」,再喫煙を「糖質制限断念」に置き換えて考えるととても興味深いです.

要するに長く続ける方が,依存症からうまく離脱できるという事です.

よく「糖質制限は長期間続ける事が難しい」という批判がありますが,

それはこの依存症の問題をはらんでいるからだと思います.

一方で,長期に続ける事が難しいからといって「糖質制限の実施期間は6か月から1年程度にすべきである」という意見を聞く事がありますが,これは本末転倒です.

言うなれば「タバコを長期間やめ続けるのは難しいから,禁煙の実施期間は6ヶ月から1年程度にすべきである」と言っているのと同じです.

本当に糖質制限の恩恵を受ける事ができるのはその先なのです.

それまでは依存症から離脱するための,体質がきちんと切り替わるための,言わば準備期間だと思います.



このように依存症として

かなり研究が蓄積されている禁煙の領域から

学べることも多そうですね.


たがしゅう
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No title

たがしゅうさん

禁煙の難しさは呼吸というあまりにも当たり前の行動に組み込まれているため、という禁煙に成功した方の本を読んだことがあります。その方いわく禁煙は真面目に堅苦しく周囲の迷惑への正義感や健康のためにやるのではなく、よくわからないが新しい自分に生まれ変わるのだぐらいのふわっとした気持ちでやったほうがいいと。そのぐらい禁煙は難しいと。禅問答のようですが糖質依存をやめた自分もわかる気がしますね。
喫煙や糖質摂取は自分で自分を檻の中に追いやる行為というのは言いすぎでしょうか。食後の眠気や数時間後の飢餓感に襲われる灰色の世界と言ってもいいかもしれませんね。

先生、お久しぶりです

最近、糖質をタバコや酒、ドラッグに変換して周りを見ています。
とっても面白いです。

摂取できないと
辛い。
フラフラする。
イライラする。
そのことばかり考えてしまう。

摂取すると
気分がいい。
幸せな気分になる。
満腹するまで食べてしまう。

クスクスです。


禁煙に成功した知人は、
スーパー嫌煙家になりました。
憎むことでしか断ち切れないように感じます。

「ばかもの」という映画では。、
アルコール依存症の主人公が断酒更生中に
親族の結婚式にでます。
親戚に勧められて仕方なく飲んだ一口のビールが引き金で、
結婚式をめちゃくちゃにしてしまいます。
そして元の木阿弥に。


多かれ少なかれ依存というものは存在しますが、
その度合いは個人差がありますよね。
私はまったくもって禁断症状は出ませんでした。
最近は、食に対する興味も薄れてきて、
おいしいものは食べたいけど、
そんなに情熱を傾けなくてもいいかな、とさえ感じています。

Re: No title

SLEEP さん

コメント頂き有難うございます。

> 禁煙の難しさは呼吸というあまりにも当たり前の行動に組み込まれているため、という禁煙に成功した方の本を読んだことがあります。

なるほど。

当たり前の行動に組み込まれているという意味では、糖質摂取も似たようなものですね。

Re: 先生、お久しぶりです

ゆかり さん

コメント頂き有難うございます。

依存という現象は学ぶと奥深いです。

糖質、喫煙、飲酒に限らず日常生活のあらゆるものに依存は及びます。

依存とどう折り合いをつけて生きていくかという事を考えないといけないのかもしれません。
プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
漢方好きの神経内科医です。
南鹿児島さくら病院に勤務しています(下段にリンクあり)。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。

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