サイアミディン

優秀でなくても出来ること

ブログ読者のJoさんより意義深いコメントを頂きました。Joさん、有難うございます。

『他人の痛みが本当にわかるのは、痛みを経験した人、つらい思いをした人です。もっとそういう人が (少なくとも、そういう感受性をそなえた人が) 医療にたずさわって欲しいと切に思います。

また、一般に強みと思われることでも、対人関係の中では必ずしもプラスに働かないことも多々あります。話が少しズレますが、私の学生時代(海外です)、いわゆる天才肌の若い講師がいらっしゃいました。

この方、頭脳明晰なのはわかるんですが、教えるのは上手くなかったです。プレゼンテーションは決して下手ではありません。むしろ流暢にスラスラと説明されます。が、この方、頭が良すぎて、理解できない学生の気持ちが分からない

質問した学生に対して、、彼が「こんな簡単な理論の何がわからないのかが分からない」と、本気で当惑気味に言われたとき、「あぁ、苦労をしらないっていうのは、欠点にもなり得るのだな」と感じました。 』


今日は自分の過去を少し振り返ってみたいと思います。
自分で言うのもなんですが私は真面目な人間です。

小・中学校ではいわゆる優等生タイプで、テストで良い得点をとる事に喜びを感じる日々でした。

しかし高校に進学すると状況は一転します。上には上がいるという事を痛感させられるのです。

高校1年生の時に祖母の入院があり、お見舞いで何もできなかった
自分の無力感を感じた事を初めとして、

それ以外にもいろいろと小さなきっかけが積み重なって、高校2年生頃から本格的に医師になろうと勉強を始めました。

この時、医師という職業の持つなんとなく良いイメージに導かれて医学部を目指しましたが、思えば現在感じるような医療そのものに多くの問題が存在している事など夢にも思っていませんでした。

そして、全国統一の実力テストなどを受けるのですが、決して高得点がとれるわけでなく、逆に自分の弱点がありありと露呈され、当時しばしばがっかりしていたものです。

それでも何とか頑張れば医学部受験ができるかどうかギリギリというレベルでしたので、何とか頑張り続けることにしました。

しかし高校3年生の冬に望んだセンター試験(昔の共通一次試験)では惨敗でした。

当時670点を越える事が医学部へ合格するための必須条件だと言われている中で私の得点は604点だったのです。

「これで浪人確定か・・・」と絶望を感じざるを得ない状況でしたが、真面目だけが取柄の私は学校の成績表では高評価を頂いていました。

それで推薦入試であれば学校での成績も考慮されるということで、とある地方大学医学部の面接試験に一縷の望みを託して臨むことになりました。

しかしその場でも当然センター試験の結果は面接官に知られる事になるので、他の受験者に比べて圧倒的に出遅れており、厳しい状況であることには変わりありません。

そこで何を話したか、緊張しすぎてあまり多くを思い出せませんが、おそらく「自分は医師に向いている人間だと思う」というような事を語ったように思います。

そして何とか私は絶望的な状況から奇跡的な合格を遂げる事ができたのです。この時、普段から地道に努力していてよかったと心より思いました。

後にわかった事ですが、当時の面接官の先生の一人は私と同郷の方でした。

とある飲み会でその事実を知り、その先生に「もしかして同じ郷里という事で少しひいき目に採点して下さったのですか?」という趣旨の内容を尋ねてみた事がありますが、

「そんなことはない。君がいいと思ったからいいと判断しただけのことだ」とおっしゃって頂きました。

まぁ実際,もしもひいきをしていたとしても「ひいきしましたよ」とは言えないでしょうから、本当のところはよくわかりません。

今でも私はその先生に助けてもらった思いですし、もしその事がなければそのまま医師を目指し続けていたかどうか自信がありません。

当時から私は糖質大好きっ子で、意志の弱い人間でした。しばしばゲームやテレビの誘惑に負けており、受験勉強に際しても100%の力が出し切れたと言い切れません。

何が言いたいかというと、私は医学部に入った時点で決して優秀な方ではなかったということです。

しかしギリギリで医学部に入ってしまった私は、その後も苦労させられることになります。当時、周りの同級生の優秀さに日々驚かされ続けていました。

ふと周りをみるとあまり講義に出ていなくても、講義でよく寝ていても、最終的にテストにすんなりと合格していく同級生は結構いましたし、それでいて部活に恋愛に青春を謳歌しているのを私は傍目でみてうらやましく思っていました。

それでも真面目だけが取柄の私は、講義にせっせと出席しテストも何とかギリギリで受かり進級していきます。

そして無事に医師国家試験に合格する事ができるわけですが、

医師になって以降も基本的にそれまでのスタンスと変わらず「真面目だけど知識量は周囲の医師に及ばない」という状況にあります。

今でも私は神経内科医としての知識が豊富な方ではないと思います。神経内科医には頭のいい人が多いので、それが余計に際立つ感すらあります。



しかし、そうであるにも関わらず、です。

私の知る限り糖質制限を推奨することを公けにしている神経内科医は他にいません。

湿潤療法ですらそうです。普段、優秀な神経内科の同僚の傷の治療をみると普通にフィブラストスプレーとかを処方したりしていました。

糖質制限の恩恵を知らないから、湿潤療法の恩恵を知らないから、

自分が痛みを経験していないから、この大事な事実に目を向けられないのではないかと思います。

Joさんのおっしゃるように頭がよいことが必ずしもよいわけではないのだと思います。

私は私の立場で、高望みをしなくてもできる事があるのではないかと思います。

もちろん、頭のよい人が糖質制限を受け入れてくれれば鬼に金棒ではありますが。

私はこれからも私らしくあり続けたいと気持ちを新たにした次第です。


たがしゅう
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今日の記事に関連して

たがしゅう先生

今日の記事を読んで、何か共通しているような感じがしたので、ご存じ、鎌田實先生の講演内容の記事を紹介します。
臨床医の神様のようなお人ですね。
鎌田先生自身、〆のラーメンを食べた後、2日間は炭水化物を摂らないそうです。それにしてはあのお腹が・・・(笑)

http://www.ommedc.jp/event/110827/04.html

Re: 今日の記事に関連して

Yamamoto _ma さん

 情報を頂き有難うございます。

 「自分が相手の立場だったらどう思うかを考える」という事ですね。とても大事な事と思います。

No title

先生のポジティブさには敬服するとともに、戒められます。 先生の活躍を熱望しています。

マイナス要因をプラスに転じる

記事にして頂いてありがとうございます。
劣等感を知っている人はむしろ強いです。劣等感を(正しいかたちで)乗り越えた人はさらに強いです。そういう方が医療分野におられるのは心強いです。

また、俗にいう劣等感って、本人がそう「感じている」だけであって、視点を変えれば必ずしも劣っていることではなかったり、むしろポジティブに働くこともあります。
(5月30日付けの先生の記事にあるケリー・マクゴニガル氏の話にも通じるものがありますね。彼女のビデオ、プレゼンテーション手法と話の内容の両方において大変興味深く、参考になりました。ありがとうございます。)

Re: No title

仙川イエローポロシャツ鈴木 さん

 お褒めの言葉を頂き有難うございます.

 これからもマイペースに頑張りたいと思います.

Re: マイナス要因をプラスに転じる

Jo さん

 コメント頂き有難うございます.

 私も糖質制限を知るまでは恨むしかなかった自分の体質が,こんな形で役に立つ日が来るとは夢にも思いませんでした.
プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
漢方好きの神経内科医です。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

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