サイアミディン

ストレスの本質を知る

先日、NHK教育の「スーパープレゼンテーション」という番組で、

ストレスと上手に付き合う方法」というタイトルでプレゼンしている、

スタンフォード大学の心理学者、ケリー・マクゴニガル氏の姿を目にしました。

ケリー氏は私とさして年齢の変わらない新進気鋭の若手女性科学者で、

心理学だけでなく、神経科学にも精通されている方のようです。

著書の「スタンフォードの自分を変える教室」は50万部を超えるベストセラーとなっています。



スーパープレゼンテーションという番組だけあって、さすがにプレゼンがお上手です。
そのプレゼンの中で、非常に興味深い内容があったので紹介したいと思います。

世間的には「ストレス=悪」という考え方が一般的だと思いますが、

ケリー氏は研究の結果、それは誤りだという考えに至ったと主張します。

実は「ストレス=悪」だと思い込んでいるその考え方そのものが、

身体に悪影響を及ぼしている根源だというのです。

一般にストレスを受けると、交感神経が活性化し、ストレスホルモンが上昇します。

その結果、心拍数が増えて、呼吸数が速くなったりし、人によっては汗をかいたりもします。いわゆる「緊張した状態」です。

その事は悪いことだと我々はついつい捉えがちですが、

実はそれは困難に立ち向かおうと「身体が活性化していること」だとケリー氏は言います。

そして興味深いことに同じストレスがかかっている状態であっても、

「ストレス=悪」だと捉えている人の心血管は収縮し、「ストレス=身体の活性化」と捉えた人の心血管は逆に収縮しませんでした。

同じストレスを受けても身体の受ける反応は変わってくるという事です。

元日に紹介したアサーティブネスに通じる話ですね。

さらに興味深いことに、そのストレスを受けた状態においてその状態から立ち戻させるために重要なのが「オキシトシン」というホルモンだといいます。

オキシトシンといえば、基本的には出産時の子宮収縮作用や、出産後の乳汁の分泌促進作用を有するホルモンとして女性特有のものと認識されていましたが、

近年、男性にも普遍的に存在することがわかり、特に抱擁など人と人との接触で分泌されるということから「抱擁ホルモン」とか「愛情ホルモン」という名で注目されてきています。

しかしそれだけではなく、このオキシトシンもストレスホルモンの一種、しかもストレスから立ち直る際に非常に重要なホルモンだとケリー氏は言います。

というのも、オキシトシンが出る事によって、

ヒトは他の人との親密な関係を求めるように促され、

友達や家族との身体的な接触を強く望むようにさせたり、人との共感を高め、

さらには自分が大切だと思う人を進んで支えたいと思わせたりするように働きかけます。

つまりオキシトシンが出ることで人は社交的になるというのです。

まとめれば、

『ストレス↑⇒コルチゾールなどで身体が活性化⇒オキシトシンで社交性↑⇒人との接触⇒ストレスから素早く回復』

ということになるでしょうか。

神経内科を専門にしている私ですが、この視点は恥ずかしながら皆無でした。

まさに目から鱗で、非常に勉強になりました。

ケリー氏のプレゼンが終わったあと、会場からはスタンディングオベーションが贈られ、賞賛の嵐でした。

私もテレビの前で思わずうなってしまいました。

視点を変えると見方が変わります

「ストレス反応は人生の困難に立ち向かうためにもともと人体に備わったシステムである」

人間生きている以上、ストレスを受けずにやり過ごす事は不可能だと思いますが、

緊張を感じたり、恐怖を感じたり、何かに立ち向かおうとする時も、身体が活性化しているのだと思えば、何だか乗り切れそうな気がしてきます。

長生きしている人はそうした対処が上手にできている人なのかもしれません。

とはいえ、ストレスの少ない状況の方がいい事には違いはないと私は思います。

私の次の興味はストレスを受け続けた結果起こってくる「副腎疲労」へと移ります。


たがしゅう
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検索したらありました。

http://www.ahv.pref.aichi.jp/hp/page000000500/hpg000000468.htm

現在勤務先なので家に帰ってモタさんの本を読みなおすつもりでいました。

久しく読んでいなかったので、、、6Sですね。購入当時、いろいろ悩みも多かったので感動したものでした。もう一度読み直すきっかけを戴き、ありがとうございます。

いろいろ思い当たる事

たがしゅう先生いつも更新ありがとうございます。
毎日必ず記事を読んでますよ!

糖質制限半年ですが、最近の記事を読んで思い当たることがちらほら…

あまり食生活を意識していなかった頃はどことなく軽い鬱で
時々ど~んと倦怠感に襲われていました。
朝はパン昼食おにぎりのみ蛋白質は夕食に少し程度でした。
一番ひどい時は抵抗力がなかったのか急性脊髄炎まで患ってしまいました。
(幸い後遺症はありません)
話がそれましたが認知行動療法の勉強をしたのもありますが
今はストレスがかかっても気分への影響がかなり少なくなりました。

あとスポーツが好きで身体を酷使してますが
以前に比べ疲労回復が早いです。
そしてスポーツ障害の古傷が昔は冷えると痛みが出ていたのですが
最近はあまりひどく痛みません。
慢性痛のケアに糖質制限がよい事を実感しています。

ただ身体を使う分だけ体重が減るのが悩みでBMIが20を切りそうです。
最近は江部先生のブログなど参考にしつつ果物を取り入れることで
増量に励んでいます。

せっかく効果を実感しているのでこれからも糖質制限を続けていきます。
あまりコメントしていませんが先生の情報を楽しみにしていますので
お忙しくて大変でしょうが更新よろしくお願いしますね!

Re: 検索したらありました。

アローン さん

 情報を頂き有難うございます.

 御紹介頂いた記事はストレスに対するいろいろな対処法を紹介したものですね.

 それも「ストレス=敵」と考えるからこその考えだと思いますが,ケリー氏の考え方は「ストレスにより身体が活性化している」とポジティブに捉えている点,そしてその考えが実際に身体に好影響を与えるという点が画期的だと私は思いました.

Re: いろいろ思い当たる事

みなみん さん

 いつも御覧頂き有難うございます.

 糖質制限での精神面の安定,疲労回復,疼痛改善,よかったですね.本当に糖質制限の効果は多面的です.

 それにしても糖質制限をしていてやせてしまい,それが悩みだという事実.私とは真逆ですね.

 世の中にはカロリー理論では説明できない事がたくさんあるという事を改めて痛感させられます.

 ともあれ,今後とも宜しくお願い申し上げます.

見当違いかもしれませんが

たがしゅう先生、こんばんは。
コメントはご無沙汰していますが毎日欠かさず読んでいます。

今回の内容は、見当違いかもしれませんが「恋すると綺麗になる」と関係があるのかな・・・と思いました。
それと、下火になりましたがSTAP細胞。ストレスをかけると細胞が活性化するって、とても有り得る話だと思いました。
だれか、ちゃんと検証してくれたらいいのに。

Re: 見当違いかもしれませんが

かんな さん

いつもご覧頂いて有難うございます。

> 「恋すると綺麗になる」と関係があるのかな・・・と思いました。

面白いですね。確かに関係ありそうです。

恋をするとドキドキしますが、あれもまさに身体が活性化しているのかもしれません。
ストレスで緊張している時も、それと同じようなものだと思えばイメージしやすいですね。

> それと、下火になりましたがSTAP細胞。ストレスをかけると細胞が活性化するって、とても有り得る話だと思いました。

私もそう思います。
ストレスに加えて酸性条件下というのがミソだと思います。
ケトン体質のような酸性条件下では、遺伝子の発現パターンが変わって何かしらの好ましい変化が起こっても不思議ではないと思います。

ただその現象が再現性に乏しいというのが、現在の最大の問題点だと思います。

恋はストレス

こんにちは。
恋はストレスですよね。

森鴎外の「舞姫」
鴎外の恋人エリスは、ドイツ留学から帰国する鴎外に棄てられて、心を病むのです。涙なくては読めない。
鴎外のバカヤロー!です。

恋はストレスのプラス面、マイナス面がわかりやすいです。
リアルではきついときもあります。
小説や映画での疑似体験(疑似でもドキドキ感はリアルにあり)ならば安全です

福山雅治さんは、大勢の人に愛されるみんなの安全パイです。



Re: 恋はストレス

エリス さん

 コメント頂き有難うございます.

> 森鴎外の「舞姫」
> 鴎外の恋人エリスは、ドイツ留学から帰国する鴎外に棄てられて、心を病むのです。涙なくては読めない。


 なるほど,エリスさんのHNはそこから来ていたのですね.

> 恋はストレスですよね。
> 恋はストレスのプラス面、マイナス面がわかりやすいです。
> リアルではきついときもあります。


 確かに.言われてみれば私にとっても恋が悪い意味でストレスになった場面が多々ありました.

 私も振り返ってみて自分自身の恋愛にはろくな想い出がありません.多分自分に自信が持てなかったからだと思います.

 なかなか自分の本質的な部分を変えるのは難しい事ですが,糖質制限を通じてそうした側面でも前向きになれたらいいなと思います.
プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
漢方好きの神経内科医です。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

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