サイアミディン

ドーパミンを使い続けたなれの果て

最近,重症のパーキンソン病の患者さんを,

入院で立て続けに診る機会がありました.

パーキンソン病はドーパミンという神経伝達物質が徐々に減少していく病気ですが,

進行して重症化すると無動傾向が著しくなって,

動けない,しゃべれない,食べれないとまるでロボットの電池が切れたような状態になります.

その状態にドーパミンを補充する薬を使えば再び動ける「オン状態」になりますが,

薬が切れるとまた動けない「オフ状態」になります.そして重症化すると薬を使ってもなかなか「オン状態」になりません.

ドーパミンを放出させるドーパミン神経が神経変性を起こす事がこの病気の本質だと言われていますが,

その神経変性の原因はいろいろ仮説はあれど,完全には解明されていません.
おそらくドーパミン神経を疲弊させるような刺激が加わり続ける事と,

ドーパミン神経が変性してしまいやすくなる酸化や糖化といった現象が深く関与しており,

ドーパミンを強制放出させ,なおかつ酸化ストレスも糖化も起こす糖質摂取がその要因として大きな割合を占めているのではないかというのが私の考えです.


一方で,覚せい剤もドーパミンを強制放出させる物質ですが,

覚せい剤を使うと気持ちいいと聞きます.それはドーパミンが関わる報酬系が強烈に刺激されてしまうからだと思いますが,

覚せい剤を使用し続けたなれの果てには,「廃人のようになった」と比喩されるような状態になります.

私は重症のパーキンソン病患者さんを診ていると,

そのような状況とイメージが重なってしまう事があります.

そして,覚せい剤程作用が強くないですが,糖質もドーパミンが関わる報酬系を刺激します.

糖質を摂取すればおいしいと思うでしょうし,気持ちいいと思うかもしれません.

その時はいいですが,繰り返していくことでそれがないとやめられないという精神状態が作られていき,

そして長い年月をかけて最終的には重度の糖尿病,重度の認知症へ,

あるいはそうしたものがなかったとしても,高度に老化しきって「廃人のようになった」人へつながっているのかもしれません.


でも報酬系の刺激は人生にうるおいを与えるので,

適切な時期に適切な分だけ発動する分には全く問題ないと思います(例:お祝い事,頑張った後のごほうび,など)

それに誰しも老化は避けられないので,糖質を全て避けよという極論を言うつもりはありませんが,

少なくとも報酬系の刺激を酷使してしまう状況はよくないと私は考えます.

糖質摂取に加え,自慰行為も報酬系の酷使につながります.

あるいはストレス状態を元に戻す際にもドーパミン神経は酷使されます.

そしてドーパミンが枯渇しきってしまうと,治療は非常に難しいです.

そうならないためにも,いざという時にしっかりドーパミンに働いてもらうためにも,

普段からドーパミンを必要以上に酷使しないバランスのとれた生活を心がけたいですね.


たがしゅう
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脳内を自分で守ろう

こんにちは。
NHKの「クローズアップ現代」で、覚醒剤や脱法ドラッグのことをやっていました。出演の先生は、やはり脳内報酬系のことを言われていて、

例えば、努力する→入試に合格→よろこぶ→また頑張ろうという活力になる という、自分の頑張ったことが報われてうれしいというハッピーな経験は問題がない。しかし、薬物を使えばその努力もなく、そのハッピーな経験を味わえてしまう。それが危ないといわれていました。

努力もなく、安易な方法でドーパミンを出していたら、その安易な方法に依存してしまうということでしょうか。
例えば、芸能人を見て喜ぶとか、お花がきれいでうれしいとか、お笑いをみて楽しかった、というのはどうなのですか?
そういうのまで依存と言われたら、楽しいことが無くなっちゃいます。

先生の言われる「いざという時しっかりドーパミンに働いてもらう」のいざという時って、どういう時なのですか?

No title

エリスさんへ

たがしゅう先生はノーマン・カズンズ氏の著書を取り上げたりするなど、笑いや感動の重要性についても考察されてますよ。
ドーパミンを薬で無理矢理出すのと感動して出すのは全く別のことだと思うし、多分だけど薬に逃げ込む人は感動と無縁の生活を送っているんじゃないかしら。

「いざという時」はエリスさんのありえないレベルの望みが叶ってチョー幸せな時あたりでいかかでしょう?

7億の宝くじが当たったらドーパミン出過ぎてお金使う前に廃人になりそうだな。

Re: 脳内を自分で守ろう

エリス さん

 コメント及び御質問頂き有難うございます.

> 例えば、芸能人を見て喜ぶとか、お花がきれいでうれしいとか、お笑いをみて楽しかった、というのはどうなのですか?
> そういうのまで依存と言われたら、楽しいことが無くなっちゃいます。
> 先生の言われる「いざという時しっかりドーパミンに働いてもらう」のいざという時って、どういう時なのですか?


 これはなかなか難しいところなのですが,

 大事な事なので,後日ブログ記事でお答えさせて頂きたいと思います.

Re: No title

やしろ さん

 コメント頂き有難うございます.

> ドーパミンを薬で無理矢理出すのと感動して出すのは全く別のことだと思うし、多分だけど薬に逃げ込む人は感動と無縁の生活を送っているんじゃないかしら。

 そうですね.

 喜ぶべき時に喜び,悲しむべき時に悲しむ,というように喜怒哀楽が自然な形で出てくる分には基本的にはあまり問題ないと思います.それがショートカットされて報酬が得られる事はやはり不自然です.

 ただ,自然な形であっても落とし穴となりうる事があるのではないかと思っています.後日記事でその考えをまとめたいと思います.

No title

アハハ。やしろさま、
ありえないレベルの望みが叶う。
7億の宝くじが当たったらドーパミン出過ぎ。
それってまさに、努力もしないで脳内報酬系を酷使しそうです(^^)。廃人になるでしょうね、きっと。
もし、7億の宝くじが当たったら、
①一般人をターゲットにしたドッキリカメラかな?と思って、隠しカメラが回っていないか用心。
②振り込め詐欺の仕掛けかな?と思って、これから「保証金でこの口座に10万円入金を」という電話が来るか用心。
と思いそう。そうやって報酬系でない脳の機能を使って、廃人にならないようにと?自然に規制がかかりそうです。
でも、7億が当たる破目になりたいですね。(^^)。

パーキンソン病

>パーキンソン病はドーパミンという神経伝達物質が徐々に減少していく病気ですが,進行して重症化すると無動傾向が著しくなって,動けない,しゃべれない,食べれないとまるでロボットの電池が切れたような状態になります.

たがしゅうさん
 久しぶりです。

20年前に父が、パーキンソン病から最期は肺炎で亡くなりましたが、まさにロボット状態です。お見舞いにいっても、反応は鈍く、息子だと分かっていたのかどうか。
 私が父の耳元で、「お父さん今日はお誕生日だね」と話しかけても反応がありませんでした。悲しい思い出です。
 あれから20年。今だにはっきりとした原因は分からず、決定的で効果のある治療法がありません。若年性パーキンソンの方の最期は悲惨です。

 再生医療の進歩に期待するしかないのでしょうか。

 今、実際に患者さんを見ている家族の人はたまらないでしょうね。
 糖質の摂りすぎも、原因の一つですね。
糖尿病学会の大阪大会は終わりましたが、医療の遅々とした現状に、悲しみを覚えます。
 まだまだ、人が人として尊重される医療は遠いです・・・。
 救急医療や小児科医になるドクターは減り、救急隊は、受け入れ先病院を探すのに、何時間もかかっている情況です。
 福祉事務所のケースワーカーも、受け入れ先の病院・施設を探すのが大変な現実があります。
 いつになったら、人は、営利主義でなくなるのか・・
  ため息をつきながら・・・前を見て・・・


Re: パーキンソン病

長谷川 さん

 コメント頂き有難うございます.

 辛い過去は消せませんが,前を向いて歩きましょう.

 思い通りにならない事など世の中にはたくさんあると思います.

 嘆いていても,思い通りにならない事を無理やり推し進めても,何もよい事はありません.

 時に自分の行いを振り返り,軌道修正をかけながら,今できる事を着実に進めていくべきだと私は思います.
プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
漢方好きの神経内科医です。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

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