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風邪に葛根湯

風邪を経験したことがない人はいないと思います.

すべての病気の中で最もよく知られた病気と言っても過言ではないくらいありふれた病気ですが,実は風邪に対する根治療法は確立されていません.

「え?でも風邪引いたら病院で薬出してもらって普通に治っているじゃない?」と思われる方もいるかもしれません.

しかし風邪は薬で治しているわけではありません.実は風邪は自然に治っているのです.

風邪の定義はいろいろありますが,最も典型的なものは「せき,はな,のどの3症状が同時に同程度存在する状態」と定義できます.

なおかつ症状が出始めて2~3日でピークを迎え,抗生物質の使用の有無にかかわらず,1~2週間程度で自然によくなる病気の一群(症候群)」というのが特徴です.

そして風邪の原因の9割は様々なウイルスが原因(一つではありません)だと言われています.抗生物質は基本的には細菌(ばい菌)をやっつける薬なのでウイルスには効かないので意味がありませんし,抗ウイルス薬というのはインフルエンザやヘルペスウイルスなど一部のウイルスにしか実用化されていないので,今の医学では直接やっつけることができません.

じゃあ,普段病院でもらっている風邪薬は一体なんなのかと申しますと,せき,はな,のどの症状を和らげる薬です.こういう原因に対してではなく,症状に対処する治療のことを根治療法に対して「対症療法」といいます.

しかし対症療法というのは,原因(ウイルス)に対して何もしていないので,特に風邪に関して言えば,そのせいで治るのを遅らせてしまう可能性すらあるのです.

というのも風邪のときに出てくるせき,はな,のどの症状は,ウイルスに対して身体の免疫反応が対抗して炎症反応というのを起こした結果出てきている症状であったりするので,咳止めも鼻水止めもうがい薬も,そういう身体が治ろうとしている反応を邪魔している側面があります.

つまり風邪というのは医者が診なくても治る病気,の代表格であるわけです.

それでも自然に治っているから何の問題にもされていませんが,特に西洋医学は風邪に対してはほとんど無力だと思います.そういうわけで風邪に抗生物質などを出す医者は安易に信用しないようにして下さい.

ただ風邪は医者側の目線で見たときには,「風邪に見せかけて実は違う病気」ということが稀にあるので,それを見逃さないようにするというところは医者の腕の見せ所です.

しかしそんな風邪ですが,西洋医学ではろくに対応できなくても,東洋医学(漢方)を使えばある程度勝負することができます.

そういう西洋医学の足りない部分を埋め合わせしてくれるところが漢方の優れた点なのですが,風邪については特に威力を発揮してくれます.

東洋医学(漢方)が風邪に対してどう対処するかと言いますと,これは発汗を促すなど基本的には自然に治ろうとする力をサポートするという観点で攻めます.

しかも風邪を引いてすぐの時期なのか,2~3日経った頃なのか,1週間後なのか,それ以上経過して咳だけ長引いている時期なのか,鼻水がメインなのか,など状態に応じて様々に使い分ける必要があります.逆に言えば,それだけ風邪に対して武器があるということなのです.

今回はそんな風邪に対して用いる漢方薬の中で最もよく知られている「葛根湯」について紹介します.

「風邪の引き始めに葛根湯」というキャッチフレーズでよく知られ,漢方最大手のツムラの140種くらいある漢方のエキス剤の中で1番目に紹介されている有名な薬です.

文字通り「風邪の引き始め」に使うと効果があり,治るまでの時間を数日ほど短縮させることができます.

では,風邪の引き始めというのをどうやって判断するのか,ということですが,これについては漢方について非常にわかりやすい講演をされることで有名な浅岡クリニックの浅岡俊之先生が明確に答えておられます.

それは悪寒がある時です.

もう少し言えば,それがなかったとしても,脈をみて浮いている時(軽く脈を触れただけでよくわかる状態),あるいは舌にうすい苔がついている状態であれば「葛根湯」の最適の使用タイミングです.

従って,風邪の時には抗生物質を出す医者よりも,しっかりと話を聞いた上で脈と舌を診てくれる医者の方が信用できるかもしれません.

ただし,一つ注意点があります.

この風邪の引き始めですが,悪寒がするくらいの時期というのは風邪にかかってごくごく初期の時期です.このくらいの状態の時はまだそんなに辛くないので,病院に行こうとは思わない人が大半だと思います.

よって,葛根湯を適切な時期に飲もうと思ったら,あらかじめ風邪にかかる前に処方してもらい,ここぞというタイミングが来た時に自分で飲むというのが一番よいと思います.参考にしてみて下さい.

そしてこの「葛根湯」,実は風邪の引き始めに対してだけではなく,同じくありふれた「肩こり」についても応用できます.

長くなるのでその辺りの話はまた後日させて頂きます.


たがしゅう
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おまじない

グリチロンの方が効きますよ。
強ミノ打ってグリチロン倍量なら葛根湯凌駕します。
甘草が万能薬。

Re: おまじない

のしさん

 コメント有難うございます。

>グリチロンの方が効きますよ。
>強ミノ打ってグリチロン倍量なら葛根湯凌駕します。
>甘草が万能薬。

 「グリチロン(商品名)」=「グリチルリチン(成分名)」
 =「強ミノ(強力ネオミノファーゲンC)(注射剤名)」=「甘草(生薬名)」

 とそれぞれ同じ意味のものになりますね。

 確かに甘草自体は痛みを取り去るのに効果が高い生薬です。

 しかも漢方薬は構成生薬の数が少なければ少ないほど即効性があるという特徴があります。
 ツムラの漢方の中にはありませんが、甘草湯という漢方薬もあり、これの構成生薬は甘草のみです。
 従って「グリチロン錠=甘草湯」ということになります。

 例えば、のどが痛いようなタイプの初期の風邪に対しては、おっしゃるようにグリチロンが即効性があり、効果抜群だと思います。

肝臓先生

ウルソ、グリチロン
肝臓を養生すれば、風邪なんぞ怖くないのです。

Re: 肝臓先生

のしさん

 肝庇護剤(肝臓を守る薬)として確かにグリチロン、強ミノはよく使われていますが、

 実はその科学的な根拠は明らかではありません。

 また甘草(グリチロン)を長期で使い続けることには血圧上昇、低カリウム血症などの副作用のリスクも伴うので、使用に際しては一定の注意も必要に思います。

 よって期間限定か、もしくは頓服で使用するのがより安全だと私は考えます。
プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
漢方好きの神経内科医です。
南鹿児島さくら病院に勤務しています(下段にリンクあり)。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。

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