サイアミディン

固定観念で先に進めない

ある人の長年培った食生活を、

他人が指導して変えようというのは困難な事です。

結局、今糖質制限を実践している人達も、

きっかけは誰かの指導だったかもしれませんが、

最終的には自分が納得している人が続けているように思います。

私の日常診療の中でも、

なかなか納得してくれない人は多いです。

中でも多いのは、「自分はすでにごはんはちょっとしか食べていない」と思っている人です。
先日もアルコール好きの70代男性がいました。

この方は慢性的な脂肪肝があり、

私が担当するずっと前から「肝臓が悪くなるからお酒を控えなさい」という指導を受けていました。

ある時、この患者さんがピタッと断酒を決意し、血液検査に臨みました。

しかしお酒を1ヶ月やめて受けた血液検査は、相変わらず脂肪肝の数値を示していました。

これは非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の状態ではないかと考えました。

そこで私は脂肪肝、肥満改善のために、この方にも糖質制限を指導しました。

これで改善すれば、今までず〜っとアルコール性脂肪肝と言われていたものが、

実はNAFLDだったと示される事となり、

今後同様の患者さんと向きあっていく際に役立てる事ができる、意義深い症例になります。

ところが、2ヶ月経過して、やはりこの患者さんの血液検査は脂肪肝を示すデータです。

そこで、きちんと糖質制限できたのかどうか確認したところ、

「うーん、ごはんはもとからそんなに食べていませんがね…。」

と言って、結局何も食事を変えていなかったようなのです.

たとえ茶碗に半分の75gだけ白米を食べていたとしても,

角砂糖1個=糖質約3g計算で,角砂糖約9個分,すなわち27.6gの糖質が含まれている事になります.

しかも実際にはそれに副食の糖質が入ってきますから,

運動している若者ならまだしも,運動しない高齢者にとっては十分害をもたらす糖質量です.

この糖質摂取が脂肪肝の原因となっている可能性は十分あると思います.


もう一つ,このようなケースで私が問題だと思うのは,

糖質制限をしてくれないせいで,他の原因を探しにいけないという事です.

というのも,この状況で最も考えられる原因は糖質過剰であるわけですが,

この問題を放置したままだと,この脂肪肝が他の特殊な原因で起こっているのかどうかが判断しにくいからです.

もっとも、特殊な疾患(例えば脳腱黄色腫症,ウィルソン病など)の場合は,脂肪肝以外に特徴的な身体所見が出ますから,

この状況で最も考えられるのは糖質過剰によるNAFLDの可能性が極めて高いわけですが,

そうは言っても,やはり本当にそれで合っているかどうかを確認しておきたいところです.

そのためには糖質制限を短期間でも実践してもらうしかありません.

糖質制限をしても改善しなければ,改めて特殊病態を探しに行く必要がありますし,

改善すればそれで治療方針は決定します.こういうのを診断的治療と言ったりします.


簡単な事なはずなのですが,

この壁を壊す事ができない患者さんが多すぎます.


たがしゅう
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脂肪肝

こんにちは。いつも読んでます!
うちの家族で糖尿病患者がおり、
インスリン注射をしているのですが、
神経麻痺の合併症を起こしたので、
4月から3食を糖質制限食にして頑張ってます。
昨日、血液検査をしたら、
HbA1cは正常人の基準値まで落ちていました。
ただGPTが44上限のところ62もあり、
中性脂肪や悪玉コレステロール値も高いので、
これは脂肪肝なんじゃないかな?と
私は疑っております。
糖質制限していたら、徐々にでも改善しますでしょうか?
ちなみにインスリン注射はまだ打っておりますが、
医者も単位数は徐々に落として対処している
みたいです。ただインスリンを打っていることが
影響しているのか、体重は落ちづらいみたいで。
脂肪肝にもインスリン注射は影響しますか?

家族の協力

ご心労お察しします。

素朴な疑問なのですが、、、
家族に監視してもらうとか言ってもらうとか
の協力は得られないのでしょうか?

No title

 少なめ、だと基準が人それぞれなので
朝と昼は米パン麺禁止!(スタンダード糖質制限)
ぐらいきつく言わないと駄目なんですかねぇ…
診断がつかないから、とりあえず1ヶ月だけでも、とか
糖質が原因だったらお酒飲めるようになるかもしれないよ?
等々甘言も混ぜつつ若干パターナリズム気味に接するしかないのかも知れませんね。
 割とフランクに話せるメタボ身内に糖質制限を勧めるのにも四苦八苦するのですから
病識のない(糖質が健康に悪いと夢にも思ってない)患者さんに
糖質制限を指導するのは大変でしょうね。
 ふと思ったのですが、内視鏡検査の時とか絶食指導するじゃないですか。
同様に脂肪肝の検査のため1ヶ月糖質禁止、
とかのパンフレット的な書類を作って家族にも見てもらって
あくまで検査目的を強調すれば実践してくれる人の割合が増えるかも
なんて素人考えしました。
んで、検査値が改善したら→このまま続けましょう、と持っていく。
すでに実践済みならすみません。

Re: 脂肪肝

うさうさ さん

御質問頂き有難うございます。

> 昨日、血液検査をしたら、
> ただGPTが44上限のところ62もあり、
> 中性脂肪や悪玉コレステロール値も高いので、
> これは脂肪肝なんじゃないかな?
> ちなみにインスリン注射はまだ打っておりますが、
> 脂肪肝にもインスリン注射は影響しますか?


インスリンは余剰な血糖値を脂肪に変換する働きがあります。

ですので、インスリン注射は脂肪肝に影響すると思います。

Re: 家族の協力

アローン さん

御質問頂き有難うございます。

> 家族に監視してもらうとか言ってもらうとか
> の協力は得られないのでしょうか?


この患者さんに関して言えば、家族も本人と同様の認識を持っていたので、

いずれにしても納得してもらうのが難しい状況でした。

ただ御指摘のように、本人が今いち乗り気でなくても家族が理解してくれるというパターンも確かにありますね。

Re: No title

へっぽこ さん

色々御助言頂き有難うございます。参考になります。

> 同様に脂肪肝の検査のため1ヶ月糖質禁止、
> とかのパンフレット的な書類を作って家族にも見てもらって
> あくまで検査目的を強調すれば実践してくれる人の割合が増えるかも


確かに一つのアイデアですね。

しかし「3日でいいから止めてみませんか」と言ってもやめない人も実際多いんです。

いろいろな理屈は説明しますが、どう言っても変わらない人は変わらないのかもしれないと、最近は達観しつつあります。

たがしゅう先生こんにちは。
毎日楽しみに拝見しております。

わたしは、
糖質制限を実践しない高齢の患者さんは、決して治りたくないわけではないのだと思います。

たぶん先生から指導を受けて帰宅したあと、家族や友人に糖質制限を勧められたことを話しますよね。

すると、周りの反応は
「ごはん食べないと体に悪いんじゃないの?」
「こないだテレビでも危険だってやってたよ」
「そんな治療聞いたことないから止めなさい」

たぶん100%そんな感じではないかと思います。わたしの実家の母もわたしに対してそんな反応でしたから。

で、その声を押し切ってまで糖質制限に踏み出すこともできず、
あんまり食べてない
とか、
運動が足りないんでしょうね、
とか、
そんな言い訳になっちゃうんでしょうね。

もう一つ、高齢者は戦後の物のない時代を生きてきてます。当時食べるものもなくてひもじい思いや栄養失調と戦ってきた人達は、今の時代当たり前のように食べられる米の飯を手放すなんて、あり得ないのだと思います。たぶん心が悲鳴を上げるくらいに。

加えて情報弱者でもありますし、なかなか自分の頭で考えて道を選ぶというのは難しいように思います。

だから、薬なんですよね。

制限するよりは薬飲んだ方がまし、という。実家の両親も夫の両親も安心のためにものすごい量の薬を飲んでいますから。

なので、決して先生の言うことをないがしろにしてるとか、健康になりたくないとかではないと思うんです。

糖質制限をきちんと学んだ保健婦さんみたいな人が先生とタッグを組んで、患者さんの本音を聞いてあげるというようなシステムがあったらいいのかも、などと考えてしまいました。

Re: タイトルなし

riri さん

 コメント頂き有難うございます.

> 決して先生の言うことをないがしろにしてるとか、健康になりたくないとかではないと思うんです。

 そうですね.おっしゃる通りで,患者さんはきっと治りたいと思っているでしょう.

 ただその方法論が間違っているというだけの事なのですよね.

 ririさん御指摘の様々な歯車の食い違いをどのように修正していくかが今後重要になってくると思いますが,今のところ地道に糖質制限を伝えていきながら,さらに深く糖質制限について学んでいくという事が,今の私にできる精一杯の事だと思っています.


> 糖質制限をきちんと学んだ保健婦さんみたいな人が先生とタッグを組んで、患者さんの本音を聞いてあげるというようなシステムがあったらいいのかも、などと考えてしまいました。

 確かに.そうなればますますできる事は広がっていきそうですね.

NHK 健康ライフ

ririさん
のコメントに共感します。

私は毎朝4:30ごろからNHKのラジオ深夜便を楽しみにしています。5:30過ぎからドクターの健康ライフが始まります。
どれだけの視聴者がいるのでしょうか…情報弱者の方達も多いと思います。
とてもためになる話を毎回ドクターはしてくださるのですが…
決定的な事には触れないのです。
やんわりと…知っている人にはわかるようにしか…。

だめ…とは言わずにも、炭水化物が身体に与える影響を優しく、愛情をもって解説してくれるドクターが
健康ライフでお話してくれる日を
待ち望んでおります。

影響力はとても大きいのではないのでしょうか。 政治的な絡みもあり無理なのでしょうね。でも、毎日の放送を聞く度に切望してしまいます。

Re: NHK 健康ライフ

shin1 さん

 コメント頂き有難うございます.

> 私は毎朝4:30ごろからNHKのラジオ深夜便を楽しみにしています。5:30過ぎからドクターの健康ライフが始まります。

 私は逆にラジオはほとんど聞かないのですが,

 確かにラジオだからこそ伝わる集団というのもあるのかもしれませんね.そこで糖質制限に関する意義深い情報を提供できれば,またさらに新しい展開ができそうですね.
プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
漢方好きの神経内科医です。
南鹿児島さくら病院に勤務しています(下段にリンクあり)。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

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