サイアミディン

全てを鵜呑みにしてはいけない

皆さんは、近藤誠先生が提唱する「がん放置療法」を御存知でしょうか。

がんには、気付いた時には転移している「本物のがん」と、放っておけば悪さをしない「がんもどき」とがあり、

今の健診システムでは「本物のがん」と「がんもどき」を一緒くたにして検査してしまっており、

本来は治療不要である「がんもどき」を早期に発見してしまい、

手術や化学療法で治療によって起こる大きなダメージを患者に与えてしまっている、

だから症状のないがんは放置すべきであり、病気というものは痛みや苦しみが出てから治療すればよい、

と、簡単に言えばそういう理論の事です。

私はこの近藤先生の御意見は、とにかく早期発見、早期治療の流れで、

手術、化学療法、放射線の標準治療の流れに乗せようとする現在のがん医療に一石を投じており、

非常に意義深い御意見だと感じています。
有害な治療を受けさせない「Do No Harm(まず、害をなすことなかれ)」の精神から言っても、理にかなっていると思います。

そういう意味で私は基本的に近藤先生の御意見には賛同しているのですが、

ただし、放置するだけでは不十分だとも考えています。


問題は「本物のがん」と「がんもどき」をどう区別するかという事にあると思いますが、

例えば、ある人に何らかの早期がんがあったとした時に、

その人が意図するしないに関わらず、もしもその後酸化ストレスを減らすような生活を心がけたとすれば、

身体にもともと備わった抗がんシステム(生体防御機能群:※下図参照)によって、

早期がんはがんもどきにとどまってくれる可能性があると思います。

身体防御メカニズム

※フリー百科事典 ウィキペディア「抗酸化物質」より引用

一方で、早期がんの状態であったものが、その後も酸化ストレスを受け続ける生活を続けてしまっていたら、

それはやがて「本物のがん」と呼ばれるものになっていってしまうと思います。

ピロリ菌だとか、肝炎ウイルスだとか、タバコだとか、放射線だとか、

酸化ストレスの原因にこそ多少の違いはあれど、

がんができるというのは本質的にそういうことではないかと考えています。

ということは、がんが「がんもどき」なのか、「早期がん」なのか、「本物のがん」なのかを一生懸命区別する必要はなく、

どの状態であろうと第一にすべき事は酸化ストレスを減らすための努力であって、

そのために多くの人にとって最大の鍵となる日常生活動作が食事だと考えています。

もちろん、食事だけが酸化ストレスの原因ではないので、

それだけで全てが解決できる程甘くはないとは思いますが、

最も重要な要素を占めているという事には変わりありません。

今の社会、医療を取り巻く現状を見ていれば、私にはそれがよくわかります。

食生活の改善を第一義におき、ストレスの回避、禁煙、節酒、適度な運動習慣など、

どう頑張っても制御できないがんが出てきた場合にはじめて、

必要最小限の医療の力を借りるべきだと私は考えています。



そういう意味で、近藤先生の理論を深めれば、良い医療が展開できるのではないかと考えていたのですが、

先日、とある雑誌で近藤先生の食事に対する考え方が書かれていたので読んでみました。

日経ホームマガジン 医者いらずの食べ方 (日経ホームマガジン 日経おとなのOFF) [単行本]



(以下、p10-11より引用)

―長生きするための食習慣として大事なことは?

まず、喫煙者は一刻も早くたばこをやめること。喫煙が細胞を傷つけ、発がんリスクを高めることは明らかです。

食事に関しては、難しく考える必要はなく、食べたいものを食べればいい

今は「○○制限」や「○○だけ」のようなダイエット法がブームになりますが、

極端な食事制限や特定の食品の過剰摂取は健康にいいわけがない。

情報に踊らされそうになったら、「過ぎたるは及ばざるがごとし」という言葉を思い出してください。

糖質を摂らない、玄米だけを食べる、野菜ばかりを食べる……

極端な食事法では、一時的に効果があったとしても、体が無理をしているひずみがいつか表れます。

当たり前のようですが、野菜、肉、魚、卵、米…たくさんの種類の食品をバランスよく取ることが大切です。

卵、牛乳などいい食材があるのにサプリメントを取るなんて、僕に言わせれば愚の骨頂。

適度なアルコールやコーヒーも体にいいことが分かっています。

(引用、ここまで)



うーむ、近藤先生の食事指導のスタンスは初めて知りましたが、

この意見に関しては私は大部分が不同意です。

禁煙はまあいいとしても、

食べたいものを食べるという事には落とし穴があります

なぜなら、ある食べ物を食べたいという嗜好性は、

脳内のドーパミンを介した報酬系によって形成された作られた嗜好性であって、

自分の身体が要求しているという感覚は、あくまでも自分自身の解釈でしかないからです。

その影響が糖質においてとりわけ強固であるがゆえに、

食べたいという気持ちだけに従って食べ続けた時には、

脳はドーパミンのとりことなって酸化ストレスを受け続ける事になってしまうからです。

それでもいいという人の考えを私は否定はしませんが、

「食べたいものを食べればいい」という聞こえのいい言葉の本質を知らないままに、

それがあくまで万人の健康法であるがのように推奨されるのは、ちょっとどうかと思います。


偉大な功績を成し遂げた先生と言えど、

すべてを鵜呑みにする事はできないものだと感じました。

やはり大事なのは「自分で考える力」です。


たがしゅう
関連記事

コメントの投稿

非公開コメント

そのとおり!!

 いつもありがとうございます。先生の仰るとおりです。食べたいものを食べたら地獄です。甘いものは誘い水。次から次へと糖質のとりこに。
血糖値がドーンと上がってそれを下げようと出てくるインスリン。それを元に戻そうとがんばるホルモンが精神の揺れを起こす。イライラ、不安・・・落ち着きたいからまた甘いもの・・・あ~恐ろしい。
しっかり自分自身で考えて惑わされないようにですね。
 しかしガンのことは初めて知りました。人間ってすごい力を持っているのですね。
ますます 今先生が実行されている断食の成果が気になります。色々また教えてください。期待しております。

Re: そのとおり!!

あーちゃん さん

 コメント頂き有難うございます。

 「食べたいものを食べる」には落とし穴がある事を認識した上で、どうするかを各人が考えるべきだと思います。

 先日も喫煙者で「医者にタバコをやめろと言われても、大きなお世話だ。やめる気がない。死んだらそれはそれまでよ」とおっしゃっている方がおられましたが、

 中毒の恐ろしいところは、本人の自覚が乏しいというところです。

 タバコの中毒性と食事の習慣と対比してみると、考えさせられるところがあるのではないかと思います。

No title

たがしゅう先生
糖質制限と同時期に近藤先生の「がんもどき」理論に関する本も読みました。前者は素直に受け入れられましたが、後者には疑問が残りました。そして何が正しいのか現在もわかりません。

「がんもどき」とは悪性腫瘍と確定診断されたのもの中に存在するのか、前癌病変のような状態をいうのか、がわからないのです。病理診断で悪性と診断されたのもの中に「がんもどき」が存在するとなれば確定診断の意味がないのでは?と考えてしまいます。又近藤先生が病理診断の客観性に疑問を持たれています。その上で展開された「がんもどき」理論であれば、その部分も要解説となるように感じます。免疫染色を用いて病理診断しても客観性に乏しいと考えるのか?と色々な疑問がでてきたのです。

自分で考えるチカラは大切だと思います。以前なら近藤先生のような専門家がおっしゃる事だから本の内容を疑う事なく自分のものとして取り入れていたような気がします。

>>喫煙者は一刻も早くたばこをやめること、とありますが、「たばこ」と同時に「糖質」も、感じました。

くんだみえ

Re: No title

栗田(くんだ)さん

コメント頂き有難うございます。

がんの診断は、病理組織を見て決めるのがゴールドスタンダードですが、

組織を見れば絶対に白黒はっきりつくようなものではなく、ば時には迷うようなグレーゾーンの場合もあるそうです。

また一旦悪性と診断はされても、その後の酸化-抗酸化バランスによっては、可逆的に元の細胞に戻る変化は起こりうるのではないかと思っています。

だから「がんもどき」状態は医学的にありうるので、私は近藤先生の主張には部分的賛成の立場です。

しかし、こと食事療法に関しては意見が異なります。栗田 さんがおっしゃるように、糖質もやめるべきだと思います。

No title

たがしゅう先生

>>一旦悪性と診断はされても、その後の酸化-抗酸化バランスによっては、可逆的に元の細胞に戻る変化は起こりうるのではないか

このコメントで「がんもどき」 理論も納得する事ができます。治療等で腫瘍が小さくなる事はあっても「悪性」という性質は不可逆的ではないか、と考えていました。近藤先生の本を読んでからのスッキリしない部分が解決したような気がします。ありがとうございました。

鵜呑みにしない

引き続き浜崎智仁氏の著作を読みました。

こちらは示唆的でありながら諧謔的であり自虐的でもあり、本としては面白く読めました。

氏はαリノレン酸を多く含んでいるという理由でエゴマ油を唯一推薦できるとされています。

氏は賄賂付の動脈硬化学会への皮肉として自らが受けた献金リストまで添付して自身の言説にバイアスがあるであろうことを暗示なさっています。

さらに献金を受けた業者にどうやら章まで与えています。

脂質栄養学界がランズ賞を与えたエゴマ油業者は明示していないものの中国産種子を使っています。強烈に水不足の中国で水を使う製品は大抵汚染されています。対して、北海道産のエゴマ油は高価です。

大抵、購入を引導される商品は高価です。いろいろ調べてもカナダ、オーストラリア産の原料を使う普通の安いキャノーラオイルでも悪くないような気がします。

学習すればするほど思考停止に近づくので、参照しつつ批判し、自分で考えるのは難しいです。

Re: 鵜呑みにしない

佐々木 さん

 コメント頂き有難うございます。

 脂質栄養学会の姿勢が良いからと言って、今後も未来永劫正しい事をし続ける保証はありませんので、やはり鵜呑みにせずに自分の頭で考え続ける姿勢は必要です。

> 学習すればするほど思考停止に近づくので、参照しつつ批判し、自分で考えるのは難しいです。

 自分の頭で考えるのは難しいですが、それが自分の人生と向き合うという事だと思います。
 自分の人生がどうなってもいいのなら、他人任せでも構いませんが、それは本質的には皆そうは思ってはいないはずです。

 楽だから他人に任せてしまうのですよね。その自分の中の煩悩を自覚し、ごまかさずにきちんと向き合う事が大事と思います。
プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
漢方好きの神経内科医です。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
これまでの訪問者数
FC2アフィリエイト
メールフォーム
フリーエリア
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR