サイアミディン

良い治療をさらに良い治療へ

何故一般的な腎臓病専門医は、

0.6g/kg/日以下のタンパク質制限に対して反対しているのかと言いますと、

それ以下のタンパク質では筋肉が崩壊していく事と言われているからです。

ただそれを証明するエビデンスがあるわけではなく、何となく慣習的にそう言われているから誰もやらない、というのが実情です。

しかし出浦先生は、「それはタンパク質とともにエネルギー制限もしてしまっているからだ」と言います。

すなわち、たとえ0.3g/kg/日にタンパク質を制限していたとしても、

その減らしたタンパク質の分を糖質でエネルギーで補っていれば、

筋肉が崩壊されるわけではないと主張されます。

その根拠となるのは「エネルギーの蛋白節約作用」と呼ばれる現象です。
そもそもタンパク質が崩壊しなければならない状況というものを考えてみますと、

そうでもしなければエネルギーを確保できないという状況であるはずです。

他に使えるエネルギーがあるにも関わらず、身体を構成する大事なタンパク質を分解する必要性はどこにもありません。だから節約するわけです。身体はうまくできています。

逆に言えばこうした節約作用が働いていれば、タンパク質は再利用されるので外から一生懸命タンパク質を摂らなくてもよい、ということになってくると思います。

またタンパク質を節約させるためのエネルギーは、何も糖質でなければならない必然性はないと思います。

即ち脂質であっても、そこに十分なエネルギーがある限り、蛋白の崩壊は容易に起こりません。

出浦先生の提唱されるタンパク質制限食をさらに効果的なものにするためには、制限したタンパク質の代わりに補うのは糖質ではなく、脂質にすべきだと考えます。

こうする事でタンパク質も抑え、糖質も抑えられるので糖尿病性腎症にも対応することができます。これ即ちケトン食という事になります。

こうして見ていくと、体調を崩した場合にまず真っ先に制限すべきは糖質、それでも改善しなければ次に制限するのがタンパク質、

それでもさらに改善しない場合は絶食、という流れが見えてくるような気がいたします。

出浦先生らの功績は素晴らしいですが、それでもまだ糖質は大事なエネルギー源というパラダイムから抜け出せず、制限すべき順番でタンパク質を優先したという状況ではないかと思うのです。

糖質で補っていても透析導入期間を遅らせたというのだからたいしたものですが、

この形のタンパク制限食では糖尿病性腎症に対応する事ができません。

そして現在透析の原因疾患として最も多いのが、糖尿病性腎症です。

出浦先生の方法に糖質制限も加えれば、さらに治療成績が良くなると私は考えます。


たがしゅう
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No title

 先生の昨日のブログを読んで、

① へぇ~ タンパク質0.3g/kg/日でもやっていけるんだ。
②タンパク質を減らし、さらに糖質を脂質に置換できれば、透析を先延ばしでなく永久にしなくてもいいようになる可能性があるかも。

と思いました。
②の発想は、ケトン食を知る人ならすぐにでてきますよね。


以前の先生の記事から、タンパク質を0.5g/kg/日に下げて、つまり50gから30gに下げてケトン食を行ってみました。

厳格にできたのは2週間でしたが、体調は良かったです。

その時、β-ヒドロキシ酪酸はすごく上がりました。
簡易測定器で、一時的に9.9Mmol/L以上になることもありました。

その後食事が乱れて(笑)、この1ヶ月の平均は0.7g/kg/日くらいですが、このくらいなら筋肉崩壊を起こさずにケトン食ができるんだな、という自信がつきました。

No title

出浦先生の講演は90年代半ば、入職二年目に聞いたことがあります。
当時は私の理解力不足でチンプンカンプンでしたが、、、

糖質制限で透析導入回避可能、すでに透析に至った患者においても安定した血糖コントロール維持し合併症予防にも有効ではないでしょうか?
何の指導もせず漫然とインシュリンを処方、には怒りすら覚えます。

Re: No title

saiko さん

 コメント頂き有難うございます。

 タンパク質の代謝はスクラップ&ビルドで、基本的にアミノ酸まで分解してまた再利用するの繰り返しです。

 それを分解され続けないようにするための最大のコツがエネルギーの確保であり、その時最も効率的なエネルギーが脂質でありケトン体です。

 その原則さえつかんでいれば、タンパク質はかなり少なくて大丈夫だと思います。それに耐えられるかどうかはまた別の問題ですが。

Re: No title

アローン さん

 コメント頂き有難うございます。

> 糖質制限で透析導入回避可能、すでに透析に至った患者においても安定した血糖コントロール維持し合併症予防にも有効ではないでしょうか?

 高度腎不全に対してはタンパク質過剰が負担になるので糖質制限は禁忌と言われていますが、

 糖質制限+タンパク質制限=(古典的)ケトン食、にすればそれでも対応可能だと私は考えています。

 2014年4月6日(日)の本ブログ記事
 「だからと言って糖質を勧めない」
 http://tagashuu.blog.fc2.com/blog-entry-233.html
 も御参照下さい。

返信ありがとうございます

遅ればせながら、「たんぱく質を取りすぎるな」への違和感の記事拝見いたしました。

知人で壮絶な保存期10年を経て透析導入に至った方が導入後に
「こんなに体が楽になるなら、もっと早くにするべきだった」とおっしゃってましたが、これって保存期治療の無力さ、もしくは限界を物語っているのではないでしょうか


私も蛋白質摂取上限の謎、解決致しました。
ありがとうございました。

Re: 返信ありがとうございます

アローン さん

 コメント頂き有難うございます。

 大きくみると、「健康な身体にとってタンパク質は取りすぎても問題ないが、体調を崩した状態にとっては多すぎるタンパク質は負担になる」というところではないかと思います。

今更ですが

確かに糖尿病性腎症が、現在の透析導入原疾患第1位ですが、多くの場合、2型ですよね。末期慢性腎不全になると腎臓でのインスリンの分解が抑制され、血糖コントロールがよくなる場合がほとんどです。Cr5にもなれば、HbA1cは7を切ることが多いです。末期慢性腎不全でたんぱく質制限が優先される病態でも、炭水化物は必要なのでしょうか?高窒素血症になり尿毒症を助長しかねません。でんぷん製品は炭水化物の中でも血糖値の上昇が穏やかで、食物繊維にも似た作用があり、血糖コントロールが悪化しません。炭水化物制限まで行ってしまうと、エネルギー不足になります。患者の病態をみて、炭水化物制限がいいのかたんぱく質制限がいいのか考えれば良いことです。0.3gでの管理は厳格に行う必要がありますので、必然的に血糖コントロールも良くなります。末期腎不全の患者は透析導入直後は誰でも「もっと早くやっておけばよかった」というんですよ。2年後、3年後にもう一度お話を伺ってみてください。

Re: 今更ですが

ケイン さん

 コメント頂き有難うございます。

 私の意見としては①炭水化物(糖質)制限、②タンパク質制限、③脂質制限の順に取り組むべきだと思います。
 即ち、タンパク質制限が必要な病態でエネルギー不足が懸念される場合は、脂質でエネルギーを補うべきです。タンパク質制限が必要な時期であれば同時に炭水化物(糖質)制限も必要な時期と考えます。
 そもそもタンパク質制限を余儀なくさせた腎不全を引き起こした糖尿病性腎症、その根源的な原因となった炭水化物(糖質)の過剰摂取を、エネルギーが足りないという理由でわざわざ勧める必要はないと私は考えます。

 勿論、選んでもらうのは患者さん自身です。可能な限りの情報を提供して、その上でよく考えて決めてもらえばいいと私も思います。
プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
漢方好きの神経内科医です。
南鹿児島さくら病院に勤務しています(下段にリンクあり)。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

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