サイアミディン

ケトン食とパーキンソン病

Stafstrom CE, Rho JM. The ketogenic diet as a treatment paradigm for diverse neurological disorders. Front Pharmacol. 2012;3:59. Epub 2012 Apr 9.

『パーキンソン病(PD)におけるケトン食(KD)
パーキンソン病における主要な病態生理は黒質でのドーパミン作動性ニューロンの興奮毒性変性に引き続き運動障害が起こり、時間経過とともにますます、認知や他の皮質機能に障害が及ぶ。KDはPD患者にどのように利益をもたらすであろうか?PDと関連があるとされているミトコンドリア複合体Ⅰでの活動性の欠損をケトン体がバイパスするという認識に基づき、小さな臨床研究ではあるが7人の患者のうち5人が標準的なPD評価スケールのスコアに改善したということが実証された(Vanitallie et al.2005)。ところが、小さい標本集団であるので、プラセボ効果の可能性は除外できない。1-メチル-4-フェニル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン塩酸塩(MPTP)によって生み出されたPDの動物モデルでは、BHB注射によって通常その毒素によって引き起こされるミトコンドリア呼吸鎖の傷害が改善した(Kashiwaya et al., 2000)。さらにPDでのケトン体の有用性の可能性を支持するエビデンスはそれぞれミトコンドリア複合体Ⅰ、Ⅱの阻害剤であるロテノンや3-ニトロプロピオン酸によって外部より誘導されるミトコンドリア呼吸鎖機能障害に対してこうした物質の保護効果を実証するin vitroの実験によってもたらされている(Kim do et al., 2010)。そしてMPTPにより誘導される神経細胞毒性におけるKDの抗炎症効果さえも示された(Yang and Cheng, 2010)。ケトン血症を増加させる商業的に利用可能な治療法-例えば、最近のアルツハイマー臨床試験で用いられたMCTを基本とした形式(Henderson et al., 2009)-がPD患者に利益をもたらすかどうかをはっきりさせることは興味深いであろう。』

本日はパーキンソン病という病気を通じて気がついたことを記事にします.

パーキンソン病というのは原因不明の進行性疾患であり,徐々に体の動きがスムーズでなくなったり,手足が震えたり,うまく歩けなくなったりします.

この病気のメカニズムについては,ドーパミンという神経伝達物質を作る神経が徐々に死滅していくということがわかっています.

さらにはその死滅している細胞にはレヴィ小体という異常なたんぱく質の塊が蓄積しているのです.こうして神経がやられていくことを「神経変性」といいます.

このパーキンソン病のように原因がわからないけれども神経変性が起こっていく病気を「神経変性疾患」と呼びます.他にアルツハイマー病,脊髄小脳変性症,筋委縮性側索硬化症などがあります.

パーキンソン病は原因は不明だけれども,メカニズムはよくわかっているために薬物療法は非常に発達し,近年も新薬がどんどん開発されてきています.こうした薬を上手に使えば天寿をまっとうできるとも言われています.

そんな中,このパーキンソン病にもケトン食が効果がある可能性が示されてきているのです.

ケトン食の応用範囲の広さに驚くとともに,ある一つの考えが私の頭の中をめぐります.

「もしかしたらケトン食は神経変性疾患全般に治療効果をもたらすのではないか?」

「というよりも,グルコーススパイクによる酸化ストレスの増加が神経変性の根本的な原因なのではないか?」

「神経変性の最上流は実は皆共通して酸化ストレスから始まっていて,どんな神経変性が起こるかは,個体の体質によって異なるということなのではないか?」

これは神経内科医として一般的な考えではありませんが,

ケトン食がさまざまな神経変性疾患に効果があるというデータが集まれば集まるほどこの仮説の信憑性が増してくると思います.

そう考えると,治療が困難な神経変性疾患にも展望が見えてくるような気がします.

引き続き検証を続けたいと思います.



たがしゅう
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糖は万病の元?

たがしゅう先生、こんにちは。
たがしゅう先生のブログを読ませて頂くと、糖質の摂りすぎは糖尿病だけではなくそれ以外の人間の機能にも害を及ぼすのではないかというお考えをお持ちなのだなんとなく読み取れていました。全くの受け売りですが、人が正しい血流でなくなった場合には様々な症状が出てくるのだと何の根拠もありませんが、私もそう思っています。

少なくとも糖質を制限したら中性脂肪と総コレステロール値が正常になったので余計にそう思いました。

先走ると、もし糖質の摂りすぎは万病の元ということが証明されたとすると、糖質の大量生産、大量供給で成り立っている企業が少なくないので色々な意味で大変なことになるので糖質制限以上に圧力がかかったり無視されるようになるかもしれませんね。現状の医療だけではなく資本主義の根幹も否定されるような気がします。

Re: 糖は万病の元?

クロワッサンさん

 いつもコメント有難うございます.

> 糖質の摂りすぎは糖尿病だけではなくそれ以外の人間の機能にも害を及ぼすのではないか

 はい,そのように考えています.

 世に原因不明とされる病気はまだまだ数多くありますが,

 糖質を制限すると幅広くいろいろな症状が改善していくという事実を冷静に眺めた時に見えてくるものがあると思います.

糖質オフによる健康回復の可能性

 実父が、パーキンソン病で、71歳で亡くなりました。パーキンソン病患者の末期の生活は、正直に言って悲惨です。若年性の人は、進行が早く、より悲劇的です。
 また、精神病の薬を多量・長期に飲むと、パーキンソン症候群の症状が出現します。
 糖質制限で、糖質をコントロールする事により、健康が取り戻すことが出来ますように・・・。

Re: 糖質オフによる健康回復の可能性

わんわんさん

 コメント有難うございます.またお父様の件,お察し申し上げます.

 確かに若年性のパーキンソン病は進行が早い傾向があります.またパーキンソン病の薬は将来の副作用を最小限にとどめるべく,100点を目指さずに60~70点くらいを目指して服薬量を調節するのが医師側の基本です.

 パーキンソン病の薬は御指摘のように副作用も多く,調整がなかなか専門的でなかなか苦労するのですが,

 ケトン食が有効となればそれは患者さんにとって福音になると思います.

 パーキンソン病の患者さんにも積極的にケトン食を勧めていきたいと思っています.

コメントありがとうございます

父の場合、パーキンソン病の薬の副作用で幻覚症状が出ていました。

>パーキンソン病の薬は御指摘のように副作用も多く,調整がなかなか専門的でなかなか苦労するのですが・・・,
 本当に、難しいですね・・・。

アルツハイマー型も・・・

たがしゅう先生

いつだったか江部先生のところで、こんな記事がありますと紹介したことを思い出しました。
そのあと精神科医師Aさんから人での米国での研究が紹介されておりました。

「アルツハイマー病におけるケトン体治療に関する基礎的研究」

http://kaken.nii.ac.jp/d/p/11670625/2000/3/ja.ja.html

ご存知だと思いますが、13年も前からケトン体(D-3-ヒドロキシ酪酸)が神経細胞の保護に繋がると予想されてたのですね。
その後の研究結果がどうなってるのか見つけ出すことが出来ませんでした。

Re: アルツハイマー型も・・・

Yamamoto_maさん

 いつもコメント頂き有難うございます。

> 「アルツハイマー病におけるケトン体治療に関する基礎的研究」
> http://kaken.nii.ac.jp/d/p/11670625/2000/3/ja.ja.html


 よく存じております。

 ただ動物実験で良いという事実から、ヒトでも臨床的に有用であるということを証明するには慎重な考えを示される先生が多いです。ここでも見えない大きな壁が立ちはだかってきます。

はじめまして

たがしゅう先生 はじめまして。
先生のブログは、数か月前から毎日見させていただいていました。
実は私の母(71歳)がパーキンソンでして、かなりヤール度も進んでおります。日常生活は介助無ではいられません。
私自身が昨年8月中頃から糖質オフを始めまして、8カ月で21㎏減、2型糖尿病も改善されたこともあり、母にも勧めたいと考えています。
しかしながら地方の田舎のグループホームではなかなか理解してもらえないのがつらいところです。

50半ばで発病し、下り坂を転げ落ちるように悪化の一途を辿り現在に至りますが、思えば父からのDV・パワハラに耐え忍び、唯一のストレス発散だった甘味にも裏切られたとあっては、何とも辛い人生だったのかと。

GHでは3食きちんと食べさせられ、食欲が無くてもご飯は残すなと言われ、数年前には脳梗塞も発症。
幸い本人が違和感に気づき(神経質なもので)、早期発見で事無きを得ました。
聞けば3時のおやつで甘味を食べていたとのこと。
また最近は食欲が無いと食事を拒んだところ、エンシュアなるものを飲まされていると。ネットで調べるとその糖質量にびっくり!
田舎ではまだ栄養=カロリーと思っている人たちが沢山いるのです。

私も糖質制限がPDの症状を軽減・改善させるのではないかと思い、ケトン食とパーキンソンで検索したところ、たがしゅう先生のこちらにたどり着いた次第です。
自分は母とは離れて暮らしておりまして(今年の4月から大阪でそれまでは東京でした)、昨年のお盆に帰省した時に糖質制限で痩せるからと宣言してきました。
順調に減量していたのですが、4月の転勤以降、摂取量が増えたのか3カ月ほど小康状態でした。
また最近減少傾向にあるので、来月帰省した時には身を以て効果を証明し納得してもらえるのではないかと期待しています。

話が取り留めなくなってしまい申し訳ございませんが、これからも勉強させていただければと思います。
宜しくお願いいたします。

Re: はじめまして

福助 さん

コメント頂き有難うございます。

お母様の件、お察し申し上げます。

パーキンソン病も少し前に比べてもかなり多い病気(コモンディズィーズ)になってきました。

その背景には現代の糖質頻回過剰摂取文化の影響があると私は考えています。
プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
漢方好きの神経内科医です。
南鹿児島さくら病院に勤務しています(下段にリンクあり)。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

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