サイアミディン

でんぷんを深く知る

70%という高炭水化物食であるにも関わらず、

通常の食事療法と比べて、透析導入時期を数年以上遅らせる事ができるという

出浦先生提唱の「低タンパク質・でんぷん食療法」ですが、

中には13年も腎機能横ばいで透析を免れているという症例提示もございました。

いかに言っても70%の高炭水化物食で血糖値の乱高下を繰り返していれば、そんなに長く持たないのではないかと正直思ってしまいます。

しかしその点に関しては腎臓を悪くしている原因と、

食事療法のため、ごはんの代わりに用いている代用主食にどうやら秘密がありそうです。
まず腎不全の原因疾患が「糖尿病性腎症」ではない事が必要だと思います。

勉強会で提示された症例をみていても、糖尿病性腎症の症例は確かに透析時期を引き伸ばしてはいますが、

腎機能が悪くなるスピードが遅くなるものの、多くは2~3年で透析導入となってしまうようです。

一方、高血圧が原因の腎硬化症や、比較的予後良好とされるIgA腎症(一部予後不良)などの疾患では、

かなり横ばいに近いくらいに腎機能障害の進行を遅らせている症例が多い印象です。

もう一つ、ごはんの代用主食についてですが、

大きく分けて「たんぱく質調整米」と「でんぷん米」の二つがあります。

「たんぱく質調整米」というのは、一般のお米からそこに含まれるたんぱく質を除去して作られた米になります。

「でんぷん米」というのは、「米」という名前がついているものの米を原料にせず、

コーンスターチ(とうもろこしでんぷん)や、小麦でんぷんなどを米の形に成形して作られたものになります。

「米のでんぷんも、小麦のでんぷんも、とうもろこしのでんぷんも一緒じゃないの?」と思われるかもしれませんが、違います。

そもそもでんぷんというのは、(C6H10O5)n という化学式で構成される炭水化物(多糖類)で、

多数のα-グルコース分子がグリコシド結合によって重合した天然高分子のことです。

その結合の仕方が一直線に結合したものをアミロース、
アミロース

斜めに結合したものをアミロペクチンといいます。
アミロペクチン

実は同じ「でんぷん」であっても、アミロースとアミロペクチンの割合が異なります。

そしてアミロースもアミロペクチンもα-アミラーゼによってデキストリンやマルトース(麦芽糖などさらに細かく分解されていきますが、その分解のされやすさが両者で異なります。

アミロースは直線状に並んでいる構造のため、1個1個結合を切断していく作業になりますが、

アミロペクチンは斜めに並んでいるので、1個の結合を切断しようとした際についでに2個の結合が切断されてしまう事が起こりえます。

即ち、アミロースとアミロペクチンで言えば、アミロースの方が血糖値が上がりにくい構造をしている、言い換えれば「同じでんぷんでもアミロースの方が低GI」という事になります。


話を「たんぱく質調整米」と「でんぷん米」に戻しますが、

「たんぱく質調整米」の元は米、米でんぷんはアミロース15-20%くらいです。

「でんぷん米」の元である、とうもろこしでんぷんや小麦でんぷんはアミロースは一般にアミロース25%程度です。

ただしハイアミロースコーンスターチ、と呼ばれるものはアミロース60-70%とかなり高い割合になります。

問題はその違いが実際にどれほど血糖値の差をもたらすかという事ですが、

とある糖質制限仲間のドクターが実際に血糖値を測った情報によりますと、

「たんぱく調整米」を食べると250mg/dlくらい上がる血糖値が、「でんぷん米」を食べると200mg/dlくらいにおさまるのだそうです。

つまり、アミロースの多い代替主食を用いていれば、

タンパク制限をしつつ、実は弱い糖質制限も同時にしていることになるのではないかと思います。

一口に「たんぱく調整米」「でんぷん米」といっても各社からいろいろ出ていますので、

アミロースがどれだけ含まれているかということを勘案することが、それらの選択のポイントになりそうです。

それならば「でんぷん米」を選んだ方が絶対に良いではないかと思われそうですが、一つ欠点があります。

それは「おいしくない」という事です。味で言えば「たんぱく調整米」の方が断然おいしいそうです。

「糖質は健康を害するけどおいしい」、このジレンマは常に糖質制限を考える上で常に問題となります。ある意味、糖質の持つ魔力だと思います。



ともあれ、原疾患と代用主食、この2点こそが

同じ「低タンパク質・でんぷん食療法」であっても、非常によい成績を出したり、いまいち成績が伸びなかったりを左右する要因であると私は考えます。

※本日の記事は
Wikipedia「デンプン」の記載を参考にして作成しました。



たがしゅう
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No title

でんぷん米の食感は無味無臭のプラスチックそのものです…
たんぱく質調整米も昔は同様でしたが、
10年くらい前から、かなり食味のよいものが出るようになりました。
とはいえ本物のご飯の旨さにはとうてい及びません。
ご飯好きには辛いでしょうね。
>低GI
わかるのですが、糖尿病&セイゲニストになった今では
五十歩百歩のように思えてなりません。
とにかく膨大な糖質摂取量です。
たとえ耐糖能が正常でも
主食で100g近い糖質を摂る(それも3回/日)とか今では考えられません。
もし今保存期なら油中心のケトン食にすると思います。
蛋白制限ついては出浦式の20g/日がいいのか、
一般的に推奨されている0.8g/kg/日がいいのかわかりません。
1日3食生活だと20g/日は過酷ですが、
小食に慣れた今のほぼ1日1食生活だとおかず量もそれなりで割と実行可能です。
とはいえ長期に続けるのは結構辛そうです。
ちょっとした間食ですぐ蛋白オーバーしてしまいます。

Re: No title

へっぽこ さん

 コメント頂き有難うございます。

> もし今保存期なら油中心のケトン食にすると思います。

 私もそう思うのですが、出浦先生のやり方が実際によい成績を出している事もまた事実です。

 近藤先生のがん放置療法と同様、それだけでは未完成で、さらに高めるべき対象となる治療法であり、

 その功績には一定の価値があると私は考えています。

No title

「食事療法のため、ごはんの用いている代用主食」←日本語がおかしい?

Re: No title

> 「食事療法のため、ごはんの用いている代用主食」←日本語がおかしい?

ご指摘頂き有難うございます。

「ごはんの代わりに用いている代用主食」の間違いでした。訂正しておきます。
プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
漢方好きの神経内科医です。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

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