サイアミディン

「医師不足」から「医師過剰」へ

医師不足のニュースが時々話題になります。

救急、産婦人科、小児科、外科系を中心に現場での医師数が足りておらず、

その領域の医師の善意による激務のおかげで何とか成立しているという現状があると思います。

また、そんな風にマスコミで騒がれたりするものだから、

新しく医師になる人達は、総じて自分の生活のQOLを重視して進路を選ぶという傾向が強くなってきているように私には思えます。

そんな中、文部科学省は平成26年度医学部の入学者数の増員計画を立てているようです。

しかし、この「医師不足問題」は少し複雑で、

ただ医師数を増やすというだけではおそらく解決しないと私は考えています。
その理由の一つは医師の偏在です。

そもそも医師も人間ですから、自ら進んで好んで激務をするという事はまずありません。

一方、自分のなすべき事をやって、結果的に激務になるのであればやむなし、という人はいると思います。

しかし大半の人は、「忙しくないに越したことはない」と考えて、

仕事のやりがいと生活の質を天秤にかけて、そのバランスで納得できる科を進路に選んでいると思います。

その結果、いわゆる楽な科に人が集まり、しんどい科へ人が集まらなくなる。

だからたとえ医師数が増えても、そうした医師の偏在が助長されるだけではないかという懸念があるわけです。

そういう意味では、我々神経内科医も人気のない科の一つです。

脳卒中は年間を通じて多く、日夜その対応に追われますし、

救急でなくとも神経の関わる慢性疾患の多さたるや計り知れずその膨大なパターンに対応していかなければなりません。

また脳と言うと苦手意識を持つ医師が多いため、他の診療科からのコンサルトを数多く受けます。

そう考えると、割と忙しい部類に入る診療科ではないかという気がいたします。


ところで先日、とある講演会を聴講しておりましたら、

神経内科医が中心の「日本神経学会」の会員数が、

「日本糖尿病学会」の会員数よりも遥かに少ないという話がありました。

神経全般という広いジャンルの学会が、糖尿病という一疾患を扱う学会に会員数で負けるという事実が、

全体の医師の思考がどういう方向に向いているかという一端を表しているように思えます。

もっとも糖質制限の観点でみれば、

糖尿病は一疾患というよりは万病の元、もっと言えば糖質があらゆる病気に関与する根源的なところに位置するという事実が見えてくるわけですが、

そこまで分かって糖尿病学会の会員数が多いのであればよいですが、

残念ながらそうでないという事は想像に難くありません。

さらに糖質制限の観点で「医師不足問題」を考えてみます。

今医師が足りないと言っているのは、

あくまで現在の医療体制での話です。

即ち食事療法が軽視され、カロリー制限一辺倒の指導を基本とし、

慢性疾患の素地を自らで作りつつ、なおかつ起こってきた問題を最もシャープかつ高リスクである西洋薬を中心に何とかしようとする薬絶対主義、

なおかつ薬の副作用でさらに症状を悪化させ、問題を複雑化していくという、

そういうシステムがまかり通っているから医師が足りないのです。

しかし、一度糖質制限が標準化すれば、

慢性疾患の大半はかなり改善していくでしょう。

必然的に薬を使う必要はなくなるので、医師の仕事自体が大幅に減ります。

そうなればたちまち医師の数は充分足りている、という状況になるのです。


ただもう一つの問題は、

仮に本当にそういう世の中がやってきたとして、

仕事を無くした医師はその後どうなってしまうのでしょうか。

医師の仕事自体はどこでも引く手数多ですが、

その医師の仕事自体が少なくなった世の中ではたちまちつぶしがきかない職業となってしまいます。

しかも多くの医師はプライドが高いときたものですから、

他の職業に適応できるか甚だ疑問です。

そうすると、患者をよくしたいとする医師なのに、

患者がよくなりすぎるのは困るという絶対的矛盾にぶち当たります。

そういう医師の心理も糖質制限の普及を阻む壁となるかもしれません。


私は糖質制限をベースとした医療は、

将来的には、従来の医療体制とは別のフィールドで展開しなければならないと、

そういう考えに至りつつあります。


たがしゅう

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未来予想図

就職はたいへんです。教員もストレスが高そうで、今は不人気です。教員免許を取っても先生をするつもりのない人は大勢います。ドクターも、そのうち資格は取ったけどペーパードクターで、最初から医療とは別の就職先を捜したりする人が現われるのと違いますか?
医療の知識資格は教養、という新人類が出てきてもおかしくない気がします。病院でなくて、コンサルタント業で起業するのもありじゃないですか?

Re: 未来予想図

エリス さん

コメント頂き有難うございます。

> 医療の知識資格は教養、という新人類が出てきてもおかしくない気がします。病院でなくて、コンサルタント業で起業するのもありじゃないですか?

ありえる未来像ですね。

従来体制の医療機関の問題点を指摘し健康を守るためのコンサルタント、現状成立すると思います。

日本消化器がん検診学会

 この学会は未だに胃がんX線検診に執着しています。前世紀にevidenceの無いことを近藤誠氏に指摘されたはずです

http://www.jsgcs.or.jp/02news/notice60.html


「胃がんX線検診技術部 門B資格検定試験」なるものを継続して、既得権益の確保に執着しています

http://www.jsgcs.or.jp/07technics/index.html

お疲れ様でした

たがしゅう先生

豚皮揚げを食べる会in静岡に参加した「ぶりお」です。
大変お疲れ様でした。
ブログでは全く分からなかったリアルなたがしゅう先生の「どじっこ」ぶりや、あんなかくし芸まで見せられて、笑っちゃうやら度肝を抜かれるやらで、静岡まで行ってよかったです。
あまりお話しすることが出来なかったのですが、私が糖質制限をしながら人体実験している「筋トレ」に関する常識の問題点の一端をご紹介できて、楽しい時間を過ごせました。
また、よろしくお願いいたします。

Re: 日本消化器がん検診学会

精神科医師A 先生

 情報を頂き有難うございます。

 医療界には本当に根深い闇の部分がありますね。辟易します。

 身を守る基本はやはり「自分の頭で考える」ことですね。

Re: お疲れ様でした

ぶりお さん

 コメント頂き有難うございます。
 
 大分素の部分をお見せする形になってしまいましたね(笑)。お恥ずかしい限りです。

 こちらこそ他分野の方といろいろなお話ができて、とても楽しかったです。今後とも何卒宜しくお願い申し上げます。
プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
漢方好きの神経内科医です。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

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