サイアミディン

ヘモグロビンエーワンシーってなんですか?

インフォームド・コンセント(正しい説明を受けた上での同意)という言葉が使われるようになって久しいですが,

今や説明と同意は医療を行う上での基本中の基本です.

従って,医師には難解な医学用語を使わずにより患者さんにわかりやすい言葉で説明するという能力も求められています.

ところが,糖尿病診療においては,この説明と同意ははたして十分にできているでしょうか.

私は大いに疑問です.

普段私は他科の患者さんの診療サポートの際に,糖尿病の治療状況も併せてみる機会がよくあります.

その中で,最近特に多いのは「SU剤を使用してHbA1cが7.0%から6.3%,糖尿病は改善傾向」とした文章です.

血糖値という言葉はさしたる説明を受けなくてもみなさん直観的に意味がわかると思いますが,

この「HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)」という言葉はくせものです.

なぜならば,医師から説明を受けていない限り,初めて聞いた人が言葉から意味を推測することはほぼ不可能だからです.

別の言い方をすれば,医師と患者の間で周知度に大きな差がある言葉とも言えます.

「HbA1c」の意味については以前の記事でも触れたように,「過去1~2か月の血糖値の高さの平均を反映した数値」です.別名を「糖化ヘモグロビン」と言います.

糖尿病の治療を他科で受けている患者さんに「ヘモグロビンエーワンシーってどういう意味かご存知ですか?」と尋ねると

ほとんど患者さんは「よく知りません」とか,「この手帳に書いていると思います」と言って自分で説明することはできません.

こうした患者さんは,医師の診察を受け「血糖値は下がっていますね,良い調子ですよ」などと言われ,何の疑いもなく順調に行っていると思い込んでいると思います.

医師を盲目的に信用するという,この「パターナリズム(父権主義)」とも言える人間関係は過去に厳しく批判されてきたはずですが,この現代においても根強く残っています.

しかし,すべての判断を全面的に医師に委ねてしまうということは危険な事と言わざるを得ないでしょう.

糖尿病専門医の日常診療でカルテにどのような記載がされているかを私は知っていますが,

患者さんの発言で記録してあることは「脂っこいものを食べ過ぎてしまった」だとか「間食が我慢できなかった」だとか,従来の誤った栄養学の観点からよくないとされている事の記載が目立ちます.

糖質制限の理論を理解した私に言わせれば,脂っこいものはどんどん食べてよいし,お腹がすいた時には基本的には我慢することなく,低糖質のものを間食すればよいのです.

そして次に患者さんの体重が記載してあり,続いて血圧や脈拍の記載.診察の所見はほとんど記載されることはなく,その次に来るのが(空腹時)血糖値,HbA1cを含む血液検査です.

糖尿病専門医,および糖質制限に理解なく糖尿病診療に当たる医師は,この血糖値とHbA1cの値ををみて糖尿病の治療がうまくいっているかどうかをほとんどすべて判断しているといっても過言ではありません.

そしてHbA1cが下がっていれば医師はこれまた何の疑いもなく糖尿病の治療はうまく行っていると考えてしまうのです.

でも患者さんは「治療がうまく行っている」の意味を「血糖値とHbA1cの値が下がること」だなんて思っていますか?

そもそも「ヘモグロビンエーワンシーって何ですか?」

これが答えられない患者さんは,インフォームドコンセントが得られているとは到底言えないと私は思います.

それでは本当の意味で「糖尿病の治療がうまく行っている」とはどういう意味なのでしょうか.

長くなるので,明日に続きます



たがしゅう




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間食といえば・・・

たがしゅう先生、こんばんは。

日経メディカルオンラインで、こんな記事を見かけました。
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/gakkai/easd2013/201309/532604.html

>糖質制限の理論を理解した私に言わせれば,脂っこいものはどんどん食べてよいし,お腹がすいた時には基本的には我慢することなく,低糖質のものを間食すればよいのです.

と先生は述べておられますが、私もその通りと思います。

 上記の記事は『食後の血糖変動に対するスナック(間食)の影響を調べた』とのことですが、スペインまで行って報告する内容ですかネ?!

 『糖質の少ないものを食べれば血糖値は上がりにくい』ことを知っている人なら「はじめから糖質の少ないものを食べれば時間など気にしなくてもいいじゃない?」と考えます。私は、この記事を読んであまりのレベルの低さに驚きました。
 結果の分かっていることを、敢えて手間暇かけて研究しようという「メンタリティ」が理解できません。そんなヒマがあるなら、一日でも早く糖質制限食を実施した方がどれほど効果があるか、と考えてしまいました。

Re: 間食といえば・・・

satyさん

 いつもコメントを頂き有難うございます.

 メディカルオンラインの記事,拝見しました.

>昼食後の血糖ピーク値は、15時半の間食をとった場合に比べて、12時半の間食のほうで有意に高かった(6.6mmol/L 対 5.4mmol/L、P<0.01)。ただし、平均血糖値、血糖変動幅(MAGE)、最大血糖変動幅(LAGE)は、12時半と15時半の間食において違いは見られなかった。

 食事と食事の間の時間が離れている時に間食を行った方が,食後血糖への影響が少ないというのは,想像通りの結果です.

 そしてもう一つのメッセージは,いつ食べようと平均血糖値,血糖変動幅,最大血糖変動幅はかわらないということです.動脈硬化のリスクは十分に下げられているとは言えません.

 「糖尿病があると間食を我慢するのは難しい」→「ならばせめて何時に食べるのがよいか」

 「糖尿病があると間食を我慢するのは難しい」→「ならば血糖値が上がらない間食をすればよい」

 私なら後者の発想をします.

 糖質制限の理論を知っていなければ,絶対に生まれない発想だと思います.

ヘモグロビンA1Cは一つの数値ですからね

たがしゅう先生、こんにちは。
ヘモグロビンA1Cは一定の期間の人体の活動の結果の数値ですからこれが悪ければ活動の結果も悪いということになるかもしれませんがこれがいいからといって全ていいとは限りませんよね。低血糖を何度も起こしているとこれも影響されるのでヘモグロビンA1Cが低く出ることがありますからこの数値の質が大切になってきますよね。自分自身で食後高血糖を起こしていないことを理解した上でこの数値が改善しているとうれしくなってしまいます。私見ですがインスリン注射などで見かけの血糖値を下げても食後高血糖を起こしていることがあるということをご存じない方はけっこういるのではないかと思いますね~

どうなんでしょうか?

こんにちは。今日の記事でふと思った事。今年の4月26日に血液検査の結果 血糖値158 A1C8 と結果で立派な糖尿病と診断されました、軽い糖尿病の説明 1分ほど 栄養指導しますので、何時がいいですか、薬出します、毎日三回のんでください。?? 何かおかしい。全て拒否し帰宅後ネットで情報収集 翌日江部先生の本三冊 糖尿病学会系三冊 福田一典先生の本 内分泌本 栄養学の本ハーパーの生化学その他合わせて20冊ほど買い漁り毎日5時間2ヶ月読みました。結果 9月10日 血糖値90 A1C4、8 OGTTも血糖値140内でした。長くなりました。これは検査結果では糖尿病じゃ無いですよね、なのに特定疾患管理料栄養指導料も取られています。これって どーなんでしょー お金の問題じゃなく なんかモヤモヤ 一回糖尿病と診断されると治癒 完治って無理何ですか?
愚痴になってしまいました。すいません。オッサンの戯言、 先生の視点いいですこれからも楽しみに拝見します。

Re: ヘモグロビンA1Cは一つの数値ですからね

クロワッサンさん

 いつもコメントを頂き有難うございます。

>自分自身で食後高血糖を起こしていないことを理解した上でこの数値が改善しているとうれしくなってしまいます。

 クロワッサンさんのように、そこまでわかった上でHbA1cを見ることができる人はまったく問題ないのですが、

 単に数値が上がった下がったで良し悪しを判断してしまっている人が非常に多いということが問題です。

 そして何とそういう風に判断している医者もごまんといます。そんな医者に治療がうまく行っていない可能性を指摘しても軌道修正するのは非常に難しいです。まず認めようとしません。

 このあたりの苦悩とジレンマはいずれ記事にしたいと思います。

Re: どうなんでしょうか?

奈良県吉野けんさん さん

 実体験をお話頂いて誠に有難うございます。またお気持ちお察し申し上げます。

 奈良県吉野けんさんさんが良好な血糖コントロールを得たのは、まさに「自分で考える力」があったからですね。パターナリズムで言われるがままにしていたら、とてもこうはなっていなかったと思います。お見事です。

 それにしても医療は完璧ではないとはいえ、現代の医療でまさかここまで無根拠な医療が幅をきかせているなんで夢にも思っておりませんでした。我々医療者は大いに反省すべきです。

 そして真実を知った今は、常識の壁を打ち破り、一人でも多く救える人を救っていきたい気持ちです。

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Re: No title

 共感頂き有難うございます。

 自分は痛くもかゆくもないからそんなひどい事が言えるのではないかと思います。

 HbA1cのことが本当にちゃんとわかっていれば、皆薬以外の選択肢についてもっと真剣に考えるはずです。

月に一度だと・・・・

たがしゅう先生、こんばんは。
コメントありがとうございます。

患者は専門家ではありませんが、外来になると一月に一度くらいの頻度の検診になりますよね。こういう状況で全部ドクターにお任せというのは現実的ではないと思います。できれば自分自身で勉強して知識を得てそれの方向性が正しいのかどうなのか専門家に確認するような感じだと望ましいと思っています。ドクターも月に一度くらいの検診で全てお任せといわれても厳しいと思っています。

また患者も数値は悪くないのに糖尿病が悪化していると認識した時にはかなり辛い思いをするのかもしれませんね。こういうことがないように情報をキチンと理解して糖尿病の悪化させないためにヘロヘロになった膵臓に寄り添っていきたいと思います。

Re: 月に一度だと・・・・

クロワッサンさん

> できれば自分自身で勉強して知識を得てそれの方向性が正しいのかどうなのか専門家に確認するような感じだと望ましいと思っています。

 まったくその通りです。

 一方的に医師に依存するのではなく、正しく医師が選択肢を提示し、患者さんと一緒に治療を考えていくというのが真の意味でのインフォームドコンセントだと思います。

 よく患者さんに「先生にお任せします」と言われるのですが、自分の身体のことなので完全に任せないでほしいものです。
プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
漢方好きの神経内科医です。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

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