サイアミディン

本態性振戦と糖質制限

緊張すると手が震える事ってあると思います。

緊張する状況というのは、交感神経過緊張状態ですので、

緊張というストレスに対して体が対応しきれていない一つの傍証という事になると思います。

そういう時は深呼吸をするなどして副交感神経を働かせるように心がければ大抵の場合は治まりますが、

それが治まらずに手が震え続けてしまうという状態になる事があります。

そういう状態となる病気の一つに「本態性振戦」というのがあります。
本態性」とは、医学の中でよく使われる「原因不明の」という意味を表す言葉です。

「本態性高血圧」は「原因不明の高血圧」、「本態性振戦」は「原因はわからないけど手が震える病気」という意味になります。

さて、本態性振戦ですが、大きな特徴は「姿勢時振戦」といって、

安静にしている時には振るえないけれど、ある姿勢をとろうと手を動かした時に手が震えるという状態のことを言います。

緊張していなくても振るえてしまうというので、なかなか厄介な病気です。

本態性振戦の病態機序はさすが「本態性」というだけあってはっきりとした事はわかっていませんが、

一説には小脳-下オリーブ核系の異常を主体とした神経変性疾患ではないかと言われてきています(Louis ED : Essential tremor : evolving clinicopathological concepts in an era of intensive post-mortem enquiry. Lancet Neurol 9 : 613-622, 2010)。

一方で、本態性振戦の振るえはアルコールを飲むと軽減するというのが特徴です。

アルコールは少量であればリラックスさせる効果があり、いわば副交感神経の強制刺激法の一つと言えます。

ただアルコールが度を超えると、今度はアルコール自体が「振戦」の原因になってしまいます。

少量であれば副交感神経優位になるけれど、大量になれば交感神経優位になってしまうためと考えられます。


つまり緊張して手が震えるような場合、

その原因には「交感神経のアクセル過剰」と「副交感神経のブレーキ不足」の二つの因子があると思いますが、

何らかの原因で神経の変性が起こった結果、交感神経アクセル過剰になってしまい、

もはや深呼吸程度の副交感神経刺激ではブレーキがかけられなくなった状態が「本態性振戦」ではないかと思うのです。

一般的な本態性振戦の治療はβ遮断薬という交感神経の働きを抑える薬を使うのが主流ですが、

上記の観点に立てば、そもそもの神経変性を起こさないように酸化ストレスリスクを減らすこと、

自律神経機能を乱さないようにすることが治療において重要なことになってくると思います。

そして早めに対策を打つ事で可逆的な改善が得られれば、根治も期待できるかもしれません。

となれば、やっぱり基本は糖質制限だと思います。


なんでもかんでも糖質制限って結論になってしまいうさんくさいと思う人もいるかもしれませんが、

でも考えれば考える程、あらゆる病気の原因が

糖質を主体とした食生活に起因しているように私には思えるのです。


たがしゅう
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No title

HbA1c改善のためにスーパ糖質制限を始めて2年半になる63歳男性です。
30歳半ばより緊張時の強い手の震えに悩まされてきました。
薬を飲みながらなんとか凌いできました。
糖質制限を始めて1年後くらいに手の震えが改善していることに気がつきました。
まだ強い緊張時には震えますが、薬がなくてもなんとか済むようになっています。
私も糖質制限されている多くの方と同じように色んな体調(病気とまでいえない)が改善しています。
糖質が体にじわじわと悪影響を与えていたことを実感する毎日です。
いつもブログを拝見しています。大変なことも多々あると思いますが更なるご活躍を祈念しております。

なんでもかんでも・・

なんでもかんでも糖質制限という流れは、確かに胡散臭くする要因かなと私自身も時々思います。それはあまりに都合よすぎるだろうと。
しかし糖質がもたらす不利益があまりに多岐に及ぶが故に、そういう事になるんですよねぇ。。


ところで、先日テレビで訪問管理栄養士の方が奮闘しているという番組を見ました。
病院と違い目が届かない家での食事の指導は、ちゃんと理解して納得してもらい実践してもらう事が大変な様子で、
一時間も患者と話して説得するような場面も紹介されていて(!)、そんなに時間かけるのかと驚いてしまいました。
先生のように短い診察で説得するのは確かにハードルの高い事ですね。
ましてや、それが常識を覆す内容なのですから(笑)

健康マーク

厚生労働省がコンビニ弁当などに「健康マーク」と言いますが…。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20141006/k10015163621000.html

厚生労働省は、コンビニや飲食店で販売される弁当や定食などがこうした基準を満たせば、「健康な食事」であることを示す専用のマークを付けて販売できる制度を来年度から始めることにしています。
これは、6日に開かれた厚生労働省の検討会で決まったものです。この中では、生活習慣病の予防や健康作りにつなげようと1回の食事で必要な栄養素について基準を定めました。
例えば、主食には40グラムから70グラムの「炭水化物」をとることや、副菜については、10グラムから17グラムの「たんぱく質」のほか、緑黄色野菜など2種類以上の「野菜」を、合わせて100から200グラム含むよう定めています。
そのうえで、1食当たりのエネルギーを650キロカロリー未満に抑えるよう求めています。


私はこのニュースをNHKのAMラジオで知ったのですが、短い時間に「炭水化物を摂取すること」とアナウンサーの方が述べていて、残念でした。
たがしゅう先生がおっしゃられた、「行政がじゃまをする」というお話がまさにそうなってしまったとかんじました。

Re: No title

popo さん

 貴重な御報告を頂き有難うございます.

 本態性振戦にも糖質制限が有効である事を身を持って実証して頂きましたね.よかったです.

 さらに緊張時の手の振るえもコントロールできるようになれば尚よいですね.末永く糖質制限を続け,さらに高みを目指して頂ければと思います.私も少しでもお役に立てるよう頑張ります.

Re: なんでもかんでも・・

mina さん

 コメント頂き有難うございます.

 明日は「何でもかんでも糖質制限が効く」という事に懐疑的な人達に向けての記事を書こうと思います.

> 先日テレビで訪問管理栄養士の方が奮闘しているという番組を見ました。
> 一時間も患者と話して説得するような場面も紹介されていて(!)、そんなに時間かけるのかと驚いてしまいました。

 日常診療では1時間も時間かける余裕はないですね.

 もっとも,仮にそれだけ時間がかけられたとしても結果が変わるとも思えません.「わかる人にはわかる」し,「わからない人にはどれだけ言ってもわからない」のです.

Re: 健康マーク

いるいる さん

 情報を頂き有難うございます.

> 厚生労働省は、コンビニや飲食店で販売される弁当や定食などがこうした基準を満たせば、「健康な食事」であることを示す専用のマークを付けて販売できる制度を来年度から始めることにしています。


 また余計な事をし始めましたね.

 健康の概念が根本的に間違っているお役所に押し付けられる「健康」は迷惑以外の何者でもありません.

 とてもではありませんが,上が変わるのを待っていられません.我々はよく考えて自分で自分の身を守るように致しましょう.

招かれざる客

私も訪問管理栄養士の方のテレビ見ましたよ。
やってることは糖質制限とは違いますが、
その人の言葉で・・・

「私は招かれざる客だ」
「最初から食事療法などやりたい人はいない」

というのを聞いて、
もしかして凄い人かも知れないと思いました。

Re: 招かれざる客

河豚田 さん

コメント頂き有難うございます。

>「私は招かれざる客だ」
>「最初から食事療法などやりたい人はいない」


苦労されている様子が伝わってきますね。気持ちはよくわかります。

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このコメントは管理人のみ閲覧できます

たがしゅうさん、はじめまして

こんにちは。佐々木と申します。

私はボディビルデイングに興味がありその関係で生化学や栄養学の情報を集めていました。その過程で江部氏の存在と著書を知り、氏が引用なさっている『親指はなぜ長いのか』を拝読し衝撃を受けました。そして氏のHPからこちらに導かれ
いろいろ拝見しました。諸々の有益な情報をありがとうございます。

そのうえで私は糖尿病ではありませんが(白米を主食と刷り込まれていた食生活を送っていたわけで潜在的糖尿病患者ではありえますが)、家族性、超若年性発症の本態性震戦を患っておりいまは、喘息体質なのでBブロッカーではなくプリミドンを処方されています。

いまケトン食とまでは到底いきませんが澱粉の摂取をやめて
脂肪を恐れない、高タンパク中脂肪低糖の食生活に変えました。

私個人の経験でも血糖値の乱高下は症状を悪化させる要因のようにも感じられますし、長期的に酸化ストレス因子になるというのなら今度も糖質制限したいと思います。

これからもブログでの情報発信を期待します。

Re: たがしゅうさん、はじめまして

佐々木 さん

コメント頂き有難うございます。

糖尿病というのはあくまで糖質の害の現れ方のマジョリティに過ぎず、世の中には知らず知らずのうちに糖質の害にさいなまれている人は少なくないと私は思っています。

その意味で佐々木さんが糖尿病でないのに自分の頭で考えて糖質制限を実践されているのは素晴らしい事だと思います。そこに私のブログが少しでもお役に立てるのであれば嬉しい限りです。今後も続けていきたいと思います。

たがしゅうさんへ

たがしゅうさん。コメントありがとうございます。

自分でコメントを読みましたが『親指はなぜ太いのか』の間違いで「夏井氏」の間違いです。名著偉人の名を間違えてはいけません。

僕はETでかなりの制限を受けながら生きてきたので忸怩たるものがあります。たとえば、僕が通っていた札幌市の高校は当時は医学部へのプレップスクール的な側面がありましたが、自分にはメスどころか注射器も扱えるイメージが湧きませんでした。スマホも操作できず、レジでお釣りをもらうのもスムーズではない人間は社会的に存立することは困難です

最近、大麻由来の植物性アルカロイドが医薬化されたというニュースを聞きました。

ETは少量の飲酒で症状緩和というのはよく知られたことです。顰蹙を買うかもしれませんが、今まで経験した中ではプリミドンよりベータブロッカーより、マリファナ、特にインド系の大麻が症状寛解に最も効果的でした(大麻に寛容な国に住んでいたころの話です)。

でも大麻はどこにでも生える雑草でタバコのように産業として囲い込むのが不可能なので禁忌扱いされているわけです。大麻が禁忌とされるのは僕は酒を売るため、たばこを売るため、他の薬を売るためだと思います。糖質制限が攻撃されるのも、インスリンを売るためであるのと相似形であるとおもいます。ただ米国の潮流で大麻に対する姿勢が変化してきたので、追従が国民的スポーツのわが国でも変化はあるのでしょうか。

Re: たがしゅうさんへ

佐々木 さん

 コメント頂き有難うございます。

 大麻に関しては私も興味を持っています。
 薬剤よりも大麻の方が本態性振戦の症状軽減に有用であったという話も大変興味深いです。

 しかし、それでもなお、それは「プラスの発想」なのですよね。
 大麻利用も短期的には劇的な効果を示したとしても、長期利用で新たな耐性問題が出現する可能性も否定できません。
 根本的には神経変性や自律神経障害をきたした原因を取り除く「マイナスの発想」を取り入れる事がこうした難治病態に立ち向かう一つの大きなポイントだと私は感じています。

ETについて

たがしゅうさんこんにちは。

僕は主治医に糖質制限食について話しました。

短い診療時間なので、ケトン食のような糖質制限食はメリットをもたらし得るか?という趣旨のことを質問しました。主治医によれは「体に悪いからやめといたほうがいい」とのことでした。

通っている病院は札幌市で中心的な脳神経外科/神経内科の専門病院だと思います。主治医は日本神経学会認定神経内科専門医となっています。

今までの人生で一番症状が悪化していた時期は、図書館にこもって論文のようなものを書いていた時期で、その時は食事にとられる時間を節約するためにクッキーばかり食べてました。つまり糖質が圧倒的に多すぎる食生活を送っていた時期です。

主治医には却下されましたが自分としては自分を献体として糖質制限実験を継続したいと考えています。

Re: ETについて

ささき さん

コメント頂き有難うございます。

> 主治医によれは「体に悪いからやめといたほうがいい」とのことでした。

もしも余裕があればその理由を確認しておきたいところですね。
その「身体によくない理由」が十分に納得のいくものであればよいですが、そうでなければいくら肩書きのある大層な医師でも信用には値しないと私は思います。
プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
漢方好きの神経内科医です。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

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