サイアミディン

一生の価値がある話

医師として高齢者の患者さんと関わる機会の多い私ですが、

多くの方へ糖質制限の選択肢を提示し続けています。

しかし、患者さんとのやり取りの中で「もう年だからそこまでしたくはない」という台詞はよく聞きますし、

実際8割くらいは私の指導が活きる事なく、結局今まで通りの食生活のまま、という厳しい現状です。

ただ、私には「高齢者」というだけでは糖質制限を伝えるのを諦めたくない想いがあります。

なぜならば、稀に私の指導をよく分かってくれる患者さんがいるからです。
先日も認知症が心配だという事で頭部MRIの撮影希望で受診された80代後半の御夫婦がおられましたが,

結果,年相応の慢性虚血性変化を認めるのみで,特別病的な変化は見られませんでしたし,

認知機能を評価するスクリーニング検査でもほぼ年相応で大きな問題はありませんでした.

普通の医師ならば,それで「よかったですね」で終わるのでしょうけれど,

糖質制限推進派医師の私は,

これからも少しでも認知症にならないでいてもらうために,

「米」の摂取量が少ない食事パターンは,認知症発症のリスクを有意に低下させるという久山町の研究結果を紹介し,

糖質制限の重要性について情報提供を行いました.

糖質制限の事を説明するには正直言って時間がかかります.

時間がかかるのに,結局何も変わらないのであれば時間の無駄になるかもしれません.

ただ御夫婦が受け入れられるかどうかは別にして,

そういう選択肢もあるのだという事を知ってもらいたかったのです.

ところが,その御夫婦は私の聞いた後に,

こんな嬉しい言葉をかけて下さいました.

「今日はお話しが聞けてよかったです.一生の価値がある話でした.」

御夫婦の御主人は続けて,「普段のかかりつけ医では薬が出てすぐ終わるだけなのに,こんなに時間をかけて説明してもらったのは初めてだ」とおっしゃるのです.

勿論,毎月かかるかかりつけ医での診察でむやみに長い話をする必要はないでしょうから,

たまたま検査結果の説明のために受診された私の外来とのセッティングとは全然違うので単純比較はできませんが,

ただそれでも,糖質制限の説明をするのと,薬を出して終わるというのとでは,

医師の立場からみれば,後者の方が圧倒的に楽です.

しかしその行為がもたらす価値は,前者の方が圧倒的に大きいと私は考えています.

何より「一生の価値がある話」という言葉を,80代後半の方からかけてもらった事が,

私にとっては大変有難いことでした.

私の何倍もの人生を生きている方であっても,

そのように謙虚に人の言葉を聞き入れる脳を持っているということで,

だからこそ,認知症なく健やかに過ごされているのかもしれない,とさえ思いました.

私も,このような謙虚で柔軟な姿勢をいつまでも忘れずに,

これから年を重ねていきたいと願います.


たがしゅう
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素直

年を摂って素直に人の話を聞けることは、すばらしいです。
周りを見ていても加齢と共に頑固(人の意見を聞かない)になる方が多いです。
それは今子供の時から大量の糖質を摂取するからではないかと思います。
よくキレる、いじめなど脳に関する病気の原因に糖質が大きく影響していると思います。
素人の私でさえ糖質制限によりうつ病はじめ脳の病気が改善する方たちを見ていて感じます。

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No title

先生、よくわかります。

80歳の母(ガンを患っています)に、糖質はやめたほうが
いいよ、、、って何度説明しても
「私はもう年なので好きな物(甘いもの)を食べて
死ぬわ。我慢してまでは、、、」

健康番組はかかさず見ているのに
その中で、AGEsやら糖質制限の話もでてくるのですが、
記憶にないのか、スルーしてしまっています。


私がご飯(おかずでなく)を食べないと
けげんな目でみて、注意してきます。。。
私の体調がよくなったと伝えてもダメです。

周りも「好きなもの食べさせてやれ!」というスタンスです。

疲れました。。。

追伸

素人の私が言うより、
主治医なり、かかりつけのお医者さんが
糖質制限をすすめてくれれば、
どんなにいいか、、、と思うこのごろです。

追伸2

若い先生にあたると(大きな病院では選べないことしばしば)
ちょっと大丈夫かな~

ベテランの先生のほうがいいのでは?って不安になることもありました。
でも
たがしゅう先生のお話で、
そうとは言い切れないとわかり安心しました!(笑)

No title

面倒くさい病状説明を省略してとにかく目先のデータさえよくしておけばよいとか症状さえ抑えておけばよいみたいな思考回路の外来診療が大半
ですし、薄利多売システムの保険医療で食べていくにはそうせざるをえないのが現実でしょうね。クスリさえ出しておけば患者は納得しますからね。1日に何十人もの多くの患者を診察しないと診療報酬が十分に得られないというシステムがあるかぎり、病院の外来の待合室が1分診療の患者でごった返すというバカバカしい状況は永久に変わらないはず。医者が1人1時間かけて丁寧に診療したいのなら、1人あたりから高額な診療費を取って自由診療でもするしかないでしょう。もちろん対象は必然的にセレブ患者限定的になりますが。

高齢者には根気強く

何歳でも生きているうちに、糖尿制限のことを知る出逢いがあったこと素直に受け入れられたことは、きっとその御夫婦の幸せの一端につながると思います。
私自身はもっと早く知っていたら、主人をせめて早死にさせたりはしなかったのではないかと悔やんでも悔やみきれません‥
私の母がその御夫婦と同世代、糖尿も患っているので糖質制限の話をするのですが理解し辛いようです。
母曰わく、何よりも御飯、米がなかったら芋、芋がなければ小麦粉‥そうやって育てられただろうし、そうして私を育てただろうし。
抗癌剤治療を受けているので味覚の変化で食べれる物が限られるし、もう高齢だから仕方ないかなと諦めることもあります。
その御夫婦のように素直に聞いてくれたら、でも食べたい物を制限するのはDVかなあ‥と思いながらせめてオカズだけでも糖質を抑えた献立をと考えています。
家族だと難しいです。
たとえ完璧に食事制限できたとしても主人の時と同じように亡くなってからも悔やむものなのでしょうね‥

Re.一生の価値がある話

こんにちは

>「今日はお話しが聞けてよかったです.一生の価値がある話でした.」

もし私がこんな素敵な言葉を頂いたなら数日、数ヶ月、は喜びで顔がにやけていることと思います。

慢性医療に携わって早20数年経ちます。私もコメディカルの一人として患者さんと話す機会もあり、自分が知りうる患者さんにとって有益であろうことは伝える努力はしているのですが、人によっては「そんなことは知っている」と毒づく自己管理のできていない人もいました。
と思えば私のつたない説明を聞いてくれ、しっかり自己管理もできている患者さんがいるおかげで現在の自分があるのかも知れません。

Re: 素直

もとつむり さん

 コメント頂き有難うございます.

 御指摘のように糖質摂取と精神状態には密接な関連があると思います.

 2013年11月20日(水)の本ブログ記事
 「糖質が精神に与える影響」
 http://tagashuu.blog.fc2.com/blog-entry-94.html
 も御参照下さい.

Re: No title

さゆり さん

 コメント頂き有難うございます.

 糖質制限を受け入れるのに,年は関係ないようですね.

 また若いからといって柔軟だというものでもないようです.

 私の個人的な糖質制限仲間のネットワークの中でも,若い人の割合は結構少ない印象ですし,

 若い医者でも従来型糖尿病治療にどっぷりつかっている医師もたくさんいますので.

 人の事はさておき,まずは自分の身を自分で守る事ですね.確かに家族がそれを理解しないのはなかなか辛いですが,自分が健康であり続ける事でいつかわかってくれる日も来るかもしれません.

Re: No title

アンチスタチン主義 さん

 コメント頂き有難うございます.

 確かに糖質制限を本格的に実臨床に取り入れようとしたら,既存の体制ではどうしても無理が生じてしまうと私も感じています.ここが一つ大きな頭の悩ませどころです.

Re: 高齢者には根気強く

ゆかぽん さん

 コメント頂き有難うございます.

 私も「もっと早く知っていれば」と思う事は正直ありました.しかしそんな風に考えても過去が変えられるわけでもありません.

 今私は「途中からでも知る事ができてよかった」と思うようにし,これからでもできる事を精一杯考えるようにしています.

Re: Re.一生の価値がある話

アローン さん

 コメント頂き有難うございます.

 「患者さんが最高の教科書」とはよく言ったものです.

 良い事も,悪い事も含めて,患者さんから教わる事は非常に大きいです.全て自分の人生の糧にして,これからに活かしていきたいと思っています.
プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
漢方好きの神経内科医です。
南鹿児島さくら病院に勤務しています(下段にリンクあり)。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

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