サイアミディン

夢の新薬以上の存在

現在のてんかん治療の中心は薬物療法です.

最近は新規抗てんかん薬と呼ばれる薬も出そろい,てんかんの薬物療法の幅は確実に広がりました.

しかし,それでも薬で発作を抑えられないケースは3割くらい存在すると言われています.

てんかんは日常生活の質を大きく損なう病気です.

発作が抑えられない状態に対して手術療法や迷走神経刺激療法などの侵襲的な治療の選択肢もあるにはありますが,

できることならば,身体に傷をつけずに発作を抑える事ができるならそれに越したことはないと思います.

そうした期待に応え得る方法として「ケトン食」があります.
ケトン食のうちの一つ,修正アトキンス食は薬で発作が抑えられないてんかんのうち,さらに半分程度の発作を抑えたという報告が出ています.

発作があるかどうかは日常生活の質に大きく関わるわけですから,これは大きな成果だと思います.

しかしこれでもまだ完璧ではありません.生まれつきの脳の形成異常などのケースには,いかにケトン食と言えど,発作を抑制しきれないという症例もあります.

そうなると,あとはてんかんを制御する夢の新薬が登場するのを待つしかない,という発想になるかもしれません.


近年,iPS細胞など再生医療の分野が目覚ましい発展を遂げています.

こうした医療の進歩によって,今まで治療不可だと考えられていた病気の治療ができる時代に将来的になっていく可能性はあるかもしれません.

しかし少なくとも今現時点においては,こうした話はまだまだ一般に手の届かない世界の話です.

それに仮に新薬ができたとして,今までになかった操作を人体に加えることで,

予想外の出来事が起こるかどうかの検証はそれから十数年かけて行われる必要があることでしょう.

これは今を生きている私達にとって,そして何より今苦しんでいる患者さんにとってはあまりにも長い時間です.

ところが一方のケトン食は,もともと人体に備わった働きを最大限に賦活する方法です.

1921年のWilderらの報告に始まり,約100年の歴史でその妥当性が検証され続けてきた信頼できる方法です(Wilder RM: The effect of ketonemia on the course of epilepsy. Mayo Clin Bull 2: 307-308, 1921.)

そして何より今やろうと思えばその場で実践できる方法です.決して手の届かない世界にある治療法ではありません.

私の患者さんにもてんかん発作の制御が十分うまく行っていない,にも関わらずケトン食を実践しきれないという人がいますが,

大事なのは一歩踏み出す勇気,その事を伝え続けていきたいです.


たがしゅう
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薬の副作用

たがしゅう先生、おはようございます。

この前、百田尚樹さんの「殉愛」を読みました。

やしきたかじんさんの闘病生活を綴ったものです。そこに薬の副作用で苦しんでいるたかじんさんに、「今の苦痛から逃れるのだったら副作用なんて大したことないから我慢しなさい」といった感じの医師の発言内容が載っていました。

苦痛を和らげるための薬を使って新たな苦痛が生まれるのなら、その薬を使う意味がないと思うのですが。

苦痛に耐えてガンが治るのなら我慢できるかもしれませんが、現在の苦痛をとるための薬でもっと苦しむのは本末転倒だと思います。

No title

はじめまして。

某国立大学神経内科教授が、

「診断をつけただけで満足してしまっている神経内科医があまりにも多すぎる」

と嘆いておられました。

診断はあくまで治療の為のスタートなのにそこで終わってしまっていると。

たがしゅう様はどのように思われますか?

Re: 糖質制限による尿酸値上昇について

MAWA さん

 御質問頂き有難うございます.

 まず「ケトン体が高い=ケトアシドーシス」ではありません.

 ケトン体が高いだけで症状がないのであれば,「生理的ケトーシス」であり特に問題ありません.尿中にケトン体が出るのはむしろ糖質制限がうまくできている証拠です.

 尿中のケトン体は開始から3か月程度で尿細管での再吸収の効率がよくなり,次第に出なくなります.また尿中ケトン体が出ている時期は,尿が酸性のため尿酸が排出しにくくなり血清尿酸が高くなりがちですが,多くの場合は一過性で,そのまま糖質制限を続けていれば値は落ち着いてきます.

 ただ,どうしても気になる場合は尿酸を下げる薬の併用も御検討頂ければと思います.

Re: 薬の副作用

ミスターT さん

 コメント頂き有難うございます.

> 「今の苦痛から逃れるのだったら副作用なんて大したことないから我慢しなさい」

 よろしくない考え方ですね.

 その場しのぎの薬は,長い目で見て当人をより苦しめる結果をもたらすと私は思います.

Re: No title

あ さん

 御質問頂き有難うございます.

> 「診断をつけただけで満足してしまっている神経内科医があまりにも多すぎる」
> たがしゅう様はどのように思われますか?


 私は診断は大事だと思いますが,診断にこだわりすぎる必要もないと思っています.

 診断は恣意的な概念で,実際の世界にはグレーゾーンも多く存在するからです.診断をつけただけで満足は論外ですが,たとえ診断がつかなくても治療に際して全力を尽くすスタンスが好ましいと私は思います.

複数の薬剤を使いたがる傾向

てんかん、認知症、パーキンソン病などの神経疾患に2~4種類という複数の薬剤を併用したがる医療にはなはだ疑問を感じます。多剤併用すると特に神経系の薬剤は益よりも害のほうが大きいのは周知の事実です。
クスリによっては薬物依存性も問題になり本当の薬効なのかプラシーボなのか疑わしいケースも多いです。特にてんかんの場合は偽てんかんとの区別が難しいケースも多く、どこまで投薬を増やす事に意味があるのか疑わしい所です。
適切な食事療法を施して、精神状態を安定させる事が発作を予防するにあたり何よりも重要だというのは疑いの余地もありません。
「副作用をなんてたいしたことないから我慢しなさい」どの口が言うのか???
自分自身や自分の家族が医者にそう言われたらどう感じるというのか???
クスリの害が益を上回る場合はクスリを使う意味がない。意味があるかどうかを判断するのは患者自身や家族であるべきで、他人事扱いの医者ではない。この医者は倫理的に医業に携わる資格はありませんね。

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Re: ありがとうございました

MAMA さん

 2014年4月2日(水)の本ブログ記事
 「「酸性」である意味」
 http://tagashuu.blog.fc2.com/blog-entry-229.html
 も御参照頂ければ幸甚です.

Re: 複数の薬剤を使いたがる傾向

アンチスタチン主義 さん

 コメント頂き有難うございます.

> てんかん、認知症、パーキンソン病などの神経疾患に2~4種類という複数の薬剤を併用したがる医療にはなはだ疑問を感じます。

 薬物療法しか治療手段を知らないからそうなるのだと思います.

 嘆いていても前進はないので,私は着実に食事療法の有効性を伝えていきたいです.

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プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
漢方好きの神経内科医です。
南鹿児島さくら病院に勤務しています(下段にリンクあり)。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

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