サイアミディン

全身を診る視点

私はもともと総合診療医になりたい人間でした。

悩める患者の症状がたとえどんなものであっても対応するのが、

医師としての務めではないかと考えていたからです。

しかし、かつて総合診療科の門を叩き、その世界を見た時には、

同科の先生方のあまりの優秀ぶりに、私のそれまでの努力はあまりにも足りなかったという事を痛感しました。

真の総合診療医になるためには、様々な知識と経験を得る必要があり、

それは並大抵の努力では成し得ない事なのだと感じたものです。

そこで私はその先の進路について悩み、悩んだ結果総合診療医への道を一旦外れ、神経内科を専門にすることにしました。
ただそれは総合診療医をあきらめたのではなく、総合診療医の精神を持った神経内科医になろうと思ったのです。

いろいろな葛藤はありましたが、結果的には神経内科を選択してよかったと思っています。

以前にも書きましたが、神経内科というだけで自然と「全身を診る視点」が養われるからです。

あの時私は他の科についてもそれなりに興味を持っていましたので、

糖尿病内科、呼吸器内科、皮膚科、眼科、消化器外科、整形外科・・・どの科に進んでもおかしくなかったと思いますが、

その中で神経内科を選んだというのは、振り返ってみても運命的なものを感じます。

なぜならば、他の科で「全身を診る視点」を持ち続けるのはなかなか難しそうだからです。

特に食事を見直すという観点はほとんどの科で欠如しています。

それは他の科の医師の様子を見ていて、私が日々感じることです。

例えば、肺癌の治療を当たっているが食事療法の観点から指導をする事はまずありませんし、

皮膚科医は、多くの場合軟膏やステロイドを駆使しますが、アトピー性皮膚炎をはじめその皮疹が食生活から来ている可能性についてはあまり言及されません。

もしも私が糖尿病内科医であったら、糖質制限は今ほど受け入れができなかったかもしれない可能性も考えます。

神経内科医として、神経という解剖学的構造を通じて全身を診る視点を持ち、

なおかつ原因不明と言われる病気を数多くみて、そうした病気が増え続けているという現実を直視し、

そしてそのメカニズムを深く学んでいく事によって、

私は糖質制限の理論を心より納得し、受け入れる事ができたのです。


若い医師が生活の質や目先の興味深い技術などに目を奪われ

進路を選択していく様子をみるにつれ、

この「全身を診る視点」というのを忘れずにいてほしいものだと願うばかりです。

そのために糖質制限は必須の知識だと私は思います。


たがしゅう
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昔は・・・

 いつもありがとうございます。昔はあまり診療所など選択肢はなかったような・・・歯科、耳鼻咽喉科、眼科、皮膚・外科、産婦人科、内科・・・くらい?でも現在は総合病院の○○科が独立して町の診療所になったような色々な科があって患者側もどの科に行けばいいかわからない状態です。昔はとりあえず内科に行けば何とかなったような・・・。専門のことは分かるが専門外はあっさり専門外ですからわかりません。と簡単に済ませる医者が多いです。ではどこへ行けばいいですか?と訊ねると・・・最終的には大きい病院へなんて云われてしまいます。わからないんでしょうか・・。患者側がかしこくなって行くしかないような気がします。そうじゃないと間違った診断が下る場合もありうるわけで。先生のような感覚をお持ちのお医者さんが増えると本当に助かるのですが。期待しております。未来のために。

Re: 昔は・・・

あーちゃん さん

 コメント頂き有難うございます。

> 専門のことは分かるが専門外はあっさり専門外ですからわかりません。と簡単に済ませる医者が多いです。ではどこへ行けばいいですか?と訊ねると・・・最終的には大きい病院へなんて云われてしまいます。

 本当そういう医師が多いです。

 本来ならば町医者が皆、総合診療的な観点を持って診療をし、しかるべき診療科へ紹介するというふるいわけシステムが完備されるのが理想ですが、

 現実には悲しいかな、自分の得意な分野以外は適切なマネジメントができない医師は結構多いと思います。ご指摘のように患者もすべてを医師任せにせず、賢くなる必要があります。

開業医では責任もてない

現在の医療は少なくとも20年前より各分野で知っておくべき知識やスキルは20年前の何倍でしょうか?この20年の医療の進歩や変化は大きいので
開業した町医者がよく知らないのに診察する事はもはやリスクの高い時代です。専門科ですら自分の得意分野以外は知らない事も多いでしょう。
特に神経内科のような幅広いフィールドだとパーキンソンは得意だが、末梢神経は知らないとか。患者側の多くが高度で正当な医療とを求めます。心筋炎とか髄膜炎とかでも開業医が少しでも初動を誤って病院紹介(入院適応)が遅れると確実に訴訟の種になります。専門外の科目の多少知識があったとしても、患者に聞かれても多くは語らず、黙って専門医に紹介する。それが現在の正しいかかりつけ医のあり方だと思いますね。それに下手に専門外の事でガイドラインと違う事をやると、すぐに学会から叩かれるのでそこは注意しなければならないと思います。なんでも診れる麻酔科上がりのスーパー町医者も数少ないながら存在しますけどね。ほとんどの医者はまず総合診療のスキルを身に着ける臨床教育を受けていないし、そういう体制にもなっていないですからね。大学病院で内視鏡ばかりやっていた消化器内科医がいざ市民病院に出向したら、人工呼吸器の使い方すら知らなくて困ったとかいう冗談のような本当の話もありますからね。大学病院というのは内科でもそれだけ偏った臓器別の臨床をやっているのが現実です。

Re: 開業医では責任もてない

アンチスタチン主義 さん

 コメント頂き有難うございます。

> 現在の医療は少なくとも20年前より各分野で知っておくべき知識やスキルは20年前の何倍でしょうか?この20年の医療の進歩や変化は大きいので
> 開業した町医者がよく知らないのに診察する事はもはやリスクの高い時代です。専門科ですら自分の得意分野以外は知らない事も多いでしょう。


 20年前の知識を更新することなく、そのまま現場で活動している医師が多いというのがそもそもの問題です。

 医学は発展半ば、生涯学習が必須の職業です。それを怠る医師は医業をすべきではないと私は思います。

医師の資格?

たがしゅう先生。ご無沙汰しております。satyです。

 先生の『20年前の知識を更新することなく、そのまま現場で活動している医師が多いというのがそもそもの問題です。 』というご意見は、きわめて当然のことと思います。

 糖質制限にしても、今や医療シロウトの患者でも知っている様な「血糖値を上げるのは糖質だけ」などという『事実』を、こともあろうに「糖尿病専門医」が知らなかったりします(恐らくは知らないフリをしているだけだと思いますが)。

 運転免許や教員免許など、一定期間での「更新が要求される」ものも少なくありません。失礼は承知の上ですが、医師免許も、一定期間ごとに講習を受け、更新するようなシステムも必要なのかな、と感じています。

 ただし「脳の唯一のエネルギー源はブドウ糖だ」などという人が講師では困ってしまいますが・・・。

Re: 医師の資格?

saty さん

 コメント頂き有難うございます。

 医師免許に更新制を取り入れるべきだ、というご意見極めてごもっともですが、

 そうなれば旧態依然たる医師からの猛反発をくらうこと必死ですね。

 今の政治家と同じで、なかなか変わるのは難しいと思います。
プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
漢方好きの神経内科医です。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

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