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サイアミディン

新理論と抵抗勢力



先日,近所の本屋でこのような光景を目にしました.

右側に積んである本はがん放置療法で有名な近藤誠先生の「医者に殺されない47の心得」という本です.

本の帯には「たちまち95万部突破」と書かれ,その脇のポップには「今,日本で一番売れている健康書」とあり,すごい注目ぶりです.

一方,左側に積んである本は在宅医療で有名な長尾和弘先生の「医療否定本に殺されないための48の真実」という本です.

右の本よりも売れ行きが悪く,帯には「たちまち重版」と書かれています.

この光景をみて,みなさんはどのようにお感じになりますか?

現在のがんの治療方針というのは,がん種にもよりますが,おおざっぱに言うと,手術できるものは手術,できないものに対しては化学療法(抗がん剤),放射線療法,一部分子標的治療薬などが考慮されるのが主流です.

そして,その常識を真っ向から否定しているのが近藤先生のスタンスです.これは,糖質制限食の江部先生や,湿潤療法の夏井先生とスタンスが似ています.

こういう新しい治療の方針を提示する人が出てきた時に,今までの常識で飯を食べていたような人達が一番その治療に抵抗を示します.糖質制限では糖尿病学会が,湿潤療法では熱傷学会がまさにその構図を示しています.

古くは従来の常識であった天動説に対して異議を唱えたガリレオ・ガリレイに対して,地動説を最後の最後まで認めなかったのは天動説の学者達でした.

私には長尾先生が天動説の学者達とダブって見えます.

そして医師としてまず心に刻み込んでおかなければならないのは「Do no harm(まず害をなすことなかれ)」の精神です.

手術にも,抗がん剤にも,放射線療法にも明らかに副作用があります.一方,がん放置療法にはそれがありません.
糖質制限や湿潤療法と違うのは,単独では病状を積極的な改善に持っていけないというところですが,Do no harmの考えには沿った,一つの方法論ではあると思います.

しかも近藤先生は何も適当に提案しているわけではなく,膨大な研究データから結論を導きだしています.この姿勢は認知症コウノメソッドとも似ています.

あからさまに新しい考えを否定する姿勢,自己批判が全くできない姿はいかがなものかと思います.

我々は間違った.だったらそれをすぐさま認めて全力で反省して,同じ過ちを繰り返さないように次に活かせばいい,ただそれだけの事なのに,それができない医者が多すぎます.

でも,私はこの写真の光景をみて思いました。

『正しいことは必ず伝わる、たとえどんなに時間がかかろうとも』.


たがしゅう
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医療否定本

 医療否定本の代表例が、浜六郎Drでしょう。私も浜氏の著作、読んでいますが、精神科と糖尿病に関しては、論理の飛躍があります

 近藤理論に対して、緩和ケアの医師からは、癌治療に関して、「必要性の少ない手術や抗癌剤投与が現に行われている。だが、はっきりと癌の診断がついたものを全く治療するなというのは暴論だ」との意見がでています

 近藤誠も浜六郎も、主張には一理あります。でも、二理や三理はありません。

No title

たがしゅうさん

思うに重大な副作用を及ぼす可能性がある治療というのは、医療行為としては本来行ってはいけないのでしょう。患者の生死が係わっている場合という前提条件が、日常の中で失われているのではないでしょうか。
これは製造業ではよく言われるのですが、第三者から見れば明らかにおかしなルールでも長年の慣習、年長者への配慮、事なかれ主義から放置してしまうことがしばしばあります。結果的に高コスト、危険性、新技術への適応を過小評価し放置したままになるんですね。負けに不思議の負けなしと言いますが、ただのサラリーマンの私から見て医療界の現状は赤信号です。






そうですね。そうあって欲しいですぬ。
あのNHKでも、何度か向精神薬は認知症や、子供には出来るだけ処方しない方が良いと報道されています。
認知症の場合、向精神薬の利き方がかなり過敏だったり、副作用が大きく、逆に悪化すると。
こうのメソッドとは違うようですが。

Re: 医療否定本

精神科医師A先生

 コメントを頂き有難うございます.

 確かに近藤理論だけでは完全ではありませんが,がん治療の方向性に対して一石を投じる真っ当な理論だと私は思います.

 おおざっぱに言えば「医療否定本のせいで,本を鵜呑みにして治る癌を放置している患者が続出している」「やっぱりがんの早期発見は大事」「だから適切ながん治療を患者はうけるべき」というのが長尾医師の主張ですが,

 早期がんを手術や内視鏡治療で取り去ったとして,それはあくまで対症療法です.がんの根本的な原因に対しては全くアプローチできていません.それでは本当の意味で治ったとは言えません.抗がん剤治療によって厳しい副作用に悩まされていく患者さんの様子も私はよく見ています.近藤理論はそうした「がんはとにかく早期発見して早期に治療すべき」という偏向した状況をいったんフラットにしようとしていると思います.

 そこからもう一歩進んで「真の意味でがんが治る」という状態に近づけるためには,やはりがんの根本原因について考えていく必要があります.つまり,近藤理論+αの要素が必要で,糖質制限の考え方はその一翼を担うと考えています.なぜならば,がん発生の上流に酸化ストレスの増加が大きく関わっており,糖質制限によってそのかなりの部分を減らすことができるかもしれないからです.

 近藤理論をいったん受け入れた上で,今後どうすればそのフラットにした状況を好転させることができるかを一から考えなしていかなければならない時期になっていると思っています.

 だから,端からあからさまに近藤理論を否定する姿勢の医師は,私にとってはやっぱり天動説学者です.

 浜六郎先生の書籍に関しては未読なので,またじっくりと読んで考えさせて頂きたいと思います.

Re: No title

SLEEP さん

 いつもコメントを頂き有難うございます.

 誠におっしゃる通りと思います.

> 第三者から見れば明らかにおかしなルールでも長年の慣習、年長者への配慮、事なかれ主義から放置してしまうことがしばしばあります。

 まさに今,「糖尿病の食事療法はカロリー制限」という状況がそれに当たると思います.確かにこれはどう考えても赤信号です.

Re: タイトルなし

しん さん
 
 コメントを頂き有難うございます.

 コウノメソッドの肝は,「枯渇した神経伝達物質を適切に補う」というところにあります.
 認知症の場合は,不可逆的な神経細胞の脱落に伴う神経伝達物質の枯渇という現象が臨床的には確かにございますので,それを補う目的で向精神薬を少量用いるという状況はあってよいと思います.
 ただし,その用量は一般的に常用量として推奨されている量よりもずっと少ない量で事足りることがほとんどであるようです.その認識がないと副作用が出てしまい,さらにその事実を「認知症の進行」とすり替えてしまうことになりかねません.

 そういう意味でこどもの場合は,神経伝達物質の枯渇というよりはバランスの異常なので,向精神薬は極力用いるべきではないと私は考えます.それよりも先にバランス異常の原因(例:糖質の頻回過剰摂取,劣悪な家庭環境・ストレスなど)にアプローチするのが筋だと思います.

長尾氏は旧勢力の代表ではないと思います。

私は長尾氏のブログを以前から読んでいますが、長尾氏はむしろバリバリの改革派です。旧勢力には敵も少なくないと思います。全体を通しての長尾氏の主張のキモは「適性化」だと私は理解しています。抗癌剤に関しても無意味な使い方をするなと強く主張されています。
近藤理論は現時点では一仮説に過ぎず、少なくとも善でも正解でもありません。
そこが地動説との最大の違いです。地動説は未来人である我々だからこそ、正解であるとジャッジ出来るわけですが、少なくとも近藤理論はそうではありません。近藤理論の正否を判定できるのは未来人だけです。
長尾氏もある場面では抗癌剤をやめろ、と言っています。つまり長尾氏が批判しているのは近藤氏が行なっているプロトコルにあると思います。
癌医療は肺結核や虫垂炎の治療と違い、人間はまだ克服できていません。どころか現状では不可知に近い状態です。だからこそ癌に対する多種多様な考え方があり、試行錯誤と妄想と善意と金儲けがカオスの状態で進行しています。
近藤氏の主張も長尾氏の主張もこのカオスの中の一つに過ぎず、繰り返しますが、少なくとも近藤理論は、白黒がはっきりついている地動説では到底あり得ません。
私個人的には現状では大久保診療所の梅澤医師の行なっているテーラーメードの低用量(場合によっては不使用)抗癌剤療法が考え方も優れており、近藤氏のすべて放置よりも結果を出せているように観察されますが、何しろ現段階でエビデンスを示せないので説得力はありませんが。

Re: 長尾氏は旧勢力の代表ではないと思います。

松尾さん

 コメント頂き有難うございます.

 長尾医師が旧勢力の代表かと言われたらおっしゃるようにそうではないと思います.

 近藤理論,長尾理論どちらが正しいかということに現時点で結論が出せないという事も確かにそうでしょう.

 無駄な抗がん剤治療はすべきでない,という観点を持っていることも良いことです.

 しかし長尾医師の文章を読む限りは,やはり従来のがん医療の倫理に基づいて近藤理論を批判していると思います.

 例えば,長尾医師は著書の「医療否定本に殺されないための48の真実」の中で,「肥満なら痩せればすべて解決」と題し,やせるための方法としてカロリー制限を紹介しています.それも1400kcalから600kcalへ移行していくかなり厳しめのカロリー制限です(必然的に糖質も制限されているでしょうが,非常に継続困難なものと想像されます).また「脂質依存症は,糖尿病やがんを引き起こす」とのお考えをお持ちです.

 つまり長尾医師にはがんリスクを下げるための糖質制限の観点はないでしょうし,だからこそ「現状ではがんはどうしてもできてしまうもの,早期発見,早期治療はすべきで,むやみな抗がん剤を受けるべきではない」という考えに及ぶのだと思います.でもこの考えは従来のパラダイムから逃れられていないのではないでしょうか.

 「がんは早期に発見し,早期に治療すべき」が従来のパラダイム,

 それに対して近藤医師が推奨する新しいパラダイムは「がんは積極的に探さない,治療しない」です.

 私であれば近藤医師の主張を理解し,患者さんが「(従来)治療をしない」という選択を希望した場合に,その判断を受容することを考慮します.なぜなら従来治療の代わりに糖質制限を行うことで従来治療でこうむる被害(手術のダメージ,抗がん剤の副作用)を最小限にして余生を過ごすことができるかもしれないからです.勿論,その考えを押し付けはしませんが.

 あるいは私であれば,禁忌の人以外でできるだけ多くの患者さんに糖質制限の選択肢を提示したいと考えています.その上でがん検診をあえて受けないという選択肢も私の中ではアリです.つまり近藤理論を一部受け入れているわけです.

 2013年9月12日(木)の本ブログ記事
 「脳腫瘍と糖質制限」
 もご参照ください. http://tagashuu.blog.fc2.com/blog-entry-15.html

 そういう意味では長尾医師はいくら革新的な方だとは言っても,近藤理論を全面的に批判している以上はやっぱり旧勢力の範疇に入っているのではないでしょうか(地動説と天動説の例えは適切ではなかったかもしれませんが).

 もし「批判」でなく,「適正化」を求めるというのなら,近藤医師の本と明らかに似せたような色合いの,しかも47より1個多い48というタイトルにはしないでしょう.それに,内容を読んでみても,明らかに医療否定本の存在そのものを「批判」しています.一歩ゆずって仮に本意が「適正化」にあったとしても,やり方が間違っていると私は思います.

 ただまぁ,混沌とした領域であることは確かです.様々な意見があってしかるべきだと思います.

残念でした

長尾医師の「平穏死」関連の著書を読み、これからの世の中に必要な考え方だと思いました。
この本も読んでみようと思いアマゾンの書評を見たら・・・かなり辛辣なコメントが多数。
その後、長尾医師が自身のブログで「嫌なら読まなきゃいい。悪意のあるコメントはいらない」というような発言をされているのを見て、とても残念でした。
そして辛辣なコメントは正鵠を射ているのだろうと思い購入をやめました。

がん治療については梅澤医師のような抗がん剤の使い方が広まればいいと思います。
http://umezawa.blog44.fc2.com/

一部修正しました。

たがしゅう先生、私のコメントの一部にミスがあり、いま編集機能を利用して投稿し直しました。恥ずかしくもガリレオとコペルニクスを間違えてしまいましたので、人名を削除させていただきました。
それと先生のお考えはよく分かりました。
実は私自身、この歳になるまで一度も癌検診を受けたこともなく、通常の健診も学生時代以後は1回しか受けたことがありません。
ですので仮に癌が見つかれば末期だと思われますが、それはとっくに受け入れています。もちろん抗癌剤は使いません。他の副作用の少ない薬だけは緩和と延命目的で使うと思いますが。同時にその時はケトン食に近い糖質制限も実験してみるつもりです。

Re: 残念でした

かんな さん

 コメントを頂き有難うございます.

 私も個人的には在宅医療に興味を持っている者なので,長尾医師のことは以前より存じ上げておりましたし,それだけに今回の書籍での見解は残念でした.

 それだけ根深く,多くの医師の中に従来のパラダイムが潜んでいるということなのだと思います.

 「抗がん剤の副作用を最小限に」という考えだけでは,まだその医師は従来のパラダイムの中にいます.

 大事なのは,真実(糖質の特性)を知った上で「がんを治療しない」という選択を医師として受け入れられるかどうか,だと思います.

 同様に高血圧をあえて治療しないのも,高コレステロールをあえて治療しないのも,糖質制限の理論を知った上でそうするというのは一つの選択肢です.その考えを知らずにその行為をみている医師にとっては,患者を放置する暴挙に見えてしまうのでしょうね.

返信ありがとうございます。

私が見たところ、NHKで紹介していた医師は、老人の認知症に対しても、向精神薬のまえに、生活習慣であるとか、患者に対する接し方を改善するほうがさきであると。
元々の規定の処方ルールが、過大な量を設定しているというよりは、老人は脳の機能が低下しているので、過剰反応するケースが多いとの判断のようです。(それは認知症用の向精神薬の投薬ルールがおかしいという意味と同じだとおもいますが門が立たない表現だなあと)
また、それらを見定めて処方を見直す技量のない医師が多いという感じでした。
向精神薬は最後の手段で、用いる場合でも量や薬種の調整は必須であるとのかんがえのようです。
まあ、糖質制限は触れられることはありませんが。
とてもNHKが紹介しやすい考え方に感じました。当然報道にはバイアスはかかりますね。

何事も鵜呑みにするな

 近藤誠の「医者に殺されない47の心得」、買ってもツンドク状態だったですが、あらためて読んでみました。癌治療が専門の近藤氏の記述に引っ掛かるものがありました

P33
 『肺がん用抗がん剤イレッサなどは承認後3年間で、約3万6800人の患者に使われ、588人が死亡。がんよりずっとこわいです』

 ここでは死亡者数だけとりあげていますが、有効例は何例あったのでしょうか。もし1万人の人の命が救われたなら、たとえ568人の死亡者がいたとしても、使う意味はあったと思います。逆に1000人の命しか救えなかったら、必要性は極めて少ないと言えます。近藤氏の指摘はデータ不十分です。

 もっとも、はっきりと正しいのもありました。高血圧の基準の記事です

P37
 『また基準作成委員の多くが、製薬会社から巨額の寄付金を受け取っているのも問題です』

 これはまさにズバリでした。バルサルタンがそうでした。不思議なことに、浜六郎氏はバルサルタンに関しては沈黙しています

Re: 何事も鵜呑みにするな

精神科医師A 先生

 いつも鋭い御指摘を有難うございます。

 私も「医者に殺されない47の心得」読みました。

 確かに主張に不十分な点が残ることは否めませんが、私にとっては大筋は合意できるものでした。

 少なくとも従来医療の問題点を鋭くついているという点ではおおいに評価できます。ただ御指摘のように全てを鵜呑みにしてはいけませんね。


 浜六郎先生の御著書「命を脅かす医学常識」は少し読み始めましたが、確かに「薬はすべてダメだ」の極論的な論調ですね。多くの薬に問題があるという事は否定できませんが。

 ただ抗認知症薬の全否定については同意はできません。私は抗認知症薬を調整することで、それまで食べられなくなっていた患者さんが食べられるようになったという症例を経験しています。

No title

早期がん(こんなものは存在しない)を手術や内視鏡治療で取り去る対症療法が蔓延っているのは日本の技術立国政策が影響しています。技術とはいわゆる職人技ということです。技術ではなく科学立国を目指さない限り対症療法に特化した医療にとどまるであろう。

Re: No title

工藤憲雄 さん

 コメント頂き有難うございます。

> 早期がん(こんなものは存在しない)を手術や内視鏡治療で取り去る対症療法が蔓延っているのは日本の技術立国政策が影響しています。

 専門医絶対主義に通じるものがありますね。
 がん医療が専門化すればするほど、そうでない治療は異端視されます。

 手術の技術や抗がん剤の種類などを発展させているのに、素人が食事でがんを治そうものならたまったものではないと。糖尿病と糖質制限をめぐる構図と共通するものがあると思います。
プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
漢方好きの神経内科医です。
南鹿児島さくら病院にいます。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

南鹿児島さくら病院では職員を随時募集中です。
詳しくはホームページhttp://www.nissyoukai.or.jp/
を御覧になって下さい。
見学申し込みもお気軽にどうぞ。

※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。

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