サイアミディン

「色素性痒疹」熟考

糖質制限とケトン体上昇(ケトーシス)は切っても切れない関係にあります。

基礎インスリンが保たれている事が大前提ですが、ケトン体が上昇している事は糖質制限がうまくできている事の裏返しでもあります。

しかしケトン体上昇が急激すぎると、インスリンの緩衝作用が間に合わずに体にトラブルを起こす事があります。その一つが「色素性痒疹」です。

色素性痒疹は10代から20代の若年層の女性に多くみられ、主として首の後ろから肩にかけての上半身に、赤みとともに非常に強いかゆみを急激に生じます。一般的なステロイド軟膏は無効だそうです。

詳しい原因は不明ですが、糖尿病や過度のダイエットを契機に発症する事が多い事から、

急激なケトーシスが病態に関与しているのではないかと言われています。

ただ私は個人的に8日間の断食をして、10142μmol/L(基準値:130μmol/L以下)まで自身の総ケトン体を急上昇させた事がありますが、

皮膚の症状は全く観察されませんでした。どうやらケトーシスだけが原因ではないようです。
はたして色素性痒疹を起こす人と起こさない人の間にはどのような違いがあるのでしょうか。

今日の話は科学的な検証を行っているわけでも何でもないので、あくまで私の私見だと御理解ください。


先日、色素性痒疹を経験したという人とお話する機会があり、

「皮膚からは汗もフケも出る。皮膚も腸も同じ排泄機関。腸内環境の悪さが色素性痒疹の発症に関わっているのではないか」という見解を伺いました。

なるほど、その話は一理あると感じました。というのも私は消化管はかなり丈夫な方です。

どちらかと言えば賞味期限の切れた食べ物も結構平気で食べる方ですが、私は生まれてこの方食中毒というものになった事はありません。

また以前も書きましたが、便秘で悩まされた事はありません。多少下痢気味になる事は時々ありますが、すぐに治まります。

さらに太りやすい体質です。1日1食にしていても現状キープできるくらいですから、かなり消化吸収効率はよいものと判断しています。

一方でその色素性痒疹を起こされた方は比較的やせ型の女性でした。

やせの背景には「インスリン作用不足」と「消化吸収障害がある」というのが私の持論なのですが、

インスリンはケトン体を抑制する性質がありますので、まずインスリンが低い事はケトン体を産生しやすくなる状況です。

なおかつ消化吸収障害があるという事は、消化管の本来の排泄機能としての役割を全うできていない可能性があります。

その2つの条件があって、なおかつそこにケトン体を上昇させる何らかのイベント(断食など)が加わる事によって、

「インスリンが少ないのでケトン体を利用しにくい」→「一方で消化管でも脂質が処理しきれない」

→「その結果、他の排泄機関である皮膚にも負担がかかる」→「色素性痒疹発症」

というストーリーが考えられます。

また色素性痒疹の治療薬としてはミノサイクリン(ミノマイシンR)やジアフェニルスルホン(レクチゾールR)といった薬が知られていますが、

これらの薬の作用機序を調べてみると、いずれも静菌作用を持つ抗菌薬です。

例えばミノサイクリンなどのテトラサイクリン系の抗生物質は、微生物が蛋白を合成するための装置であるリボソームの働きを阻害する働きを持ち、

菌を死滅させるのではなく、菌の活動を一旦停止させる薬です。

その活動休止中に、自身の免疫に菌をやっつけさせるというのがこれらの薬の効き方です。

言わば腸内細菌の働きを一時休止させている薬なわけです。

そうすれば、ケトン体を産生する酪酸菌などの働きもセーブされそうです。

こうした薬が効くという事は、色素性痒疹が起こっている時の腸内環境は過活動で、産み出されたケトン体や脂質が処理しきれていないことの裏返しではないかと思うわけです。

端的に言えば「インスリン不足+消化吸収障害に伴う一過性脂質利用障害」とでも言えるかもしれません。


もしもこの仮説が正しいとすれば、

色素性痒疹の根治療法として目指すべきはまず腸内細菌を安定させる事、

それから少ないインスリンでもやっていけるようにケトーシスに徐々に慣らしていくことですね。

おそらくこういう方の場合は急な断食などの荒療治は控えた方がよく、時には緩やかな糖質制限も選択肢かもしれません。


これはあくまで私の仮説に過ぎませんし、

この方法で治したという経験があるわけでもありませんが、

事実をありのままに観察することで見えてくるものがあるように思います。


たがしゅう
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腸内細菌のコントロール法

近年、腸内細菌が健康にかなり関連しているという事は多く報告されていて非常に興味深いのですが、
その重要な腸内の環境を変えるとなると、果たしてどうするべきかという所があまり進んでいないような気がします。
また腸内環境を整えるというと、あくまで便通の観点での腸内環境がクローズアップされるばかりで、その他の関連が疑われる病気に対しての腸内環境については一般には語られませんし。。

腸内環境を変えるという意味で糖質制限や断食などは意味があるとは思いますが、はたして腸内細菌と関連が疑われる病気に対してどう作用し、腸内細菌がどう変化するのかと考えると、まだまだ道は長い感じがしますね。

腸内細菌を健康な人から移して腸の難病を治療する研究のニュースを見ましたが、あれくらいの事をしないと腸内細菌を大きく変えるということは難しいのかなぁと思います。

Re: 腸内細菌のコントロール法

mina さん

コメント頂き有難うございます。

> 腸内の環境を変えるとなると、果たしてどうするべきかという所があまり進んでいないような気がします。

そうですね。整腸剤を飲めば済むという単純な話ではなかったりするのが難しいところです。

私は腸内細菌を外部からどうこうするのではなく、あくまで今あるシステムの駆動の仕方を変えるというアプローチが良いと考えています。

生命の起源から遡れば、約40億年の歴史をかけて構築されてきたシステムです。そう簡単に人工操作すべきではありません。

また私達が食べてきたもので不調をきたしたのであれば、食べ方を見直す事によって治しうると思います。だから糖質制限〜断食をベースにおくべきだと私は思います。


納得しました

久々にコメントします、偏頭痛人ヤセ型女性です。
私にも似たような体験があります。
糖質制限開始から順調に1年が経過した頃、私は更なる体重とスタミナアップを期待して強ミヤリサン錠を試しました。すると服用から一週間くらいで、突然全身にジンマ疹のようなものができてしまい、ひどい痒みのある発疹が顔と肩中心に体のあちこちにできては消え、が丸24時間続きました。幸い一日の休養でピタリと治まり、色素沈着もなかったので、ミヤリサンは中止し、様子をみていました。腸内環境の過活動、まさにたがしゅう先生のおっしゃる通りだったのかと思います。
そしてさらに半年が経ち、ふと思いたってミヤリサンと食物繊維を再トライしてみたところ、今度は発疹がでないばかりでなく、すごく体調が良いんです!必要な食事の量を、しっかり毎日食べられる日々なんて人生初ですよ。しばらく平行線だった体重も、また少しずつ増えはじめました。
私の場合、とにかく糖質制限を続けたことで、消化能力が徐々に回復していき、腸内環境の変化に耐えられるようになった、ということでしょうか。
なにしろ、以前は常にお腹を壊しがち、これまで太ったという経験がありません。偏頭痛の方は即効でしたが、消化能力の改善というのはなかなか手強いな、という印象です。でも数十年の消化機能低下状態がたった2年足らずで回復してきていると思えば、喜ぶべきところかもしれません。

Re: 納得しました

banquo さん

 貴重な体験コメントを頂き有難うございます。

 やせ型の方がトラブルを起こしやすい理由の本質は、「ケトーシスに適応しにくい」というところにあるのかもしれませんね。

No title

過日はご回答を有難うございました。私もヤセの糖質制限人です。糖質制限食で長年の胃もたれや胸焼け、身体のあちこちの凝りは治りましたが体重が落ちてしまいました。あと脂肪の多いものを多めに食べるとなぜか頬が赤くなります。かゆみは一切アリマセン。ビオフェルミンとミヤリサンを服用すると少しましになります。先生がかかれていらっしゃるように腸と皮膚は関連性があるように経験的に思います。ためしに食事量をかなり減らすとほほの赤みは全くなくなり皮膚が綺麗になります。やはり消化能力が低いのだと実感します。でもあまりにやせすぎたとき少量炭水化物を食べて見ましたが確かに体重は増えましたが四十肩になり又糖質制限食に戻したところ四十肩は3日で治りました。消化吸収と糖質制限食のからみは難しいと思います。
自身の体験から書いて見ました。

Re: No title

こうた さん

 貴重な体験を教えて頂き有難うございます。

 やせ体質の人は消化機能をいかに向上させるかということがポイントなのかもしれませんね。

謎のカユイカユイ症状

私も「やせ型女性」カテゴリに入るアラフォーですが、1年前に糖質制限を始めたと同時に、胸元に色素性痒疹のような症状が出て、この1年間かなり苦労しました。油断すると時々ぶり返します。
診断を受けたわけではないので、色素性痒疹であると断定できるわけではありませんが、「上半身に、赤みとともに非常に強いかゆみを急激に生じる」という説明にぴったりあてはまり、「色素性痒疹」で画像検索をすると出てくる写真と酷似する外観を呈していたので、そうなのではないかと思っています。
たまたま時期が重なってしまっただけで、糖質制限とは関係なく、何か他の要因によるのだろうと思ってきましたが、糖質制限が原因の一つかもしれないのですね。

糖質制限によって、昼食後の強烈な眠気から解放され、冬場に悩まされていた皮膚のカサカサ・ピリピリがなくなり、貧血傾向も解消され、全般的には体調が良くなったので、良いことばかり!と言いたいところなのですが、色素性痒疹だけは本当に困りものです。

Re: 謎のカユイカユイ症状

あおこ さん

 コメント頂き有難うございます。

 1年続けても改善しないとはなかなか辛いですね。糖質制限のやり方にも工夫が必要そうです。

 「腸内細菌を整える」、「徐々にケトーシスに慣らす」、をキーワードに試行錯誤をされてみてはどうかと思います。

初めまして

いつもブログ興味深く拝読しております。

私は、昨年秋ごろ首の後ろと上背部に痒くておそらく赤みがかった状態になりました。
アトピーの一種かと思い丁度掌蹠膿疱症の治療法がアトピーにも良いと聞きました。
酪酸菌、ビオチン、ビタミンCを飲んで一ヶ月ほどで良くなりました。
今は大丈夫です。
アトピーだと思っていたのは、これかなぁと思いまして大変参考になりました。
引き続きブログ拝読します。
よろしくお願いします。

Re: 初めまして

Pinoco さん

 コメント頂き有難うございます。

 アトピーにしても、掌蹠膿疱症にしても、色素性痒疹にしても、

 原因不明の病態に食事療法は大変有効なアプローチになるという事を私は診療の中で大変よく実感しています。

アセトンアレルギー?

はじめまして、いつも拝見させていただいております。
糖質制限は8年ほど続けている、40代の女性です。
やせ形ではなくどちらかというと筋肉が多く、便秘や下痢などはあまりなく、体力もかなりある方だと思います、消化吸収も問題ないと思います。
私の場合、色素性痒疹は糖質をかなり極端に(一日に30g以下くらい)に減らし、ランニングなどの運動をしたときに高確率であらわれます。
夕方から夜にかけては、ケトン体濃度がが高まりやすいようで、昼間は出てなくても、夜になるとかゆくなることもしばしばです。
こちらを拝見させていただいて、ビオチン療法を試しており、少しずつ快方に向かっているように思います。
 
春〜夏にかけて発生が多いこと、運動時に出やすいことから、汗とともに体からアセトンが出て、長時間肌に触れることによってアレルギーをおこしているのではないかと思ったりしました。

アセトンは揮発性なので長時間肌の上にとどまるかどうかはわかりません。私は胸から鎖骨にかけてよく出るのですが、アセトンのにおいがしていると思ったことはありません。(自分の匂いに気づいてない可能性もありますが。)
自分の体から出したものでアレルギーになったりすることがあるのかどうかも分かりません。

下着や服で接触してる部分にできやすく、汗とともに衣服にしみて肌に触れ続けている可能性はあると思います。

先ほど、ネイルやマニキュアを落とすときに使うアセトンでアレルギーになるというのを知りました。
アセトンを含ませたコットンをしばらく指先に貼ったりすると、ひどくかゆくなったり水泡ができたりするようです。
もちろん個人差があり、アセトンアレルギーにならない人の方が大多数だと思われます。
ただ、除光液のアセトンと体から出るアセトンはかなり濃度に違いがあるとは思います。

腸内細菌を整えて、ビオチンによる脂質やタンパク質の代謝をスムーズにすることは重要だと思います。
ただ、私の体感としては、とにかく体内のケトン体が増えれば発疹が出て、減少すれば治まる、というかなり瞬発性のある症状のような気がします。
勝手な仮説を立ててしまいました。
私自身もこれさえなければという思いです。

Re: アセトンアレルギー?

かゆかゆ さん

 コメント頂き有難うございます。
 実際に経験されている方ならではの視点からの考察、大変参考になります。

 ビオチン療法が奏功するという事は、背景にビオチン欠乏があり、ひいては腸内細菌の乱れがある事も推測されます。ビオチンに加えて活性酪酸菌入りの整腸剤(ミヤリサン、ミヤBMなど)を併用されるのも一方かと存じます。

 2014年1月28日(火)の本ブログ記事
 「ケトン食からビオチン療法まで」
 http://tagashuu.blog.fc2.com/blog-entry-165.html
 も御参照下さい。

 一方で、汗をかいていて下着との接触部分を中心に皮疹ができるというのであれば、

 それは色素性痒疹というよりは、汗そのものによる接触皮膚炎(いわゆる「かぶれ」)の可能性もあると思います。

 接触皮膚炎はⅣ型アレルギー(遅延型過敏症)が関わっていると言われています。汗を出すなというのも無理な話ですから、地道に糖質制限ベースでアレルギー体質や腸内細菌を整えていくというスタンスも重要かもしれませんね。

色素性痒疹真っ只中

こんにちは。はじめまして。50代です。
昨年夏あたりから背中が痒く、皮膚科行き飲み薬と塗り薬てもらいましたがぜんぜんよくならず違う皮膚科に行き『色素性痒疹』と診断され只今治療中です。
一時治りましたが、先月あたりからまたひどく痒くなり背中も赤くなったり黒くなりして、かなり滅入っています。皮膚科の先生は掻くとよくないと言いますが、掻かずにいられません。どうしたらいいのか、何が原因か、と検索していてこちらにまいりました。
ダイエットした覚えはありませんが、昨年からマラソンに興味がありランニングをし始めました。汗のせい?年齢か更年期?、糖尿病の検査をしようか悩んでいます。
そして、腸内細菌という言葉が気になりコメントさせていただきました。

Re: 色素性痒疹真っ只中

よっこ さん

 コメント頂き有難うございます。
 
 もしかしてよっこさんはやせ型の体型でしょうか。もしそうならインスリンが上手に使いにくい傾向があります。
 急な運動もケトーシスの要因となりますので、もしランニングをし始めてから出た症状なのであれば、無理せずゆっくりと運動に慣らしていくのがよろしいかと愚考致します。

 あとは腸内細菌を整える努力ですね。ポイントは食事と食事の間を適切に空ける事と、食事の時には脂質・タンパク質を中心に十分に栄養を摂る事です。整腸剤の類はあくまでサポート的位置づけだと私は思います。

ありがとうございます

お忙しいところ、さっそくお返事のコメントをいただきありがとうございます。

よくおわかりですね。瘦せ型です!ひょっとしてわたし見えてますか?(笑)
インスリンと瘦せ型と関係があるんですか?インスリンって糖尿病でよく聞く言葉のですね。
糖尿病の検査の件ですが、この色素性痒疹の原因を調べたらダイエットや糖尿病の、、とネットにあったので、ダイエットはしてないので糖尿病の検査をしようかと思いました。

この症状はランニングをし始めてから出ました。

あと追加で質問ですが、こちらのプログを拝見させていただいて、ビオチン療法をしようかと思い始めてますが、どうでしょか?

しょうじき、今の症状がとてもショックでかなり凹んでいます。早く痒さが治り下の綺麗な背中に戻ってほしいです。なんとかして治したいです
よろしくお願いします

Re: ありがとうございます

よっこ さん

 御質問頂き有難うございます。

 ビオチン療法は直接私自身が効果を実感できたわけではありませんが、理論的にはこの状況に益をもたらしうると思います。

 2014年1月28日(火)の本ブログ記事
 「ケトン食からビオチン療法まで」
 http://tagashuu.blog.fc2.com/blog-entry-165.html
 も御参照下さい。

 ただランニングを始めて起こり始めた出来事であれば、その強度や頻度を見直す方が先決です。

 概して身体の不調を改善させるには、「何を足すべきか」以上に「何を減らすべきか」という発想が大事だと私は思います。

 2015年1月4日(日)の本ブログ記事
 「『マイナスの発想』が大事」
 http://tagashuu.blog.fc2.com/blog-entry-533.html
 も御参照下さい。

こんにちは。
ありがとうございましたm(__)m
記事を拝見させていただきました。
まずは簡単にすぐにできることをやっていこうと思っています。

興味深い記事がたくさんありますので、こちらのプログをお気に入りに入れさせていただきます。
プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
漢方好きの神経内科医です。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

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