サイアミディン

専門医が正しいとは限らない

糖質制限以外の事も少しずつ書いていこうと思います。

一般的に「困った事があれば専門家に任せておけばよい」という考え方は、

多くの方々の頭の中にあることではないかと思います。

かくいう私も医療以外の事に関して専門家の力を借りたくなる事があるので、

その気持ちがわからないわけではありません。

しかし医療に関して言えば、専門家すなわち専門医に任せる事が、

必ずしも最良の選択肢とならない事が多々見受けられます。
先日救急当番係をしていた時の話です。

20代の女性が、発熱、頭痛、吐き気で受診をされました。

喫煙者でもあり、咳もしており風邪じゃないかと思って受診されたとのことでした。

医療の世界では「女性を見たら妊娠と思え」という格言のような言葉があり、

これは若い女性を診た時には妊娠の可能性を常に頭の隅においておかないと痛い目を見る事があるという教訓を示しています。

というのも、上記のような主訴でも実は妊娠だという可能性は完全には否定できないんです。

そしてもしこれが本当に妊娠で、知らずにレントゲンとかCTでも撮るという流れにしてしまおうものなら、

場合によってはお腹の中の赤ちゃんに不要な被爆を与えてしまう事になってしまいます。

被曝量が少なければ問題になる事は少ないですが、多ければ多いほど胎児奇形などのリスクを上げる事につながります。

勿論、別に妊娠していなくとも、不要な被曝は避けた方がよいという事は言うまでもありません。

ただ、この患者さん、妊娠反応は陰性だったのですが、血液検査をしてみると、CRPという炎症反応を示す数値が24mg/dL(基準値 0.03未満)と非常に高い事がわかりました。

また妊娠はしていませんでしたが、尿が混濁している所見がありました。

熱の原因として尿路感染を疑った私は、直ちに超音波検査を追加し、右の腎臓が腫れている事を確認しました。

尿路感染症の専門家は泌尿器科です。私は泌尿器科の当直医へ上記の状況を説明し、診察を依頼しました。

すると泌尿器科の専門医は次のように言うのです。

CTは撮ったんですか?CT撮って放射線科の所見ができてから言って下さい

要するにこの泌尿器科医は、泌尿器科の専門ではない私の超音波所見などはなから信用していないのです。

こうなると不要な被曝を避けるためにCTを使用しなかった私の配慮も形無しですし、

信用できないならできないで、自分の目で確認しに来ればいいのに、そうするわけでもなく、とにかく「CTを撮れ」なのです。


でもここで私が意固地になっても患者さんの不利益につながってしまうので、やむなく言う通りにCTを撮ったのですが、

CTの結果はやはり右腎盂腎炎、画像を読む専門家である放射線科も同様の見解でした。

そこで改めてその泌尿器科医へ診察を依頼し、ようやく診てもらえる事になったのですが、

その後も問題と感じる行動がありました。

少し専門的な話になってしまうのですが、

尿路感染症は単純性尿路感染症と複雑性尿路感染症との大きく二つに別れます。

腫瘍や奇形などの器質異常がなければ単純性になり、その場合原因菌の多くは大腸菌、クレブジエラ菌である事が多い事がわかっています。

この患者さんは若くて初めての尿路感染症で、かつ器質異常がない事ば超音波、CTによって明らかですので、

尿路感染症を治療するための抗生物質の選択は、大腸菌、クレブジエラをカバーする必要最小限の抗菌スペクトラム(範囲)を持つ薬とすべきなのです。

しかし診療を引き継いだ泌尿器科医は、あろうことかすべての菌を殲滅するような広域スペクトラムの薬を使用したのです。これはよくありません。

例えるならゴキブリをやっつけるのに、バズーカを使っているようなものです。

殺さなくてもいい菌まで殺してしまうと、副作用のリスクを上げますし、

何より耐性菌という抗生剤の効きにくい菌を今後新たに生み出してしまう温床となってしまいます。

邪推すれば、おそらくこの泌尿器科医は重症感染症(炎症反応の高い感染症?)に対して広域スペクトラムの抗生物質を使うという事をただ慣習的に行っているだけではないかと思うのです。

その場限りという事では、確かに広域スペクトラムの抗生物質で確かに感染症の制御は可能です。

しかしそれは本来、それでないと治せないようなギリギリの状況まで温存しておくべき抗生物質であり、

最初からこういう抗生物質を使うというのは後先考えていない証拠で、感染症学を勉強していない医者のする事なのです。


つい、いろいろと不平不満を申し上げてしまいました。

すべての泌尿器科医がそんな医者ばかりではないのかもしれません。

しかし少なくとも私が出会った泌尿器科の専門医は、「非専門家の意見を最初から信用しない医師」であり、

また「CT被曝に配慮しない医師」でもあり、「泌尿器系の知識はあっても、感染症の知識がない」医師でした。それでも専門医は専門医なのです。

皆さんは専門医というのは、「一般的な医療には当然詳しくて、その上で特定の領域にさらに詳しい医師」というイメージを持っておられるかもしれませんが、

現実にはそうでない医師も結構いるということです。

本来は総合診療に精通していなければ、専門医と名乗ってはいけないと私は思いますが、理想と程遠い現状があります。

もしかしたら医療以外にもそのような現状があるのかもしれませんね。

いかなる専門家であっても、すべてを鵜呑みにしない姿勢が大事だと思います。


たがしゅう
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No title

勇気のある発言だと思います。
たがしゅう先生のように、患者の健康を考えてくれるドクターは、素敵ですね !!

連日、失礼致します。
多くのお医者さんが、
たがしゅう先生のような
思考を少しでも、持ち合わせて下さって
いれば、お医者を疑わず、嫌いに思わず
安心して病院を受診しているはず。

緊急で病院に行く人間は、選択肢がないのでお任せするしかない となると
全ての専門医が、正しいとは限らない❗とは、名言、教訓に近いかと思います。

たがしゅう先生は、文面から拝見して
心ある方だと思っています。
発信されている内容、お医者さんに
限らず、置き換えると私たちにも通じていると感じています。
寒いですが、頑張って下さいませ。

Re: No title

長谷川 清久 さん

 コメント頂き有難うございます。

 おそらくですが、似たような事は全国各地であるのではないかと思います。とにかく盲信は禁物です。

Re: タイトルなし

まっこさん さん

 コメント頂き有難うございます。また過分なご評価に恐縮です。

 これからも私の目線で現実と向き合っていきたいと思います。

大病院にはこういう医者が多い?

大学病院とか大病院の医者はすぐCTとかMRIですからね(苦笑)。検査で証明してからコンサルトしろというような医者はベッドサイドの診察もエコーの重要性もわからないのでしょう。最新のエコーはすごく画質が進歩していますので、X-Pの何十倍もの放射線被爆を若い女性に浴びせるようなハイリスクなCT検査を若い女性の将来を考えずに、安易に指示してはなりません。CT検査は生命に関わる緊急事態以外には安易に実施すべきではないでしょう。特に若い女性には。
今はとにかく検査盲信医者ばかりで、診察のイロハも知らない。
MRIとか核医学検査をオーダーして放射線科医の所見を盲信するだけで神経学的所見をまったくとらない大病院の神経内科医もたくさんいて呆れるばかりです。
たがしゅう先生は例外だと思いますが。

Re: 大病院にはこういう医者が多い?

ホワイトジャック さん

 コメント頂き有難うございます。

 対応の悪いドクターのカルテはたいてい診察所見が書かれていません。

 検査結果だけを記載し最先端の診療をしているつもりになっているのです。怖い事だと思います。
プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
漢方好きの神経内科医です。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

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