サイアミディン

コウノメソッドと漢方の共通点

以前、認知症コウノメソッドの講演を聴いて、もう一つ面白いと思ったことがありました。

認知症コウノメソッドについては過去の記事を御覧頂くとして、

認知症学は比較的新しくできた学問であり、まだいろいろな事が未整備だというのです。

その割には検査医学や病理学は発達しているものだから、

西洋医学的な発想で認知症と向き合う場合にその「診断をつける」ことが重要視されます。
認知症というのは「一旦獲得した認知機能が何らかの原因で不可逆的に低下し、日常生活に支障をきたした状態」というのがおおざっぱな定義ですが、

その原因が「アルツハイマー型認知症」なのか、「レヴィー小体型認知症」なのか、「前頭側頭型認知症」なのか、区別をして対応を考える行為が「診断をつける」ということです。

その診断をつけるためには血液検査や脳のMRI画像、脳血流検査などの検査結果が重要視される、これが西洋医学的な発想です。全国にある認知症専門外来はほとんどこの発想に基づき診断と治療が行われています。

従って、細かい検査所見の知識や、病理学的な知識を持っている医師が認知症領域では非常に重宝されているわけです。

一方、コウノメソッドの発想はまったく逆です。

診断名は必ずしもつけなくてもよいと河野先生は言います。

まず話を聞いて症状をよくみることでキャラクター分類をします。興奮している「陽証」なのか、鎮静されている「陰証」なのか、はたまたその間の「中間証」なのか。

その状態を判断して診断をつけるよりも何よりまず「即効治療」します。興奮している人には「抑制系」の薬を、鎮静されている人には「興奮系」の薬を、その中間の人には「中核薬(抗認知症薬)」を使います。その際に薬剤の副作用には十分配慮し、必要最小限の薬用量を用います(薬剤の増量規定にしばられず)。

そうして一旦患者さんを本来の姿に戻してから、ゆっくり考えるというのです。

誤解を恐れず言うなら、「別に診断がつかなくても、治してしまえばそれでいい」という考えなのです。つまり実学を重視しています。

実は、この考え方は東洋医学に通ずるものがあります。

東洋医学、すなわち数千年の歴史を持ち中国から日本へ伝わってきた漢方ですが、その歴史の大半の中では今のような検査はすることができずに西洋医学的な「診断」が存在しないまま、いかにすれば症状がよくなるかということを突き詰めてtry and error(試行錯誤)が数限りなく繰り返されてきました。

そこにちょっととっつきにくい「陰陽五行説」「八綱」などの独特の理論体系がさまざまな現象を説明しようとして後付けで加わってきたわけですが、

もとを正せば、何はなくとも患者さんの症状をよくすることを第一におく実学に基づく考えで成り立っています。これが東洋医学的な発想です。

河野先生自身、自分のやり方と東洋医学的な発想の共通点について述べられていました。

「治せなければ医師ではない」と河野先生は言います。

私からみれば、コウノメソッドは西洋医学の技術と東洋医学的な発想を組み合わせた非常に考えられた有用な方法に思えます。

これは西洋医学的な発想だけで認知症をとらえる医師と決定的に異なる部分だと思います。


たがしゅう
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コウノメソッドと漢方

夏井先生のホームページでコウノメソッドを知って、本を1冊読んで、身内に処方しました。今度は自分の自律神経失調の症状をなんとかしようと、漢方の勉強を始め、なんだか似ているなあ、この二つと思っていたので、今日のたがしゅう先生の記事を見て、納得しました。
ただ、私は子どもが専門なので、実地に欠けるせいか、二つとも
とても難しいです。ひとつ覚えたからといって、それで終わりじゃなくて、実際何を選ぶのか、量はどうするのか、それこそ医者の匙加減ですね。(介護者のも入りますか)
糖質制限や湿潤療法のように、もう少しシンプルにならないのかなあと思います。まだ発展途上なので、仕方がないのでしょうか。
漢方はワザと難しくして、敷居を高くしている気もします。
もっと拡ってくれるといいですね。

Re: コウノメソッドと漢方

にこ さん

 コメント頂き有難うございます.

> 二つともとても難しいです。ひとつ覚えたからといって、それで終わりじゃなくて、実際何を選ぶのか、量はどうするのか、それこそ医者の匙加減ですね

 おっしゃる通りだと思います.

 漢方もコウノメソッドも,糖質制限や湿潤療法ほど原理が解明されていないので,
 先人の貴重な経験に学びながら,さらなる試行錯誤を繰り返していくしかないと思います.
 いずれの方法も習得は容易ではないですが,確かに著効例が存在するので,勉強して技術を高めていく価値があります.

 私も偉そうに語れるほどそれぞれの治療に精通しているわけでもないのですが,このブログで話題に取り上げていくことで少しずつ自分の頭の中を整理していきたいという意図もあります.

私の認知症治療

私の治療の方針は、「診断をつける」のではなく、「患者のQOLを上げる」です。
 ちなみに精神科病院にやってくる患者は、ほとんどが興奮している「陽証」で、抗精神病薬が適応です。
 少数が鎮静されている「陰証」で、抗鬱剤の適応となります。アリセプト等の認知症薬が適応となる「中間証」は精神科病院にはあまり来ません。
 ちなみに私はサアミオンは評価しておらず、通常は使いません。シンメトリルは誤嚥防止目的で使うときはあります

Re: 私の認知症治療

精神科医師A先生

 いつもコメントを頂き有難うございます。

> ちなみに精神科病院にやってくる患者は、ほとんどが興奮している「陽証」で、抗精神病薬が適応です。少数が鎮静されている「陰証」で、抗鬱剤の適応となります。

 コウノメソッドは「陽証、陰証を作っているのが薬のせいかもしれない、有害な薬は抜くべき」という「マイナスの治療学」に対する気づきも与えてくれます。

 コウノメソッドが本当に正しいかどうか、私も自分の症例で検証中です。
 例えば、明らかな陽症ですでにアリセプトが導入済(特にアリセプト10mg)のような人には減量・中止して改善するかどうかを試みております。
プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
漢方好きの神経内科医です。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

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