サイアミディン

嘘でなくても方便

私が糖質制限の説明をするとき、

これから話す相手が糖質制限を理解してくれるかどうかを見極めるスクリーニング法として、

「白米1杯150gの中には角砂糖17個分の糖質が含まれています」

という事実を伝えた時に相手がどういうリアクションをとるか、ということを参考にしています。

この時に「はぁ、そうなんですか・・・」と冷めたリアクションをとる人は、その後かなりの確率で指導は難航したり、説得不可能だと感じる事になりますが、

一方で「えぇっ!そんなにあるんですか!?」などと驚いたリアクションをとる方は、説得のチャンス到来です。

ただここから先も気をつけて説明しないとゴールまでたどり着く事ができません。
とある患者さんの奥さんに糖質制限の説明をしていたときの話です。

ひとしきり糖質制限の事を説明して「将来の病気を予防していきましょう、何か御質問はございますか?」

とその奥さんに問いかけたところ、

「先生のおっしゃる事はわかりますけど、私は自分の子供達にパンは血糖値が上がりすぎるからよくなくて、

ごはんの方が血糖値の吸収が遅くなるからそっちをしっかり食べるように教育してきました。

ごはんを食べないと脳のエネルギー源はブドウ糖だと習いましたし、

先生のその炭水化物は全て悪いような言い方はすごく違和感があります」


実際には私は「炭水化物が全て悪だ」というような言い方はしておらず、

「血糖値を直接上昇させるのは糖質のみ」とか、「血糖値の乱高下が動脈硬化のリスクになる」といった事実を淡々と伝えただけなのですが、

私の意図とは異なりかなりきつい印象でメッセージが伝わってしまったようなのです。

それはもしかしたら私の話を聞いた奥さんが、

「今まで私が子ども達のためにやっていた事は全て間違いだったというのか・・・?」という負の感情を抱いてしまったからかもしれません。

もちろん決してそういうわけではなく、ただ知らなかっただけで奥さんは何も悪くありません。

自分を責める必要も、子ども達に悪いと思う必要もなく、これからできる事をやっていけばいいだけです。

客観的にみて、上記の奥さんの言い分には十分反論できる状況でしたが、

奥さんの気持ちを思うと素直に反論する気になれませんでした。

そこで私は「脳はエネルギー源はブドウ糖だけ」などの誤った認識の訂正を今回はあえて行わず、

奥さんの罪悪感をなくしてもらうために次のように説明しました。

「いえいえ、よく動くこどもさんの場合はいいのです。

たくさん糖質を摂ってもよく運動しているお子さんであれば筋肉を使って糖を処理する事ができるんです。

ところがだんだんお年を召されてくると運動をしなくなります。車での移動に頼るようになります。

そうすると若い頃は大丈夫だった糖質の負担が、徐々に負担になってくるという事なのです。」


そうすると少し納得した様子で話を受け入れられたようでした。

ただウソはついていないものの、真実を必ずしも正確に伝えきれていない言い方だったので

それが本当に正解だったのかどうかはわかりません。

いかにメッセージを伝えるか、ということは常に悩ましい問題です。


たがしゅう
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受け入れること

たがしゅうさん、こんにちは。
正しい情報を人に理解(納得)してもらうことは本当に大変だと思います。
その情報が正しいかどうかは、ひょっとすると、その人がそれを受け入れるかどうかとは無関係なのかも知れませんね。
情報を受け入れるかどうかは、その情報とその人との「距離」に依存するのではないでしょうか?
糖質制限とはかけ離れた距離にいる人に、その有効性を納得してもらうことは、たいていの場合、困難だと思います。
その意味では、必ずしも正確な情報でなくても、患者さんの奥様に伝えられ、少なくとも拒絶反応を起こされなかったことは、その目的を考えれば、素晴らしいアプローチだったのではないでしょうか?
地道なご努力を応援しています。

信じて疑わない

 いつもありがとうございます。

脳には糖が必要!!
テスト当日の朝はチョコレート!

試合がある時は2~3日前から炭水化物のみ!等々

学校の先生やスポーツの栄養指導やら今まで嫌というほど聞かされてきました。

自分の娘の病気のおかげで気が付きましたが
自分の教育、人生までも否定されたかのように思いました。

険しい道だと思いますが
いつか糖質制限が普通のことと
なるよう願っております。

Re: 受け入れること

あきにゃん さん

コメント頂き有難うございます。

> 情報を受け入れるかどうかは、その情報とその人との「距離」に依存するのではないでしょうか?

そうかもしれません。

どんなに精度を高めたところで正攻法が無理なのだとしたら、変化球をなげるしかありませんが、

しかし、そこにおいてウソをつくという一線を越えるのは自分の中での正義が許しません。ウソをつかないギリギリのところでの変化球を考えていきたいと考える次第です。

Re: 信じて疑わない

あーちゃん さん

コメント頂き有難うございます。

> 自分の娘の病気のおかげで気が付きましたが
> 自分の教育、人生までも否定されたかのように思いました。


どうかそのように思わないで下さい。真実を知ったところから変わればいいのです。

負の感情は、また新たな負の感情を呼び込みます。そうならないよう私はこれからの明るい将来を見据えて今この瞬間を生きていきたいです。

そもそも・・

たがしゅう先生
「ブドウ糖は脳の唯一のエネルギー源」という間違った内容が流布されてきたのが、こういう事態を招いているんでしょう。
この嘘は多くの人を誤解を生み、過剰な炭水化物の摂取に走らせ、糖質制限実行の足枷になっているのですから、ひどいものです。
この患者さんに限らず、多くの人が被害者ですね。

ところで「ご飯の中に角砂糖17個分の糖質が含まれる」という説明の前に、「コーラ缶には角砂糖10個分の糖質が含まれますが・・」というのを加えてみてはいかがでしょう。
不健康そうな飲料であるコーラが10個、という事を事前の伝え、ご飯に17個と伝えれば、そのショックは伝わりやすいと思うのですがねえ・・・

Re: そもそも・・

mina さん

 コメント頂き有難うございます。

> 「ブドウ糖は脳の唯一のエネルギー源」という間違った内容が流布されてきたのが、こういう事態を招いているんでしょう。

 その通りですね。

 昔から断食の実践的な効果など経験的によく知られていたはずなのに、一体いつからどうなって「ブドウ糖は脳の唯一のエネルギー源」にすり替わってしまったのでしょうかね。

> ところで「ご飯の中に角砂糖17個分の糖質が含まれる」という説明の前に、「コーラ缶には角砂糖10個分の糖質が含まれますが・・」というのを加えてみてはいかがでしょう。

 面白いアイデアですね。確かにごはんの糖質の多さがより伝わりやすくなるかもしれません。

 次の糖質制限説明の機会に早速実践してみたいと思います。有難うございます。

始めるより止める方が難しい

初めて投稿します。
私は糖質制限で4ヶ月で9キロ痩せました。
現在BMIは21台です。
糖質制限は、まだ世の中に受け入れられていないと感じます。

同年代が更年期で太る中、これだけ痩せればダイエット方法を聞かれますが、事実を話すと心配されるのがオチなので、今は、食べる順番ダイエットで痩せたと話しています。
私は医療従事者ではないので、糖質制限の説明は嘘も方便です。

糖質制限という言葉は使いません。
制限という言葉もきつい感じがしますし、ご飯を否定すると反感すら買います。

なので、野菜とおかずをお腹いっぱい食べると、ご飯を食べなくなっちゃうのよね、だから、痩せたと言っています。
こういう言い方をすると、聞き流してもらえます。
興味は持ってもらえませんけど。

CMをバンバン流しているダイエット食品を使って痩せたと言えば、真似されたかもしれません。
手軽に始められますし、イメージも良いですから。

何かを止めるダイエットより、何かを始めるダイエットのほうが、受け入れられやすいですね。
過去の自分を否定せずに済むので。

Re: 始めるより止める方が難しい

カンパリソーダ さん

 コメント頂き有難うございます。

> 私は医療従事者ではないので、糖質制限の説明は嘘も方便です。
> 糖質制限という言葉は使いません。
> 制限という言葉もきつい感じがしますし、ご飯を否定すると反感すら買います。


 そうですね。友人関係など、嘘も方便にすべき状況もあると思います。

 ただ医師の場合は、信頼のおける医師患者関係を築く事が生命線という所があります。

 一旦失った信頼を取り戻そうというのはなかなか至難の技です。それゆえ嘘をつかずに「事実をどうやって伝えるか」という事にこだわっています。

行動療法のステージ

無関心期、否認期、関心期、実行期、維持期

糖質制限食では、否認期を過ぎればあとは楽ですね。

Re: 行動療法のステージ

gh さん

 コメント頂き有難うございます。

> 糖質制限食では、否認期を過ぎればあとは楽ですね。

 逆に言えば、否認期を超えさせるのが至難の技である場面も多いです。何とか関心期に移行してもらえるようにしていきたいですね。
プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
漢方好きの神経内科医です。
南鹿児島さくら病院に勤務しています(下段にリンクあり)。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

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