サイアミディン

インスリンで治しているつもりの医療者達

糖質制限指導をしていて、

腎障害を伴う糖尿病患者さんを診る時は特に気を遣います。

糖尿病が進行すると、合併症としての糖尿病性腎症が顕在化してくる事があります。

その進行度がある程度重症(糖尿病性腎症4期以上)の場合は、単純に糖質制限指導をするだけではなく、

それに加えてタンパク質制限も加えていく必要があるからです。

しかも私だけが主治医であればまだしも、

そういう場合の多くは糖尿病専門医が糖尿病の管理をしていて、

脳の病気のフォローのためたまに私の外来に来ているというケースが多いのです。
先日もある70代の女性が、腎機能を表すクレアチニン値が3.0程度へとじりじりと悪化してきており、

どうしたら良いかということで私が相談を受けました。

なぜ非糖尿病専門医の私に相談されるかと言いますと、

糖尿病専門医に相談しても「どうしようもない」と言われるだけ、だからだそうです。

そしてこの患者さんは当たり前のようにインスリン治療(超速効型インスリン朝食直前2単位、昼食直前4単位、夕食直前3単位)を受けておられます。

この方のHbA1cは6.1%(NGSP)なので、私にしてみればこのインスリン自体が不要であるように思えます。

一方インスリン使用下での糖質制限指導は常に低血糖のリスクを抱えることになるので非常に困難を極めます。

無理解な糖尿病専門医の話は今に始まった話ではありません。この状況において私の指導は、

「低血糖症状に注意しながら、米の量をほんのすこしだけ減らして、血糖値が改善したらインスリンを減らしてもらうように主治医の先生に相談しましょう」

とアドバイスするのが関の山でした。

しかしそうする事によって蛋白質は相対的に増加します。

通常はその事はスルーできますが、このような腎機能が悪い状況においてはその事ですら病状の悪化に寄与してしまう可能性を指摘できません。

しかも、この患者さんの場合、すでに栄養士により腎不全食の指導を受けている状況でした。

腎臓に対して自分の指導と栄養士の指導内容が食い違っても患者さんを混乱させる事になってしまうので、

一応どんな栄養指導を受けたのか確認しようとしたところ、患者さんから驚きの返事が返ってきました。

糖尿病の方はインスリンでやっつける事ができるから気にしなくて、腎臓の事だけ気にしていればいいですよって言われました。」

はっきり言ってとんでもない指導です。

糖尿病が悪化しているが故に腎臓が悪くなっているというのに、

糖尿病の方を放置するとは言語道断だと思います。

また「インスリンでやっつける」という表現も曲者です。

これは医師、栄養士がインスリンを使って血糖値を下げてさえいれば、

糖尿病の治療はうまく行っているという認識を持っている証拠だと思いますが、

実際のところそれでは何一つうまく行っていません。

なぜならば、インスリンを用いる事で低血糖のリスクを生じ、

24時間監視しているわけではない医師や栄養士の知らないところで軽い低血糖を繰り返している可能性がありますし、

インスリンを必要以上に用いる事自体が酸化ストレスを生じ、動脈硬化やがんのリスクを高めているからです。

栄養の専門家たるものが、このようなお粗末な認識であるのが偽らざる今の現状だという事なのです。

ここまで根本的に間違った指導を行っているとは、怒りを通り越して呆れ返るばかりです。

またここまでこじれてしまうと、私の立場ではもはや軌道修正は困難です。

どうしてこんなおかしな治療が世の中でまかり通ってしまうのか。

一刻も早く、できるだけ多くの人にこのおかしさに気がついてもらう必要があると思います。


たがしゅう
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ありがとうございました。

先生おはようございます。
今朝も糖質制限で快適目覚めを実感しております!(嬉)

食後の眠気はまだよく解明されてないのですね。ご丁寧にご返答頂きありがとうございました。

本日の記事でもインスリンの事に触れられてましたが、今の医療界では「インスリンは最低限の基礎分泌量で十分」という考え方はまたまだ浸透されてないのですね。

私は、普通の会社員ですが、もし製薬会社や製菓製パン会社で勤めていたり、農家で米を作っていると糖質制限をどう捉えるかと考えてしまいます。

糖質制限は、影響を与える範囲があまりにも大きすぎて市民権を得るのは、これからも困難を極めると思います。

江部先生や夏井先生、そしてたがしゅう先生のように患者さんの身体の事を第一に考えてくれる先生が増えることを祈ると共に、私達も地道に啓蒙していくしかないですね。

はじめまして

先生はじめまして。
先日、(たぶん)2型糖尿病なのに最近の不摂生からケトアシドーシスを起こして緊急入院した30代の女性です。

入院中は1日4回インスリンを打ってましたが、主治医に頼み込んで、退院後は糖質制限をしながら1日8単位のランタスだけ打ってます。

29歳の若い主治医の先生は、正直あまり糖質制限には賛成ではないみたいですが、私の数値が良くなればわかってもらえるかも、と思っています。

これから勉強させていただきますね。

大学病院の診療は誰のため?

大学病院とか総合病院は臓器別診療ですからね.患者はそれぞれ担当医の意見に振り回される.そして診療科の間に高いカベがあるので、医者間の揉め事が医局間の揉め事に発展したりする.研修医時代にそれを見てきてウンザリしたので、若い時から大学病院は敬遠していました.医者の方も患者の事より他診療科(といっても同じ内科系)の医者に気を使わなければならないのでやっぱり精神的に不健全.やっぱりコモン疾患に関しては町医者がまとめて面倒みるのが一番だと思いますね.先生のような良心的なドクターは早く町医者になってください.

恐ろしい限り

何とも恐ろしい状況ですね。適当な説明をされ、インスリンを沢山用いて、段々と悪化してゆき透析に近づいていく・・・。
我々が話を聞くだけで恐ろしいというのに、患者さん本人の気持ちは計り知れません。。
先生に相談したのも、藁をも掴む思いだったのでしょう。

大学病院ともなると最高の医療が受けられると思ってしまいますが、このような事もあるとは、なんとも・・・。

Re: ありがとうございました。

岸和田のセイゲニスト さん

 コメント頂き有難うございます。

 私は私の立場で今できる事を続けていきたいと思います。今後とも宜しくお願い申し上げます。

 

Re: はじめまして

みさこ さん

 コメント頂き有難うございます。

 主治医が理解しようとしまいと、食事療法をどうするか決めるのは本人の自由です。

 是非とも健康を取り戻される事をお祈り申し上げます。

Re: 大学病院の診療は誰のため?

アンチスタチン主義 さん

 コメント頂き有難うございます。

 確かに大学病院はいろいろなしがらみがあってやりにくい部分が多いです。

 ただ逆に言えば、今この立場でしかできない事もあると思います。今はただそれを淡々と続けていきたいと思っています。

Re: 恐ろしい限り

mina さん

 コメント頂き有難うございます。

> 大学病院ともなると最高の医療が受けられると思ってしまいますが

 それが幻想であるという事が私には大変よくわかります。最高の医療を受けるためにはまず「自分が主治医」の発想が大事だと私は思います。
プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
漢方好きの神経内科医です。
南鹿児島さくら病院に勤務しています(下段にリンクあり)。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

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