サイアミディン

再生医療は全てを解決しない

STAP細胞の論文捏造問題が取り沙汰された一方で、

iPS細胞の臨床応用を中心とした再生医療分野は

今最先端医療の中で最も注目されている分野のひとつとなっていると思います。

私達神経内科医が扱う神経変性疾患に関してもiPS細胞に寄せられる期待は大きいです。

なぜなら神経はデリケートな細胞であり、ひとたび神経変性という現象が起これば神経細胞死につながり、

その変化は不可逆的だと考えられているからです。

そんな死んでしまった神経細胞を、iPS細胞で復活させられるとなれば患者さんにとっても大きな福音となることでしょう。

患者さんからも「いつになったらiPS細胞による治療が受けられるのか」という期待の声が聞かれる機会も増えてきました。

はたして実際のところ、再生医療はどこまで現実的な話となってきているのでしょうか。
先日、神経変性疾患の一つ、パーキンソン病への細胞移植療法に関する講演会があり、聴講して参りました。

実はiPS細胞以前にも、中絶胎児の胚組織を移植するような治療が行われていました。

その結果、確かに死滅した神経細胞の再生を確認する事ができたようなのですが、

その代わり、ジスキネジアと呼ばれるドーパミンが過剰に分泌される事で出現する不随意運動が出現していました。

自分の組織を使う自家移植か、他者の組織を使う他家移植かでも違うのでしょうけれど、

どうやら細胞移植治療も必ずしも前途有望とは限らない状況であるようです。

それでも自分の細胞由来のiPS細胞であれば、そういう事は起こらないのではないかという意見もあるかもしれませんが、

私はそれでもiPS細胞の未来はそう甘くないと予想しています。


それはパーキンソン病で見られる神経変性という現象の根本的な原因について思いをはせればわかります。

現在考えられている神経変性の大きな原因の二つは「酸化ストレス」と「ミトコンドリア機能異常」です。

神経保護作用を有するケトン体を産生させるケトン食はこの二つの要因をいずれも改善させるパワーを持っていますが、

糖質過剰食はこのケトン体の産生を最もさせにくくする食事です。

もしも糖質頻回過剰摂取を繰り返す事が、パーキンソン病における神経変性を起こす最大の要因であったとすれば、

この根源的な要因に対処しない限り、たとえiPS細胞により自己細胞由来の神経細胞が無事トラブルなく生着したとしても、

酸化ストレスを繰り返す事で、新しい神経細胞が再び神経変性を起こすのは目に見えています。


機械にたとえるなら、再生医療はどこまで行っても部品の入れ替えです。

機械がさびる原因そのものを放置していれば、部品を入れ替えてもまたさびるのは時間の問題だという事です。

そうではなくて、機械がさびないようにするためにはどうすべきかを考えるべきであって、

そのための基本が糖質制限にあると私は考えています。


たがしゅう
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病気は酸化・糖化・炎症

先生、はじめまして。
『神経変性の大きな原因の二つは「酸化ストレス」と「ミトコンドリア機能異常」です。』というのは、まさにその通りだと思います。
解糖系がブドウ糖をピルビン酸・乳酸に変えて、ミトコンドリアがそれをエネルギーに変えています。
ミトコンドリア機能異常だとピルビン酸・乳酸の代謝が進まないので、乳酸が溜まって身体が酸化します。
乳酸はpH5~6の酸性物質なので、乳酸が溜まると酸化ストレスが大きくなるのです。
後天性ミトコンドリア病→乳酸アシドーシスは、神経変性のみならず、ガン・糖尿病・動脈硬化・骨粗鬆症・脚気などの原因です。
精製糖質を過剰摂取すると、乳酸が溜まって慢性的に酸化・糖化・炎症します。
この酸化・糖化・炎症が、ガンや慢性病の根本原因です。

「ミトコンドリア機能異常→乳酸蓄積による酸化・糖化・炎症」を頭の片隅に入れておいてください。
乳酸が人体を酸化させ、細胞や血液に酸化ストレスを与えています。
多くの医者は、病気の根本原因に興味を持ちません。
たがしゅう先生のような患者側に立つ医師は、少数です。
これからも貴重な情報を発信し続けてください。
突然の長文を失礼しました。

コストの問題

たしかに再生医療(iPS細胞)で30歳~80歳のパーキンソン病患者がすべて治る夢の治療だというふうにマスゴミに過剰に煽られていますが、これはかなり危険です。どれだけの患者が治療の対象になるのでしょうか?
パーキンソン病といっても症状には発症年齢や個人差があってピンキリですが、オンオフが著しい患者が対象になるのでしょうか?iPS治療が万能だ、すべてを解決すると信じて治療を受けて思うような成果が得られなかったり、またiPS治療を強く希望したが治療の対象から外されたりして、患者と家族の不満が爆発するという事がなければいいですがね。大学病院などがiPS治療の中心になるでしょうね。人間の欲望というのは際限ない。夢の治療に過剰な期待を煽られる事による医療側と患者側が受けるストレス弊害も多いのではないかと予測します。
文明の進歩を否定するわけではありませんが、それによって必ずしも恩恵を受けて幸福になるとは限らないのではないかと感じています。新しい便利なモノが生まれるとそれによって新たなストレスも生まれる。結局、医者にかからなくても自分である程度責任をもって実践できる食事療法を中心にすべきでしょう。
病気というのは自分自身の問題ですから。










交感神経移植と同じ

15年ほど前に50歳前後のパーキンソン病の女性に某医科大学病院で胸髄交感神経を脳に移植した患者を受け持った経験がありました。手術前に90%の時間がオフ状態だったのが、50%がオン状態になったのですが、そのオン状態の時間は動けるのだが、精神錯乱状態で病棟では個室で大暴れで配偶者がつきっきりでないと管理不 能。在宅も不可能で、結局精神科病院へ転院しました。おそらく半永久的に精神科病院で過ごす事になったのでしょう。DBS手術でも似たようなケースをよく聞きました。おそらくiPS治療も同じような事が起こるのではないでしょうか?薬の副作用は原因薬剤を中止すれば事なきを得るわけですが、こういう治療はもしひどい副作用が出ても後戻りはできないという怖さがあります。非常にリスクの高い治療でもあるのではないでしょうか?

Re: 病気は酸化・糖化・炎症

鈴森 さん

 コメント頂き有難うございます。

 「乳酸=悪」とする考え方は、少し違うと私は思っています。

 乳酸そのものは糖新生の材料であったり、疲労回復の役割を持っている重要な物質です。

 その乳酸がたまり続けてしまうような代謝障害が諸悪の根源だと私は考えています。

 2014年6月30日(月)の本ブログ記事
 「スタチンで横紋筋融解症が起こる理由」
 http://tagashuu.blog.fc2.com/blog-entry-319.html
 も御参照下さい。

Re: コストの問題

アンチスタチン主義 さん

 コメント頂き有難うございます。

> 文明の進歩を否定するわけではありませんが、それによって必ずしも恩恵を受けて幸福になるとは限らないのではないかと感じています。新しい便利なモノが生まれるとそれによって新たなストレスも生まれる。結局、医者にかからなくても自分である程度責任をもって実践できる食事療法を中心にすべきでしょう。

 同意見です。

 いかに文明が進歩しようが、根源を見直さない限り根本的な問題は何も変わらないと思います。

Re: 交感神経移植と同じ

ホワイトジャック さん

 コメント頂き有難うございます。

 先日の講演によれば、iPS細胞治療の意義は、どうやら「死滅したドーパミン神経細胞に変わってドーパミンの補充源を供給する」という所にあるようです。

 しかし同じ講演の中で紹介された細胞移植治療で生着が確認できたというパーキンソン病症例では、今度はジスキネジア(ドーパミン過剰になり不随意運動が出てしまう状態)が止まらなくなったそうです。

> 非常にリスクの高い治療でもあるのではないでしょうか?

 私もそう思います。

乳酸アシドーシス=悪

お返事ありがとうございます。
乳酸は天使と悪魔の両面を持っています。
乳酸はエネルギーにも変わりますが、蓄積して“毒”にもなります。
乳酸=悪ではなく、乳酸蓄積・乳酸アシドーシス=悪ですね。
先生がおっしゃるように、乳酸を溜め続ける生活が諸悪の根源です。
慢性的な乳酸蓄積が、人体を酸化・糖化させます。
そして慢性的な乳酸蓄積が、IL-6/IL-23/IL-17による慢性炎症の原因であることもわかってきました。
酸化・糖化・炎症という老化・病気の原因は、過剰な乳酸の蓄積です。
ミトコンドリアの機能を正常化すれば、乳酸は溜まりません。
ミトコンドリア賦活と慢性的な乳酸の蓄積解消が、病気の予防・治療に欠かせないと考えています。
ほとんどの人は、“乳酸蓄積”が深刻な病気を呼び込んでいることを知りません。
慢性的な乳酸アシドーシスを作る食生活が、糖質過剰摂取なので、糖質制限は素晴らしいと思います。
これからも糖質制限を推進してください。
ありがとうございました。

プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
漢方好きの神経内科医です。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

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