サイアミディン

食欲は作られた感情

よく「食欲は人間の本能だ」なんて言いますが、

その食欲が暴走して身を滅ぼしてしまう状況というものがあります。

それが「拒食症」と「過食症」を合わせた「摂食障害」と呼ばれる病態です。

拒食と過食は真逆のものと捉えられがちですが、拒食症から過食症に移行するケースが約60 - 70%みられたり、

両者には「極端なやせ願望」や「肥満恐怖」といった感情が共通しています。

「摂食障害」は一般的には精神疾患の一種と捉えられていますが、

糖質制限を通じてみると、違った視点で捉えることができます。
すなわち

「精神疾患」→「過食」

ではなく、

「糖質摂取」→「糖質離脱症状」→「過剰食欲」→「過食」

であったり

「過食」→「血糖乱高下」→「精神不安定」

という流れであり、原因と結果が逆だということです。

あるいは

「過食」→「血糖乱高下」→「精神不安定」→「抑うつ」→「拒食」

という流れもあると思います。

もし食欲が本当に人間の本能だったら、本能の赴くままに食べて精神が乱れるとはいかがなものでしょうか。

確かに「食欲が本能」と位置づけておくとつじつまが合う場面も多いと思いますが、

食欲がいいとか、悪いとか、必ずしも意味づけしない方がいいと私は思います。

あえて言うならば、「食欲とは、生物が長く生きるという目的を達するために作られた感情」とでもいいましょうか。

食事からの蛋白質や脂質などを元にして様々なホルモンや神経ペプチドが作られ、

それが食欲という感情を作るわけです。

そう考えれば食欲という作られた感情が食べたものによって影響を受けうるということも理解できると思います。

だから、食欲は「本能」でもなければ、「病気」でもない。

食べたものによって作られた感情の一つに過ぎないと私は考えます。


そういえばケアネットニュースでは、こんな情報もありました。

境界性パーソナリティ障害+過食症女性の自殺リスクは
提供元:ケアネット公開日:2015/01/22


「過食症のある境界性パーソナリティ障害と呼ばれる精神疾患を持つ女性患者では、自傷行為や自殺未遂が多い」という内容の論文です。

私にはこの気持ちがよくわかります。私にも過食の経験があるからです。

食べないようにしたいと心から願うのにも関わらず、食べるのをやめられないというのは、

本当に情けなく、辛い思いになるんです。

そんな悲観的な精神状態を見られたら、「精神疾患」だと言われても仕方のない状況かもしれません。

しかしこの状況は糖質制限をする事によって大幅に改善しました。

その時私は過剰な食欲が作られたものだという事を初めて知りました。

それと同時に悲観的な精神状態もかなり緩和しました。

そして食事と精神状態に密接な関係があるということを身を持って体感したわけです。

だから「過食」も「境界型パーソナリティ障害」も、

糖質によって作られた感情なのではないかと思います。


たがしゅう
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非公開コメント

こんなパターンも多いんですよ

たがしゅう先生こんばんは

実はこんなパターンで苦しんでるうつ病患者(と誤診されているかも知れない人を含む)も多いんですよ。

「過食」→「血糖乱高下」→「精神不安定」→「抑うつ」→「投薬」→「副作用」→「更に過食」→「血糖値乱高下(低血糖症)」→「抑うつ悪化」→「増薬」→「副作用増加」→「抑うつ悪化」→以下繰り返し・・・

まさに昔の私です。
真面目に治療してるのに症状はよくならず、体調が悪化していくという・・・

糖質制限による食事療法に出会って、うつ病が完治して全ての薬とバイバイできました。
人生が良い方向に激変しました。人生はやり直せるんですね。

症状が好転しないとか、患者が何かしらの症状を訴えると、どんどん薬を増やしていく精神科医が多すぎです。他の内科医もそのような医師が多いですけど。

何事も原因と結果を履き違えず、柔軟な思考で、時には苦労して身につけた知識や技能を捨てることも厭わず、常に変化していけたら、人生楽しいですよね。

Re: こんなパターンも多いんですよ

きのっぴ さん

コメント頂き有難うございます。

> 症状が好転しないとか、患者が何かしらの症状を訴えると、どんどん薬を増やしていく精神科医が多すぎです。他の内科医もそのような医師が多いですけど。

それは私も実感します。

たとえ「減薬」という発想を持っていたとしても、食事療法の観点がない限りは、

根源を放置したままの実践という事になるので、実行はなかなか難しいと思います。

それが今の状況を作り出している一因だと私は考えています。

生きるために食べる

「食欲とは、生物が長く生きるという目的を達するために作られた感情」ですか。

糖質制限前の私は、「食べるために生きる」でした。生物として失格ですね。
意味もなくスナック菓子やアイスをむさぼる日々でした。(涙)

これからは「生きるために食べる」になれるように頑張りたいです。
(糖質依存性から脱却しましたが、チーズやナッツ類の摘まみ食いの癖からは脱してはいません。反省)

先生の記事で、句読点が。と.が有りますが理由がお有りですか?

Re: 生きるために食べる

岸和田のセイゲニスト さん

コメント頂き有難うございます。

食べるという行為は、突き詰めれば長く生きんと欲する生物のエゴだと私は思います。

> (糖質依存性から脱却しましたが、チーズやナッツ類の摘まみ食いの癖からは脱してはいません。反省)

それは私も同様です。なかなか、「言うは易し、行うは難し」です。

> 先生の記事で、句読点が。と.が有りますが理由がお有りですか?

たいした意味はありません。
ただPCで書く時と、スマホで書く時とがあり、それぞれの句読点の初期設定が異なる、というだけの事です。

No title

たがしゅう様

以前、難聴で書き込みしたjoshと申します。
その後、左耳は相変わらずよく聞こえませんが、糖質制限して5か月。
ちょっと驚くことが起こっています。

30代前半で左耳が突発性難聴発症。
約1年後だったか回復したものの、
40代後半で再度左耳に耳鳴りがおこり、感応性難聴に。
両耳に常に耳閉感があり、大きな音は響いてつらい状態です。
(たとえば電車のガード下とか、選挙カーとか)
で、そんな感じで現状維持、60歳になりました。

昨年8月から糖質制限開始したところ、
3か月ぐらいたったころでしょうか、耳閉感が徐々に薄らぎはじめ
現在はほとんどありません。
さらに左耳に常に蝉の大合唱のような耳鳴りが小さくなってきています。
もちろん、まったく耳鳴りが消えているわけではありませんが、
そうとう楽な感じです。
びっくりです。

先生のこれまでのブログを読んでいますと、
糖は脳を炎症させているのかもしれません。
糖質をほとんど絶って、脳のブーストが和らいでいる感じなのです。

また、女性なのでさらにうれしいことが!
20代のころから太らないように気を付けていたので、
ずっと49㎏ぐらいだったのが、50歳超えて50㎏に。
徐々に増えてこの10年ぐらいは52㎏ぐらいに。
スタンダードはしていたので、糖尿病は発症していませんが
どうにも痩せず、BMIは21・5ぐらいで、
普通体重とはいえ、お腹ぼっこり(ーー;)

それが、5カ月たって、3~4㎏落ちて、体脂肪も4%ぐらい落ちました。
ぼっこりがほっこりになり、30代に履いていたパンツが履けるように!
本当にびっくりです。
お腹はあまりすかなくなったし
これでどこまで落ちて止まるのか、興味津々です。
もちろん、体調はばっちりだし、目覚めはいいし、お酒もうまいです。

2月に耳鼻科の検査に行きますので、変化がありましたらご報告いたします。

いつか豚皮などでお会いして、先生のご意見もうかがいたいところです。
長々失礼いたしました。


糖質制限だけではやはり・・・

身内および自分自身がパーソナリティ障害かもしれないと思い、この障害について(独学ですが)学んだことがあります。
たしかに、糖質制限で感情の起伏はかなりのところ改善します。私もだいぶ落ち着いてきました。
がしかし、やはり、パーソナリティ障害の原因は糖質だけでは語りきれないと感じています(程度にもよるのでしょうが)。
少なくとも自分自身については、糖質制限だけでなく、心理療法などのアプローチも併用する必要があると強く感じています。
私は20代のときに拒食を経験しました。当時、なんとか口に入ったものは、1食でおにぎり1個とかそーめん一束弱とかでした。タンパク質をほとんどとらずに糖質だけ…そんな過去の生活が、糖尿病を引き寄せてしまったのかもしれませんね。

稀な体質なんでしょうか

以前にも少し書かせてもらいましたが、私は食べ物での血糖上昇が「不快感」になる体質みたいなんです。まるで喉と目の奥の間あたりを、拳でグリグリされているような感じが、糖質を食べると即座におこります。温かいウドンとか、もう3~4本でダメです。今までずっと、この感じが「満腹感」なんだと思ってきました。ずーっと、この不快感に食事を中断させられてきました。幼い頃からケーキやクッキーには目もくれず、おやつに欲しがったものはニンジンやピーマンなんで…生れつきなんでしょうね。

当然子供の頃から食事の記憶に明るい思い出は少ないです。親から言われて一番辛かった言葉は「がんばって食べなさい」。食べたいのに、叱られたくないのに食べられない、目の前で食べ物を捨てられる…これも相当に惨めですよ。食べられない事がコンプレックスで、人のしている食事の話題には入れませんでした。

それでも私には「病人にはなりたくない」みたいな意地があったらしく、普段はつとめて食事という苦行の存在を忘れるようにしていました。深刻に考えないことで、私は摂食障害等と診断されることを無意識的に避けていたのかもしれません。それが糖質制限を知ったことで、自分の体質と向き合うチャンスが突然やってきたようなものです。

満腹で幸せになるのも、献立を考えてワクワクするのも、糖質制限して初めて知った感覚です。こんな私から見たら、正常にお腹が空くって、とっても健全で幸せな感情だと思うんですが…体の「生きよう」という声のような。
今では、栄養失調改善と心のリハビリ(?)と思ってグルメ三昧、ラム肉を赤ワインとハーブで煮込んで…なんて毎晩やってるんです(笑)。これまで美味しく食べられなかった分食べてやるッて感じです。

糖質制限してて、しかも体重増えて喜んでるなんて、あまりに周囲の共感が得られなさ過ぎて(笑)、つい長文してしまいました、すみません。
まだまだダイエットとしてしか糖質制限を知らない人が多い中、正しい知識の啓蒙がんばってください!応援しています。

Re: No title

josh さん

 コメント頂き有難うございます。

 耳鳴り、耳閉感は私が糖質制限指導をしていても難治性の印象を持っているのですが、

 改善されたとは何よりです。個人差も大きいのかもしれませんね。

 2014年10月13日(月)の本ブログ記事
 「耳鳴りも難治性」
 http://tagashuu.blog.fc2.com/blog-entry-449.html
 も御参照下さい。

Re: 糖質制限だけではやはり・・・

月夜野うさぎ さん

 コメント頂き有難うございます。

> やはり、パーソナリティ障害の原因は糖質だけでは語りきれないと感じています(程度にもよるのでしょうが)。

 確かに、糖質だけで全てを説明するのは無理がありますが、原因の大きな部分を占めていると考えています。

 また「パーソナリティ障害」を含めた精神疾患の概念そのものが危うさを秘めた概念だと私は考えています。

 そもそも本当にそんなものは存在するのかと、そういう発想も大事だと思います。

 2014年3月31日(月)の本ブログ記事
 「そもそも病気とは何なのか」
 http://tagashuu.blog.fc2.com/blog-entry-227.html
 も御参照下さい。

Re: 稀な体質なんでしょうか

banquo さん

 コメント頂き有難うございます。
 またお辛い体験を語って頂き誠に有難うございます。大変参考になります。

> 満腹で幸せになるのも、献立を考えてワクワクするのも、糖質制限して初めて知った感覚です。

 素晴らしいです。その事は糖質制限の方向性の正しさを如実に物語っているように思います。
プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
漢方好きの神経内科医です。
南鹿児島さくら病院に勤務しています(下段にリンクあり)。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

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