サイアミディン

やなせたかし先生の生き方

漫画家のやなせたかし先生が先日94歳でお亡くなりになられました.

やなせたかし先生と言えば,ご存じ子どもたちのヒーロー「アンパンマン」で有名ですが,

実は糖質制限の実践者でもありました.

しかもそれは,誰に教わったわけでもなく,どのような食べ物で血糖値が上がるのかということを自分でいろいろと実験され,その中で血糖値の上がらない食べ物を選ぶようにされていたようなのです.まさに「自分で考える力」を持っておられたと言えます.

そんなやなせ先生,93歳の時点で次のような書籍を書かれています.



この本には我々が学ぶべき姿勢が数多く書かれています.

そして何より注目すべきは,やなせ先生は晩年までこのような本が書けるくらい頭脳明晰であったということです.
この本の中から興味深い内容をいくつか抜粋してみたいと思います.

~以下,抜粋~

(前略)
77歳の喜寿の頃までは元気で,「やなせさんは万年青年だね」と人からおだてられては,いい気分になり,自分がいくつかなんてすっかり忘れていました.

ところが,その後はまるで坂道を転げ落ちるように病気,また病気.まさに”病気の総合商社””十病人”です.

(中略)

67歳 腎臓結石(直径5mmの石を体外衝撃波結石粉砕法で治療)
72歳 白内障(人工水晶体を入れる)
79歳 心臓病(冠動脈カテーテル手術)
81歳 ヘルニア(手術)
81歳 膵臓炎(膵臓の3分の1を切除.胆嚢と脾臓も切除)
82歳 緑内障(網膜のシワを伸ばす手術)
83歳 糖尿病(膵臓の手術を機に発症)
83歳 腸閉塞
85歳 腎臓ガン(左腎を摘出)
86歳 膀胱ガン(以後,電気メスで12回切除)
92歳 肺炎
92歳 腸閉塞(小腸を45cmカット)
92歳 心臓病(ペースメーカーを入れた…が,手術直後,自身の心臓が鼓動)

(中略)

「これはちょんちょんと切ればすぐに治ります」

81歳で膵臓炎を患ったとき,医者はこう言ったのです.
「ちょんちょんですか.じゃあ,切ってください」と言ったら,ちょんちょんどころではなかった.おなかをざく~っと切り,ぺろっと開けて.
胆嚢と脾臓は元気だったけれど,膵臓はその奥にあるので,胆嚢と脾臓も取らなければいけないと言う.
僕は「なんで悪くないのに取るんだ」と言ったら,「これが常識ですよ」と.「僕には常識なんてない!」と言いたかったがしかたがない.

(中略)

膵臓を患ったことで血中のブドウ糖を調整するインスリンが減ってしまって糖尿病を併発.以後,糖尿病とは,一生つきあっていくことになりました.

糖尿病の場合,食生活もいろいろと気を遣うことが必要ですが,僕の場合,週に一度,血糖値を測るように医者から言われている.これが結構,めんどうくさいのです.

そこで,「いっそ,血糖値を測るのを趣味にしてしまえばいい」と思いつきました.

名づけて,”趣味の血糖値”.

血糖値は毎朝,測って記録します.そして,「これを食べたら血糖値は上がるだろうか」「こういう食べ方をしたらどうだろう」と,いろいろ食べてみては,次の日に数値と見比べて,食事と血糖値の関係を研究.

すると,がんじがらめの味気のない糖尿病食にしなくても,工夫次第で食事の幅が広がることがわかりました.

 
やりたくないけれど,やらなければならないことは趣味にしてしまえばいい,というのは,我ながら大発見.
糖尿病とも長くつきあっていると,どういう食事をすると血糖値が上がるかはだいたいわかってきますが,それでも毎日測ります.なにせ,趣味ですから.

そして,そんなふうに楽しんでいるうちに,最近では血糖値も安定して,医者からは「優等生です.これ以上,血糖値は下げなくていいですよ」とまで言われるようになりました.

薬を使えば簡単に血糖値を下げられるけれど,これからも,僕は薬に頼らずに”趣味の血糖値”でやっていくつもりです.

(後略)

~抜粋,ここまで~


いかがでしょうか.

やなせ先生がいかに「自分で考える力」を持っていたかがよくわかる文章だと思います.

その後,具体的にどういう食事をして血糖値をコントロールしていったのかもこの本には書かれているのですが,見る限りでは「半糖質制限食」という感じです.

誰に教わることなく,医者を盲信することなく,半糖質制限の結論を導き出したのです.

私は職業柄高齢者の方と接する機会が多いですが,90歳を超えてここまで頭脳明晰な方は珍しいです.

ただ完全なる糖質制限ではなかったこともあってか,最終的には94歳で亡くなる直前には心不全,癌の多発肝転移も伴っていたとのことですが,

ニュースによれば「苦しい表情もせずに眠るように亡くなられた」とのことでした.

まさに糖質を制限していく方向性の正しさを確認させられるとともに,

やなせ先生の生き方を通じて,いかに「自分で考える力」が大切かということを学ぶことができます.

謹んでお悔み申し上げます.


たがしゅう
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やなせ先生

仕事がら、アンパンマンには大変お世話になっていましたが、ほぼ日で糸井重里さんとの対談を読み、あまりのおもしろさに、本を何冊か買って読みました。もっと早く興味を持てばよかったと後悔しました。
たがしゅう先生が紹介されたのは読んでいなかったので、早速注文しました。ありがとうございます。

やなせたかし先生の訃報はショックでした。
ぼくはもうすぐ死ぬんだよとおっしゃってても、もっと生きていてくださるような気がしていました。

アンパンマンはこどもたち本当に大好きです。
やなせ先生のすじの通った生き方があの中にぎゅっと詰められているように思います。
ああでもないこうでもない、と策を練りながら、物事の本質をついていく好奇心旺盛な頭が、自力で糖質制限に結びついていったのかなあと思いました。

やりたくないけど、やらなければならないことを趣味にする、ってすごいことですね。
病気との付き合い方を教えてもらった気がします。

Re: やなせ先生

にこ さん

 いつもコメント頂き有難うございます。

> ああでもないこうでもない、と策を練りながら、物事の本質をついていく好奇心旺盛な頭が、自力で糖質制限に結びついていったのかなあと思いました。

 私もそう思います。

 やなせたかし先生、自分の頭で考えて糖質制限にまで行き着いたというところがすごいです。

 訃報は非常に残念ですが、先生の姿勢から学び将来へ活かせることがあると思います。

前向きな詩人

こんにちは。
 私は、やなせさんの訃報を耳にしてから、何度も涙ぐんでいます。大勢の人を幸せにした方だったと思います。

ご自分のことを「老いドル」とおっしゃっていました。ご自分が元気に生きることが、大勢の人の励ましになることだとよくわかっていらっしゃったのではないかと思います。

善と美と抒情を愛した画家であり、詩人。もっともっと、生きていただきたかったです。

前向きで抜けるように明るい、見習いたい方でした。
こんなに泣けるとは。
ありがとう、ありがとう、です。

そうだ
うれしいんだ
生きる喜び
たとえ胸の傷が
痛んでも       アンパンマンの主題歌

深いでしょう。

(ごめんなさい、ただの独白です。レスポンスは無用です。)

Re: 前向きな詩人

エリス さん

 想いのこもったコメントをどうも有難うございます.
 すみません,レスせずにはいられませんでした.

> そうだ
> うれしいんだ
> 生きる喜び
> たとえ胸の傷が
> 痛んでも       アンパンマンの主題歌
>
> 深いでしょう。



 本当ですね.

 何気なく聞いていたアンパンマンのテーマにこんな深い歌詞が入っていたなんて,今まで全く気が付きませんでした.

 …私にとっても非常に染み入る言葉です.
 

やっぱりみんなのヒーローですね

たがしゅう先生こんばんは。
私の子供時代に素敵なヒーローをくださったやなせ先生、そして今日記事にしておしえてくれたたがしゅう先生、本当に感謝しております。
糖質制限を始め、自分の糖質処理能力が極端に低いことが判明し、「私が空腹でもアンパンマンには助けてもらえないワケか」なんて思ってましたので(笑)、やなせ先生ご自身糖質制限されていたとは驚きました。それも自分で考えてなんて…尊敬するアーティストです。
もしもこれからこの国に、子供達が飢えない時代が続き、糖質制限の概念が広まったとしても、アンパンマンにはずっとヒーローでいて欲しいです。
「飢餓の味を知らない」という「生物として異常な事態」をどう生きるか、考えさせられる名作だと思います。

Re: やっぱりみんなのヒーローですね

banquo さん

 コメントを頂き有難うございます。

 私もやなせ先生を心より尊敬しています。

 アンパンマンは数えきれないくらい多くのこどもたちに勇気と希望を与えてくれたと思います。そしてこれからもずっとヒーローであり続けてほしいと思います。
 
プロフィール

たがしゅう

Author:たがしゅう
漢方好きの神経内科医です。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。

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